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第六章 異世界は異世界でも、平穏な異世界がいいです
10.そして夜明け、森での会話
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誰かが呼んでいる。
どこかで聞いたことのある声だ。寒いときに聞こえた声だ。
ああ、ビエチアマンの牢獄だ。
たすけて。
ころして。
どうしたの。何がそんなにつらいの。私はあまりに悲痛な声に問い返す。
戻りたくない。
戻りたい。
あの時と同じく、やはり相反することを言う。あなたは誰? そう聞いてみる。
彼女はすすり泣く。
そして声は遠ざかる。
※
(縁子!)
うるさい。けれど執拗に呼びかけられて、私はしぶしぶ目を開いた。
鬱蒼と茂る葉の裏側。表はあんなに緑が濃いのに、裏ってどうしてこんなに薄いんだろう?
白んだ空。湿った風が頬を撫でる。背中にはじっとりとしたいやな汗。
頭をもたげると、目の奥がいやな昼寝をしたときのように重く痛んだ。
(縁子!)
「なに……てか、あたま、いた……」
(寝ぼけている場合か! 戦が始まったようだぞ)
いくさ。いくさ? なんて古めかしい言葉。戦争?
夜明け。攻撃。月花、ヒルダ!
私はようやく現状を思い出す。どのくらい時間が経ったのだろう。夜が明けてまだ間もない明るさではある。
身体を起こして痛む首へ手をやる。
(あの小僧、ぎりぎりのところで縁子から手を離した。意識を失ったおまえの周りを子リスのようにうろうろして、結局ここに横たえて走り去ったぞ)
川辺の段差を越えた柔らかな土のところに運んでくれたのだ。
でなければ水ぎわの、すぐに増水する砂利の上に放っておかれただろう。
首を絞めた月花。丁重に横たえてくれた月花。矛盾する行動の裏には、聡明な彼の深い混乱が伺える。
なんにしろ今は、ガスが使われることだけは防がなければならない。
ゆっくりと立ち上がる。身体の節々が痛む。アラサーにはハードすぎませんかね、この状況。
「たま。本気で私は温泉に入りたい」
一拍の間のあとで、ぽつりと返された。我輩も入ってみたい。
どうやらたまも感化されてきた。私はちょっとだけ笑って、走り出す。
戦場はすぐに見つけることができた。
カムグエンの森には普段はたくさんの生き物が息を潜めるような暗黙の静けさがあったのだが、しかし今は悪意に満ちたお祭りのような音が聞こえてくる。
たまが導くままやや高台へ足を運んで見下ろしてみれば、カムグエンの湖の入り口あたりで煙が上がっている。
男たちの怒号もそのあたりから発せられているようだ。
目を凝らせばそのあたりに蟻のサイズの人たちが見えた。百人はいないと思うが、それぞれ武装した人たちが弓や槍、そして火薬玉のようなものを投げ合っている。
なんてばかばかしい。そう思ってしまうのは私が部外者だからだろうか?
(縁子! あそこ)
たまが示すほうへ目を凝らせば、カムグエンの湖とつながる川の上、湖岸へひそやかに近づく舟が見えた。
ウオンリュだ。
ひとりでゆったりと櫂を漕いでいる。舟の後部には不思議な色をした草と、黄色っぽい石のようなものが山と積まれている。
「たま、私あれだけは止めなければならない」
本音を言えばこんないざこざになんか関わりたくない。私が育った土地でも国でもないのだ、なんの責任も関係もない。
でもきっと、ここで逃げるとやっぱり私は後悔してしまうんだろうなとも思う。誰かが捨てた空き缶が転がっているのを、急いでいるからと見て見ぬふりをするような、そういう後味の悪さがずっと付いて回ることになるのだ。それにヒルダも月花も簡単に背を向ける相手ではなくなっている。
(……縁子はお人よしに過ぎるな。どこかでそのせいで命取りになるぞ)
思いのほか冷ややかで温度のない忠告だった。
その言葉に天を仰ぐ。きっとたまは正しい。
「やらないで後悔するより、やって後悔するほうが、まだましってもんじゃない?」
それにいまさらここで一人逃げたって、どうせガスに巻き込まれる距離だろう。そう思えばきれいさっぱり開き直れるというものだ。
どうだかな、というたまのため息に含まれていたのは後ろめたさだろうか。
私はえいやっと高台を駆け下る。そのまま目の前の川を渡ろうとして――でもその川は想像より三倍深かった。
盛大におぼれかけた。
スイミングスクール、通ってればよかった!
