Day Walker

みさ☆バニー

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Day Walker 77

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 まだ夜明け前、九州独特の蒸し暑い夜。
 勿論、エアコン無しじゃ無理。快適な温度だから真夏でも蓮の腕の中で眠れる。

 「起きろ。神からの御言葉だ。」
 「・・ん?何?・・ガブリエルか。」
 「奴等が、動き出す。規模が大きい。心構えよ。」
 「・・おい、凛、起きて。ガブリエルだ。」
 「・・・んぁ?はぁ、ガブリエル?何?」
 「全く、平和ボケだな。そんなに交わりが大切か?」
 バレてる。うん、昨夜しました。

 服を整えて、リビングへ移動。
 「規模が大きいって、どの位だ?」
 「100単位だ。」
 コーヒーを飲もうとしてた手が止まる。
 「100?数百人ってことか?」
 「そうだな、分かってるだけで200はいく。エクソシストもこちらに向かっている。今日中には着くだろう。」
 「戦うにしたって、夜だろう?なんでこんなに早くきたんだよ。」
 「奴等は、ナイトウォーカーだけじゃないからだ。」
 「・・・マジかよ。」
 以前、1人で突入して返り討ちに遭ってしまった類の奴等か。

 「しかも、ターゲットを絞ってる。」
 「誰だ?」
 「華と凛だ。親子というのもターゲットになってしまった要因だろう。」
 「華?なんで、華が?」
 「彼女の瞬間移動能力は、凄まじい。地球規模で移動出来る能力者は彼女しか居ない。」
 「んで、凛は何でだ?」
 「やはり、元来の美貌と能力だろう。」
 「俺と華を拉致って、何する気だ?」
 「まずは、自分達の仲間にするだろう。肉の交わり、血の交わり。」
 つまりは、ドイツの監禁と同じか。華をレイプさせる訳にはいかない。
 「男の俺は兎も角、華だけは守らないと。」
 「凛もだ。2人とも同じくらい大切だからな。」

 華と健太、裕太とロイ、俺達、全員が揃った。
 「規模と、標的ね。私は大丈夫。瞬間移動で逃げ切れる。でも、姫が厳しいわ。姫を中心に守りましょう。」
 「何言ってる。お前もターゲットだぞ。拉致られたら、能力使えるかわからない。」
 「姫、私は捕まる前に逃げられるの。姫は自力で逃げるしかないのよ?」
 「あの、俺、初めてだから分かんないけど、凛を中心に守った方が良いと思う。」
 裕太も、控えめに華に同意した。
 「俺も同感だ。」
 「私も裕太と同じ意見だ。」
 また、俺が足を引っ張るのか。お荷物もいいとこだ。
 「悪い。毎回、俺がターゲットになって皆を巻き込む。」
 「凛の所為じゃないよ。凛と華を拉致る彼奴らが、悪いんだ。交わったところで、仲間にも能力も奪えはしないのに。」
 「お、俺も頑張るから!ね、凛!頑張ろ!」
 裕太は、争いが嫌いなのに、鍛えて戦いに挑む。
 「うん、ありがと、裕太。そうだね。最初から悪い結果を考えてちゃ駄目だな。」
 「で、戦いはいつだ?」
 「夜明けと共に始まるだろう。」

 もうすぐ夜明け。
 皆、外に出る。
 「臭うわ。凄く強い。」
 「あぁ、あの時の臭いだ。死臭と獣臭。分かるか?裕太。」
 「うん、臭くて鼻が曲がりそう。」
 「多いな。エクソシストが到着するまで、保てばいいがな。」
 「そんな怖い事言わないで、ロイ!」
 「あぁ、すまないな。裕太は、私から離れるな。お前も危険な気がする。」
 「俺もだ。裕太、油断すんなよ。」
 俺は、あの1人で突入して、得体の知れないモノに犯された記憶に引き戻されて、身体が固まってしまう。
 「凛、おい、大丈夫か?」
 「あ、あぁ大丈夫。大丈夫。」
 「大丈夫じゃないな。顔面蒼白だぞ。」
 蓮が、腕で抱きとめる。
 「大丈夫、俺が守る。離れるな。」
 蓮は何を考えついたのか、俺と手錠で繋がった。
 「な、何してんの?こんな事してたら、動き難いだろ!外して蓮!」
 「嫌だ。また連れて行かれる位なら、腕を千切られた方がまだマシだ。」

 広場に円陣を組み、物陰から酷い臭いと騒めく気配に対抗する。

 白い影が走る。
 俺の身体がフワッと浮く!
 「凛!渡すか、化け物がっ!」
 手錠のお陰で、蓮の腕の中に引き戻される。
 「いきなりだな。ターゲット、絞ってんな。」

 「うわっ!」
 次は、裕太だ!裕太の身体を何者かが引っ張る。
 「武器を出せ!裕太!」
 「た、助けてっ!」
 「甘い!私が居るわ!」
 華が、裕太を引き摺る闇の者を切り裂く。
 「裕太!アンタ、鍛えたんでしょ!武器位出しなさい!」
 「ヴヴッ、怖いよ、ロイ、俺、怖いよ!」
 裕太はロイの身体にしがみ付いて震えて居る。
 「大丈夫、裕太、お前は強くなってる。恐怖心は捨てるな、だが、恐怖心に押し潰されるな。私も共にいる。」
 「来るぞっ!」
 今まで、様子見だった奴等が一斉にかかってきた!
 「何とかエクソシストが来るまで耐えろ!」
 片腕に俺を抱き、片腕で戦ってる。
 「蓮、大丈夫。手錠離して。俺も戦う。」
 「凛、危険すぎる。」
 「この方が危険だよ、だから、外して?」
 納得出来ないようだけど、外して貰えないと俺も戦えない。

