ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第三章 戦争編

第56話 メグの家を作る!

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 気絶したミレイを背負って、メグと一緒に家の近所を歩く。
 なんか昨日も同じような事をしていた気がする。
 ミレイはよく気絶する女である。

 そういえば、メグもミレイも今日は村娘のような服を着ていた。
 昨日は、ダボダボのローブを着ていたはずだが、セレナに貰ったらしい。
 地味だけど生地はしっかりした服だった。
 麻地のシンプルなロングスカートとシャツに、皮のコルセットみたいなのをつけている。
 メグとミレイで比べるとコルセットの色が少し違った。
 シャツは胸元が程よく開いていて、少しエロい。
 メグはともかくミレイは谷間が見える。
 誰が選んだのか知らないがグッジョブである。

 とりあえず、森ではなく廃村の中心部に向かうことにした。
 廃村の真ん中には井戸がある。
 生活するには井戸の近くの方がいいと思ったのだ。

 俺の家からだいたい10メートルくらい離れた場所にちょうどいい空き地があった。
 場所は、大体この辺だろうか。
 ミレイを下ろして、近くの木に背中をもたれさせるようにして寝かせておく。
 まずはメグの家を建てようと思う。

「コウさま、この空き地がどうかしたんですか?」

 そういえば、メグに何も説明していなかった。

「お前の家をここにしようかと思ってな」

 空き地は道沿いに10メートル位ある。
 一軒家を建てるには十分だろう。

「え……」

 なぜかメグが青ざめている。
 何か変な事を言っただろうか。

「コウさま……わたしは奴隷なのでワガママは言いませんけど、せめて屋根のある場所に置いてほしいです」

 メグはしょぼんと俯いている。
 一体、なんの勘違いをしているのか。
 空き地に住めと言われたと思っているのだろうか。
 どんだけ俺を鬼畜だと思っているんだ。

「前、わたしを買ってくれたおじさんは、最初は馬小屋に置いてくれたんですけど、抱く時に馬糞の臭がするって言われて、物置に移してくれました。なので、コウさまも物置とかでわたしを飼った方が、伽をする時に汚れなくていいと思います」

 メグはそんな重いことを言って、俺の服の裾をギュッと掴んだ。
 それにしても、おじさんはクソ野郎だな。
 いつかぶん殴ってやりたい。
 とりあえず、メグの頭をぽんぽん撫でておく。

 なんか今のメグの言葉を聞いて燃えてきた。
 物凄い家を建ててやろうと思う。
 匠の底力を見せてやるのだ。

「ちょっと離れていろ」

 メグを遠ざけて、地面に手をついた。
 まずは、セレナの別荘と同じように基礎工事からだ。

 道沿いに幅5メートル、奥行き10メートルくらいの長方形をイメージして、《土形成》で穴を掘る。

「はわっ!」

 突然、開いた穴にメグが驚いていた。

 穴を埋めるように、両手から《石形成》で小石を流し込んでいく。
 穴は30分ほどで、小石に埋め尽くされた。
 後は、結構な重さの石を《石形成》で作って、小石の上からドスンドスン落として踏み固めていった。
 これで基礎工事は終わりだ。
 基礎工事をちゃんとやらないと家が地盤沈下してしまうのだ。

 メグは俺が魔法で基礎工事している姿を、キラキラした目で見つめていた。
 魔法を見るのが好きなのだろうか。

 続いて、基礎の上に家の土台となる部分を《石形成》で作った。
 高さは、50センチくらいで良いだろう。
 土台には、何箇所か通気口をつけておく。
 ここまではセレナの別荘と同じ手順だ。

 問題は、この後だ。
 どんな家が良いだろうか。

 俺の家と同じ感じではつまらない。
 何よりも、常に進化を続ける俺の匠としてのプライドが許さない。
 家。
 家ねえ。
 ふと実家が思い浮かんだ。
 俺の実家は父親が苦労して建てた普通の一軒家だった。
 築20年くらいだっただろうか。
 広さはだいたい基礎工事した場所と同じくらいで、2階建てだった。
 俺の実家のような現代的な日本家屋はどうだろうか。

