スキルが全ての世界で無能力者と蔑まれた俺が、《殺奪》のスキルを駆使して世界最強になるまで 〜堕天使の美少女と共に十の塔を巡る冒険譚〜

石八

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始まりの塔編

第22話 再会

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 久しぶりに浴びる、太陽の光。
 晴れて始まりの塔──いや、秩序の塔からアーラスの中央区へと戻ることができた俺は、雲一つない快晴の青空の下で目を細めていた。

「なんか、昔よりも太陽が眩しい気がするな……」

 こうして太陽を見上げるのはあまりにも久しぶりなのだが、その日差しは頭がクラっとしてしまうほど眩しく、俺は破邪のローブに付いているフードを被って太陽から目を背けた。

「だが、こうして太陽の下を歩けるってのは、案外幸せなことなのかもしれないな」

 そんなことを呟きながらも、俺は痛む足を引きずるように歩きだす。

 途中でちゃんとネアがついてきているのか確認するため後方確認をするのだが、一方のネアは秩序の塔の入口から一歩も動いておらず、ただキョロキョロと辺りを見渡していた。

 だが特にこれといって気になるような物はなかったらしく、ネアは俺の元へと早歩きでやって来たと思えば、当たり前かのように隣に立って俺の顔を覗き込むように見つめてきた。

 なんだか少し距離感が近いような気もするが、こうして誰かと街中を歩くのは初めてなので、嬉しく思っている自分がいる。

 そしていざ人通りの多い大通りへ出てみると、周りの視線が一気に俺の元へと集められる。

 いや、正確に言えばその視線は俺へ向けられたものではなく、俺の隣にいるネアへ向けられたものであった。

 通り過ぎていく者は皆必ず振り返り、露店で肉を焼いているおじさんはネアに見蕩れていたせいで肉を焦がしてしまっており、目の前で談笑をしていた男たちはネアを横目見ながら鼻の下を伸ばしていた。

