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第五章 リリスの心
第五十七話 再会
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ルティアスと別れてヴァイラン魔国内を散策するわたくしは、日本のちょっとした田舎に居るような感覚に心が浮き立つのを感じる。
日本でのわたくしは、目立たない女子高生。可もなく不可もなくの成績で、ぼんやりと生きてきた。それでも、幸せじゃなかったのかといえばそうでもなく、のほほんとしながらも楽しい生活を送っていたのだ。
(……今の方が、メリハリがあって楽しいですけれどね)
のんびりとした生活も良かったけれど、今のルティアスとの生活も楽しい。
(わたくしの、気持ち……楽しい、だけではいけないのでしょうか?)
思い返すのは、シェイラに言われた言葉。
(『自分の気持ち』と『先に進めない理由』……)
いつの間にか足を止めて考え込むわたくしは、懐かしい日本の風景に包まれながら、何かが掴めそうで掴めないもどかしい気分を味わう。
「どうして……」
(どうして、ルティアスと居ると、ドキドキするのでしょうか?)
きっと、足掛かりになるのはこの疑問だと思って、わたくしはしばし考える。
(ドキドキする時といえば、怖い時、危ない時……あとは……恋を、した、時……?)
ルティアスと居て恐怖を感じているわけでも、危険を感じているわけでもない。となると、消去法で『恋をした時』となるのだけれど、そこで、わたくしの思考は一時停止する。
「…………まさか……」
(わたくしが、恋を、している?)
そんな、まさか。けれど、でも。様々な否定の言葉が浮かんでは消え、わたくしは道端で混乱に見舞われる。
「あれ? リリスさん?」
そんな時だった。背後から、どこか聞き覚えのある声が聞こえたのは。
「……ミーア?」
そこには、ハニーブロンドの少女。ミーアが居た。
「お久しぶりですっ。リリスさんには、ずっとお礼が言いたかったんですよっ!」
「え? お礼、ですの?」
「はいっ! あの日から、テオも思うところがあったみたいで、私の意思を優先してくれるようになったんですっ。おかげで今は快適に過ごしてますよっ」
「そう、それは良かったですわ」
どうやら、かつて相談を受けたミーアは、その後、上手くいっているらしい。わたくしは、どうにか混乱を抑えて笑いかける。
「そうだっ! リリスさんっ! ルティアスさんとのご結婚はいつですか? さすがにそろそろ決まってますよね? 結婚式には、ぜひ、呼んでくださいっ! 住所とか教えておきますので」
「え? はっ? えぇっ!?」
瞳をキラキラとさせながら迫ってきたミーア。その発言の内容に、わたくしは目を白黒させる。
「それでっ、いつですか?」
「け、結婚も何も、わたくし達は付き合ってすらいないのですよ?」
そう言った直後、ズキリと胸に痛みが走るが、それを疑問に思う前に、目を見開いたミーアが口を開く。
「まさか、まだそんな状態なんですかっ!? えっ? さすがにルティアスさんは可哀想なんじゃ……と、いうか、そんな表情をしておいて無自覚!?」
「『そんな表情』……?」
ルティアスの何が可哀想なのかも分からなかったけれど、それよりもわたくしの表情についての言及が気になった。わたくしは、表情を変えていないつもりなのに……。
「……分かりました。ここは、私が一肌脱ぎましょう! これまでのお礼ですっ」
「はぁ……」
「さっ、それじゃあ、どこか適当な喫茶店に行きましょうねっ!」
「えっ? ちょっ!?」
腕を取られてグイグイと引っ張られるわたくしは、ミーアについて行かざるを得ない。何が何だか分からない状態で、わたくしはミーアに連れられるまま、一つの喫茶店に入る。
「コーヒーの匂い……」
「あっ、コーヒーを知ってるんですね! ここ、コーヒーが美味しいお店なんですよ。あと、チーズケーキも」
「コーヒー、チーズケーキ……」
「今回も奢りますから、一緒に食べましょう?」
「わ、分かりましたわ」
美味しいものを前に、わたくしは無力だった。元々予定らしい予定もなかったわたくしはあっさりミーアの言葉に陥落し、イソイソと席に着く。
「ホットコーヒー二つにチーズケーキ二つ!」
そんな注文を聞きながら、はて、わたくしはなぜここに連れてこられたのだろうかということに、ようやく疑問を抱く。
「さぁ、リリスさん? 覚悟してくださいね?」
そして、なぜか捕食者のような目をしているミーアを前に、わたくしは、戦慄するのだった。
日本でのわたくしは、目立たない女子高生。可もなく不可もなくの成績で、ぼんやりと生きてきた。それでも、幸せじゃなかったのかといえばそうでもなく、のほほんとしながらも楽しい生活を送っていたのだ。
(……今の方が、メリハリがあって楽しいですけれどね)
のんびりとした生活も良かったけれど、今のルティアスとの生活も楽しい。
(わたくしの、気持ち……楽しい、だけではいけないのでしょうか?)
