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第五章 リリスの心
第五十八話 恋の尋問
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「それで? リリスさんは、ルティアスさんののこと、どう思ってるんですか?」
コーヒーとチーズケーキが届いた途端、ミーアは口を開く。
「どうって……作ってくれる料理がおいしい?」
「ふむふむ、ルティアスさんはリリスさんに料理を振る舞ってると。それで? 他には?」
「他……頼りになる?」
「おぉ、好感触が続いてますねっ。それでそれでっ?」
(この質問、何の意味があるのかしら?)
わたくしは、ミーアの言葉にしばらく考えて……ふと、その言葉を出してしまう。
「えぇっと……下僕?」
「下僕!? なぜそんな言葉が出たんですかっ!?」
「あっ、いいえ、違いますわ。ごめんなさい。それは、ルティアスが言った言葉でしたわ」
「ルティアスさんが!? えっ? どういう状況っ!?」
しまった、と思った時には、もう食いつかれてしまっていた。説明しようにも、わたくしも、なぜルティアスが下僕志願したのか分からない。
「そこは、聞かないでいただけるとありがたいですわ」
(主に、説明が難しいので)
「っ、分かりましたっ! このことは、一生私の胸に秘めておきますねっ!」
ハッとした様子で答えるミーアを前に、何かとんでもない誤解をされたような気がしないでもなかったけれど、知らぬが仏を通そうと決意する。
「って、そうじゃなくてですね? ほら、ルティアスさんのことが好きだなぁとか、側に居たいなぁとか、そんなことはないんですか?」
(好き……好きでは、ありますが……)
「側には、居たくないですわね」
「えぇっ!? ど、どうしてですかっ!?」
予想外とでも言うかのように目をまん丸にして驚くミーア。そんなミーアに、わたくしは最近の不調を告げてみる。
「ルティアスの側に居ると、妙にドキドキしますの。それが、どうにも居たたまれなくて、側には居たくない、です……わね?」
そういえば、ドキドキの原因をちょっと前まで考えていて、恋をしているのではないかという結論に達しつつあったのではないか、と思い出したわたくしは、言葉尻が微妙な疑問系になってしまう。
「……本当に、側に居たくないんですか? ルティアスさんの側に居て、嬉しかったりはしませんか?」
その問いかけは、何だか、先程の結論に近づけようとするもののような気がして、何だか考えるのを躊躇ってしまったけれど、ミーアが真剣にわたくしの話を聞いてくれていることを理解しているわたくしは、改めて考えてみる。
(ルティアスと、居る時……ルティアスは、いつもわたくしのことを気にかけてくれていて……居心地が良くて、楽しくて……一緒に居られるのは、嬉、しい?)
一つ一つを紐解けば、それは、本当に簡単なことだった。
「……わたくし、ルティアスのことが好きなのですわね」
その結論を呟けば、ミーアは満足げにうなずく。
「そうですよっ。リリスさんは、ルティアスさんのことが好きなんです。だって、ルティアスさんの前だと、表情豊かですし、『付き合ってすらいない』って言った時のリリスさん、つらそうでしたよ?」
言われて初めて、わたくしは、自分がそんな表情をしていたことに驚く。今まで、『人形姫』と呼ばれるくらいに表情を固めてきたわたくしが、そこまで顔に出していたという事実が信じられなかった。
(いえ、でも、それはルティアスだからこそ、ですわね)
それでも、その表情が特別なものだということくらい、自覚はある。他でもない、好きな人が相手だからこそ、わたくしの表情も和らいだのだろう。
恋心を自覚した瞬間から、顔に集まる熱が引かないのを感じながら、わたくしはチーズケーキを一口食べる。
「リリスさんは、ずっと無自覚だったんですねぇ」
「無自覚……」
「そうですっ。だから……これからが大変ですよ?」
「大変?」
何がどう大変だというのだろうかと不思議に思っていると、ミーアはなぜか、遠い目をしていた。
「……魔族って、片翼が自分を好きになってくれてるって知った途端、暴走する傾向にあるんです」
「?? 暴走、ですの?」
いったい、どんな暴走をするのかが分からず、首をかしげると、ミーアは真剣な目でわたくしを見つめる。
「良いですか? これから、リリスさんはルティアスさんから猛烈なアプローチを受けることになりますけど、絶対、流されちゃダメですよ? でないと、知らないうちに両親への挨拶をすまされてて、たまたま帰ったら『お前も結婚かぁ』とか、『結婚式には呼んでくれよな』とか、家族だけじゃなくて村中に噂が広まってたりとか、結婚式の準備を勝手に手配されてて、ある日突然連れ去られたかと思えば、ウェディングドレスに着替えさせられて結婚式を挙げさせられたりたとかってことになりかねません」
「……えぇ、分かりましたわ。肝に命じます」
どうにも切実に、具体的な内容を挙げるミーアを前に、わたくしはそう言うしかない。けれど……。
(わたくしが、結婚……?)
