スキルが全ての世界で無能力者と蔑まれた俺が、《殺奪》のスキルを駆使して世界最強になるまで 〜堕天使の美少女と共に十の塔を巡る冒険譚〜

石八

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始まりの塔編

第4話 知らない天井

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 目を覚まして、真っ先に目に入るのは知らない白い天井だ。

 それでいてフカフカなベッドが俺を包み込むように敷かれていて、体を起こすと体には痛みどころか疲れすらも残っておらず、気持ちのいい朝を迎えることができた。

「あっ! レイさん! 大丈夫ですか!?」

「うぇ? あ、あぁ……大丈夫、だが……なんでここにアリサがいるんだ? それに、ここはどこなんだ?」

「ここはギルドの医務室です。昨日レイさんはジークさんとフィリアさんと一緒に帰ってきたんですよ? そのときからレイさんは意識がなく、もし目を覚まさなかったら、私は……」

 そうだ、思いだした。
 確か俺は依頼を受けて始まりの塔に赴いて、そこで初心者殺しと出会ったんだ。

 背中を裂かれてもうダメかと思ったときに、Sランク冒険者のジークとフィリアが駆けつけてくれ、俺を助けてくれたんだ。

 そこからなにがあったんだっけ?
 あまり記憶が定かではないが、誰かが俺の脳内に語りかけてきたような──

「……ん?」

 そこで、俺はある違和感を抱く。
 今俺の目の前ではアリサが泣きそうな表情のまま胸を撫で下ろしているのだが、そんなアリサの目の前に小さな半透明のパネルが浮かび上がっているのだ。

 そこには《アリサ:受付嬢》と書かれていて、名前と職業の下にはアリサについての情報が中途半端ではあるものの記載されていた。

「な、なぁ。アリサ、ここになにかあるが、見えるか?」

「……え? なにもありませんよ?」

「いや、ほら。ここだよここ。俺が指をさしてる先」

「指をさしてる先……? え。そ、そこって……」

 なぜかアリサは自分の胸元を手で隠すような仕草をして、頬をほんのりと赤らめていた。

 気付けば俺はパネル越しにアリサの胸元に指をさしており、おそらくアリサの情報が記載されたパネルが見えないのだろうアリサにとっては、俺がひたすら自分の胸に指をさしているように見えたのだろう。

 だがアリサは俺から距離をとることなく、一度長々と瞼を閉ざしたと思いきやゆっくりと深呼吸を繰り返し、俺の手をそっと握ってきた。

「……分かりました。レイさんを危険な目に遭わせたのは、私の責任です。ですから、私はこの身をレイさんに──」

「い、いや! 違うんだ! まだ頭がぼーっとしてて、少しばかり幻覚を見ていたようだ」

「そ、そうなのですか……? それならば、仕方がありませんね」

 俺の手を離したアリサは、どこか残念な表情をしていた。

 なぜこんなにもコロコロ表情が変わるのかと俺は不思議に思いながらも、ベッドの近くにある鏡を見てある変化に気付く。

 そこに映っていたのはハッキリしない顔の俺なのだが、赤色をしていたはずの俺の瞳は右だけ青色に変わっていた。

 そして鏡で自分の顔を確認したことがきっかけになったのか、俺の目の前にもアリサと同じように小さなパネルが現れた。

 その内容を見て、俺は驚きを隠さずにはいられなかった。


───────────────

レイ:剣士《厄獣やくじゅうを討ちし者》 男 21歳

ノーマルスキル
・身体能力強化Ⅰ ・腕力Ⅰ

パッシブスキル
・気配察知Ⅰ ・危険察知Ⅰ

スペシャルスキル
・鑑定眼Ⅰ ・火事場の馬鹿力

レジェンドスキル
・殺奪

───────────────


「なんだ、これ……?」

 そこに書かれていたのは、目を疑うような情報であった。

 もしこの情報が本当ならば、俺は知らずのうちにスキルを習得したということになる。

 だがそんな予兆はなかった。
 そう思ったとき、俺は一番下のレジェンドスキルの項目にあるスキルを無意識の内にタップしていた。

 すると、また新たなパネルが表示され、そこにはそのスキルの説明が簡潔に記載されていた。

殺奪さつだつ:スキルを持つ対象を殺したとき、そのスキルを自分のものにすることができる』

「(……俺、いつの間にこんな強力なスキルを手にしていたんだ? もし、元から俺にこのスキルがあったのなら、俺はスキルを持つ魔物を倒していれば強くなれていたのか……?)」

