スキルが全ての世界で無能力者と蔑まれた俺が、《殺奪》のスキルを駆使して世界最強になるまで 〜堕天使の美少女と共に十の塔を巡る冒険譚〜

石八

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始まりの塔編

第5話 スキル

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 再び訪れる、始まりの塔。
 そして俺は、構造が変わった一階層目にて剣を引き抜いて前へ前へと進んでいた。

 昨日の悪夢のような光景がフラッシュバックして背中が少しだけズキッとするが、それでも俺は確かな自信を抱いていた。

 別にスキルを取得したからといって、慢心しているわけではない。むしろその逆で、スキルを取得した俺がどれほどまでなのかと、確かめたくなったのだ。

 そして俺は、とあるT字路の曲がり角の前でふと歩みを止めた。

「(この変な違和感……これが《気配察知》の効果か。距離は……分からないが、右に二匹、左に一匹なにかがいる。おそらく魔物だな)」

 《鑑定眼》によると、《気配察知》とはスキル所持者の直感や感覚を強化して、半径十メートル以内の生物の場所をある程度特定できる便利なスキルらしい。

 どうやら、スキルレベルが上がれと察知できる範囲が広くなるらしい。

 そしてこれは憶測になるのだが、おそらく初心者殺しはこのスキルを利用して獲物を探していたのだろう。

 あくまで憶測なため断定はできないが、このスキルは初心者殺しから取得したものなので、完全に的外れというわけではないだろう。

 そしてもう一つ。
 今俺の体が「危ない予感」を察知しているのだが、これも初心者殺しから《殺奪》の効果で取得した《危険察知》の効果である。

 これはスキル所持者にとって脅威になる存在、もしくはスキル所持者に殺意を向ける生物がいたら反応するスキルらしく、これもあって困らない便利なスキルであった。

 なので俺は早速二つのスキルを利用し、まずは左側に潜んでいる魔物を倒す選択肢を選んだ。

 その理由として一匹しかいないというのとあるが、《気配察知》によると左側にいる魔物はもうすぐこちらと対面してしまう可能性があるため、気付かれる前に倒してしまおうという寸法だ。

 そして俺が左側の壁に背中を預けて息を殺していると、目の前の横道に緑色の肌をした魔物──ゴブリンが姿を現したので、俺は既に鞘から抜いていた剣を横に振り払ってゴブリンの頭を切り落とした。

「(……とりあえず、これで一匹か)」

 どうして俺みたいな冒険者が使っている切れ味がそこまでいいわけではない剣でゴブリンの首を切り落とせるのかというと、これも初心者殺しから取得したとある二つのスキルのおかげであった。

 まずは《腕力》。
 これは単純にスキル所持者の腕力を1.5倍するもので、スキルレベルが上がる事に0.5ずつ倍率が上がっていくというものである。

 そしてもう一つが《身体能力強化》。
 これは動体視力などの誰しもが持っている潜在能力を強化するもので、俺はゴブリンに気付かれる前に攻撃を仕掛け、剣で首を刎ねた──というより、無理やり抉りとったのである。

『グ、グギャア!?』
『グギャギャ! ギャア!!』

 どうやら仲間のゴブリンが死んだことに気付いたのか、右側の通路にいた二匹のゴブリンが亡骸に向かって歩み寄ってくる。

 なので俺は一歩引いてから今度は右側の通路に背を預け、ゴブリンが姿を現すまで息を殺して待機する。

 そして一匹目のゴブリンの姿がわずかに見えた刹那、俺は先ほどと同じ要領で首を刎ね、そのまま急な敵襲に困惑しているもう一匹のゴブリンの頭を掴み、強化された腕力で無理やり頭を地面に叩きつける。