 ふと近くにある廃屋を眺めてみる。
 廃屋はどこか牧歌的で中世感ばりばりだった。
 この風景に現代家屋は似合わない。
 ただ、俺としては少年期を過ごした実家はイメージしやすかった。
 魔法で大事なのはイメージだ。
 魔法にも慣れて魔力も上がってきた今の俺なら作れるような気がする。

「……コウさま?」

 傍でポカンとしているメグを見つめる。
 急に見慣れない近代家屋に住めと言われたらメグは驚くだろうか。
 というか、喜んでくれるだろうか。
 詳しいことはわからないけど、中世の家よりも現代の家の方が機能的に優れているはずだ。
 そんな事を考えていたら、メグがおどおどしだした。

「……コウさま、まじめな顔で見つめられると恥ずかしいです。ドキドキしちゃいます」

 メグが顔を赤らめて目を反らす。
 ちょっとクラっとくるくらい可愛かった。
 なので、頑張って近代家屋を建ててやろうと決意した。

 とりあえずギリギリ魔力枯渇に陥らない、ほぼ全魔力を両手に集中させる。
 作ろうとしているものの複雑さも大きさも今までで最大だ。
 一回で作りきれるか心配だ。

 両手に纏わりつくように青い稲妻が迸る。
 最近わかってきたが、この稲妻は魔力が可視化したものだ。
 なんかあの赤い筋が出てから、更に魔力の流れがよく分かるようになった気がする。
 これなら以前より魔力のコントロールがし易い。
 今ならどんなに複雑なものでも作れそうだ。

 一気に魔力を開放する。

 先程作った石の土台に沿うように。
 メキメキと《土形成》が発動していく。

 まずは外壁。
 実家を思い出して、精密に《土形成》で再現していく。
 土台から生えるように壁が生成されていく。
 触ると少しデコボコしていた壁の質感まで再現してみる。
 2階分の壁が完成した。
 そのまま屋根を作る。
 ただ見た目的にかっこいいからつけていただけに思われる雪止めまで忠実に作ってみた。
 あとは内装だ。
 実家に帰ったときを思い出してじっくりと作っていく。
 玄関、リビング、ダイニング、キッチン、風呂場、トイレ、階段、寝室、子供部屋、ベランダまで。
 そして、魔力が途切れた。

「……ふう」

 この辺で少し休憩だ。
 というか、子供部屋まで作る必要があったのか、少し疑問だ。
 ノリで作ってしまった。

 目の前には、近代家屋が出現していた。
 色は土魔法で作ったので薄い茶色だが。
 その姿は、俺の実家そのものだ。
 不意に懐かしさが込み上げてくる。
 親父もお袋も元気だろうか。

 ちなみに、ノリコさんに怒られそうなので窓ガラスは作っていない。
 窓だけは作っておいたので、今はぽっかりと穴を開けただけの状態だ。
 あと玄関とかのドアも作っていない。
 なんというか開閉するギミックをどうやって再現しようか迷ったのだ。

「……こ、コウさま」

 メグが口をあんぐりと開けたまま怯えている。
 狙い通り驚いてくれたようだが、少しやりすぎてしまっただろうか。

「な、なぜ突然、お城があらわれたのでしょうか……」

 ふむ。お城か。
 メグにはそう見えるのだろうか。
 まあ、2階建てだしな。
 廃屋を見る限り、この辺の家は平屋が主流っぽい。
 4件の廃屋しかサンプルがないので、かなりいい加減な予測だが。

「さっき言っただろう? メグの家を作ってみたんだが、どうだ?」

「うぇぇ!? いえ? いえってなんでしたっけ?」

 メグはかなり混乱している。

「落ち着け、深呼吸しろ」

 言われるがままにメグがすーはーすーはーと呼吸する。

「……そ、それで、家? 家???」

 ダメだ。
 まだ混乱している。
 どうすればこのバッドステータス回復するんだろう。

「はう」

 とりあえず、メグを抱きしめてみた。
 心臓の鼓動を聞かせれば、人間は落ち着くってテレビで見たことがある。
 背の低いメグは抱きしめると、ちょうど俺の胸の高さに顔が来るのだ。
 決して動揺するメグが可愛かったので、思わず抱きしめてしまったわけではない。
 この世界にお巡りさんがいなくてラッキーとか思っていない。

