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その悪魔は不意に…(ホテルのホームキーパーの場合)
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(ご注意:異常な死に方を表現したシーンがあります)
コスモスが咲く中、まだまだ残暑がつづく金曜日の朝だった……
神戸で五本の指に入る十階建のDホテルで、奈津子はホームキーパーをしていた。
そんな奈津子は独り身で、神戸に近いN区のマンションで暮らしていた。
毎朝、K電鉄のS駅から終点まで乗り、Dホテルへと通勤していたが、
(きょうは満室になるかしら……)
と、いつも思いながらDホテルの通用口に入るのだった。
清掃係が一通りの作業を終えた後で、事務所と連絡を取りあいながら、空室のチェックをしていくのが、彼女の仕事だった。
この仕事に就いて四年になるが、空いた客室を見回り、
(いつかは、このホテルで新婚初夜を……)
などと思いながら予約リストを確認しつつ、『清掃完了』のプレートが下がっている客室のチェックを、一室一室していくのだ。
このホテルの場合、一階には企業関係の事務所なども入っているので、奈津子の担当は二階からということになる。
部屋数が多いため、時には清掃係と出くわすこともあり、色々な部屋の情報を聞くことも多かった。
そんな話の中には、いわゆるヤバイ部屋の情報もあり、九階のある部屋かがそれに該当するという。
したがって、清掃係のスタッフたちも、
「その部屋の作業は手早くするのよ」
と笑いながら話していた。
そのヤバイ部屋は、九階の最も奥に位置している、スイートルームの一つだった。
ちなみに各階には、二ヶ所のスイートルームがあった。
奈津子が、九階に到達するのは四時頃になり、静まりかえった薄暗い廊下を、その部屋に向って行く心境はそれほど良いものではなかった。
その日も奈津子は、九階のその客室の前に立つと、ノックしてからマスターキーを使い、
「失礼しまーす」
カーテンが閉めてあるため室内は暗く、気のせいかイヤな空気感があった。
照明をつけてからカーテンを開け、窓を半分開けると、すがすがしい風が入ってきた。
その時、そばで気配を感じて振り向くと、笑顔の少女がいた。
「おねぇちゃん、見付けたー」
「えっ、あー、お客様ですか……。この部屋にお入りになっては困りますので……」
すると少女は、バスルームに駆け込んだ。
「あっ、ちょっとお客様……」
奈津子は後を追って、バスルームに入った。が、少女はいなかった。
「えっ、どうして……? まさか、幽霊……?」
バスルームを出て呆然とした。
さっき開けたはずのカーテンと窓が無くなっていて、ただの壁になっていたからだ。
「えっ……どういう事?」
彼女は悪寒を感じながら、ドアの方を向いて再び呆然とした。
ドアも無くなり、ただの壁になっていたのだ。
「ど、どういう事なの……?」
震えを感じながらベッドルームに入った。
そこにはカーテンがあったので、奈津子がドキドキしながらカーテンを開けると、ちゃんと窓もあった。
が、外は夜で美しい神戸の夜景が広がっていた。
「まぁ、美しい……って、そんな……バカな……」
あまりの事に後ろへ倒れた奈津子の体を、ベッドが受け止めた。
奈津子はヨロヨロと立ち上がり、ベッドルームから出たところで、ストーンと落ちた。
「えっ、何でこんな段差が……?」
よく見ると、そばに照明やスプリンクラーがあった。
そして見上げると、天井にソファーやテーブルがあった。
「な、何これ何これ……?」
必死の思いで段差を上がってベッドルームに戻ると、窓を開けた。
すると、そのベランダに、さっきの少女が現れて、
「おねぇちゃん、もうすぐだよ」
「あ、あなたは、いったい……?」
ふと気付くと、奈津子はベランダに出ていた。
「って……このホテルの部屋にベランダは……」
次の瞬間、ベランダは消えて彼女は夜の闇に落ちていった。
キャー!
が、なぜか途中で上昇を始めて屋上を越えて更に上昇し、打ち上げ花火のように破裂した。
ギャー!
