スキルが全ての世界で無能力者と蔑まれた俺が、《殺奪》のスキルを駆使して世界最強になるまで 〜堕天使の美少女と共に十の塔を巡る冒険譚〜

石八

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ドワイラルク編

第1話 ベーラの森にて

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 アーラスの南側に広がっている、ベーラの森。
 そこは真昼間だというのにも拘わらず薄暗い森で、トカゲやヘビなどの生き物が多く生息している森であった。

 一応魔物も生息しているらしいのだが、このベーラの森に生息している魔物は基本夜行性もしくは臆病な性格をしているらしい。

 そのため、俺の取得している探知系スキルの《気配察知》や《魔力探知》がなにも反応しないことから、今俺たちが歩き進めている場所は安全であると判断できるだろう。

「(……今俺の《気配察知》のスキルレベルは三だから、半径三十メートル以内の気配を察知できるはずだ。それで、えーと……《魔力探知》のスキルレベルはなんだっけな)」

 二だったような、三だったような気がする。
 このスキルレベルの違いはたった一でも大きな性能の差に繋がるので、俺は色々と確認するべく自分に《鑑定眼》を使用することにした。


───────────────

レイ:剣士《五色竜を討ちし者》 男 21歳

ノーマルスキル
・身体能力強化V ・腕力IV ・脚力IV
・刺突Ⅱ ・弓術Ⅲ ・剣術Ⅲ ・槍術Ⅱ
・鎌術Ⅱ ・短刀術Ⅱ ・盾術Ⅱ ・体術Ⅲ
・威嚇Ⅲ ・炎属性魔法Ⅲ ・氷属性魔法Ⅲ
・風属性魔法Ⅲ ・土属性魔法Ⅲ ・光属性魔法Ⅲ

パッシブスキル
・気配察知Ⅲ ・危険察知Ⅲ ・毒耐性 (微)
・温熱耐性(強) ・寒冷耐性(強) ・加速Ⅱ
・炎属性魔法耐性(強) ・氷属性魔法耐性(強)
・風属性魔法耐性(強) ・土属性魔法耐性(強)
・光属性魔法耐性(強) ・魔力操作Ⅱ
・魔力探知Ⅲ ・消費魔力削減Ⅲ ・判断力Ⅱ
・見切り ・先読み ・直感 ・偽装Ⅰ

スペシャルスキル
・鑑定眼Ⅱ ・火事場の馬鹿力
・熱線球生成・放出 ・氷の鎧
・風の障壁 ・錬成 光の翼
・魔法融合

レジェンドスキル
・殺奪

───────────────


 久しぶりに自分のステータスを確認したが、いくら俺でもこれは異常であると理解している。

 イヴルムート・ネオを討伐したことにより様々なスキルのレベルは上がっているし、魔法に関しては全てのスキルレベルが三にまで上がっている。

 それに魔法耐性も《強》にまで上がっているし、新たなパッシブスキルとして《直感》と《偽装》など、イヴルムート・ネオから取得したスキルは意外と多かった。

 スペシャルスキルの《魔法融合》は以前使用したため《鑑定眼》を使用しなくてもいいのだが、《直感》と《偽装》に関してはまだ調べていなかったので、俺はその二つのスキルをスキルレベルが二に上がった《鑑定眼》で調べることにした。

『直感:五感を介することなく、本能的な動きが可能となる。スキルを持つ者の感覚が冴える』

『偽装:鑑定系のスキルや道具でステータスを探られた場合、自分の素性やスキルなどを偽装・隠蔽できるようになる。スキルレベルが上がるごとに偽装・隠蔽できる数が増える』

 まず《直感》は、イヴルムートが俺の《錬成》により突出させた柱を、初見で破壊したときに使用したスキルだろう。

 目や耳から入る情報を脳で処理せず、脊髄反射で行動できるようになるスキル。地味なようで、かなり強力なスキルだと言えるスキルだ。

 そして《偽装》は、そこまで活躍する機会は少ないスキルではあるものの、いつか俺のスキルなどが暴かれそうになったときに、活躍してくれる優秀なスキルであった。

 まぁ、とりあえずスキルの確認はここまでにしておいて──

「……ネア、一旦止まってくれ」

『…………?』

 俺が足を止めてネアの体の前に腕を出すと、ネアは一度俺の腕にぶつかってから一歩後退し、歩みを止めていた。

 そして俺を見つめながら首を傾けるネアを横目に、俺は目を閉じて《魔力探知》のスキルを発動させ、精神を統一させた。

「……ここからちょうど三十メートルくらい先で、誰かが魔物に襲われている」

『…………分かるの?』

「あぁ。俺の《気配察知》が反応したから試しに《魔力探知》を使用してみたのだが、魔力が小さい者を魔力が大きな者が囲んでいる。魔物同士の縄張り争いなら無視でいいが、念の為に確認しに行こう」

『分かった』

 色々と便利そうな《気配察知》や《魔力探知》も、その気配や魔力が人なのか魔物なのか、はたまた動物なのか魔力を帯びた物なのかは判断できないため、実際は自分の目で見てみないと判断できないのである。