※
その後は文字通り野を越え山を越えの勢いで、ウオンリュの着岸するであろう地点を目指した。
ふだん歩いていた舗装されたコンクリートの道って、なんてありがたいんだろう!
私は直線距離なら三分もかからないであろう道のりを、その五倍はかかっている感覚だ。とにかく足元が悪い。
ぬかるむ地面の上のシダ類は踏むと驚くほど滑るし、棘のついたバラもどきの植物は鋭く皮膚をかききっていく。麻のスカートにも絡まってもうぼろぼろだ。
高台から降りてしまったため視界にはまた鬱蒼と茂る木々ばかりでウオンリュは見えないが、河口へ向かっていたのは違いない。
地上の私の苦労とは裏腹に、水上をゆったり進んでいるのだろうなと思えば、不公平だと八つ当たりもしくなる。世の中とは不均等で不平等なものなのだ。
しばらくして木々の隙間からウオンリュが着岸したのが見えた。いったん足を止め樹に手をつく。流れる汗を手の甲でぬぐいウオンリュを見ていると、彼が一瞬身体を強張らせたのがわかった。
なんだろうと思って目を凝らせば、森から岸辺に近づいていく影に気づく。
月花だ。
ウオンリュは彼の存在に驚いたのだ。
そうか。ウオンリュは毒ガスを使うことを月花に伏せていた。別行動を取らせるつもりだったはずだ。
だけど私が月花にそのことを伝えた。月花は私を気絶させたあとに、そのことを確かめようとしたのかもしれない。
私の心臓がいやな早鐘を打っている。
唾を呑みこみ、大きく息を吐いて吸って。私は再び走り出す。
「どうして、どうして兄さん。僕は嫌だと言った! それなのにそれを使うというの」
「月、月。少しは落ち着け。たしかにおまえの了承を得なかったのは悪いと思っている」
「ならどうして? 僕は話した。塩の畑の後悔。知らなかったんだ。一度塩を撒いてしまうと、恒久的に不毛の地になってしまうって。だから僕は次に何かをするときは、それを復旧する手段も見つけ出してからしか使わないって言った。そしてガスはまだ見つかっていない。諸刃の剣だ!」
「おまえの言い分はわかるさ。とてもよくわかる。だがそうも言ってられない状況になってきたんだ。わかるだろ?」
「いいえ、わからない。わからない!」
私がへろへろになって、樹にすがりつくようにして二人のそばへ来たとき、月花は珍しく感情をあらわにしていた。
私の接近にも気づいていない様子だ。
月花からはやや斜め後ろ、木陰から彼を見れば、その口もとが伺えた。かみ締めた唇。
「おまえに黙って使おうとしたのは悪かった。だが月、俺がおまえにとってよくないことをしたことがあったか?」
ウオンリュは私の存在に気づいているのかいないのか、やや辟易した様子で髪をかきあげた。なんとか月花をなだめようとしている。
月花は言葉に詰まっていた。その無言の背中から、月花とウオンリュとの歳月が見えるようだった。
どういう意図があったにせよ、ウオンリュは月花を丁重に扱った、ただひとりの人なのだ。
だからこそ裏切りは鋭い棘となる。
「僕を傷つけることは、しないって」
声は震えていた。月花のすがるような言葉に、ウオンリュはいよいよ苛立ちを隠すことをやめた。
「――なあ、月。俺はお前を慈しんできたな? 肥溜めみたいな場所から拾い上げ、人の中で人並みに過ごせるようにしてやった。金だって与えている。何が不満だ?」
月花は叩かれたかのように顔を上げた。
いや、じっさい、彼の言葉は月花のどこかを痛めつけたのだ。
そんなふうに思っていたの。月花の声。温度のない声。
「僕のことを、そんなふうに――まるで家畜のように……ずっと……?」
ウオンリュは手早く、舟に積んでいた草やら鉱石の入れられた木箱やらを岸へ下ろした。振り返っりながら、まさかと心外そうに声を上げる。
「おまえのことを家畜だなんて思ったことはないさ。どうしてそうなる。おまえはかわいい弟分だし、これからもそばにいてほしいと思っている」
聞いていた私には、彼らの間の決定的な違いがわかった。
ウオンリュは真実を語っている。月花を大切にし、慈しんでいるつもりでいる。あくまで自分の役に立つ金の鶏として。馬主が自分の持ち馬を愛でるように飼い葉を与え、たんねんに囲い込んで。
きっと月花が望むものとは違う。彼の求めるものはおなじ高さからのものだった。そしてそれらは交わらない。
私は思わず口元に手を当てた。
月花の絶望を思うだけで、胸のあたりに爪を立てられるような気持ちになった。
