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22 とある魔法使いの野望
しおりを挟む●●とある魔法使い●●
魔法使いが見上げるそこには子供が浮いていた。
金髪碧眼の、線の細い人形のように美しい子供だ。
なんで、子供がここにいる?
いや、どうして浮いている?
混乱していた魔法使いは、ある瞬間にピンと来た。
「はは~ん」
これは、誰かの魔導人形《ゴーレム》だな。
高位の魔法使いが作り、さまざまな理由でその場から動けない自分の代わりに外で活動させているのだ。
そうでなければ、こんな子供がこんな高い山にいるわけがない。
浮いているということは飛翔の魔法を使っているのだろう。
才能があれば、あの歳で飛翔魔法を使える者はいるかもしれない。
だが、飛翔魔法の高度は魔法使いの実力や練度に比例する。
こんな、高山に慣れていない者でなければ空気の薄さで倒れてしまうような場所まで飛んで来れるほど使いこなすなど、子供にできることではない。
つまり、魔導人形ということになる。
「くくく、なるほどな。お前も魔晶卵が目当てか!」
そう言ってみたが、空に浮いたままの子供は小首を傾げるような仕草をしただけだった。
「そうはさせん!」
即座に戦うための魔法を展開していく。
ここに来るために使っていた身体強化の魔法をさらに重ねていく。
魔晶卵からも魔力を吸い取り、炎の魔法を強化する。
「力ある者がさらに力を集め、他者との差を圧倒的にしていく。力の偏在を許すわけにはいかんのだ! くらっ……」
魔法使いの頭上に形成された炎は、普段の彼の実力以上に巨大になった。
後はこれを魔導人形にぶつけるのみ、だったのだが。
バクン!
その音が、魔法使いの運命を終わらせた。
●●●●
なんだったんだ?
ちょっと勢いが付きすぎたせいで蹴ってしまったんだが、知らない言語で罵倒されてしまった。
謝る暇もなかったな。
俺たちが普段使っているのは、大陸の半分を支配する帝国共通語なのだが、明らかにそれではなかった。
怒るのは仕方ないにしても、攻撃を仕掛けてきたものだから、これはそろそろ反撃しないといけないかと思っていると、バクリと食われてしまった。
俺に意識を向けすぎていたな。
で、そのバクリとしたのはなにかというと……。
そいつは変な奴を咀嚼しながら俺を見ている。
竜だ。
この前の人っぽい顔をした翼竜とは違う。
翼を持ち、蛇に近い長い体に手足があるのは同じだが、顔が違う。
長く突き出た顎。頭から突き出た王冠のように複数に枝分かれした角。
大きさも、身に纏う魔力の密度も違う。
「お前が、新しいこの辺りの王か?」
竜は低く唸るだけだった。
「あいつは、その卵が目当てだったみたいだが、それは要るのか?」
あの卵が魔晶卵だというのは知っている。
前の王の残したものだろう。
人間にとっては有用な品だが、竜にとってはどうなのか?
竜は唸りながら俺を見ている。
やがて、魔晶卵に目を向けると、今度はそれに向けて口を開け、バクリとしようと動いた。
だが、その前に結界で守る。
「知らん奴にやるぐらいなら壊そうってか? そういう考えは良くないと思うなぁ」
噛みつけなかったことに驚いたのか、竜がこちらを見る。
「やるのか?」
●●竜●●
なんなのだ、これは?
あまりにも小さい。
小さいのに、恐ろしい。
人間の子供だろう。
魔獣ならば、強ければ強いほど大きくなるものだ。
人間は強くとも大きさがあまり変わらないから気をつけなければならないのだが、それにしても小さい。
新たな王として周辺の竜たちと戦い、その力を証明してきた自分にとって、この地は大事だ。
だが、この卵には興味がない。
ただの生まれ損ないの卵でしかない。
人間はこれが欲しいのか?
やればいいと思うのだが、勝手に王座にやってきた不埒者に、罰も与えずにいていいのか?
やらずに食ってしまうか。
そう考えて実行しようとしたら、妨害された。
魔法か、厄介だな。
いや、この人間の子供の眼光。
このままではまずいか。
いや、まずい。
これは、勝てない。
あ、これは殺される。
やばいやばいやばい。
仕方ない、こうなったら。
●●●●
少し睨むと、竜は口の先で魔晶卵を押し、俺のところに持ってきた。
「くれるのか?」
尋ねると、大きく頷いた。
「そうか、ならもらう」
というわけで、魔晶卵をもらった。
話し合いで終わるとか、平和的だな。
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