ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第四章 竜騎士編

第107話 幕間 王国の存亡

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 王国西部国境を守備する兵士は、欠伸を噛み殺していた。
 西部は常に魔族の脅威にさらされているが、魔族の侵攻は3ヶ月に1回と昔から決まっている。
 前回の侵攻があったのは2ヶ月前だった。
 次の侵攻までは1ヶ月の猶予がある。
 その間に、オーク共が国境近辺に現れたことは、ここ数十年一度もなかった。
 従って、今の時期、国境を守る兵士たちはただただ暇を持て余すのみなのである。
 辺りにはだらしなく地べたに腰を下ろす兵士や、カードゲームに興じる兵士までいた。
 言うまでもなくだらけきっているが、指揮官もそれを咎めようとしなかった。
 今の時期、西部国境が平和であることは数十年の歴史が証明しているのだから。

「うん? なんだあれは?」

 一人の兵士がそれに気づいた。
 国境から見渡せる平野に長大な土煙が上がっている。
 地平線を埋め尽くすような土煙だった。

 次第に、大地が揺れ始めた。
 遥か彼方から、何かが移動してくる。

「……おい、冗談だろ」

 移動しているのは異形の怪物だった。
 豚の頭部を持った人型の怪物。
 ものすごい数だった。
 一直線に怪物たちは国境に向かってくる。

「すぐに、王都に早馬を飛ばせ!!」

 それは今までの常識が覆された歴史的瞬間だった。





 南部にて蛮族相手に王国軍が敗走したという一報は王宮を震撼させた。
 まだ詳細は判明していないが、王国軍は壊滅的な損害を受けているとの情報もある。
 王国軍は国家防衛の要だった。
 その王国軍の壊滅は、国家の根底を揺るがしかねない。

 国王は痛む頭を抑えながら、家臣たちを見渡す。

「今、動かせる予備兵力はいかほどか?」

「王都の防衛戦力を除くと、3万ほどになります。陛下」

 蛮族討伐軍は7万だった。
 その7万が破れたのだ。
 たった3万では蛮族共を打ち破る事はできない。
 しかし、蛮族達に領土的野心がない事は歴史が証明している。
 蛮族達は、王国南部の村や街を略奪し尽したら引き上げるだろう。

「すぐにその3万を南部に向かわせよ。蛮族に荒らされた治安を回復しつつ防衛線を修復するのだ」

「御意」

 指示を出すと、国王は玉座の背もたれに身体を預けて、深く息をついた。
 今頃、南部は深刻な打撃を受けているだろう。
 街や村は焼かれ、農地は荒らされ、民は奴隷として連れ去られる。

 国王は目を閉じて、守ってやれなかった国民に対する重い責任を感じた。

 この時、王国に更なる激震が走る事を予想できた者はいなかった。



 それは南部へ3万の予備戦力を投入した5日後の事だった。
 3万は南部に展開しつつあり、次々と被害状況の報告が上がってきていた。
 南部の状況は、誰もが目を覆いたくなるような悲惨なものだった。

 王宮では夜を徹して南部復興政策の策定を急いでいた。
 そんな時、信じられない報告が届けられた。

「西部にて魔族の侵攻を確認。およそ5万のオークが国境を超えました!」

 その報告に誰もが言葉を失った。

「馬鹿な! 次の侵攻は一月後ではなかったのか!?」

「それも、オークが5万だと!? 今までで最大規模の侵攻ではないか!?」

 ここ数十年の間、魔族は正確に3ヶ月周期で侵攻してきたのだ。
 その周期が崩れたことは一度としてなかった。
 また、攻め込んでくるオークの数にしても2万から3万といった所だった。
 5万なんて大軍の侵攻は、建国以来初めてだった。

 国王は浮足立つ家臣たちを一喝する。

「落ち着くのだ。再編中の王国軍はどうなっている? 兵が戻りつつあるだろう」

 散り散りになりながらも、南部で生き延びた兵士たちが戻ってきていた。
 その数は今のところ、3万を超えている。
 もう少し時間が立てば、4万になるかもしれない。
 南部で討ち取られた兵は3万ということになる。

「来月の魔族侵攻を見据えて、早急に再編を進めておりますが、とても今すぐに出撃できる状態にはありません」

 軍事担当の大臣の返答に、国王は低く唸った。
 普通、軍隊の編成には数ヶ月を要する。
 一月で再編成をしろと言うのも無茶な話だった。
 そもそも、兵法に鑑みれば、オークには二倍の兵力を以て当たるべきだ。
 5万のオークを迎え撃つには、10万の兵力が必要と言うことになる。
 しかし、そんな兵力は今の王国には残されていなかった。
 各領主に兵を出させるしかないが、全国各地に点在する領主から兵を集めるのには時間がかかる。
 諸外国に救援を依頼した場合も同じだった。
 オークは既に国境を超えている。
 とにかく時間が足りない。
 西部には1万の防衛戦力が備えられているが、領主軍や諸外国軍の集結まで持ちこたえられないだろう。

 なぜこんな状況でオークが攻めてくるのだ。
 その疑問は、国王だけではなく、その場にいる全ての重臣が考えた。
 今まで魔族の侵攻は戦略など全く無かったはずだ。
 自然現象のように定期的に攻め寄せてくるだけだった。

 しかし、王国の窮地に追い打ちを掛けるようなこの侵攻。
 まるで蛮族共と示し合わせたかのようだ。
 蛮族の大侵攻ですら予想外だった。
 偶然というにはあまりに出来すぎている。
 そこにはオークの背後にいる何者かの意図が見え隠れする。
 魔族。
 今まで殆ど表舞台に出てこなかった魔族が本腰を入れて、王国を潰しにかかっている。

 魔族は3ヶ月毎に攻めてくる。
 それは数十年という壮大な時間をかけて刷り込まれた錯覚だった。
 今この時、王国に詰みの一手を掛けるための。

 そんな考えに至った時、国王は言い知れぬ恐怖を覚えた。

「陛下、私が出ます」

 重い絶望に包まれた室内に響いたのは、まだ若い娘の声だった。

「……ゼービア」

 その娘は、若くして王国最強の剣士である剣聖の称号を持つ娘だった。
 近衛騎士団長を務める重臣だ。

「我が近衛騎士団5千を率いて、オーク共を足止めします。どうかその間に兵力をお整え下さい」

 ゼービアは覚悟を決めた顔をしていた。
 精鋭揃いの近衛騎士団とは言え、10倍のオーク相手では全滅は免れないだろう。
 ゼービアは命を掛けるつもりなのだ。

「陛下の御身を守るべき近衛が、王都を離れるなど許されざる事かもしれませんが、どうかご許可を」

 ゼービアは頭を深く垂れた。

「……許可する。死ぬでないぞ、ゼービア」

「はっ! 私のような若輩に王国近衛を任せて頂いた大恩、今こそ報いて見せましょう」

 そう言い放つと、ゼービアはマントを翻して退出していく。
 その場にいる誰よりも若い身でありながら、王国の存亡をその細い肩に背負って。

「すぐに各領主、諸外国に出兵の依頼を出せ。王国軍の再編も急がせよ!」

 国王はそんな下知を飛ばしながら、自分の娘と言ってもいいほどの年齢のゼービアが死地に赴くのを、ただ見送ることしかできなかった。
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