「次回からは、ちゃあんとおまえのご意向を確かめてから使うようにするさ。今回は多めに見てくれや」
期限以内にここを片付けたら、俺とおまえの金払いは倍だぜと上機嫌に囁いて、荷を担いで森へ入っていく。
兄さんと静かな声が落ちた。
ウオンリュは辟易したように月花を振り返る。
「ひとつだけ聞きたいことがあるんだ。これ」
覚えてる? と月花は腰の巾着から一本の黒ずんだ棒を取り出した。
棒というよりは串に近い。用途はフローリングの板のすきまを掻き出すくらいしか想像できない。
なんだそれとウオンリュは目を眇めてそれを見た。
「汚い棒だな。覚えもなにも、それが何かすらわからんが。これの着火にでも使うのか?」
月花はそれを聞いて、かすかに微笑んだようだった。
次の瞬間、月花は腰の短剣を鞘から引き抜いた。そのまま自分の喉もとへ切っ先を当てる。私はあっと息を呑む。
さすがのウオンリュも驚いたように動きを止め、月花と正面から対峙する。
まるで時間の流れが止まったかのようだった。誰かが一時停止ボタンを押したような、完璧な沈黙が落ちた。
兄さん。月花の声。
「あなたは僕が信じる人です。一生、仕えると決めた人です。けれどお願いだ。どうかそれだけは。使うべきではないものです」
自分を擲って制止しようとする月花を、ウオンリュはただ興ざめしたように一瞥した。
そしてなんの感情も浮かべずに踵を返す。ガスの道具を持って森の奥へと進んでいった。
月花は、賭けに負けたのだ。
ウオンリュを追うべきか、一瞬迷った。
けれど川辺に残された月花の背中が苦しげにかがめられるのを見て、私は飛び出す。
しゃがみこんだ月花に近づくたび、地面の湿った土が音を立てた。聞こえるはずなのに、月花は身じろぎもしない。
「……笑いに来たんですか。僕が言ったことは間違っていただろうって」
なんの価値もない僕を大切にしてくれるのは、兄さんだけだと言った僕を。月花が呟く。
「この棒は彼が僕を拾ってくれた夜に、露店で買い与えてくれた串焼きの串なんですよ。ほら、僕って与えられたものなんてないから、嬉しくて」
雨水で洗ってずっと持っていたんです。月花は抑揚なく話し続ける。
「この狐面も、通りを歩くたび向けられる視線をなくすために与えてくれた。はじめは口元まであるお面だったからものを食べづらくて。そうしたら見かねて、これも買ってくれて」
ふたりの時間が少しだけ見えるようだった。人ってなんて多面的なんだろう。
テーブルに置いたコップが、真上や真横から見ると違う形に見えるのと似ている。ウオンリュの酷薄なところも、思わぬやさしさも、嘘や偽りではなく、角度の問題なのだろうか。
それはきっと月花を飼いならすことだけが目的ではなかったのではないか。そういう気づかいのできる男でもあるのかもしれない。
「兄さんがいてくれるならなんでもできると思ったのに。だめですね。聞き分けがないから、こんなふうに捨てられてしまっても当然だ」
私は地面にひざをついた。月花の顔を下から覗き込むようにして見上げてみる。
白い仮面。頬は濡れていなくても、確かに彼は泣いている。
かつて庭で涙を見せずに泣いていた少年。寄る辺のない声。
聞いて。私は言う。
「月花、自分を哀れまないで。それをすると何もできなくなってしまう」
誰にでも辛いことや悲しいことはある。愚痴を言いたくもなるし、やさぐれたくもなる。それは仕方の無いことだし、時には吐き出すことも必要だ。
でも心底から自分の境遇を哀れむと、そこが心地よくて動けなくなってしまう。得られるのは一時の気楽さ。あとからは鈍く重い苦々しさだけがついてまわる。
「ずっと苦しかったのかもしれない。自分ではどうにもできなかったり、もどかしかったり。ねえ、月花は、まず自分を大切にしてみるのはどうだろう? そうすると自分が本当に何をしたいか、何をするときが幸せかわかってくるかも」
私は自分が引きずられないように慎重に距離をとりながら、月花に話しかける。
月花はまるで駄々っ子のように首を振る、わけがわからないというように頭を両手で抱え込んだ。
「自分を大切にするって、何ですか……。そんなこと誰も教えてくれなかった。どう、やればいい?」
「えっと、じゃあ、好きな食べ物は?」
私の唐突な質問コーナーに月花は一瞬口をつぐんだが、腹立たしそうにすぐに答えた。
「山苺の蜜漬け」
「そ、そうだったんだ。言ってくれれば買出しで用意したのに、水臭い……。じゃあ次、好きなことは」