「(やっぱり、こうして見るとネアって可愛いんだよな)」

 周りからの視線を気にせず歩く姿は、まるで物静かな令嬢のようである。

 しかし悲しいことに、ネアはただ単純に周りの者たちに興味をこれっぽっちも抱いていないため、どんな視線や声にも一切反応しないのである。

 だがそんなネアの元に、明らかに夜遊びをしてそうなチャラい男が近付いてきた。

「よぉ! キミ、この辺りでは見かけない顔だけど、どこから来たんだい?」

 気さくで接しやすい態度でネアに話しかける男だが、ネアは無表情かつ無反応のまま歩き続ける。

 だがそれでも男は負けじとネアに話しかけ、なんとかならないものかとあの手この手を使い、ネアの気を引こうとする。

 しかしネアはまるで声が届いていないかのように無視を続けており、さすがの男もそんなネアの態度にはイラつきを覚えたのか、男はネアの肩を掴もうと手を伸ばしていく。

 その男は先ほどからネアに厭らしい視線を向けていたため、男の手がネアに接触する前に俺は男の手首を掴み、動きを制することにした。

「っ!? て、てめぇ! いつの間に現れやがった!?」

 そんな俺に対し、男は怒声を上げてこちらを睨み付けてくる。

 だが別になにも感じない。
 しかし、だからといって暴力沙汰になるのも後々面倒になってしまうため、俺はあえて下手にでることにした。

「悪いが、こいつは俺の連れでな。諦めてもらえると助かる」

「はぁ!? そんなこと、できるわけねぇだろ!」

 せっかく俺が穏便に済ませようとしたのにも関わらず、男は俺の手を振り払って殴りかかってくる。

 そのため、俺は実力行使に出ることにした。
 といっても、暴力を振るうというわけではない。

 少し気が引けるためこんなことはしたくないのだが、俺は仕方なく男を強く睨み付け、《威嚇》のスキルを発動させることにした。

 すると男の顔色はあっという間に真っ青になっていき、あたふたと慌てながら俺の目の前から立ち去ってしまう。

 どうして近くに俺がいるというのにネアに声をかけたのかと、俺は深々とため息を吐く。

 だがそこで俺は今自分が羽織っている『破邪のローブ』の効果を思いだし、念の為《鑑定眼》で破邪のローブを確認しつつも、俺は頷きながら静かに納得した。

「(そうか。このフードを被ったせいで《隠密》が発動したのか)」

 秩序の塔の宝物庫で見つけて今羽織っているこの『破邪のローブ』は、フードを被ることで《隠密》というスキルが発動するのである。

 しかも、そのスキルレベルは三。
 さすがはレアリティがSランクの装備であるといえる性能であり、その《隠密》を破るには同じスキルレベルの《気配察知》を取得している必要があると、《鑑定眼》で調べた結果明らかになっていた。

 だがいくら《隠密》といっても、もちろん大きな音を立てれば見つかってしまうし、見つかっていない人に触れてしまえば当然のように気付かれてしまうので、そこまで万能というわけではない。

 つまりは、フードを被っている俺を見つけるには《気配察知》のスキルを取得する必要があり、さらにはそのスキルレベルを三に上げないと俺を見つけることは不可能となるのだ。

 そう考えればあの男が俺に気付けないのも納得がいくし、歩いているとよく通行人とぶつかりそうになってしまうのも納得がいく。

 まぁ、つまりは、このような人が密集している場所で使うようなものではないということだ。

「(それでも、フードは外せないな)」

 だが、たとえそうでも俺にはフードを外せない理由がある。

 別に、誰かに追われているから顔を隠したいとか、そのような理由ではない。

 顔を隠したいというのは事実なのだが、その理由として、俺は顔にできた火傷をあまり他人に見られたくないのである。

 ネアに見せたときはなにも言われなかったのだが、自分で自分の顔を触れてみると右頬はかなり大規模に火傷ができていて、他にも左頬の一部や首元、顎の下にまで火傷は広がっていた。

 まだ鏡で自分の顔を見ていないためよく分からないというのもあるが、俺の顔を見てもし怖がられたら割と素直に心が折れるので、こうして隠してるというわけだ。

『……ねぇ、レイ』

「ん、どうした?」

『今、レイはどこに向かってるの?』

「そうだな……とりあえず、俺が所属しているギルドに顔を出すつもりだ。数は少ないが、俺の知り合いがいるからな」

 例えば、アリサやジーク、フィリアなどだ。
 初心者殺しを討伐した翌日、俺はアリサに『無理をしないで帰ってくる』と約束をしたのだ。

 あの約束をした日からどれだけの日にちが経っているかは不明だが、それでもアリサは優しい女の子なので、俺の帰りを待ってくれているはずなのだ。

 だからこそ、俺はアリサに誰よりも早く出会い、無事に帰ってきたと伝えたいのである。

 そしてアリサだけでなく、かつて初心者殺しから俺を助けてくれたジークとフィリアにも会いたいところである。

 彼らはSランク冒険者なため多忙ではあるが、体を張って初心者殺しから助けてくれたことや、気絶した俺をギルドまで運んでくれたことなど、俺はまだお礼を言っていない。

 もしかしたら俺のことなんて忘れてしまっているかもしれないが、それでも俺は借りを作ったままではいたくないので、再会したらまずはお礼を言おうと、俺は心に決めていた。

「よし、ギルドまであと少しだ。ネア、はぐれないようについてきてくれよ?」

『…………ん』

 短い返事を聞き、俺はネアと共に大通りを抜けてアーラスの東区にあるギルドを目指す。

 その道中でネア目的の男に何回か絡まれるというハプニングはあったものの、その他には特にこれといったことは何一つ起きることもなく、俺とネアは秩序の塔を出てから十分ほどでギルドに到着することができた。

