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第五章 リリスの心
第五十六話 リリスさんの環境(ルティアス視点)
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兄さんとの贈り物選びは、それは、もう……大変だった。ちょっと目を離した隙に、どこで売っているのかも疑問なおどろおどろしいナニカを満面の笑顔で『これとかどうでしょうか?』と尋ねてくる兄さんを、必死に押し留めた。
ドレスを見ようとすれば、どこの仮装大会に出場するのだと言いたくなる服を選んでくるし、髪飾りやアクセサリーは、明らかにヒイナさんに似合わないものを選んでくる。……子供用の髪飾りやアクセサリーを選んできた時は、もう、頭を抱えるしかなかった。
「やっと、決まった……」
「こんなもので、本当に大丈夫でしょうか?」
「むしろ、兄さんが今まで選ぼうとしていたものの方が大丈夫じゃないからねっ!?」
とりあえず、無難に青のドレスを一着と、それに合わせた宝飾品を選んで、買い物を終えた。ちなみに、僕は僕で、リリスさんに似合いそうな品を買い込んでおいた。
ドレスを着る機会は、今のところないと思われるし、そもそもサイズが分からないため、今回は保留にしたものの、その分、髪飾りやアクセサリーは色々と種類を揃えた。あとは、リリスさんが好きかもしれないと思って、チョコレートのお菓子をいくつか買っている。
街から家に戻った僕達は、再び兄さんの部屋に集まる。軽い食事も用意してもらって、腹を満たすと、早速本題に入る。
「それで、リリスさんの情報は?」
「そうですね。まず、彼女はレイリン王国、シャルティー公爵家の長女にして、第一王子、エルヴィス・レイリンの婚約者でした」
「っ!?」
婚約者という言葉に、僕は思わず立ち上がる。公爵家の娘ということより何よりも、リリスさんが別の男の婚約者だという事実が重い。
「落ち着いてください。その婚約は、現在破棄されていますので」
「そ、そっか……」
ただ、どうやら今は、その婚約は破棄されているらしい。
(でも、リリスさんはどう思ってるんだろう? 婚約を、破棄……したくなかった、とか?)
考えたくはないが、その可能性だってある。
「……何を考えているか、大体は分かりますが、それはあり得ませんよ? リリス嬢は、エルヴィス王子を嫌っていたらしいので」
「本当に!? じゃあっ、婚約破棄はリリスさんから申し出たってこと!?」
それならどうして、リリスさんが魔の森なんかに居るのか分からなくなるものの、そんなこともあるのかもしれないと思って尋ねれば、兄さんは渋い顔になる。
「怒らないで聞けると約束できますか?」
「……内容によるよ」
どうやら、良い話ではない。それを直感した僕は、眉間にシワを寄せる兄さんの言葉を待ってみる。
「……リリス嬢は、エルヴィス王子に婚約破棄させられました。エルヴィス王子の隣には女が居て、その女をリリス嬢が虐めたと糾弾された上、国外追放まで言い渡されました」
「……」
「……殺気を撒き散らしたまま威圧するのは、やめてもらえませんか?」
あまりの言葉に、僕はどうやら、殺気を抑えられなかったらしい。
目の前の兄さんが悪いわけではないと理解して、僕は自分の中で荒ぶる怒りを鎮める。
「……これ以上、聞きますか?」
「……聞く」
そういう言い方をするからにはまだ何かある。そう思いながら、一つ深呼吸をしたあと兄さんに返事をすると、兄さんはゆっくりとリリスさんの不遇を話し始める。
家でのリリスさんの扱いについてや、社交界でのリリスさんの立ち位置。リリスさんへの婚約破棄の裏側で動いていた王の思惑や、追放後の指名手配。それら全てを聞き終えた頃には、部屋は重苦しい空気に満ちていた。
「……ルティアス? できれば、魔力と殺気を抑えてくれませんか?」
「無理」
「……そうですか。無理ですか……」
顔を引きつらせて、死にそうな表情をする兄さんだったが、正直、今はどうにも収まりそうにない。
「ねぇ、兄さん? 復讐ってできないかな?」
「……毒の量を調整したとはいえ、王は死にかけですし、民の流出は続くばかり。シャルティー公爵家は借金を背負って、そろそろ破滅しそうですし、あの王子が女と一緒になって王位に就いたとしても、滅びの未来が目に見えてる状況ですよ?」
「それでも、だよ。あぁ、こんなことなら、ジェドに呪いの方法を学んでおくんだったなぁ」
この怒りは、どこかにぶつけなければどうにもならない。呪えるものなら呪いたい。そう思って口に出せば、兄さんは少し悩んだ後、うなずく。