 そのため俺はネアを連れて足音を立てないように前へ進み、《魔力探知》が反応した近くにある大きな木の根元でしゃがみ、木の陰からそっと様子を伺うことにした。

「あれは……」

 俺が木の陰から覗き込んだ先には、馬車を引く馬とその馬を操る恰幅のいい御者が、角の生えた大きめのコウモリに襲われているという光景が広がっていた。

 そしてその馬車の周囲にはなぜか大小様々な木箱が散らばっており、数個は木箱の一部が壊れて中身が出ていたりと、色々と悲惨な状況であった。

「(まずは……あのコウモリを調べないとな)」

 角の生えたコウモリに、俺は遠くから《鑑定眼》を使用する。

 そして目の前に現れたパネルに記載された情報を、俺はネアと一緒に黙読した。

『ホーンバット:全長が三十センチのコウモリ型の魔物。夜行性だが、食欲旺盛で二キロ先の餌の香りを嗅ぎ分けることができる。弱点は《雷属性魔法》や《光属性魔法》である』

「ネア、理解できたか?」

『……うん。それで、どうするの?』

「そんなの、決まってるだろ」

 俺はホーンバットの情報が記載されたパネルを消して、ゆっくりと立ち上がる。

「あの人を助ける。ネアは……そうだな。ネアは戦えないから、馬車の周りに散らばった木箱を一箇所にまとめてくれるか?」

『うん、分かった』

 ネアから了承を得て、俺は木の陰から飛び出す。

 普通、女の子に重い木箱を運ばせるなんてありえないのだが、ネアはそこら辺の女の子とは違い、ありえないほどの怪力の持ち主であるのだ。

 以前ネアはギルドに置かれている机を片手で持ち上げ、顔色一つ変えずに場所を移動させていたので、あれくらいの木箱は運べるだろうと、俺は考えていた。

 そんな俺の期待に応えるように、ネアは馬車の荷台の裏にまで転がってしまっている木箱を片手で軽々と持ち上げ、俺が指示した通り荷台の近くに運んで一箇所にまとめていたので、とりあえずは安心だろう。

「よし……俺は、俺の仕事をしなくちゃな」

 冒険者ならまだしも、今襲われている御者はきっと商人のような戦う力を持たない者だと思われるため、一分一秒が命取りとなる。

 スキルは持っていても、戦うためのスキルではないため魔物に殺されてしまう──そんなことが当たり前の、この世界だ。

 過去の俺は、スキルをひとつも持っていない無能力者だった。

 だからこそ、いくら相手が小さな魔物でも、戦う力を持たない者にとっては恐ろしい存在であることを、俺は理解している。

 かつて俺を救ってくれたジークやフィリアのような、見返りを求めずただ善意で人を助ける、そんな存在に俺はなりたい。

 だから、俺は力なき者を守る。
 理由なんていらない。見返りなんかいらない。
 それが、力なき者から力を持ちし者となった、俺の使命なのだ。

「ふっ!」

『ギィ──』

 まず初めに、俺は鋭利な角で男の体を狙っているホーンバットを、鞘から引き抜いた白い剣の剣先で後ろから貫き、一匹目のホーンバットを討伐することに成功する。

 そしてすぐに絶命したホーンバットから剣を抜き、未だ御者台にて腰を抜かしている男の元へとたどり着くことができていた。

「おい! 大丈夫か!?」

「っ! あ、あなたさまは……!?」

「今はそんな説明をしてる暇はない! とりあえず荷台の中に身を隠すんだ!」

「は、はいぃぃ!」

 恰幅のいい男をとりあえず御者台から下ろし、俺は馬の引く荷台に避難させてからホーンバットと対峙する。

 その数は五。
 冒険者にとって、自分たちよりも魔物の数が多い場合は戦わずに逃げた方がいいと言われているのだが、俺は違う。

 俺は秩序の塔十階層目で、十一匹の魔物を一人で相手してきた。

 それに、俺には強力なスキルの数々がある。
 そのため、いくら魔物の数が多かろうと俺は怯むことなく立ち向かうことができていた。

「このスキルなら……どうだ!」

 俺は、俺を囲うように飛び回っているホーンバットたちを、キッと強く睨み付ける。

 それにより《威嚇》のスキルが発動する。
 するとものの一瞬で五匹のホーンバットたちは気絶してしまい、白目を剥きながら地面にだらしなく倒れてしまっていた。

「あ、あれ? まさか、気絶してしまうとはな……もしかして、ホーンバットってあまり強くない魔物なのか?」

 アーラスの外に出たことはあまりないため基準は分からないのだが、個人的にホーンバットはバウウルフよりも強い魔物だと思っていたため、少しばかり肩透かしを食らったような気分である。

 だがあの恰幅のいい男を守ることができたので、不完全燃焼ではあるものの一件落着だろう。

「でもなぁ……」

 とは思いつつも、初心者殺しを倒してからはろくに体を動かすことはなかったため、久しぶりに体を動かしたかった分やっぱり少し残念である。

 だが意識を戻したホーンバットがまた暴れてしまっては意味がないので、俺は未だに気絶している五匹のホーンバットたちにトドメを刺すことにした。

 アーラスの外での戦闘がこんな呆気ない終わり方なのも納得はいかないが、これで救える命を救うことができたので、俺はどこか清々しい気分で一息ついていた──
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