「…………」

 メグは大人しく俺に抱きしめられている。
 とりあえず、メグの頭の後ろを優しく撫で続ける。


「……落ち着いたか?」

 しばらくしてから、メグを離してみる。
 メグの顔は心配になるくらい真赤に染まっていて、目もとろんとして、口も半開きだった。
 どうした。

「……すごいです。わたし男の人に何度も抱かれてるのに」

 なんだろう。
 イク寸前みたいなメグの表情を見ていると、まるで俺が卑猥な事をしたみたいな気になってくる。
 俺は法に触れるような事は何もしていないのに。
 ちなみに俺はそんなに法律に詳しくないが、常識の範疇でだ。
 常識的にはセーフだよね?

「どきどきして心臓が口から飛び出しそうです」

 メグは呼吸を荒げながら、小さな胸をギュッと掴んでいる。
 というか心臓が飛び出てしまったら大変だ。
 とりあえず、触って心臓の無事を確かめねば。
 俺は少女の胸に手を伸ばす。
 そして、咄嗟に踏みとどまった。
 危ない。
 ついルーナにしているみたいなノリでさらっとメグにセクハラをしてしまうところだった。
 ちなみにルーナだったら今頃、生で揉みしだいている。
 もう少しでロリコンの仲間入りをするところだった。
 いや、メグは16歳とか言っていたからロリコンではないのだろうか。
 というか何歳からロリコンなのだろうか。
 深く考えるとダークサイドに堕ちそうなので止めておく。

「……あのう、もう一回ギュってしてくれませんか?」

 メグは目をうるうるさせながら、俺に向かって両手を開く。
 まったく、そんな風に頼まれたら断れないじゃないか。
 仕方なくメグを再び包容する。
 決して、意外と抱き心地が良かったとか思っているわけではない。

「はうう、ひきしまった筋肉すごいです」

 メグは抱きつきながら、俺の胸に顔をすりすりさせている。
 最近、脳筋化に悩んでいたのでちょっぴり傷ついた。



 そんなこんなでメグといちゃついていたらいい感じにMPが回復してきた。
 家作りを再開させようと思う。
 まずは玄関のドアをなんとかしようと思う。
 ドアを作るのは簡単だ。
 ただ蝶番の部分がどうにも上手く行かない気がする。
 圧縮した土壁は結構な硬さだが、何度も開け閉めするドアの蝶番には耐えられない気がする。
 土魔法で作った剣は、結構簡単に壊れるのだ。

 少し考えてみて、俺はある事に気づいた。
 土魔法レベル3で覚えた《石形成》。
 今までは小石を生成したり、家の土台の生コン代わりに使ったりしていた。
 ただ、土を圧縮して硬い土壁を作ったように、石を圧縮すれば物凄く硬い何かが作れるのではないかと気づいたのだ。
 圧縮土壁と《石形成》で作った石だと、圧縮土壁のほうが少し硬いかもくらいだった。
 オーバーロードさせて《石形成》を発動させれば、きっと物凄く硬い石が出来るはずだ。
 というか、もっと早く気付けよと思った。

 早速、実験してみる。

 まずは手の平に握り拳くらいの大きさの石を生成する。
 そして、オーバーロードを発動。
 石をギューっと圧縮する。
 バチバチと石を稲妻が押しつぶしていく。

 そして、石は豆粒くらいにまで圧縮された。
 小さくなった石はポトンと地面に落ちた。
 それは真っ黒に変色していて、僅かな白煙を上げている。

 とりあえず、拾ってみると、まるで宝石の原石のような輝きを帯びている。
 黒曜石ってこんな感じなのだろうか。
 物凄く硬そうだ。

「うわあ、すごくきれいです」

 メグが目を輝かせていたのであげることにした。

「いいんですか? ありがとうございます! 一生の宝ものにします! 墓までもっていきます!」

 喜んでくれたので嬉しいが、墓まで持っていく必要はない。

 とりあえず、俺は石を圧縮した黒い何かを黒曜石と名付けることにした。
 本物の黒曜石を見たことはないし、黒曜石がどうやって作られるのかはわからないけど、語感的にかっこいい気がしたのだ。
 いつか本物の黒曜石が出てきたら改名すれば良いのである。