「書物を読むこと。勉学」
「さすがです。好きな場所は」
「あたたかいところ。寒いのは嫌いなんです」
「ふんふん、それはね、私も完全同意。それから好きな色」
「さあ、特にはありませんが。でも、土の色は好きですね」
「渋いねえ。ほかには……」
ちょっとまって、と月花がさえぎった。
「何なんですか、どういうつもりでそんなことを聞くんです」
怒った口調だ。私はしめしめと口元をゆるめる。
「いっぱいあったね。好きなこと。それをね、なるべく実行したりそばに置くの」
「は?」
「自分を大切にするってそういうこと。自分が気持ちいい状態を、ちゃんと自分で管理してあげるの」
そうなのだ。誰だって辛いときはある。電車が混んでて密着した人の香水がきつかったり、ささいなことで友達や同僚とぎすぎすしてしまったり、急な仕事を回されたり。
ほこりのように積もっていく「辛いこと」を、みんなが経験しているのだ。
それをお気に入りの歌手を聞いたり、ちょっとお高めの入浴剤を使ったり、ネイルをきれいにしたり、野球の応援に行ったり。それぞれの方法で自分の手入れをする。
それだけのことだよといえば、月花は苦虫を噛み潰したように口をゆがめた。
「簡単に言ってくれますね。僕の容姿ではやれることは限られるんですよ」
皮肉げな口調。私はそう? と首を傾ける。じっと見つめれば、ばつが悪そうにそうです、と呟いて顔をそらされる。
「まえも言ったと思うけど。月花は誰よりもきれいだしかっこいい」
「でまかせだ。見たこともないくせに」
「あるんだな、これが」
「信じない。僕が過去のことを忘れるなんてありえないんだ。あなたが同居していただなんて、嘘です。ぜんぶ、ひどいでっちあげだ」
もう! なまじ頭がいいと、こうまで頑固で理屈っぽいのか?
「見たいな。月花のみどりの目」
月花はとっさというように口を閉じた。それから、もうどうしようもないというふうにうつむいて、頭を両手で抱え込んだ。
私は今しかないという気持ちになって、慎重に言葉を重ねる。
あのころの月花は素直でね。朝ごはんの準備をしてると、いつも横にくっついて見てたんだよ。庭で絵本を読み聞かせてくれたりして。いつも笑顔で優しかったんだけどなあ。
そんなふうに呟いてみれば、月花はとうとう陥落。
「……本当に」
うん。頷く。
「僕はあなたと、暮らしていた?」
「はい」
「あなたは僕を受け入れていたということですか」
「うん」
「神すら見捨てる醜い僕でも」
「どんな月花でも」
「僕が、賢くなくても?」
「ばかでも賢くても、月花は月花だよ」
「あなたの、思うとおりにならない僕でも?」
その言葉を待っていた。そこが肝心。私は嬉しくて笑ってしまう。
「自分のやりたいようにやっている月花が、とてもいいと思う」
誰かの望む月花になろうとするのはもうやめよう。月花の心の向くままに生活していければいい。
あっ、もちろん法の範囲内でね! この世界に法があるのかは置いといて。
月花は私をじっと見ていた。野生の手負いの獣のように身体を緊張させている。目をそらしてはいけない瞬間があるとしたら、間違いなく今だった。
私は彼の、ずたずたの心が慎重にさまざまなことを整理しているのがわかったので、辛抱強く動かずにいた。
そしてどれくらい経っただろう。一瞬かもしれないし、一時間といわれればそうとも思える。
月花はゆっくりと手を持ち上げて、私の喉に手を伸ばした。
触れられた瞬間、身体は揺れてしまったけど動かないようにした。
さっき締められたところをそっとなぞられる。
いいよ、と伝えたくて無言で微笑めば、月花は何かを推し量るように首を傾けた。
正面から見つめ会う。月花はゆっくりと、手を頭にもっていく。
狐の面の結び目を、しゅるりと解く。自分の意思で。
ほらね、と私は思う。
「……やっぱり、とってもかっこいい」
震える手で面を外した月花の、濡れた緑の瞳はやっぱりひときわ美しかったので、私は梅雨明けの青空を見たような気持ちになって、大きく息を吐きながら微笑んだ。
どこかで聞いたことのある声だ。寒いときに聞こえた声だ。
ああ、ビエチアマンの牢獄だ。
たすけて。
ころして。
どうしたの。何がそんなにつらいの。私はあまりに悲痛な声に問い返す。
戻りたくない。
戻りたい。
あの時と同じく、やはり相反することを言う。あなたは誰? そう聞いてみる。
彼女はすすり泣く。
そして声は遠ざかる。
※
(縁子!)