それを屋上から見ていた少女は、
「おねぇちゃん、一緒に遊ぼうね」
翌日、Dホテルの正面には数台のパトカーと救急車が到着し、大騒動となった。
九階の例の部屋で、奈津子のバラバラ死体が発見されたからだ。
そのバラバラになった遺体の半分以上は、燃えてつぶれていた。
なぜ奈津子と分かったかというと、胸のネームプレートがかろうじて残っていたからだった。
刑事と共に検視をした鑑識課のスタッフは、首をかしげながらつぶやいた。
「室内なのに、なぜ……? まるで爆発する爆弾でも抱いたようだ……」
コスモスが咲く中、まだまだ残暑がつづく金曜日の朝だった……
神戸で五本の指に入る十階建のDホテルで、奈津子はホームキーパーをしていた。
そんな奈津子は独り身で、神戸に近いN区のマンションで暮らしていた。
毎朝、K電鉄のS駅から終点まで乗り、Dホテルへと通勤していたが、
(きょうは満室になるかしら……)
と、いつも思いながらDホテルの通用口に入るのだった。
清掃係が一通りの作業を終えた後で、事務所と連絡を取りあいながら、空室のチェックをしていくのが、彼女の仕事だった。
この仕事に就いて四年になるが、空いた客室を見回り、
(いつかは、このホテルで新婚初夜を……)
などと思いながら予約リストを確認しつつ、『清掃完了』のプレートが下がっている客室のチェックを、一室一室していくのだ。
このホテルの場合、一階には企業関係の事務所なども入っているので、奈津子の担当は二階からということになる。
部屋数が多いため、時には清掃係と出くわすこともあり、色々な部屋の情報を聞くことも多かった。
そんな話の中には、いわゆるヤバイ部屋の情報もあり、九階のある部屋かがそれに該当するという。
したがって、清掃係のスタッフたちも、
「その部屋の作業は手早くするのよ」
と笑いながら話していた。
そのヤバイ部屋は、九階の最も奥に位置している、スイートルームの一つだった。
ちなみに各階には、二ヶ所のスイートルームがあった。
奈津子が、九階に到達するのは四時頃になり、静まりかえった薄暗い廊下を、その部屋に向って行く心境はそれほど良いものではなかった。
その日も奈津子は、九階のその客室の前に立つと、ノックしてからマスターキーを使い、
「失礼しまーす」
カーテンが閉めてあるため室内は暗く、気のせいかイヤな空気感があった。
照明をつけてからカーテンを開け、窓を半分開けると、すがすがしい風が入ってきた。
その時、そばで気配を感じて振り向くと、笑顔の少女がいた。
「おねぇちゃん、見付けたー」
「えっ、あー、お客様ですか……。この部屋にお入りになっては困りますので……」
すると少女は、バスルームに駆け込んだ。
「あっ、ちょっとお客様……」
奈津子は後を追って、バスルームに入った。が、少女はいなかった。
「えっ、どうして……? まさか、幽霊……?」
バスルームを出て呆然とした。
さっき開けたはずのカーテンと窓が無くなっていて、ただの壁になっていたからだ。
「えっ……どういう事?」
彼女は悪寒を感じながら、ドアの方を向いて再び呆然とした。
ドアも無くなり、ただの壁になっていたのだ。
「ど、どういう事なの……?」
震えを感じながらベッドルームに入った。
そこにはカーテンがあったので、奈津子がドキドキしながらカーテンを開けると、ちゃんと窓もあった。
が、外は夜で美しい神戸の夜景が広がっていた。
「まぁ、美しい……って、そんな……バカな……」
あまりの事に後ろへ倒れた奈津子の体を、ベッドが受け止めた。
奈津子はヨロヨロと立ち上がり、ベッドルームから出たところで、ストーンと落ちた。
「えっ、何でこんな段差が……?」
よく見ると、そばに照明やスプリンクラーがあった。
そして見上げると、天井にソファーやテーブルがあった。
「な、何これ何これ……?」
必死の思いで段差を上がってベッドルームに戻ると、窓を開けた。
すると、そのベランダに、さっきの少女が現れて、
「おねぇちゃん、もうすぐだよ」
「あ、あなたは、いったい……?」
ふと気付くと、奈津子はベランダに出ていた。
「って……このホテルの部屋にベランダは……」
次の瞬間、ベランダは消えて彼女は夜の闇に落ちていった。
キャー!
が、なぜか途中で上昇を始めて屋上を越えて更に上昇し、打ち上げ花火のように破裂した。
ギャー!
それを屋上から見ていた少女は、
「おねぇちゃん、一緒に遊ぼうね」
翌日、Dホテルの正面には数台のパトカーと救急車が到着し、大騒動となった。
九階の例の部屋で、奈津子のバラバラ死体が発見されたからだ。
そのバラバラになった遺体の半分以上は、燃えてつぶれていた。
なぜ奈津子と分かったかというと、胸のネームプレートがかろうじて残っていたからだった。
刑事と共に検視をした鑑識課のスタッフは、首をかしげながらつぶやいた。
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