 早速、黒曜石で蝶番を作ってみる事にする。
 蝶番の原理はわかっているのであっさりと完成した。
 というか、この黒曜石。
 作るのに結構な魔力を使う。
 圧縮土の10倍くらいだ。
 見た目がかっこいいので、全面黒曜石で我が家を改築しようかと思ったけど、今の魔力では厳しそうだ。

 次に《土形成》でドアを作り、黒曜石の蝶番で玄関と繋げてみる。
 ドアはピッタリ嵌った。
 そこで、ノブが無いじゃん! と気づいたのでノブのギミックも黒曜石で作ってみた。
 ノブを捻るとガチャリとドアが開くやつである。
 これも原理は判っていたが、内部構造とかどうなっているんだろうと思っていた。
 しかし、イメージしてみるとあっさりそれっぽいのが出来た。
 魔法が便利すぎてヤバイ。
 というか、このノリでパソコンとかも作れちゃう気がする。
 多分禁忌に触れて、ノリコさん激おこだからやらないけど。

 完成した玄関のドアを開けてみる。
 ギギーと物凄く何かが軋む音がするが、問題なく開く。
 軋む音がするのは、蝶番とかの可動部の摩擦が大きいからだろう。
 蝶番に手を当てて、再びオーバーロードさせた《石形成》を発動させる。
 可動部の摩擦係数がゼロになるようにイメージしてみた。
 完全にゼロにはならなかったようだが、さっきよりもスムーズにドアを開けるようになった。

「メグ、ちょっとこのドアを開けてみてくれ」

 実際の実家のドアよりも少し重い気がしたので、メグにも開けられるか試してみる。

「ここをひねればいいですか?」

 メグはドアを見るのは初めてだったようで、おっかなびっくりしながらもドアをガチャガチャと捻っている。
 ドアはメグにも問題なく開けられるようだ。

 これでメグの家は大方完成だ。

 後はメグと一緒に内装をカスタマイズしていこうと思う。
 ガラスのない窓は、最低限の採光と風通しを考えて小さくしていけばいいだろう。

「じゃあ、メグ、中に入ろうか?」

「は、はい」

 戸惑うメグの手を引いて玄関のドアを開ける。
 それにしても、このドア。
 我ながらいい感じだ。
 これは我が家にも作ろうと思う。

 靴を脱いで家に上がる。
 本当に、実家に帰ってきたみたいな錯覚に陥る。
 懐かしい。

 後ろでメグが慌てながら靴を脱いでいた。
 そういえば、こっちは土足文化だった。
 まあ土足のままでもいいのだが、せっかく玄関を作ったのだ。
 今くらいは靴を脱いでもいいだろう。
 メグの家なので、あとは彼女の自由でいいけど。

 家に上がって右側がリビングだ。
 8畳位だろうか。
 確か実家はここにソファーとテレビがあった。

「ここがリビングだ」

「りびんぐ?」

「なんというかくつろぐ部屋かな」

「……はあ」

 メグはいまいちピンときていないようだった。
 家具も何もないからだろうか。
 テレビは無理でもソファーくらい置いておきたい。
 さすがにソファーは土魔法では作れないだろう。
 あとで裁縫スキルで作れないかルーナに聞いて見ようと思う。
 というか、うちにもソファー欲しい。