 だがもちろんこのままでは死なないので、最後にうなじ辺りに剣を突き立て、力任せにねじ込んで首に風穴を開けた。

「…………これがスキルの力、か」

 今回は地の利を得たという点もあるが、それよりもこんなにもあっさりと三匹のゴブリンを討伐できたのは、言うまでもなくスキルのおかげだろう。

 まるで今までの冒険者人生が嘘に思えるほど、今の俺は高揚感で満ちていた。

「もしゴブリンがなんらかのスキルを持ってたら、俺はもっと早く《殺奪》の存在に気付けたのかもしれないな。いや、実際《鑑定眼》がないとなにも分からないから、やっぱりあそこで初心者殺しを殺せたのは僥倖だな」

 確かに命を狙われた嫌な存在だが、今はその初心者殺しのおかげでこうして戦えることができている。

 むしろ初心者殺しのように強い魔物のスキルを取得できたのは、これ以上にない豪運だろう。

「いつか、俺一人で初心者殺しに勝てるくらい強くなれるかもしれない。そのためには、もっと色んな魔物と戦ってスキルを得ないとな」

 グッとガッツポーズを作って、俺は二階層目への階段を見つけ、気合を入れてから二階層目の床を踏む。

 しかし二階層目で出会った魔物はゴブリン数匹しかいなかったため、少しばかり気が抜けてしまう。

 だが初心者殺しの存在以外は新米冒険者の腕試しにちょうどいいくらいであると、俺はこの身をもって実感した。

 そして、順調に二階層目を進み三階層目への階段を見つけた俺は、その階段をゆっくりと上がっていく。

 もしかしたらまた初心者殺しと出会ってしまうのではないかという恐怖を抱きつつも、俺は意を決して三階層目に踏み込んだ。

 そこには昨日はズタズタに引き裂かれていたはずのフラワーフロッピの姿があり、俺はホッと胸を撫で下ろした。

 大きさは五十センチほどの巨大なカエルで、頭には情報通り綺麗な花が咲いていた。

 だが俺の目の前にいたフラワーフロッピの頭に生えていたのは俺が目的としている赤傘草ではないため、俺はまず一匹だけフラワーフロッピを絶命させ、スキルを所持していないことを確認してから前に進んだ。

「フラワーフロッピは臆病であまり人を襲うことがないらしいし、向こう側から襲ってこないかぎりは無視でいいかもな」

 そう思って曲がり角を曲がると、そこには三匹のフラワーフロッピが壁にへばりついていた。

 その中の一匹。
 三匹の中で最も小さい個体の頭には、俺が目的としている赤傘草らしき植物が生えていた。

 このチャンスを見逃すわけにはいかない。
 たった一本採取するだけで金貨一枚なのだから、俺はゆっくりと背後から近付いて赤傘草らしき植物を頭に生やしているフラワーフロッピだけを討伐した。

「……よし! これはどこからどう見ても赤傘草だな。とりあえず、これで金貨一枚分──って、いかんいかん。こんな場所で浮かれていたら、なにが起きるか分からない」

 赤傘草を回収した俺は、茎を折らないようにそっと鞄に収納しようとする。

 その刹那、俺の体が《危険察知》によって無意識の内に動いていて、俺は後方から放たれたなにかを振り向くことなく回避することに成功する。

 そして通り過ぎていく、一本の矢。
 後ろを振り向くとそこには頭に赤いバンダナを巻いたゴブリンの姿があり、その手には棍棒や木の棒などではなく、手作り感満載の弓が握られていた。

「こいつは……ゴブリンアーチャーか」

 俺がそう口にすると、ゴブリンアーチャーは『ご名答』と言わんばかりに弦を引き、歪な形の矢じりをした弓矢を射てくる。

 前の俺なら避けることで精一杯だったかもしれない。

 だが今の俺は、一味違う。
 俺は剣を構えながらゴブリンアーチャーへ向けて走り出し、正面から風を切って飛んでくる一本の矢を紙一重で躱すことに成功した。

 これは《身体能力強化》によって成すことができた技であり、ゴブリンアーチャーは小さく声を上げてからさらにもう一本の矢を俺目がけて放つが、今度は紙一重ではなく余裕を持って交わすことができる。