 衝撃の真実を前に俺は《殺奪》というスキルの説明欄を凝視しつつも、さらに情報を読み進めるため文字を下にスクロールする。

 そこには『その代わり、デメリットとして──』と書かれていたのだが、そこから下は文字化けしており、まともに読むことはできなかった。

「(つまり、俺が取得している《殺奪》以外のスキルは、初心者殺しが持っていたスキルということか? ん……? この項目はなんだ?)」

 俺は自分の名前と職業の隣にある《厄獣を討ちし者》という文字をタップする。

 どうやらこの《厄獣を討ちし者》は称号らしく、設定することによって俺自身になんらかの効果が常時付与されるというものらしい。

 俺は付与される効果を知るためその称号の効果を調べようとするが、何度タップしても新たなパネルが浮かび上がってこない。

 そのため、とりあえず俺はそれ以上称号に関しては触れることなく、もう一度《殺奪》の説明にある文字化けを見ることにした。

 だがどう見ても読み取ることができない。
 なぜなのか。と喉を低く唸らせるが、俺はあることを閃いてステータス画面からあるスキル名をタップする。

 そのスキル名は《鑑定眼》。
 もしかしたらこのスキルのレベルが足りてないから文字化けしているのではと考えたのだが……どうやら、俺の考えは合っているようであった。

『鑑定眼:見たものの情報を知ることができる。スキルレベルが上がると対象物に対する詳細についても確認することができるようになる。発動条件:右目の色が青色に変わること』

 このスキルに関しては最後まで文字化けすることなく読めたので、俺は《鑑定眼》の情報を知ることができた。

 他のスキルも確認するが、やはり文字化けしているのはレジェンドスキルである《殺奪》だけであった。

「……レイさん。先ほどからなにをしているのですか……?」

「え? あ、あぁ。なんでもないんだ。それよりも、あの二人を知らないか?」

「あの二人……あ、ジークさんとフィリアさんですか? あの御二方なら、レイさんをここに運び終わってからどこかの宿に戻ってしまったので、今はどこにいるか分かりません。それよりも、本当に大丈夫ですか? まだあまり顔色が優れていないようですが……」

「いや、もう大丈夫だ。ほら、この通りもう動けるぞ」

 ベッドから足を下ろして立ち上がってみせると、アリサは「よかったです……」と先ほどまで俺が寝ていたベッドに身を任せてだらけていた。

「お、おい。大丈夫か?」

「はい……レイさんが目を覚ますまで生きた心地がしなかったので、無事だと分かって力が抜けてしまいました……」

 そりゃ、良かれと思って依頼を紹介したのにいざ帰ってきたと思ったら気を失ってたのだから、気が滅入るのも当然かもしれない。

 本当に優しい女の子だなと上半身をベッドに預けているアリサを横目見て笑みを浮かべつつも、俺は近くのテーブルに置いてある鞄と剣を手に取って、それらを丁寧に装備した。

 するとその音を聞いて俺がなにをしているのか気付いたアリサは、体を起こしたと思いきや「ダメですよ!」と俺の腕を引っ張り、強引にもベッドに座らされてしまった。

「レイさんはもう少し寝ていた方がいいです。昨日のレイさん、本当に辛そうでしたから……」

「心配してくれるのは嬉しいが、もう大丈夫だぞ? 怪我なら治してもらったし、疲れてすらないから今すぐにでも動けるくらいだ」

「で、ですが……」

「ほら、俺今無一文みたいなもんだからさ。今日の宿代を探さないといけないんだよ」

 俺がそういうとアリサは責任を感じているのか、ベッドのシーツを掴みながらも下唇を噛んで口をキュッと噤むいていた。

「ということは、また始まりの塔に向かわれるのですか……?」

「あぁ。初心者殺しならもう倒されたし、三階層目までなら安全だろ」

「そうかもしれませんが……」

「じゃあ、約束する。絶対に無理はしないで帰ってくるってさ」

 そう俺が口にして小指を向けると、アリサは色白く細長い小指を俺の小指に絡ませ、指切りげんまんをする。

 そして俺は立ち上がり、医務室をあとにする。
 俺の後ろにはアリサが着いてきていて、俺がギルドの外に出るまで見送ってくれた。

 最後に俺はアリサに「んじゃ、行ってくる」とだけ言い残し、背を向けて始まりの塔へと歩みを進める。

 上を見上げると雲一つない快晴が広がっており、俺は一瞬だけ笑みを浮かべながらも、俺は心を入れ替える。

 そして俺は始まりの塔にたどり着くまでの間、自分のステータス画面からスキルの詳細など確認し、頭の中でスキルの情報をまとめあげていった──
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