うるさい。けれど執拗に呼びかけられて、私はしぶしぶ目を開いた。
鬱蒼と茂る葉の裏側。表はあんなに緑が濃いのに、裏ってどうしてこんなに薄いんだろう?
白んだ空。湿った風が頬を撫でる。背中にはじっとりとしたいやな汗。
頭をもたげると、目の奥がいやな昼寝をしたときのように重く痛んだ。
(縁子!)
「なに……てか、あたま、いた……」
(寝ぼけている場合か! 戦が始まったようだぞ)
いくさ。いくさ? なんて古めかしい言葉。戦争?
夜明け。攻撃。月花、ヒルダ!
私はようやく現状を思い出す。どのくらい時間が経ったのだろう。夜が明けてまだ間もない明るさではある。
身体を起こして痛む首へ手をやる。
(あの小僧、ぎりぎりのところで縁子から手を離した。意識を失ったおまえの周りを子リスのようにうろうろして、結局ここに横たえて走り去ったぞ)
川辺の段差を越えた柔らかな土のところに運んでくれたのだ。
でなければ水ぎわの、すぐに増水する砂利の上に放っておかれただろう。
首を絞めた月花。丁重に横たえてくれた月花。矛盾する行動の裏には、聡明な彼の深い混乱が伺える。
なんにしろ今は、ガスが使われることだけは防がなければならない。
ゆっくりと立ち上がる。身体の節々が痛む。アラサーにはハードすぎませんかね、この状況。
「たま。本気で私は温泉に入りたい」
一拍の間のあとで、ぽつりと返された。我輩も入ってみたい。
どうやらたまも感化されてきた。私はちょっとだけ笑って、走り出す。
戦場はすぐに見つけることができた。
カムグエンの森には普段はたくさんの生き物が息を潜めるような暗黙の静けさがあったのだが、しかし今は悪意に満ちたお祭りのような音が聞こえてくる。
たまが導くままやや高台へ足を運んで見下ろしてみれば、カムグエンの湖の入り口あたりで煙が上がっている。
男たちの怒号もそのあたりから発せられているようだ。
目を凝らせばそのあたりに蟻のサイズの人たちが見えた。百人はいないと思うが、それぞれ武装した人たちが弓や槍、そして火薬玉のようなものを投げ合っている。
なんてばかばかしい。そう思ってしまうのは私が部外者だからだろうか?
(縁子! あそこ)
たまが示すほうへ目を凝らせば、カムグエンの湖とつながる川の上、湖岸へひそやかに近づく舟が見えた。
ウオンリュだ。
ひとりでゆったりと櫂を漕いでいる。舟の後部には不思議な色をした草と、黄色っぽい石のようなものが山と積まれている。
「たま、私あれだけは止めなければならない」
本音を言えばこんないざこざになんか関わりたくない。私が育った土地でも国でもないのだ、なんの責任も関係もない。
でもきっと、ここで逃げるとやっぱり私は後悔してしまうんだろうなとも思う。誰かが捨てた空き缶が転がっているのを、急いでいるからと見て見ぬふりをするような、そういう後味の悪さがずっと付いて回ることになるのだ。それにヒルダも月花も簡単に背を向ける相手ではなくなっている。
(……縁子はお人よしに過ぎるな。どこかでそのせいで命取りになるぞ)
思いのほか冷ややかで温度のない忠告だった。
その言葉に天を仰ぐ。きっとたまは正しい。
「やらないで後悔するより、やって後悔するほうが、まだましってもんじゃない?」
それにいまさらここで一人逃げたって、どうせガスに巻き込まれる距離だろう。そう思えばきれいさっぱり開き直れるというものだ。
どうだかな、というたまのため息に含まれていたのは後ろめたさだろうか。
私はえいやっと高台を駆け下る。そのまま目の前の川を渡ろうとして――でもその川は想像より三倍深かった。
盛大におぼれかけた。
スイミングスクール、通ってればよかった!