 ゆっくりとギルドの扉を押し開くと、ブワッとした熱気とキツイ酒の匂いが俺の体を包み込んでくる。

 そしていざ中に足を踏み入れると、真っ先に聞こえてくるのは罵詈雑言である。

 このことから、俺の所属しているギルドは明らかに治安が悪いといえるだろう。

 だがそんなギルドにも、扉を開けてすぐの場所には綺麗に掃除された受付カウンターの窓口が並べられている。

 そんな受付カウンターの一番左にはアリサが担当している受付窓口があり、俺は少しだけ緊張しつつも真っ直ぐ一番左の窓口へと歩いていく。

 そこには、アリサが座っていた。
 だがアリサは目の前に積まれた資料に目を通しており、目の下にはあまり目立たないが薄らとクマができていた。

 きっと、受付嬢としての仕事が忙しくなり、あまり寝れていないのだろう。

「(……もしかして、話しかけない方がいいか?)」

 一瞬だけそんな思考になったが、それでも俺はアリサに帰ってきたことを伝えるべく、アリサが担当している受付窓口のカウンターテーブルにそっと手を置く。

 そして少しだけ時間を置いた後、俺はアリサに声をかけることにした。

「……えーと、ただいま。で、いいのか?」

「…………え? えーと……あの、どちら様でしょうか……?」

 だが、そんな俺に対してアリサは冷ややかな口調で答えてくる。

 なんでそんな冷たいのかと言及しそうになったが、俺はそこで自分がフードを被っていることに気が付いたので、まず俺は被っているフードを外すことにした。

「……悪い。フードをしてたら分からないよな──ほら、これでどうだ?」

「──っ!」

 怪しい者を見る目でこちらを見つめてくるアリサに対し、俺はバサッとフードを外して顔をさらけ出し、笑ってみせる。

 すると突然アリサの目が大きく見開かれたと思いきや、アリサは手にしていた資料をその場で放り投げ、なんとカウンターから身を乗り出して俺の胸元へと飛びついてきた。

「レイさん……! レイさぁん……!!」

「うぉっ!? ど、どうしたんだ……?」

「どうしたもこうしたもないですよ……うぅ……本当に、レイさんなんですよね?」

「あぁ。当たり前だろ? 少し醜い顔になったかもしれないが、俺はアリサの知っているレイだぞ」

 俺は自分の顔にできた火傷に触れて苦笑いを浮かべるが、アリサにとってはそんなことはどうでもいいようで、涙を流しながら俺の胸元に顔を埋めて強く抱き締めてくる。

 そのせいで俺の体に痛みが走るのだが、それを口にしてしまうほど俺はヤワではないので、俺は痛みに耐えながらもアリサの頭を撫でてやることにした。

「よかったです……! あれから八日間も帰ってこないから、てっきり、レイさんはもう亡くなってしまったのではないかって……」

「ごめんな。だが、俺はこうして帰ってくることができた。だから、もう泣き止んでくれ。な?」

「は、はい……でも、あともう少しだけこうしてていいですか……?」

「いいぞ。それでアリサが満足するならな」

 今のアリサは、まるで年の離れた兄に甘える妹のようである。

 それでいてアリサは涙を流しながらも優しく微笑み、俺の胸に顔を擦りつけながら満足気に喉を鳴らしていた。

 その行為は猫が主人にマーキングをするために体を擦りつける仕草に似ているため、俺はそんな可愛らしく甘えてくるアリサを前にどうすればいいのか分からず、つい顔を逸らしてしまう。

 そこで、俺は周囲から視線を向けられていることに気付いた。

 俺とアリサを見て微笑んでいる者もいれば、なぜか嫉妬の視線を向けてくる者。その他にも俺が生きていたことに驚いている者や、俺の顔にできている火傷を見て少しだけ顔を歪ませる者など、様々であった。

 だがそんな中、俺の元へと歩み寄ってくる者たちがいた。

 数は三人。どれも見覚えのある顔である。

 そしてその中で偉そうに俺を見下してくる男は、俺が最も苦手としている人物である。

 そのため、俺は良心が痛むがアリサに「続きはまた後でな」と伝えてからアリサを体から引き離し、俺は前へ一歩進んでその男の前に立つ。

 そんな俺を見て、男は下卑た笑みを浮かべながら肩を回していた。

「よぉ。久しぶりだな?」

「…………あぁ」

 そう、その男はかつて俺を『無能力者』と貶し、俺をパーティーから追放した男──アレクであった。
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