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その悪魔は不意に…(一般老女の場合)
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(ご注意:異常な死に方を表現したシーンがあります)
快晴で蒸し暑かった日曜日の夜……
「この年になると、やっぱり、つらいわね……。特にこの時期は……」
千加は首の汗をハンカチで拭きながらつぶやいた。
千加はその日、和歌山県W市の親戚で行われた法事に出ていたのだ。
白髪のせいか黒い喪服が妙に美しく見える、小太り気味の七十六歳だった。
W市からの特急電車をS市で降りると、徒歩五分にある地下道口に入った。
地下鉄のE駅は始発になるため、彼女はその駅から終電に乗ることにしたからだった。
しかし千加は、あまり地下鉄は好きではなかった。
窓から景色が見えないからだ。
だが、その日はおそくなったので仕方なく地下鉄を利用することにした。
降りる終点が自宅に近く、徒歩で帰宅できるからだ。
とりあえず中間の車両に乗ると、他の乗客は皆無だった。
最前列の座席に座ると、特に何もすることが無かったので帯をゆるめて目を閉じた。
(本当に今日は疲れたな……。知らない顔ばかりで……。どんどん死んでいくものね……)
やがて車内アナウンスの後、地下鉄は発車した。
(もう、こんな法事に出るのは、やめようかな……)
地下鉄特有の騒音が、千加にとっては耳ざわりだった。
(あら? もうそろそろ次の駅のはずなのに……おかしいわね……?)
千加が目を開けてみると車両は疾走中で、周りには立っている客が何人かいた。
その中には、十年前に他界した主人や数年前に逝った兄の姿があった。
「あら? どういうことなの? あたし夢を見てるのかしら……?」
千加は立つと、主人に近付こうとした。
すると横から黒いドレスを着た少女が現れた。
銀色の髪が長く、キュートで可愛い少女だった。
「おばぁちゃん、見付けたよ」
「あら、あなたは?」
少女に近付こうとすると、千加が着ている喪服の袖を引く者がいた。
振り向くと、それは二十年ほど前に天国へ昇った母だった。
「お母さん……。あたしを迎えにきたんですか?」
母は悲しそうな顔をして手をひっこめ、姿を消した。
その後ろの窓から、なぜか昼間の景色が見えた。
「あら? いつのまに地上に出たのかしら……? それに、なんで昼間なの……?」
しかし、その景色はちょっと変わっていて、地上より高所を走っている感じだった。
窓外を見ると、列車は鉄橋状の線路を走っており、その前方には黒い霧のようなものがあった。
千加の傍に現れた少女が笑顔で、
「おばぁちゃん、もうすぐだよ」
「えっ、何が?」
間もなく列車が、その霧に入ると、周りが真っ暗になった。
ギャー!
千加の絶叫がした直後、列車は霧から出た。
千加の頭は列車の天井に突き刺さり、首から上が列車の屋根に出ていた。
その屋根に笑顔の少女が現れて、
「おばぁちゃん、一緒に遊ぼうね」
再び闇が訪れて地下鉄の照明が屋根を照らした時、千加の首は消えていた。
地下鉄のW駅から発車した終電が、約五分後に次のE駅に着いた時、乗り込んだ数人の客は、愕然として悲鳴を上げた。
ウワー!!
その座席にあったのは、首の無い喪服の死体だったのだ。
駅員からの通報で駆け付けた刑事や鑑識課員たちは、不思議で訳が分からなかった。
その一つは、切断された首がどこにも見当たらなかった事。
もう一つは、その死体も含めて、周りに血痕がまったく無かった事。
最後の一つは、ドアからその座席まで、その死体のものと思われるゾウリの跡がクッキリと残っていた事だった。
快晴で蒸し暑かった日曜日の夜……
「この年になると、やっぱり、つらいわね……。特にこの時期は……」
千加は首の汗をハンカチで拭きながらつぶやいた。
千加はその日、和歌山県W市の親戚で行われた法事に出ていたのだ。
白髪のせいか黒い喪服が妙に美しく見える、小太り気味の七十六歳だった。
W市からの特急電車をS市で降りると、徒歩五分にある地下道口に入った。
地下鉄のE駅は始発になるため、彼女はその駅から終電に乗ることにしたからだった。
しかし千加は、あまり地下鉄は好きではなかった。
窓から景色が見えないからだ。
だが、その日はおそくなったので仕方なく地下鉄を利用することにした。
降りる終点が自宅に近く、徒歩で帰宅できるからだ。
とりあえず中間の車両に乗ると、他の乗客は皆無だった。
最前列の座席に座ると、特に何もすることが無かったので帯をゆるめて目を閉じた。
(本当に今日は疲れたな……。知らない顔ばかりで……。どんどん死んでいくものね……)
やがて車内アナウンスの後、地下鉄は発車した。
(もう、こんな法事に出るのは、やめようかな……)
地下鉄特有の騒音が、千加にとっては耳ざわりだった。
(あら? もうそろそろ次の駅のはずなのに……おかしいわね……?)
千加が目を開けてみると車両は疾走中で、周りには立っている客が何人かいた。
その中には、十年前に他界した主人や数年前に逝った兄の姿があった。
「あら? どういうことなの? あたし夢を見てるのかしら……?」
千加は立つと、主人に近付こうとした。
すると横から黒いドレスを着た少女が現れた。
銀色の髪が長く、キュートで可愛い少女だった。
「おばぁちゃん、見付けたよ」
「あら、あなたは?」
少女に近付こうとすると、千加が着ている喪服の袖を引く者がいた。
振り向くと、それは二十年ほど前に天国へ昇った母だった。
「お母さん……。あたしを迎えにきたんですか?」
母は悲しそうな顔をして手をひっこめ、姿を消した。
その後ろの窓から、なぜか昼間の景色が見えた。
「あら? いつのまに地上に出たのかしら……? それに、なんで昼間なの……?」
しかし、その景色はちょっと変わっていて、地上より高所を走っている感じだった。
窓外を見ると、列車は鉄橋状の線路を走っており、その前方には黒い霧のようなものがあった。
千加の傍に現れた少女が笑顔で、
「おばぁちゃん、もうすぐだよ」
「えっ、何が?」
間もなく列車が、その霧に入ると、周りが真っ暗になった。
ギャー!
千加の絶叫がした直後、列車は霧から出た。
千加の頭は列車の天井に突き刺さり、首から上が列車の屋根に出ていた。
その屋根に笑顔の少女が現れて、
「おばぁちゃん、一緒に遊ぼうね」
再び闇が訪れて地下鉄の照明が屋根を照らした時、千加の首は消えていた。
地下鉄のW駅から発車した終電が、約五分後に次のE駅に着いた時、乗り込んだ数人の客は、愕然として悲鳴を上げた。
ウワー!!
その座席にあったのは、首の無い喪服の死体だったのだ。
駅員からの通報で駆け付けた刑事や鑑識課員たちは、不思議で訳が分からなかった。
その一つは、切断された首がどこにも見当たらなかった事。
もう一つは、その死体も含めて、周りに血痕がまったく無かった事。
最後の一つは、ドアからその座席まで、その死体のものと思われるゾウリの跡がクッキリと残っていた事だった。
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