※
その後は文字通り野を越え山を越えの勢いで、ウオンリュの着岸するであろう地点を目指した。
ふだん歩いていた舗装されたコンクリートの道って、なんてありがたいんだろう!
私は直線距離なら三分もかからないであろう道のりを、その五倍はかかっている感覚だ。とにかく足元が悪い。
ぬかるむ地面の上のシダ類は踏むと驚くほど滑るし、棘のついたバラもどきの植物は鋭く皮膚をかききっていく。麻のスカートにも絡まってもうぼろぼろだ。
高台から降りてしまったため視界にはまた鬱蒼と茂る木々ばかりでウオンリュは見えないが、河口へ向かっていたのは違いない。
地上の私の苦労とは裏腹に、水上をゆったり進んでいるのだろうなと思えば、不公平だと八つ当たりもしくなる。世の中とは不均等で不平等なものなのだ。
しばらくして木々の隙間からウオンリュが着岸したのが見えた。いったん足を止め樹に手をつく。流れる汗を手の甲でぬぐいウオンリュを見ていると、彼が一瞬身体を強張らせたのがわかった。
なんだろうと思って目を凝らせば、森から岸辺に近づいていく影に気づく。
月花だ。
ウオンリュは彼の存在に驚いたのだ。
そうか。ウオンリュは毒ガスを使うことを月花に伏せていた。別行動を取らせるつもりだったはずだ。
だけど私が月花にそのことを伝えた。月花は私を気絶させたあとに、そのことを確かめようとしたのかもしれない。
私の心臓がいやな早鐘を打っている。
唾を呑みこみ、大きく息を吐いて吸って。私は再び走り出す。
「どうして、どうして兄さん。僕は嫌だと言った! それなのにそれを使うというの」
「月、月。少しは落ち着け。たしかにおまえの了承を得なかったのは悪いと思っている」
「ならどうして? 僕は話した。塩の畑の後悔。知らなかったんだ。一度塩を撒いてしまうと、恒久的に不毛の地になってしまうって。だから僕は次に何かをするときは、それを復旧する手段も見つけ出してからしか使わないって言った。そしてガスはまだ見つかっていない。諸刃の剣だ!」
「おまえの言い分はわかるさ。とてもよくわかる。だがそうも言ってられない状況になってきたんだ。わかるだろ?」
「いいえ、わからない。わからない!」
私がへろへろになって、樹にすがりつくようにして二人のそばへ来たとき、月花は珍しく感情をあらわにしていた。
私の接近にも気づいていない様子だ。
月花からはやや斜め後ろ、木陰から彼を見れば、その口もとが伺えた。かみ締めた唇。
「おまえに黙って使おうとしたのは悪かった。だが月、俺がおまえにとってよくないことをしたことがあったか?」
ウオンリュは私の存在に気づいているのかいないのか、やや辟易した様子で髪をかきあげた。なんとか月花をなだめようとしている。
月花は言葉に詰まっていた。その無言の背中から、月花とウオンリュとの歳月が見えるようだった。
どういう意図があったにせよ、ウオンリュは月花を丁重に扱った、ただひとりの人なのだ。
だからこそ裏切りは鋭い棘となる。
「僕を傷つけることは、しないって」
声は震えていた。月花のすがるような言葉に、ウオンリュはいよいよ苛立ちを隠すことをやめた。
「――なあ、月。俺はお前を慈しんできたな? 肥溜めみたいな場所から拾い上げ、人の中で人並みに過ごせるようにしてやった。金だって与えている。何が不満だ?」
月花は叩かれたかのように顔を上げた。
いや、じっさい、彼の言葉は月花のどこかを痛めつけたのだ。
そんなふうに思っていたの。月花の声。温度のない声。
「僕のことを、そんなふうに――まるで家畜のように……ずっと……?」
ウオンリュは手早く、舟に積んでいた草やら鉱石の入れられた木箱やらを岸へ下ろした。振り返っりながら、まさかと心外そうに声を上げる。
「おまえのことを家畜だなんて思ったことはないさ。どうしてそうなる。おまえはかわいい弟分だし、これからもそばにいてほしいと思っている」
聞いていた私には、彼らの間の決定的な違いがわかった。
ウオンリュは真実を語っている。月花を大切にし、慈しんでいるつもりでいる。あくまで自分の役に立つ金の鶏として。馬主が自分の持ち馬を愛でるように飼い葉を与え、たんねんに囲い込んで。
きっと月花が望むものとは違う。彼の求めるものはおなじ高さからのものだった。そしてそれらは交わらない。
私は思わず口元に手を当てた。
