スキルが全ての世界で無能力者と蔑まれた俺が、《殺奪》のスキルを駆使して世界最強になるまで 〜堕天使の美少女と共に十の塔を巡る冒険譚〜

石八

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始まりの塔編

第1話 パーティーからの追放

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「お前、邪魔だからパーティーから抜けていいよ」

「…………え?」

 朝早くギルドに訪れた俺を待っていたのは、賞賛や労いなどではなく、俺を突き放すような言葉だった。

 今俺は──いや、俺たちはといった方が正しいだろうか。

 俺たちのパーティーは、ギルドの真ん中にある丸テーブルを囲って、各々自由に食事をしていた。

 といっても俺は金に余裕が無いため無料サービスのお冷だけなのだが、俺が冷たい水の入ったコップを手に取って口に運ぼうとした瞬間、Bランクパーティーのリーダーである《アレク》は俺に向けて突然の除名宣告を口にしたのだ。

 あまりにも唐突だったので、俺は手にしていたコップをつい落としそうになってしまっていた。

「魔物や植物についての知識が豊富って聞いたからわざわざ無能力者のお前をパーティーに入れてやったのに、結局居ても居なくても変わらないって俺たちの中でまとまってな。そりゃ、Dランクだからある程度は考慮していたが、壁役もできないなんてな?」