思い返すのは、シェイラに言われた言葉。
(『自分の気持ち』と『先に進めない理由』……)
いつの間にか足を止めて考え込むわたくしは、懐かしい日本の風景に包まれながら、何かが掴めそうで掴めないもどかしい気分を味わう。
「どうして……」
(どうして、ルティアスと居ると、ドキドキするのでしょうか?)
きっと、足掛かりになるのはこの疑問だと思って、わたくしはしばし考える。
(ドキドキする時といえば、怖い時、危ない時……あとは……恋を、した、時……?)
ルティアスと居て恐怖を感じているわけでも、危険を感じているわけでもない。となると、消去法で『恋をした時』となるのだけれど、そこで、わたくしの思考は一時停止する。
「…………まさか……」
(わたくしが、恋を、している?)
そんな、まさか。けれど、でも。様々な否定の言葉が浮かんでは消え、わたくしは道端で混乱に見舞われる。
「あれ? リリスさん?」
そんな時だった。背後から、どこか聞き覚えのある声が聞こえたのは。
「……ミーア?」
そこには、ハニーブロンドの少女。ミーアが居た。
「お久しぶりですっ。リリスさんには、ずっとお礼が言いたかったんですよっ!」
「え? お礼、ですの?」
「はいっ! あの日から、テオも思うところがあったみたいで、私の意思を優先してくれるようになったんですっ。おかげで今は快適に過ごしてますよっ」
「そう、それは良かったですわ」
どうやら、かつて相談を受けたミーアは、その後、上手くいっているらしい。わたくしは、どうにか混乱を抑えて笑いかける。
「そうだっ! リリスさんっ! ルティアスさんとのご結婚はいつですか? さすがにそろそろ決まってますよね? 結婚式には、ぜひ、呼んでくださいっ! 住所とか教えておきますので」
「え? はっ? えぇっ!?」
瞳をキラキラとさせながら迫ってきたミーア。その発言の内容に、わたくしは目を白黒させる。
「それでっ、いつですか?」
「け、結婚も何も、わたくし達は付き合ってすらいないのですよ?」
そう言った直後、ズキリと胸に痛みが走るが、それを疑問に思う前に、目を見開いたミーアが口を開く。
「まさか、まだそんな状態なんですかっ!? えっ? さすがにルティアスさんは可哀想なんじゃ……と、いうか、そんな表情をしておいて無自覚!?」
「『そんな表情』……?」
ルティアスの何が可哀想なのかも分からなかったけれど、それよりもわたくしの表情についての言及が気になった。わたくしは、表情を変えていないつもりなのに……。
「……分かりました。ここは、私が一肌脱ぎましょう! これまでのお礼ですっ」
「はぁ……」
「さっ、それじゃあ、どこか適当な喫茶店に行きましょうねっ!」
「えっ? ちょっ!?」
腕を取られてグイグイと引っ張られるわたくしは、ミーアについて行かざるを得ない。何が何だか分からない状態で、わたくしはミーアに連れられるまま、一つの喫茶店に入る。
「コーヒーの匂い……」
「あっ、コーヒーを知ってるんですね! ここ、コーヒーが美味しいお店なんですよ。あと、チーズケーキも」
「コーヒー、チーズケーキ……」
「今回も奢りますから、一緒に食べましょう?」
「わ、分かりましたわ」
美味しいものを前に、わたくしは無力だった。元々予定らしい予定もなかったわたくしはあっさりミーアの言葉に陥落し、イソイソと席に着く。
「ホットコーヒー二つにチーズケーキ二つ!」
そんな注文を聞きながら、はて、わたくしはなぜここに連れてこられたのだろうかということに、ようやく疑問を抱く。
「さぁ、リリスさん? 覚悟してくださいね?」
そして、なぜか捕食者のような目をしているミーアを前に、わたくしは、戦慄するのだった。
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