月花の絶望を思うだけで、胸のあたりに爪を立てられるような気持ちになった。
「次回からは、ちゃあんとおまえのご意向を確かめてから使うようにするさ。今回は多めに見てくれや」
期限以内にここを片付けたら、俺とおまえの金払いは倍だぜと上機嫌に囁いて、荷を担いで森へ入っていく。
兄さんと静かな声が落ちた。
ウオンリュは辟易したように月花を振り返る。
「ひとつだけ聞きたいことがあるんだ。これ」
覚えてる? と月花は腰の巾着から一本の黒ずんだ棒を取り出した。
棒というよりは串に近い。用途はフローリングの板のすきまを掻き出すくらいしか想像できない。
なんだそれとウオンリュは目を眇めてそれを見た。
「汚い棒だな。覚えもなにも、それが何かすらわからんが。これの着火にでも使うのか?」
月花はそれを聞いて、かすかに微笑んだようだった。
次の瞬間、月花は腰の短剣を鞘から引き抜いた。そのまま自分の喉もとへ切っ先を当てる。私はあっと息を呑む。
さすがのウオンリュも驚いたように動きを止め、月花と正面から対峙する。
まるで時間の流れが止まったかのようだった。誰かが一時停止ボタンを押したような、完璧な沈黙が落ちた。
兄さん。月花の声。
「あなたは僕が信じる人です。一生、仕えると決めた人です。けれどお願いだ。どうかそれだけは。使うべきではないものです」
自分を擲って制止しようとする月花を、ウオンリュはただ興ざめしたように一瞥した。
そしてなんの感情も浮かべずに踵を返す。ガスの道具を持って森の奥へと進んでいった。
月花は、賭けに負けたのだ。
ウオンリュを追うべきか、一瞬迷った。
けれど川辺に残された月花の背中が苦しげにかがめられるのを見て、私は飛び出す。
しゃがみこんだ月花に近づくたび、地面の湿った土が音を立てた。聞こえるはずなのに、月花は身じろぎもしない。
「……笑いに来たんですか。僕が言ったことは間違っていただろうって」
なんの価値もない僕を大切にしてくれるのは、兄さんだけだと言った僕を。月花が呟く。
「この棒は彼が僕を拾ってくれた夜に、露店で買い与えてくれた串焼きの串なんですよ。ほら、僕って与えられたものなんてないから、嬉しくて」
雨水で洗ってずっと持っていたんです。月花は抑揚なく話し続ける。
「この狐面も、通りを歩くたび向けられる視線をなくすために与えてくれた。はじめは口元まであるお面だったからものを食べづらくて。そうしたら見かねて、これも買ってくれて」
ふたりの時間が少しだけ見えるようだった。人ってなんて多面的なんだろう。
テーブルに置いたコップが、真上や真横から見ると違う形に見えるのと似ている。ウオンリュの酷薄なところも、思わぬやさしさも、嘘や偽りではなく、角度の問題なのだろうか。
それはきっと月花を飼いならすことだけが目的ではなかったのではないか。そういう気づかいのできる男でもあるのかもしれない。
「兄さんがいてくれるならなんでもできると思ったのに。だめですね。聞き分けがないから、こんなふうに捨てられてしまっても当然だ」
私は地面にひざをついた。月花の顔を下から覗き込むようにして見上げてみる。
白い仮面。頬は濡れていなくても、確かに彼は泣いている。
かつて庭で涙を見せずに泣いていた少年。寄る辺のない声。
聞いて。私は言う。
「月花、自分を哀れまないで。それをすると何もできなくなってしまう」
誰にでも辛いことや悲しいことはある。愚痴を言いたくもなるし、やさぐれたくもなる。それは仕方の無いことだし、時には吐き出すことも必要だ。
でも心底から自分の境遇を哀れむと、そこが心地よくて動けなくなってしまう。得られるのは一時の気楽さ。あとからは鈍く重い苦々しさだけがついてまわる。
「ずっと苦しかったのかもしれない。自分ではどうにもできなかったり、もどかしかったり。ねえ、月花は、まず自分を大切にしてみるのはどうだろう? そうすると自分が本当に何をしたいか、何をするときが幸せかわかってくるかも」
私は自分が引きずられないように慎重に距離をとりながら、月花に話しかける。
月花はまるで駄々っ子のように首を振る、わけがわからないというように頭を両手で抱え込んだ。
「自分を大切にするって、何ですか……。そんなこと誰も教えてくれなかった。どう、やればいい?」
「えっと、じゃあ、好きな食べ物は?」
