わたくし、異世界で婚約破棄されました!?

星宮歌

文字の大きさ
50 / 78
第五章 リリスの心

第五十話 お姉様と雑談(シェイラ視点)

しおりを挟む
 お姉様の相談は、思った以上に私にダメージを与えて終わった。今は、ただの雑談でお姉様の愛らしさに心が癒されていくのを感じる。


「『絶対者』として名が上がったわたくしは、それ以来、難しい依頼をいくつもこなしてきましたわ」


 今は、お姉様が『絶対者』という存在に到った理由や、その後のことを聞かせてもらっている。お姉様はどうやら、領地の資金繰りのために、随分と奔走してらしたようだ。領地の資金の大半が、お姉様が『絶対者』として稼いだものだというのだから、その凄まじさは舌を巻くものだった。
 それと同時に、何の力にもなれなかった自分が情けないやら申し訳ないやらで頭が下がる。しかし、それを表に出すことなく、私は会話を続ける。


「あら? そうなると、今の領地では、資金がないということになるんですか?」

「いいえ、一応、普通に仕事をこなしていれば問題ない程度の財産は残してきていますわ」

「そうですか……」


 そう言いながら、父親が仕事をまともにしている状況が思い浮かばず、眉を寄せる。


「カジノを造ったのは正解でしたわね。そのおかげで、わたくしに莫大なお金が入るようになりましたから」

「えっ? あのカジノってところは、お姉様が造ったのですか?」


 カジノといえば、私の両親が病みつきになって通っている場所だ。何やら賭け事をするための場所らしくて、その日の結果次第で機嫌の良し悪しが乱高下する場所だと記憶している。


「えぇ、まだ冒険者として駆け出しの頃、かなり財政が苦しくなっていましたので、思いきってカジノを造ってみたのです。その頃はまだ小さなカジノでしたが、それは成功し、徐々に規模を大きくしていきましたのよ」


 小さいといっても、最初に造られたカジノという建物はかなりの規模だったはずだ。何せ、学園で習った内容では、世界最大の賭博場と呼ばれていたとあったのだから。


「……駆け出しで、そんなにお金が稼げるものなのですか?」

「駆け出しといっても、実力はそこそこありましたので、すぐにAランク冒険者になれましたわ。わたくしの能力である分身の力を最大限に発揮すれば、十人にまで分身させることができますからね。十人のうちの七人は鍛練、そして、三人は冒険者稼業という形で毎日過ごしていれば、どんどん実力がつきましたし、分身ですので食事や宿をとる必要もなく、その分、お金は貯まりやすかったはずですわ」


 どうやら、お姉様は凄まじい努力をしてきたらしい。王妃教育の合間にそれを行っていたと考えると、私にはとてもではないが真似できないと思った。


「……申し訳ありません。私は、何の力にもなれませんでした」


 自責の念を表に出さないよう努力していた私だったが、さすがにそこまで聞いてしまえば、自分の無力さが際立って、思わずそんなことを口に出してしまっていた。


「シェイラ?」

「私だって、シャルティー公爵家のものでしたのに、私は領地のために、何一つ力を尽くしていませんでした」

(お姉様がこんなにも努力している間、私は何をしていた?)


 私が家で行っていたことといえば、令嬢としての勉強と、お茶会での情報収集くらいのもの。情報収集だって、集めるものは、様々な貴族の動向で、危険な貴族には近寄らないようにお姉様へと伝えるくらいのことしかできていない。


「いいえ、わたくしは、シェイラの集めてくれる情報がとても貴重でしたわよ。何せ、わたくしは『人形姫』でしたから、集まる情報も集まらなかったので」


 そうは言うものの、お姉様の努力に比べれば、私の努力なんて霞んでしまう。


「そうですわね……こういう時は、適材適所、というのですよ」

「適材、適所……」

「わたくしは、冒険者でカジノの経営者。シェイラは、情報収集と暗躍をする者。全く違う役割で、お互いを補ってきたのですわ。事実、わたくしはシェイラの情報がなければ危なかったことが多々ありますしね」


 お姉様に慰められて、私は少しだけ、心が浮上する。


「わたくしの力は、ある意味ズルいのですわ。だから、シェイラは気負うのではなく、『お姉様ばっかり力があってズルい』くらいのことを言ってくれても良いのですわよ?」


 言われて、確かに、お姉様の分身能力はズルいと感じる。分身を十人作れる能力。分身の経験を本体に移せる能力。そんなものがあれば、私だって色々な情報収集が捗ったかもしれない。


「そう、ですね。では、遠慮なく……お姉様の分身能力はズル過ぎです」


 思いっきりの笑顔で告げれば、お姉様もつられるようにして笑う。


「ふふ、そうですわよね」


 そうしてひとしきり笑い合うと、何だか、お姉様との距離が近くなったように感じられて嬉しくなる。


「あぁ、それと、わたくしがここまで頑張ったのは、シェイラが居てくれたからでもあるんですのよ?」


 そして、素敵な笑顔で告げられた、そんな口説き文句に、私は内心悶絶するのだった。
しおりを挟む
感想 170

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

<完結>溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。 本編完結済み。 続きのお話を、掲載中です。 続きのお話も、完結しました。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。 人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。 それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。 嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。 二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。 するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー

処理中です...