わたくし、異世界で婚約破棄されました!?

星宮歌

文字の大きさ
3 / 78
第一章 解放

第三話 婚約破棄の後(エルヴィス視点)

しおりを挟む
「笑っ、た?」


 あの、『人形姫』が。常に無表情で、何を考えているのかも分からない女が、笑った。それも、婚約破棄の上、国外追放を言い渡されるという事態の中、笑ったのだ。

 リリスが転移を発動した瞬間に、何かガラスが割れるような音がしたものの、周囲にそれを気にする者は居ない。男も女も、あのリリスの美しい微笑みに魅了されてしまっていたのだ。


「エルヴィス様っ、エルヴィス様っ?」


 ぼーっとリリスが先程まで立っていた場所を見つめていると、ふいに、愛しいホーリーが私の肩を揺さぶっていることに気づく。


「あ、あぁ、どうした? ホーリー?」

「もうっ、あの女を追いかけなくて良いんですかって、聞いてるんですっ! 国外追放なのに、逃げられたんですよっ?」

「はっ、そ、そうだったな。衛兵っ、すぐに、リリス・シャルティーを捜索、捕縛の上、国外に追放せよっ」

「「「ははっ」」」


 幾人かの衛兵が会場を去る中、私はようやく、あの不気味な女から解放されたのだと実感する。
 幼少の頃からの婚約者であったリリスは、生意気にも、どんなことをしても表情を変えなかった。それは、顔立ちが整っていることもあって、より不気味な様子に映り、私は何度も父上に婚約破棄を訴えてきたのだ。
 しかし、それに対する父上の答えは、『まだしばらく待て』とのこと。どれだけ待てば良いのかを告げることなく、ただ、『待て』とだけ。それがどれだけ屈辱的なことだったかっ……。


(だが、それももう終わりだ)


 何でも、シャルティー公爵と密約を交わすことができたと言っていた父上は、今日、この場における婚約破棄を許可してくださったのだ。


「ホーリー。これで、私達は名実ともに婚約者だ。一緒にこの国を支えてくれるか?」

「っ、はいっ、エルヴィス様」


 そうして、お互いの唇が急接近する中、大扉が開かれる。


「これは何事だ? エルヴィスっ?」


 そこに響いた声は、父上の、この国の国王である、アルヴィー・レイリン。私の金髪碧眼はこの父上譲りで、私は父上の若い頃に良く似た姿であるらしい。
 そんな父上は、事前に婚約破棄に関する話をしていたにも関わらず、私にはない眉間のシワを深めて、詰め寄る。


「リリスと婚約破棄をしました。そして、ここに居るホーリーを婚約者として宣言しました」

「何? お前の新たな婚約者は、シェイラ・シャルティーと決まっておる。そのような女は認めんっ」

「っ、そんなっ! 話が違うではありませんかっ! 父上は、リリスと婚約破棄をして良いとっ「それは、お前とシェイラを婚約させるためのものだ」そんなっ!」


 そんな話は聞いていない。やっと、リリスと婚約破棄できて、愛するホーリーと結ばれるというのに、父上はよりにもよって、あの女の妹を私の婚約者にするつもりか?


「こ、国王陛下っ! 私達は、愛し合っておりますっ! ですから、どうか私達を認めてくださいっ!」


 私が憤る中、ホーリーは健気にも目を潤ませて父上に立ち向かっている。


(あぁ、私もこのままではいられない)

「父上っ、私からもお願いしますっ! 私は、ホーリー以外と結婚するつもりはありませんっ」


 その言葉に、周りの貴族らがこっそり嘲りの表情を浮かべていることにすら気づかず、私は父上に懇願する。


「……エルヴィスは疲れているようだ。衛兵、エルヴィスを部屋へ連れていけ。そして、そこの女は、牢にでも入れておけ」

「「「ははっ」」」

「なっ、父上っ!?」

「ちょっとっ、離しなさいよっ! どうして私が牢屋なのよっ! こんなの、ゲームにはなかったわっ! 何でっ、ここで悪役令嬢が登場するのよっ!」


 腕を掴んでくる衛兵達に、私もホーリーも必死に抵抗したものの、結局、私は一週間の謹慎処分を受け、ホーリーは牢へ入れられてしまうのだった。
しおりを挟む
感想 170

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

【完結】裏切られ婚約破棄した聖女ですが、騎士団長様に求婚されすぎそれどころではありません!

綺咲 潔
恋愛
クリスタ・ウィルキンスは魔導士として、魔塔で働いている。そんなある日、彼女は8000年前に聖女・オフィーリア様のみが成功した、生贄の試練を受けないかと打診される。 本来なら受けようと思わない。しかし、クリスタは身分差を理由に反対されていた魔導士であり婚約者のレアードとの結婚を認めてもらうため、試練を受けることを決意する。 しかし、この試練の裏で、レアードはクリスタの血の繋がっていない妹のアイラととんでもないことを画策していて……。 試練に出発する直前、クリスタは見送りに来てくれた騎士団長の1人から、とあるお守りをもらう。そして、このお守りと試練が後のクリスタの運命を大きく変えることになる。 ◇   ◇   ◇ 「ずっとお慕いしておりました。どうか私と結婚してください」 「お断りいたします」 恋愛なんてもう懲り懲り……! そう思っている私が、なぜプロポーズされているの!? 果たして、クリスタの恋の行方は……!?

断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る

黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」 パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。 (ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

処理中です...