最強勇者は二度目を生きる。最凶王子アルブレヒト流スローライフ

ぎあまん

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38 聖女の里帰り

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 イルファタのことを少し話そう。
 彼女が俺たちの仲間になったのは、まだ少女の気配が抜けきらない年頃のことだった。
 帝国の西端にあるシャールダーンという国の生まれで、浅黒い肌に目鼻立ちのはっきりとした美人だった。
 まぁ、仲間になった頃は綺麗さよりも生意気さの方が目立っていたが。
 それでも魔王城に突入する頃には落ち着いていた。

 聖女というのは神に選ばれた女性という意味なのだが、選ばれてそれでお終いというわけではない。
 勇者と同じように同じ神に仕える者同士、あるいは他の神に選ばれた聖女とも競ったりする。
 仲間になったのは遅かったが、俺とイルファタは同じく周囲に自分こそが勇者/聖女と認めさせなければならないことで目的が一致していた。
 あいつの最終目標は魔王討伐ではなかったが。

 そんな彼女は魔王討伐後は帝都にある大神殿に招かれ、いまは聖女長という立場にいるのだという。
 帝国における宗教の考え方は、『その地に存在する神は伝わり方の違いで名前が変わっているが、全て我らが神話の中に存在する』というものだ。
 その土地の神を否定はしないが、神に自分たちの神話という新たな物語を付与していき、ゆくゆくは自分たちの神話で統一していくというもの。
 暴論だが、帝国では大きな宗教論争は起きていない。
 そして神側からも異議は出てこない。
 これは俺の雑な感想だが、神というのは力ある存在だが、同時に人間からどういうふうに思われているかには、あまり興味がないのではないかと思っている。
 ともあれ、その帝都にある大神殿とは、まさしく帝国神話の総本山であり、そこにいる聖女長は階級的に教皇の次に位置する。

 つまり、いまのイルファタは帝国内でも上位に入る権力者であるということだ。
 そして、なぜ彼女が里帰りの途中でヴァルトルク王国に立ち寄るからとソフィーが呼び戻されたかというと、フランツとソフィーの結婚式の立会人をイファルタが務めたからだ。
 聖女長が立会人を務めさせておきながら、その結婚がうまくいっていないなどというのは、帝国の宗教界とヴァルトルク王国の間に軋轢を生む原因となる。

 俺たちが王都に強制的に連れ戻されてから、およそ一ヶ月後、イルファタが王都に到着した。
 帝都の聖女長がやってきたのだ。
 パレードが行われ、街では人々が歓呼で迎え、子供たちが聖女長の乗る馬車に花びらを撒いて歓迎した。
 その日は祭りとなり、大人には酒が、子供にはお菓子が振る舞われた。

 城に到着したイルファタを王とその家族たちが迎えた。
 正妃であるソフィーとその息子である俺。
 ……だけでなく、第二妃のカタリーナとその息子のエーリッヒ。
 第三妃のマリアとその娘のソフィアもだ。

 ソフィーと俺はアンハルト宮の侍女たちによる美白術によって、綺麗に日焼けが落とされ、作られた白い笑顔を浮かべている。
 その先にいる聖女長イルファタもまた、作られた笑顔で俺たちを見ている。

「ようこそ、聖女長殿、歓迎いたします」
「盛大なお出迎えに感激しきりですわ。フランツ王」

 フランツの手を取ったイファルタは昔の面影のない作り笑顔を浮かべ、彼に導かれるまま俺たちの前に来た。

「イファルタ様」
「ああ、ソフィー。また大きくなったのかしら? マクシミリアンは元気?」
「ええ。よく会いに来てくれています」
「あら、そうなの? 相変わらず、飛び出す癖が治らないのねぇ」

 澄ましたような顔でソフィーと話をしている。見た目は三十代ほどだろうか。若さを維持するための努力は欠かしていないようだ。
 それから俺に視線を向けた。

「あなたがアルブレヒト殿下ね。初めまして」
「初めまして聖女長様。アルブレヒトです」
「しっかりしているようで感心ね。いつか、あなたのお祖父様の話をしてあげる」
「それは楽しみです」

 彼女と視線が合う。
 ん?
 外さない作り笑顔の向こうに、なにかがあるような気がした。
 あいつ、なにかトラブル抱えてないか?

 
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