私の唐突な質問コーナーに月花は一瞬口をつぐんだが、腹立たしそうにすぐに答えた。
「山苺の蜜漬け」
「そ、そうだったんだ。言ってくれれば買出しで用意したのに、水臭い……。じゃあ次、好きなことは」
「書物を読むこと。勉学」
「さすがです。好きな場所は」
「あたたかいところ。寒いのは嫌いなんです」
「ふんふん、それはね、私も完全同意。それから好きな色」
「さあ、特にはありませんが。でも、土の色は好きですね」
「渋いねえ。ほかには……」
ちょっとまって、と月花がさえぎった。
「何なんですか、どういうつもりでそんなことを聞くんです」
怒った口調だ。私はしめしめと口元をゆるめる。
「いっぱいあったね。好きなこと。それをね、なるべく実行したりそばに置くの」
「は?」
「自分を大切にするってそういうこと。自分が気持ちいい状態を、ちゃんと自分で管理してあげるの」
そうなのだ。誰だって辛いときはある。電車が混んでて密着した人の香水がきつかったり、ささいなことで友達や同僚とぎすぎすしてしまったり、急な仕事を回されたり。
ほこりのように積もっていく「辛いこと」を、みんなが経験しているのだ。
それをお気に入りの歌手を聞いたり、ちょっとお高めの入浴剤を使ったり、ネイルをきれいにしたり、野球の応援に行ったり。それぞれの方法で自分の手入れをする。
それだけのことだよといえば、月花は苦虫を噛み潰したように口をゆがめた。
「簡単に言ってくれますね。僕の容姿ではやれることは限られるんですよ」
皮肉げな口調。私はそう? と首を傾ける。じっと見つめれば、ばつが悪そうにそうです、と呟いて顔をそらされる。
「まえも言ったと思うけど。月花は誰よりもきれいだしかっこいい」
「でまかせだ。見たこともないくせに」
「あるんだな、これが」
「信じない。僕が過去のことを忘れるなんてありえないんだ。あなたが同居していただなんて、嘘です。ぜんぶ、ひどいでっちあげだ」
もう! なまじ頭がいいと、こうまで頑固で理屈っぽいのか?
「見たいな。月花のみどりの目」
月花はとっさというように口を閉じた。それから、もうどうしようもないというふうにうつむいて、頭を両手で抱え込んだ。
私は今しかないという気持ちになって、慎重に言葉を重ねる。
あのころの月花は素直でね。朝ごはんの準備をしてると、いつも横にくっついて見てたんだよ。庭で絵本を読み聞かせてくれたりして。いつも笑顔で優しかったんだけどなあ。
そんなふうに呟いてみれば、月花はとうとう陥落。
「……本当に」
うん。頷く。
「僕はあなたと、暮らしていた?」
「はい」
「あなたは僕を受け入れていたということですか」
「うん」
「神すら見捨てる醜い僕でも」
「どんな月花でも」
「僕が、賢くなくても?」
「ばかでも賢くても、月花は月花だよ」
「あなたの、思うとおりにならない僕でも?」
その言葉を待っていた。そこが肝心。私は嬉しくて笑ってしまう。
「自分のやりたいようにやっている月花が、とてもいいと思う」
誰かの望む月花になろうとするのはもうやめよう。月花の心の向くままに生活していければいい。
あっ、もちろん法の範囲内でね! この世界に法があるのかは置いといて。
月花は私をじっと見ていた。野生の手負いの獣のように身体を緊張させている。目をそらしてはいけない瞬間があるとしたら、間違いなく今だった。
私は彼の、ずたずたの心が慎重にさまざまなことを整理しているのがわかったので、辛抱強く動かずにいた。
そしてどれくらい経っただろう。一瞬かもしれないし、一時間といわれればそうとも思える。
月花はゆっくりと手を持ち上げて、私の喉に手を伸ばした。
触れられた瞬間、身体は揺れてしまったけど動かないようにした。
さっき締められたところをそっとなぞられる。
いいよ、と伝えたくて無言で微笑めば、月花は何かを推し量るように首を傾けた。
正面から見つめ会う。月花はゆっくりと、手を頭にもっていく。
狐の面の結び目を、しゅるりと解く。自分の意思で。
ほらね、と私は思う。
「……やっぱり、とってもかっこいい」
震える手で面を外した月花の、濡れた緑の瞳はやっぱりひときわ美しかったので、私は梅雨明けの青空を見たような気持ちになって、大きく息を吐きながら微笑んだ。
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