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03 ヤンデレ第一形態
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記憶をなくしている事実を、納得がいくように説明することが、こんなに難しいとは。
でもとにかくもう一度、ちゃんと説明してみよう。
そう決めて、ベッドの上に正座をする。
「僕も土下座より正座したほうがいい?」
「真面目に話を聞いてくれるなら、どんな座り方でもいいです」
「じゃあ僕もアデリーヌと同じ正座にする」
キングサイズのベッドの上で、向かい合って正座をする私と彼。
さっきまで悲壮な顔で土下座していた彼は、私の顔を見つめてうれしそうにニコニコしている。
この人の身にまとう雰囲気って、なんかやりづらい。
笑いかけられると、心の中がもやもやするというか……。
なんでこんな感情になるのだろう?
いや、それよりも今は説明だ。
「今まで二十三回、あなたのことを忘れたふりをしていたとしても、これは二十四回目じゃないです。そもそも私、あなたにたいして怒っていないし。記憶をなくす前はもしかしたら怒っていたかもしれないけれど。今の私はあなたにたいして、笑顔が嘘くさい美形だなぐらいの感情しか持っていません」
「……! アデリーヌが僕のことを美形って言ってくれた!! ねえ、アデリーヌ。僕のこの顔好き? もっと愛でていいよ! もっと近くで!」
「いま、そこには食いつかなくていいから! あ、ちょ、ちょっと! 顔近い! 唇の接触事故が起きるでしょ! 身を乗り出すのやめて!!」
正座のまま、吐息が届くくらいの距離に迫ってきた彼の顔面を、手のひらで押し返す。
「と、とにかく! 先ほどの話を踏まえたうえで、改めてきっぱり言います。私は完全に完璧な記憶喪失なのです!」
「完全に完璧な記憶喪失……」
「そう! 私は記憶喪失です!」
拳を握りしめて、宣言する。
どうだ、ここまで断言すればいい加減信じる気になるでしょう!
ちょっとすっきりした。
言ってやったぞ感。
普通、記憶喪失になったら、もっとオロオロしたり、取り乱したりするもののはずだけれど。
私は結構たくましい性分をしているらしい。
「え……。……本当に何も覚えていないの?」
「そう言ってます」
「ぼ、僕のことだけ覚えてるとか!」
「自分のことも覚えてないのに? ありえないわ」
「うっすらでもいいよ!」
「うっすらも覚えていないわよ……!」
「じゃあ覚えてないけど、見つめ合うと胸が高鳴って、『私にとってこの人が特別だったとわかる』的な?」
何言ってんだこいつという顔になる。
「うわ……。本当だ。本気のときの表情だもんね、それ……。でもそんな……アデリーヌが記憶喪失……? ……まずい。最悪だ。そんなのってないよ……」
ぶつぶつ独り言のように呟く彼の目が、だんだんと虚ろなものに変わっていく。
「だってせっかくここまできたのに……。それも奇跡的な結果なのに。覚えてないって……。また最初からやり直し? ……よし、わかった。とりあえず既成事実を作ろう」
「ちょっと!!!!! 闇の声が全部もれてるのよ!」
ってなんで、にじりよってくるの……!?
薄ら笑いを浮かべるのもやめて欲しい。
身の危険を感じて慌てて後ずされば、ベッドの縁に背中がトンとぶつかってしまった。
でもとにかくもう一度、ちゃんと説明してみよう。
そう決めて、ベッドの上に正座をする。
「僕も土下座より正座したほうがいい?」
「真面目に話を聞いてくれるなら、どんな座り方でもいいです」
「じゃあ僕もアデリーヌと同じ正座にする」
キングサイズのベッドの上で、向かい合って正座をする私と彼。
さっきまで悲壮な顔で土下座していた彼は、私の顔を見つめてうれしそうにニコニコしている。
この人の身にまとう雰囲気って、なんかやりづらい。
笑いかけられると、心の中がもやもやするというか……。
なんでこんな感情になるのだろう?
いや、それよりも今は説明だ。
「今まで二十三回、あなたのことを忘れたふりをしていたとしても、これは二十四回目じゃないです。そもそも私、あなたにたいして怒っていないし。記憶をなくす前はもしかしたら怒っていたかもしれないけれど。今の私はあなたにたいして、笑顔が嘘くさい美形だなぐらいの感情しか持っていません」
「……! アデリーヌが僕のことを美形って言ってくれた!! ねえ、アデリーヌ。僕のこの顔好き? もっと愛でていいよ! もっと近くで!」
「いま、そこには食いつかなくていいから! あ、ちょ、ちょっと! 顔近い! 唇の接触事故が起きるでしょ! 身を乗り出すのやめて!!」
正座のまま、吐息が届くくらいの距離に迫ってきた彼の顔面を、手のひらで押し返す。
「と、とにかく! 先ほどの話を踏まえたうえで、改めてきっぱり言います。私は完全に完璧な記憶喪失なのです!」
「完全に完璧な記憶喪失……」
「そう! 私は記憶喪失です!」
拳を握りしめて、宣言する。
どうだ、ここまで断言すればいい加減信じる気になるでしょう!
ちょっとすっきりした。
言ってやったぞ感。
普通、記憶喪失になったら、もっとオロオロしたり、取り乱したりするもののはずだけれど。
私は結構たくましい性分をしているらしい。
「え……。……本当に何も覚えていないの?」
「そう言ってます」
「ぼ、僕のことだけ覚えてるとか!」
「自分のことも覚えてないのに? ありえないわ」
「うっすらでもいいよ!」
「うっすらも覚えていないわよ……!」
「じゃあ覚えてないけど、見つめ合うと胸が高鳴って、『私にとってこの人が特別だったとわかる』的な?」
何言ってんだこいつという顔になる。
「うわ……。本当だ。本気のときの表情だもんね、それ……。でもそんな……アデリーヌが記憶喪失……? ……まずい。最悪だ。そんなのってないよ……」
ぶつぶつ独り言のように呟く彼の目が、だんだんと虚ろなものに変わっていく。
「だってせっかくここまできたのに……。それも奇跡的な結果なのに。覚えてないって……。また最初からやり直し? ……よし、わかった。とりあえず既成事実を作ろう」
「ちょっと!!!!! 闇の声が全部もれてるのよ!」
ってなんで、にじりよってくるの……!?
薄ら笑いを浮かべるのもやめて欲しい。
身の危険を感じて慌てて後ずされば、ベッドの縁に背中がトンとぶつかってしまった。
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