結婚という言葉を聞いても、わたくしは、どうにもそれが自分に当てはまるような気がしなくて、どこか、遠い世界の出来事のように思えて仕方がなかった。
(『先に進めない理由』……)
どうやら、シェイラに受けたアドバイス通り、それを考える必要があるらしかった。
コーヒーとチーズケーキが届いた途端、ミーアは口を開く。
「どうって……作ってくれる料理がおいしい?」
「ふむふむ、ルティアスさんはリリスさんに料理を振る舞ってると。それで? 他には?」
「他……頼りになる?」
「おぉ、好感触が続いてますねっ。それでそれでっ?」
(この質問、何の意味があるのかしら?)
わたくしは、ミーアの言葉にしばらく考えて……ふと、その言葉を出してしまう。
「えぇっと……下僕?」
「下僕!? なぜそんな言葉が出たんですかっ!?」
「あっ、いいえ、違いますわ。ごめんなさい。それは、ルティアスが言った言葉でしたわ」
「ルティアスさんが!? えっ? どういう状況っ!?」
しまった、と思った時には、もう食いつかれてしまっていた。説明しようにも、わたくしも、なぜルティアスが下僕志願したのか分からない。
「そこは、聞かないでいただけるとありがたいですわ」
(主に、説明が難しいので)
「っ、分かりましたっ! このことは、一生私の胸に秘めておきますねっ!」
ハッとした様子で答えるミーアを前に、何かとんでもない誤解をされたような気がしないでもなかったけれど、知らぬが仏を通そうと決意する。
「って、そうじゃなくてですね? ほら、ルティアスさんのことが好きだなぁとか、側に居たいなぁとか、そんなことはないんですか?」
(好き……好きでは、ありますが……)
「側には、居たくないですわね」
「えぇっ!? ど、どうしてですかっ!?」
予想外とでも言うかのように目をまん丸にして驚くミーア。そんなミーアに、わたくしは最近の不調を告げてみる。
「ルティアスの側に居ると、妙にドキドキしますの。それが、どうにも居たたまれなくて、側には居たくない、です……わね?」
そういえば、ドキドキの原因をちょっと前まで考えていて、恋をしているのではないかという結論に達しつつあったのではないか、と思い出したわたくしは、言葉尻が微妙な疑問系になってしまう。
「……本当に、側に居たくないんですか? ルティアスさんの側に居て、嬉しかったりはしませんか?」
その問いかけは、何だか、先程の結論に近づけようとするもののような気がして、何だか考えるのを躊躇ってしまったけれど、ミーアが真剣にわたくしの話を聞いてくれていることを理解しているわたくしは、改めて考えてみる。
(ルティアスと、居る時……ルティアスは、いつもわたくしのことを気にかけてくれていて……居心地が良くて、楽しくて……一緒に居られるのは、嬉、しい?)
一つ一つを紐解けば、それは、本当に簡単なことだった。
「……わたくし、ルティアスのことが好きなのですわね」
その結論を呟けば、ミーアは満足げにうなずく。
「そうですよっ。リリスさんは、ルティアスさんのことが好きなんです。だって、ルティアスさんの前だと、表情豊かですし、『付き合ってすらいない』って言った時のリリスさん、つらそうでしたよ?」
言われて初めて、わたくしは、自分がそんな表情をしていたことに驚く。今まで、『人形姫』と呼ばれるくらいに表情を固めてきたわたくしが、そこまで顔に出していたという事実が信じられなかった。
(いえ、でも、それはルティアスだからこそ、ですわね)
それでも、その表情が特別なものだということくらい、自覚はある。他でもない、好きな人が相手だからこそ、わたくしの表情も和らいだのだろう。
恋心を自覚した瞬間から、顔に集まる熱が引かないのを感じながら、わたくしはチーズケーキを一口食べる。
「リリスさんは、ずっと無自覚だったんですねぇ」
「無自覚……」
「そうですっ。だから……これからが大変ですよ?」
「大変?」
何がどう大変だというのだろうかと不思議に思っていると、ミーアはなぜか、遠い目をしていた。
「……魔族って、片翼が自分を好きになってくれてるって知った途端、暴走する傾向にあるんです」
「?? 暴走、ですの?」
いったい、どんな暴走をするのかが分からず、首をかしげると、ミーアは真剣な目でわたくしを見つめる。
「良いですか? これから、リリスさんはルティアスさんから猛烈なアプローチを受けることになりますけど、絶対、流されちゃダメですよ? でないと、知らないうちに両親への挨拶をすまされてて、たまたま帰ったら『お前も結婚かぁ』とか、『結婚式には呼んでくれよな』とか、家族だけじゃなくて村中に噂が広まってたりとか、結婚式の準備を勝手に手配されてて、ある日突然連れ去られたかと思えば、ウェディングドレスに着替えさせられて結婚式を挙げさせられたりたとかってことになりかねません」
「……えぇ、分かりましたわ。肝に命じます」
どうにも切実に、具体的な内容を挙げるミーアを前に、わたくしはそう言うしかない。けれど……。
(わたくしが、結婚……?)
結婚という言葉を聞いても、わたくしは、どうにもそれが自分に当てはまるような気がしなくて、どこか、遠い世界の出来事のように思えて仕方がなかった。
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どうやら、シェイラに受けたアドバイス通り、それを考える必要があるらしかった。
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