わたくし、異世界で婚約破棄されました!?

星宮歌

文字の大きさ
59 / 78
第五章 リリスの心

第五十九話 挙動不審(ルティアス視点)

しおりを挟む
 兄さんの話を聞いて、ひとまず家を出た僕は、少し食材の買い出しをした後、すぐにリリスさんの居場所を捜すべく、魔力を張り巡らせる。


(リリスさんは……ここか)


 大体の位置を調べ終えた僕は、早足でリリスさんの元へと向かう。今はとにかく、リリスさんに会いたかった。


「喫茶店? ここに居るのかな?」


 辿り着いた場所は、小洒落た喫茶店。コーヒーの香ばしい香りが漂うそこが、どうやら目的地らしかった。


「いらっしゃいませ。一名様ですか?」

「あぁ、いや、連れがここに居るみたいだから、すぐに帰るよ」

「さようですか。では、どうぞ」


 店員とそんなやり取りをして店を見渡すと、すぐに、その姿を発見することができた。


「リリスさん」

「ル、ルティアス!?」


 どうやら、リリスさんはミーアさんと一緒にこの店に来ていたらしい。僕が後ろから声をかければ、リリスさんはビクリと肩をならして振り返る。


「お待たせ。とりあえず、用事は終わったよ」

「そ、そうですのっ。えっと、では、その」

「はいっ、ごゆっくり!」

「えっ? あっ、いえ、ミーア!?」


 どこかオロオロとしている様子のリリスさんを不思議に思いながら、ミーアさんの言葉で、話は終わったらしいと理解した僕は、リリスさんをエスコートすべく手を差し伸べる。


「さぁ、リリスさん。行こう?」

「う、うぅ……わ、分かりましたわ」


 僕の手を、今までとは違って随分とおそるおそる取ったリリスさん。本格的に、なぜこうなったのか分からない僕は、何か知っていそうなミーアさんへと視線を向けてみる。


「ふふっ、頑張ってくださいね」


 ただ、視線を向けたところで送られたのは、謎の声援だけだった。


「い、行きますわよっ、ルティアス!」

「うん、それじゃあ、リリスさんの相手をしてくれてありがとう。ミーアさん」

「どういたしましてー。あっ、会計は私持ちなので、そのまま帰ってもらって大丈夫ですからねっ」

「重ね重ね、ありがとう。それじゃあね」


 もしかしたら、リリスさんはまたミーアさんの相談に乗っていたのかもしれないと思いながら、僕はなぜか黙ったままのリリスさんを連れて外に出る。


「どうする? もうちょっと観光してから帰る? それとも、もう疲れたかな?」


 言いながらリリスさんの顔を見た僕は、直後にギョッとする。


「リ、リリスさん?」

「な、何ですの?」


 意識的に素っ気ない対応をしているらしいリリスさんは、僕と目を合わせてはくれない。


「その、えっと……何で、顔が赤いのかなぁって……」


 そう、リリスさんの顔は、今まで見たことがないくらいに真っ赤だった。


「っ、何でもありませんわっ!」


 目を泳がせて否定をするリリスさんは、どうみても何でもないなんてことはあり得ない。


(もしかして……意識、されてる?)


 試しに、握った手に軽く力を込めて、しっかりと握り返してみると、リリスさんは面白いくらいにビクゥと肩を震わせて、目を盛大に泳がせる。


(きっかけは、ミーアさん?)


 そうだとするならば、先程の声援の理由も理解できる。もしかしたら、過剰に意識した状態のリリスさんは、僕を避けようとするかもしれないからだ。


「リリスさん。大好き。愛してるよ」

「っ!? い、いいい、いきなり、何なんですのっ!」


 声を震わせて、涙目になるリリスさんは、可愛くて仕方がない。このまま、もうちょっとこのリリスさんを堪能したいところではあったものの、場所が悪い。こんな可愛いリリスさんは、他の奴に見せたくはない。


「ううん、ただ、そう言いたくなっただけ。それじゃあ、さっさと帰ろうか。リリスさんの体調も良くないみたいだし」

「ぁ……そ、そうですわっ。わたくし、体調が良くなくて、赤くなってますのっ! ですから、帰ったら一人にしてくださいまし」


 僕の言葉に乗っかって、リリスさんはどうにか僕と距離を取ろうとする。しかし、詰めが甘い。


「それは大変だ。なら、ちゃんと看病しなきゃだね。大丈夫。美味しいお粥を作ってあげるからね」

「~~~~っ!?」


 墓穴を掘ったことに気づいたらしいリリスさんは、視線を盛大にさ迷わせ、最後にはガックリとうなだれる。


「ほ、本当は、体調は悪くなんてないんですのよ」

「ダメだよリリスさん。そんなこと言っちゃあ。ちゃんと休まないとね」

「い、いえ、ですから、本当に「あぁ、歩くのも辛いかな? 抱き上げるよ?」ふぇ? ひゃあぁぁっ」


 本当は体調が悪いわけじゃないと知っていながら、僕はリリスさんを丸め込む。ここは、思う存分に意識してもらって、僕の想いを伝えるチャンスだと思うのだ。


「リリスさん、転移はできる? できそうにないなら、知り合いに頼んでみるけど」

「だ、大丈夫ですっ! 大丈夫ですから、下ろしてくださいましっ!」

「うん、良かった。それじゃあ、門のところまで走るから、しっかり掴まっててね?」

「へっ? ひゃあぁぁぁあっ!」


 『下ろしてください』の一言は聞かなかったことにして、僕は一気に、出国門へと走って行くのだった。
しおりを挟む
感想 170

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

<完結>溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。 本編完結済み。 続きのお話を、掲載中です。 続きのお話も、完結しました。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。 人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。 それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。 嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。 二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。 するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー

処理中です...