「……確かに、俺に戦闘能力はこれっぽっちもないが……」

「ほらな? 知識があるといっても、別に全知全能ってわけじゃないだろ。俺たちには、お前がただの報酬泥棒にしか見えねぇんだわ」

「そうよ。大した活躍もしてないのに、報酬だけは一丁前に持っていくんだから、勘弁してほしいわ」

 アレクに賛同しながら俺を口撃する《タニア》は、酷く冷たい視線を俺に向けてきた。

 初めて出会った頃の気さくに話しかけてくる優しかったタニアは、もうそこにはいない。今いるのは、俺を排除しようとアレクの肩を持つタニアの姿だった。

 だが、正直にいえばこうなることは分かってはいた。しかしいざこう口にして言われるとかなり心にくる言葉である。

 それに、いつかはこうなる日が来ると思っていた。
 戦闘能力が皆無な俺は、普段からアレクたちとは別行動をして別の依頼を受けていたため、仲がいいというわけでもない。

 たまに荷物持ちでついていくこともあったが、報酬を山分けするときの俺を見る目は、思い返すだけで目を伏せたくなるものである。

「ま、俺は優しいからお前の持ってる荷物を取り上げることはしねぇよ。それに、あと十日後にはお前の代わりに別の奴が来るから、心配はいらねぇぜ」

「…………そうか、今まで迷惑をかけて本当に悪かった」

「あぁ、本当にそう思ってるならさっさと消えろ。俺の気が変わる前にな」

 腰から短剣を抜き放つアレクは、俺に剣先を向けてニヤニヤと笑みを浮かべている。

 アレクには《短剣術》という、短剣を扱う際に才能を発揮する事ができるスキルがあるため、アレクがやろうと思えば俺なんて一瞬で殺されてしまうのだ。

 まさにスキルの暴力。
 だが俺はなにも言い返せない。言い返せるわけがない。

 俺は助けを求めるべくアレクの隣に座っている物静かな《ニーシャ》に目を向けるが、ニーシャは口を開くどころか俺と目を合わせることもなかった。

 前は俺が知っている情報を聞いて素直に相槌を打っていたニーシャは、まるで俺に興味はないと言わんばかりに注文した料理を口に運んで舌鼓を打っていた。

 それに対し、アレクはこちらを横目見ながらタニアの肩を抱いて「こいつは俺の女なんだよ」とアピールをし始める。

 一方、俺はそんなアレクたちから逃げるかのように顔を背けた。

「(……情けないな、俺)」

 なにも言えない自分に自己嫌悪を覚えながらも、俺はアレクたちに背を向けて受付カウンター前にある依頼が張り出された依頼版の前へと足を運ぶ。

 すると、そんな俺の元に一人の少女が歩いてやって来た。

「レイさん、おはようございます!」

 明るく話しかけてきた少女の名前は《アリサ》。

 昨日俺が達成した依頼に手続きを済ませてくれた受付嬢こそこのアリサで、まだ受付嬢歴二年目だというのに誰よりも頑張っている働き者であった。

「今日も依頼を探しているのですか?」

「……まぁ、そんなところだ」

 そして、なぜかアリサはこんな俺に懐いている。

 最初右も左も分からない頃に助けたことがきっかけなのかは不明だが、アリサは他の受付嬢と違って俺の顔を見ても微妙な顔をしないので、素直でいい女の子なのである。

「あの、依頼の件なのですが……なんと、レイさん宛に個人的な依頼が届いているのです!」

「……俺に、個人的な依頼?」

「はい! それよりも、立ち話もあれですし、まずはカウンターに移動しませんか?」

「あぁ、それもそうだな」

 俺はアリサに腕を引っ張られながらも、アリサが担当している受付カウンターの前へと移動する。

 そして俺のために用意してくれた冷たいお茶の注がれたコップを手に取って喉を潤していると、アリサは早速本題に入るべく手元の資料に目を通しだした。

「えーとですね……レイさんは、赤傘草あかかさそうって知っていますか?」

「あぁ、もちろん知ってるぞ。植物に関しての知識は、人よりある自信はあるからな」

 赤傘草──葉が赤い色をしていて、赤く綺麗な花が咲くと葉が傘のような形になる面白い植物である。

 見た目はパッと見危険な感じがするが、花は高価な薬に、葉の部分は高級料理の飾り付けに使われるなど、意外と需要がある植物なのだ。

 だが、その植物を採取するにあたって、一つ大きな問題がある。

「もしかして、俺への依頼って赤傘草の採取か? 確か赤傘草はアーラス南側にあるケルデン王国付近の渓流にしか生えてないはずだ。さすがにそこまで行くのは厳しいぞ」

 そうだ。いくら植物に関しての知識があっても、採取できるかできないかと聞かれれば別だ。

 まずケルデン王国に行くには馬車で五日はかかるし、そもそも俺には馬車を借りるほど資金は潤っていない。

 しかも赤傘草が自生している場所に生息している魔物はこの辺りにいる魔物とは比べものにならないほど手強いので、俺一人では確実に命を落とすだろう。

 なら冒険者を雇えばいいという結論に至るのだが、先も話した通り俺には馬車どころか冒険者を雇う資金すらない。

 だからといって、アレクたちに頼み込むのも正直癪に触るため、それだけは避けたかった。

 それに自分の生活でいっぱいいっぱいな俺が他の冒険者の協力を仰ぐことはできるわけがなく、そもそも俺は他の冒険者との交流がまったくと言っていいほどないため、現実的に考えて無理難題な依頼であった。

 しかし俺が否定しようとしているのに、アリサはやけに自信満々で一枚の紙を俺に手渡してきた。

「……なんとですね。始まりの塔の三階層には、赤傘草を頭に生やした魔物がいるという噂です」

「それって、フラワーフロッピか。確か季節によって様々な花を頭に咲かせる魔物だったはず……なるほど、そういうことか」

「はい。ですが、もちろん無理は言いません。始まりの塔に生息する魔物はそこまで強くありませんが、危険なのは変わりません。それに納品期間もかなり長めなので、このような依頼があるということだけでも頭に入れておいてください」

「分かった。ちなみに、報酬は?」

「赤傘草一本につき、金貨一枚です」

「き、金貨一枚だと!?」

 あまりの破格な報酬額に、俺は受付カウンターに身を乗り出してアリサについ詰め寄ってしまった。

 するとアリサは少しだけ頬を染めたと思いきや俺に例の依頼用紙を渡してくれ、改めて俺はその依頼用紙に目を通した。

「……本当だ。嘘じゃないようだな」

「はい。そもそも受付嬢が冒険者に依頼に関しての嘘をつくなんて言語道断ですからね。ちなみに、この依頼者はいつもレイさんが受けている植物採取の依頼を出してる人ですよ。どうやら植物について研究しているらしく、いつも品質のいい植物を納品するレイさんの実力を認めてくれたらしいです」

「そうなのか……それは嬉しいが、金貨一枚……か。それなら、受けてみてもいいかもしれないな」

 その植物についての研究をしている者との面識はないが、こうして認められると悪い気はしない。

 むしろ今までの努力が報われたような気がして、少しばかり胸に熱いものが込み上げていた。

「それで……受けてみますか?」

「あぁ。赤傘草をどれだけ採取できるかは運次第だが、上手くいけばしばらくは贅沢できるわけだ。確かに危険ではあるが、こんな美味しい依頼を受けない手はない」

「分かりました。では、依頼用紙を複製してレイさんの名前を書かせていただきますね~」

 アリサは慣れた手つきで依頼用紙を別の紙に写して複製し、依頼用紙の下にある名前欄に俺の名前である「レイ」という文字を書いていた。

 そして複製した方の依頼用紙を受け取った俺は丸めてから鞄に収め、アリサに一言言ってからギルドをあとにする。

 そんな俺に対してアリサは胸の前にガッツポーズをとって応援してくれていたが、どこか心の中では不安の種が眠っているらしく、表情からは不安や心配といった感情が漂っていた。

 だからこそ、俺はこの素晴らしい依頼を完璧に達成してアリサを安心させてあげなければならない。

 もし俺が受付嬢の立場だったとして、自分からオススメした依頼で亡くなられたらどうしても自分を責めてしまう。

 そうなれば心が病んでしまうだろう。
 そんなことにならないためにも、俺はいつもよりも気合いを入れてからギルドを出て、アーラスの中央にある始まりの塔目指して歩みを進めた。
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