『グ、グギャア!?』

 さすがのゴブリンアーチャーもそんな俺の行動に度肝を抜いたのか、一度口をあんぐりと開けた後すぐさま接近してくる俺を迎撃すべく、腰にぶら下がっている矢筒から矢を一本取り出す。

 だが時既に遅し。
 ゴブリンアーチャーが弦を引くころには既に俺はゴブリンアーチャーの下顎目がけて剣を振り上げており、なにかを変な声が聞こえてきたが聞く耳など持たず、俺はゴブリンアーチャーの首を力任せに抉り飛ばしていた。

「よし、これで──」

 足元に転がるゴブリンアーチャーの亡骸を退かそうとしたその時、俺の頭の中に"ポーン"という謎の音が鳴り響く。

 その直後、何者かの声が俺の頭の中に語りかけてきた。

『スキル《弓術Ⅰ》を獲得しました』

 少し前に聞いたことのある声に俺は無意識の内に頭を押さえていたが、直ぐに真相を確かめるべく自分の手を顔の前に掲げる。

 そして「鑑定」と呟くと俺の目の前にはステータス画面が記載されたパネルが浮かび上がり、そこのノーマルスキルの項目には新たに《弓術》が追加されていた。

「効果は……まぁ、名前の通りだな」

 鑑定眼によると『弓を実戦レベルで使えるようになる。弓矢の軌道をあらかた予測できる。これらはスキルレベルが上がることによって効果が高まる』と書いてあるので、まさにそのままであった。

 そして俺は今更だが、この《弓術》を取得するきっかけになった《殺奪》のスキルの異様さに気付いてしまった。

「……これ、スキルを持つ魔物を倒せば倒すほど俺が強くなっていくってことだよな? しかも、弓なんて握ったことがない俺が弓術を覚えられる辺り、この殺奪ってスキルは本当に強力なんだな……」

 《弓術》を手に入れるためには、毎日のように矢を射る必要があるらしい。

 それなのに、俺は《弓術》を取得しているゴブリンアーチャーを倒すだけで《弓術》のスキルを手にした。

 この意味は、言わなくても分かるだろう。

「俺に限界はない──ということか。しかも、このままいけばスキルの数だって大変なことに……」

 あのジークやフィリアのようなSランク冒険者は、強力かつ様々なスキルを所持している。

 噂によればジークのスキル数は十を超えるらしいのだが、俺は二十や三十だって超えることができるということである。

 もちろん、器用貧乏になるかもしれない。
 だがそれでもスキルを沢山持っているというポテンシャルは非常に高いものであり、俺はSランク冒険者すらも超える実力を手にすることができるかもしれないということになるのだ。

「……もし誰かにスキルについて聞かれたら、この《殺奪》だけは隠しておこう。禍の元になってしまうような気がするしな……」

 あくまで直感に過ぎないのだが、なぜか嫌な予感がするのだ。

 まず字面からして物騒だし、これほどまで楽にスキルを取得してしまう事実が広まれば、なにをされるか分からない。

 それに、呪われたスキルとか難癖つけられたらたまったもんじゃない。というのが正直なところである。

「さて、この調子でさらに上の階も目指してみますか」

 一応ゴブリンアーチャーから弓と矢を回収した俺は、赤傘草を生やしたフラワーフロッピを探しつつも四階層目への階段も探していく。

 その道中で赤傘草を生やしたフラワーフロッピを一匹、そして三匹のゴブリンアーチャーと出会ってしまったが、俺は難なく討伐することに成功し、ようやく見つけた四階層目への階段を上っていく。

 しかしいくら上の階層にたどり着いても、そこには変わらない風景が広がっていた。

 だがここにはまた別の魔物がいるはずだと、俺の勘が言っていた。

 なのでその魔物を探しながらも、俺は周りを警戒しつつ始まりの塔の内部を突き進んでいくのであった。
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