 6人が6人、それぞれの能力で戦い、闇の者共と対峙している。
 数が多過ぎる。時間と共に疲労が見え始める。やっと半分くらいか。どこから湧いて来るんだ。

 人声がする。
 祈りの言葉!エクソシストが来た。
 闇の者共も、身動ぎする。

 フッと戦いの場に隙が出来た。

  「蓮っ!」
 蓮の背後から、大きな獣が襲いかかった。
 ソイツから、蓮を庇う。

 熱い。身体が燃えるように熱い。

 「り、凛、凛!」

 「よくも!姫を!」
 華の一振りで、頭と胴体に分かれた獣。
 横目でそれを見て、膝から崩れ落ちた。

 「凛、凛。何してんだよ、おい。」
 どうして、蓮、泣いてるの?腕を上げようとしたけど上がらない。
 「何で、泣いてるの?身体が熱いだけだよ、痛みはないよ?」

 エクソシストに気を取られ、背後に獣が居たのに気がつくのが遅かった。
 (やられるっ!)
 身構えたが、やられたのは凛だった。
 咄嗟に庇ったんだ。
 凛の身体は引き裂かれ、右腕は千切れ、胴体も、殆ど2つに分かれそうな位深く傷を負った。口からも鼻からも血が溢れる。

 怒りの頂点に達した華は、もうディウォーカーと言うより狩人。怒りは伝染し、裕太もキレた。疲れていたはずのメンツが、再び暴れ出す。
 俺は凛から、離れられない。死なない。死なない筈。身体回復能力がある。不老不死とも言われてる。
 「おい、凛、しっかりしろ!」
 「なんか、身体が熱くてジンジンする。俺平気だから、蓮も彼奴らやっつけて。」
 「大怪我したんだ、ほっとけない!」
 「じゃ、拉致られない様に、俺の近くで戦って?」

 蓮は無事。それで良い。
 今の状況は分かってる。獣に深手を負わされた。視界の端っこに、自分の腕が転がってる。下半身もあり得ない方向に曲がってる。多分、爪か何かで切り裂かれたんだろう。幾ら不老不死、身体回復能力があってもこれはちょっと厳しいかな。せめての救いが痛みがない事か。

 前、灰になった時は蓮の腕の中だった。
 でも、今回はそうはいかない。地面に倒れたまま、霞む視界で蓮を追う。忘れないように。
 愛おしい、命など彼のためなら、捨てられる。
 なんて、カッコいい事、考えなかった。死にたくないなぁ。もう、復活は無理だろうなぁ。最後は、蓮の腕の中が良かったなぁ。寂しいな。うん、怖くはなかったけど、寂しいな。意識が薄らぐ。蓮に大好きって言ってキスしたかったな。
 も、無理かな。瞼が重い。
 「れ、蓮・・・。」
 何とか、名前呼べた。もう、視界は真っ白で何も見えない。
 (ありがとね、こんなオッサンに振り回されて。ちゃんと前向いて生きるんだよ。)
 まだ、戦ってる音がする。
 見えないけど、蓮の気配もする。
 皆んな、ゴメンね。もう、眠るよ。
 蓮、大好き。

 「そっちは!大丈夫か?」
 「何とか!エクソシストも来たし!」
 「凛は?凛は大丈夫?」
 慌てて凛の元へ。
 もう瞼を閉じて、白い肌が一層白くなっている。
 「り、凛、死んじゃったの?」
 裕太が泣きベソかきながら、聞いてる。
 「いや、死んではいないだろう。死んだら灰になる。」
 ロイが、凛の腕を拾い上げ、元の位置に置く。
 「回復能力があるなら、死にはしないだろう。」

 「しかし、もう凛の身体に魂が居ない。」
 ガブリエル!
 「どう言う意味だよ!」
 「私も神ではないから、理由は分からない。身体は回復するだろうが、魂が無いのだから目を醒ます事もないだろう。」
 「それじゃ、死んだと同じじゃない!嫌よ、認めない。姫は死なない。酷い目ばかりあって、最期もこんな終わりなんて、認めないからっ!」
 「落ち着こ、華、きっと何か良い方法がある筈だよ。」
 健太が、華を抱きしめる。

 凛、また最初からやり直しだな。大丈夫、俺が側にいる。


 身体の傷は、1年掛かりで綺麗に治った。だが、意識は戻らない。
 鼻からチューブを通して、流動食を流し込む。味は分からないけどさ、やっぱ、こだわって作るよね。だってパートナーだから。愛してるし。凛の残留思念もちゃんと受け取った。寂しい、大好き。
 うん、ありがとな。それだけで、俺頑張れる。
 今日の飯はどうだ?凛。もう3年目だから
 流動食のプロになったぞ。
 おっと、目が覚めたら、褒めろよ?浮気してないし、寝てる凛にも手出してないからな。



 桜が咲いた。花見に行かなくても、ベランダから、花見できる。
 凛を抱き上げて、ベランダに出る。
 「今日は天気いいぞ。桜も満開だ。あったかいな。」
 もうベランダ花見何回目かな。忘れたよ。凛もすっかり筋肉落ちて、軽くなった。

 

 ねぇ凛、もう戻らないなら、俺も凛の所に行きたいよ。凛、何処にいる?教えてよ。1人で喋ってんの、少し疲れちゃった。

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