 とりあえず、ちゃぶ台くらいは作っておこうと思って、土魔法で作ってみた。

「はわ!」

 突然、出現したちゃぶ台にメグが驚いている。
 メグのリアクションはいちいち大げさで可愛い。

「それでこっちがご飯を食べる部屋だ」

 リビングの奥はダイニングになっている。
 ダイニングと言っても多分通じないので、はじめから言い換えている。
 ダイニングにも、土魔法でテーブルと椅子を4つ作った。

 とりあえず、作ったばかりの椅子にメグと一緒に腰掛けてみる。
 強度的には問題なさそうだ。

 ダイニングにはリビング越しにガラスのない窓が見えた。
 そういえば、窓をなんとかしないと。
 窓の大きさは開放感があって結構いい感じだった。
 外の景色もよく見える。
 ただ少し寒い。
 半分くらいに塞いでおいた。

 あと防寒対策として、うちと同じような暖炉をリビングに作る。
 後でスライムオイルをいくつかお裾分けしようと思う。

「次はキッチンかな」

「あ、あのコウさま!」

 キッチンに向かおうとしたらメグに呼び止められた。
 メグはなんだか不安そうな顔をしている。
 そういえば、家の中に入ってからメグは全然嬉しそうじゃなかった。
 さっき抱きしめてた時のほうが何倍も楽しそうだった。
 何か気に入らない所があったのだろうか。
 それならば言って欲しい。
 匠として全力で応えるので。

「……わたしバカだから、さっきからこのお城にわたしが住んでもいいみたいに聞こえるんですけど」

 メグはまだ理解出来ていないようだった。
 未だにステータス異常:混乱が続いているらしい。

「ここが今日からメグの家だぞ? この家、全部メグのものだ」

「……そんなわけないです。こんな大きなお城がわたしの家なんて」

「そんなわけあるんだって」

「だって、このお城、コウさまのお家より大きいですよ?」

 その言葉は胸に突き刺さった。
 会心の一撃だった。
 た・し・か・に!

「……まあ、この家は今日建てたばっかりだからな。俺の家もそのうち建て直そうとしてたんだ。だから、遠慮することないぞ?」

「え? え? でも、奴隷のわたしが家なんて……」

 メグは物凄く戸惑いながらオロオロしている。
 というか、この子は何度言わせれば気が済むのだろうか。

「メグ、何度も言うが、俺はお前の事を奴隷だなんて思っていない。お前はもう自由なんだ!」

 ちょっと強めに言ってみると、メグの目が見開かれる。
 そして口に両手を当てて目に涙を溜め始めた。

「……冗談だと思ってました。本当ですか?」

「本当だ。それとも、俺を信じられないのか?」

 メグは涙を流しながら、無言で首を何度も振る。
 そのまま、ゆっくりと近づいて来る。

「コウさま……うっ、うわあああん!」

 そして俺に抱きつくと大きな声で泣き始める。
 やっとわかってくれたみたいだ。

 今までずっと笑顔だったメグの泣き声。
 きっとこの少女はずっと無理やり笑顔を浮かべていたのだろう。
 新しいご主人様だと思い込んだ俺に嫌われないように。
 そう考えると切なくてどうしようもなくなってくる。

 俺はメグを出来るだけ優しく抱きしめた。
 そして、メグが泣き止むのをじっくりと待つ。

 何か吹っ切れたように、しばらくメグは泣き続けた。



 あれからどれくらいの時間が経っただろうか。
 まだメグを抱きしめたままだったが、メグはようやく泣き止んで今は落ち着いている。

「……わたしずっと憧れていたんです」

 俺の胸の中で、泣きすぎて掠れた声でメグがボツりと言う。

「奴隷たちのあいだで、有名なおとぎ話があるんです。ヒナって言う女の子の話なんですけど」

「どんな話なんだ?」

「ヒナは奴隷なんですけど、すごく良いご主人様に拾われて」

 あーあれか。
 世界名作劇場的なノリだろうか。
 ああいうの苦手だ。
 泣いちゃうから。

「そのご主人様は、ヒナを奴隷から開放して自分のお嫁さんにするんです。それでヒナはすごく幸せに暮らすんです」

 良かった。
 めでたしめでしたしで終わる話のようだ。
 いい話だ。
 雪の中の教会で犬と死ぬ話とかだったらどうしようと思った。

「……まさか、わたしがヒナと同じになれるなんて、お、思っても、ひっく」

「うん? メグ?」

 再びメグが嗚咽を漏らし始める。
 というか、なんか雲行きが怪しくなってきた。
 ヒナとメグでどの辺が同じなんだろうか。
 同じ女の子で、同じく奴隷から開放されたまでだと思いたい。