「ならば、こういうのはどうですか?」
そう言って提案してきた兄さん。僕は、その提案を全て聞き終えると、その案で進むことを決めるのだった。
ドレスを見ようとすれば、どこの仮装大会に出場するのだと言いたくなる服を選んでくるし、髪飾りやアクセサリーは、明らかにヒイナさんに似合わないものを選んでくる。……子供用の髪飾りやアクセサリーを選んできた時は、もう、頭を抱えるしかなかった。
「やっと、決まった……」
「こんなもので、本当に大丈夫でしょうか?」
「むしろ、兄さんが今まで選ぼうとしていたものの方が大丈夫じゃないからねっ!?」
とりあえず、無難に青のドレスを一着と、それに合わせた宝飾品を選んで、買い物を終えた。ちなみに、僕は僕で、リリスさんに似合いそうな品を買い込んでおいた。
ドレスを着る機会は、今のところないと思われるし、そもそもサイズが分からないため、今回は保留にしたものの、その分、髪飾りやアクセサリーは色々と種類を揃えた。あとは、リリスさんが好きかもしれないと思って、チョコレートのお菓子をいくつか買っている。
街から家に戻った僕達は、再び兄さんの部屋に集まる。軽い食事も用意してもらって、腹を満たすと、早速本題に入る。
「それで、リリスさんの情報は?」
「そうですね。まず、彼女はレイリン王国、シャルティー公爵家の長女にして、第一王子、エルヴィス・レイリンの婚約者でした」
「っ!?」
婚約者という言葉に、僕は思わず立ち上がる。公爵家の娘ということより何よりも、リリスさんが別の男の婚約者だという事実が重い。
「落ち着いてください。その婚約は、現在破棄されていますので」
「そ、そっか……」
ただ、どうやら今は、その婚約は破棄されているらしい。
(でも、リリスさんはどう思ってるんだろう? 婚約を、破棄……したくなかった、とか?)
考えたくはないが、その可能性だってある。
「……何を考えているか、大体は分かりますが、それはあり得ませんよ? リリス嬢は、エルヴィス王子を嫌っていたらしいので」
「本当に!? じゃあっ、婚約破棄はリリスさんから申し出たってこと!?」
それならどうして、リリスさんが魔の森なんかに居るのか分からなくなるものの、そんなこともあるのかもしれないと思って尋ねれば、兄さんは渋い顔になる。
「怒らないで聞けると約束できますか?」
「……内容によるよ」
どうやら、良い話ではない。それを直感した僕は、眉間にシワを寄せる兄さんの言葉を待ってみる。
「……リリス嬢は、エルヴィス王子に婚約破棄させられました。エルヴィス王子の隣には女が居て、その女をリリス嬢が虐めたと糾弾された上、国外追放まで言い渡されました」
「……」
「……殺気を撒き散らしたまま威圧するのは、やめてもらえませんか?」
あまりの言葉に、僕はどうやら、殺気を抑えられなかったらしい。
目の前の兄さんが悪いわけではないと理解して、僕は自分の中で荒ぶる怒りを鎮める。
「……これ以上、聞きますか?」
「……聞く」
そういう言い方をするからにはまだ何かある。そう思いながら、一つ深呼吸をしたあと兄さんに返事をすると、兄さんはゆっくりとリリスさんの不遇を話し始める。
家でのリリスさんの扱いについてや、社交界でのリリスさんの立ち位置。リリスさんへの婚約破棄の裏側で動いていた王の思惑や、追放後の指名手配。それら全てを聞き終えた頃には、部屋は重苦しい空気に満ちていた。
「……ルティアス? できれば、魔力と殺気を抑えてくれませんか?」
「無理」
「……そうですか。無理ですか……」
顔を引きつらせて、死にそうな表情をする兄さんだったが、正直、今はどうにも収まりそうにない。
「ねぇ、兄さん? 復讐ってできないかな?」
「……毒の量を調整したとはいえ、王は死にかけですし、民の流出は続くばかり。シャルティー公爵家は借金を背負って、そろそろ破滅しそうですし、あの王子が女と一緒になって王位に就いたとしても、滅びの未来が目に見えてる状況ですよ?」
「それでも、だよ。あぁ、こんなことなら、ジェドに呪いの方法を学んでおくんだったなぁ」
この怒りは、どこかにぶつけなければどうにもならない。呪えるものなら呪いたい。そう思って口に出せば、兄さんは少し悩んだ後、うなずく。
「ならば、こういうのはどうですか?」
そう言って提案してきた兄さん。僕は、その提案を全て聞き終えると、その案で進むことを決めるのだった。
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