作者は異世界にて最強

さくら

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八話

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夜刀神には三段階の解放がある
一つは今久遠が使っている「ガイスト」
夜刀神が夜刀神氷輪月華に回帰した後に使える
機械装甲を纏う夜刀神氷輪月華は、機械装甲を装着者の霊力によって動かす
「ガイスト」は、機械装甲の耐久を無視して高い霊力を流し込むことで、三分間のみ出力を大幅にあげることができるというものだ
三分過ぎると、自動的に機械装甲が解除されてしまうため、使うタイミングを間違えるとただただ霊力が枯渇してしまう
「...あと2分5秒」
機械装甲の補助機能として、視界からの神経伝達物質を加速させる
要するに、世界がスローで見えるようになる。というものがある
これによって切っ先の時速が百キロを超えた騎士団の斬撃も、設置型機関砲による濃度高めの弾幕も難なくかわしていく
「...1分半」
騎士団の鎧を破壊し、戦意喪失させながらクラスメイトの攻撃をさばく
さすがにまだクラスメイトを攻撃するほどの覚悟は決まっていなかった
「42秒...」
久遠は第二段階に移行するため、ガイストを解いた
次なる起動コードを叫ぶ
「第二段階、屋外用最大出力!」
『トリガーON』
外に離脱し、王城前の東京ドーム二個分のスペースにて、二段階目を起動
機械装甲が剥離し、久遠の手元にて再構成される
構成されたのは、全長二メートルほどの砲だ
それを片手で持ち、左手に「身体装甲」を纏って攻撃を迎撃していく
「...首都防衛砲準備、発射までカウント!」
『首都防衛砲始動。発射可能迄残り二分』
(二分は耐えなきゃね...!)
久遠は夜刀神を「防衛用魔導兵器」として設定した
舞台は現代日本だったため、第二段階の形態は「首都防衛砲」ということになっている
用途としてはミサイル迎撃、戦艦狙撃、潜水艦破壊の三通りがある
今起動されているのは、戦艦狙撃だ
とはいえ久遠は、逃げられるように小型展開しているため、戦艦を沈められるほどの威力は出ない
沈んだとしても、せいぜいイージス艦程だろう
「待て桜坂!」
「待てと言われて待つバカはいないよ!」
久遠は逃げながら装甲で弾丸を弾き、剣を受け、『創作者シナリオライター』で魔法を砕く
黒鉄は黒鉄で、部屋に回り込んできた兵士と戦っていると連絡が来ているため、クロガネステイツにはなれない
『起動処理完了。霊力充填率120%』
「首都防衛砲・戦艦狙撃モード。撃て!」
久遠が狙いを定め、夜刀神が発射する
破壊するのは王城の最高階層にあたる時計塔
これが、合図になっている
追いかけてきていたクラスメイトの中から二人、最前に出てきた
「矢矧...?」
「阿賀野さん危ないよ!」
クラスメイトの忠告を無視して久遠に近づく
「いいぜ、久遠。乗ってやる。いや、乗せてやるだな。軽巡矢矧、神速抜錨」
「楽しませてもらうわ、久遠。私たちの指揮官になりなさい。軽巡阿賀野、神速抜錨するわ」
二人は裏切りに気づいたクラスメイトや兵士、騎士団が雪崩のように近づいてくる中で、異能を使った
二人から溢れ出た魔力が空で、軍艦を形成した
それぞれ矢矧、阿賀野になった魔力の塊に、二人が乗り込む
『派手に行くわよ、紅零』
『ああ。ここから先は、俺たちの戦争ケンカだ』
艦底につけられた砲塔が、クラスメイトたちに向けられた
気づいたクラスメイトが指をさし声をあげるが、間に合わない
発射されたレールガンが地面を抉り、クラスメイトを容赦なく肉塊に変えていく
「やるじゃん。第三解放」
『霊装展開』
久遠は再度機械装甲を纏った
先程と違うのは、機械装甲を纏った姿での大きさが倍以上になっていること
そして羽根のようなものが付いていること
「じゃあね、みんな。今度会う時はもっと遊んであげるから」
久遠は羽根に霊力を流し込んで飛行した
羽ばたいている訳ではなく、垂直に
ハッとした団長が、クラスメイトと共に魔法を放つが久遠には効かない
創作者シナリオライター』にて防がれているのだ
同時に、委員長と戦っていた雪音と、廊下にいた兵士を蹴散らしていた桜音、部屋に来た敵を『暴喰者グラトニー』で食い尽くした黒鉄が、水明と天羅に手を引かれて表に出た
そして二人もまた軽巡洋艦を召喚し、三人を乗せた
『また来てやるよ。今度はバカ以外を兵士にするんだな』
『面白くなかったわ。私を楽しませられる人さえいないなんてね』
『期待外れだよ。君たちは大きな戦力を失ったのさ』
『...ばーか』
阿賀野、能代、矢矧、酒匂からの罵声に言葉を失うクラスメイトたちと騎士団
そして魔法で攻撃していた兵士にレールガンが叩き込まれた
そして四艦の軽巡洋艦が、ジジッという音を立てて空間に溶けるように消えた
「...これは、大変なことになりましたね」
エリカ─八雲玲香の後悔と期待の混ざった声が、彼女の居室に谺響する
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