「わたしコウさまのお嫁さんとしてがんばりますね!」

 メグはお日様のような笑顔で、サラッと俺の期待を裏切ってくる。

「……メグ? 俺は嫁にするなんて言ってないぞ?」

「ええ!? ひどいです。コウさま、さっきわたしは奴隷じゃないって……」

「そうだ。メグは奴隷じゃない」

「じゃあ、お嫁さんにしてくれるんですか?」

「……嫁にはしない」

「……やっぱり奴隷なんですね」

「だから、奴隷じゃないってば!」

「え? え?」

 再びメグにバステがかかる。
 メグは混乱耐性低いなー。
 というか、なぜ奴隷か嫁の2択しかないのか。

「メグは奴隷じゃないし、嫁でもない」

「……じゃあ、わたしはコウさまの何なんでしょうか?」

 え、なんだろう。

「ご近所さんかな?」

 俺の言葉を聞いて、メグがしょぼんとする。

「……わたしお嫁さんがいいです」

「嫁はダメだって。ルーナが怒るから」

「ルーナってあのきれいなエルフさまですか?」

「そうそう」

 メグは少しぶすっとした表情を浮かべる。

「……わたし、あんなにきれいな人はじめて見ました」

 あー、わかる。
 俺もだ。
 あれだけ情報化が進んでいた元の世界にいた頃でさえ、ルーナより綺麗な女性なんてテレビでもネットでも見たことがない。
 強いて対抗馬を挙げるとしたらセレナくらいだ。
 というか、本当になんであの女、こんな辺鄙な場所で俺なんかと一緒にいるんだろう。
 もはや怪奇現象と言っても過言ではない気がしてきた。

「……あの方にくらべたら、わたしなんてダメダメですけど」

「いやいや、メグだってもう少ししたら美人になるさ」

 そもそもルーナと比較するのが間違っているのだ。
 メグは十分に美少女と言っていいと思う。

「じゃあ、お嫁さんにしてください」

「だから、ダメだってば」

「むー」

 メグは結構頑固だ。
 というか、なんで俺の嫁になんてなりたがるのか理解できない。
 まだ若いのだ。
 人生をドブに捨てるような真似をしなくてもいいだろうに。

「……メグ。さっきも言ったけど、もうメグは自由なんだ。これから何にでもなれるんだぞ?」

「なら、わたしコウさまのお嫁さんになりたいです」

「だーかーらー!」

「……コウさまは、わたしのこときらいですか?」

 急にメグが不安そうな顔を見せる。
 嫌いかどうか聞かれたら。

「いや? 嫌いじゃないぞ?」

「じゃあ、お嫁さんにしてください!」

 ブレないなこの子。
 どうしよう。
 俺の拙いコミュ力ではメグを説得できる気がしない。
 これが日本だったら、とりあえずメアドを渡して一旦家に帰ってから、着拒とかに持ち込めるのだが。

「……わかった。とりあえず、考えさせてくれ。あ、あとこの事はルーナに言っちゃダメだぞ?」

「はい! 禁断のカンケイってことですね? やったあ!」

 メグが飛びつくように抱きつていくる。
 やったーじゃねえから。
 ただ、ルーナへの口止めは約束できた。
 マスト条件はクリアだ。
 しかも、メグに手を出したわけじゃない。
 よって浮気もしていない。
 まだセーフだ。
 きっと。


 その後、ベタベタとまとわりついてくるメグと一緒に家をカスタマイズしていった。
 ルーナには悪いが、ちょっと楽しかった。
 だってメグ可愛いし。
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