9 / 61
9、魔界博物館
しおりを挟むきゃははは
魔界博物館に反響するちび魔族っ子達の声。
一応魔界で最も古く、カビが生えまくりそうな程度には歴史ある記念物も最大数保管している由緒正しい博物館ではある。
脳筋も多い魔族だが、強者好きの血らしく歴代魔王様方へのファンも多いので何だかんだ観光客も多いのだ。
というわけで今回は書庫番からの出張アルバイト役としてちび魔族っ子達の引率観光案内役である。
はぁ、金貰えるからやるけどマジめんどくせーわー
「ガキ共わかったかー。つまり現魔王様のおじいちゃん達がうっぜー人間達にプッツンしちゃって今に至ってんのよ。ちなみに余裕で勝てたけど面倒いから今はあしらうだけって感じねー。潰しても潰しても幾らでも湧いてくるゴッキーに構うの面倒いっしょー? そんな感じなー。んじゃさっさと次行くぞー」
わー
全然聞いてねぇがまるっと無視する。
はい、次、次
「んでこれがそのこまけー歴史ねー。現宰相作だけどこの細かさがマジ性格表してるよなー」
「はいせんせー」
「何だ?」
「宰相様はずっと生きてるんですかー?」
「あー確か現魔王様と同じ3代目らしいぞー。ちなみにさっき言った登場人物全員生きてるから」
「すーぱーじいじーずですねー」
「だなー」
小さな三角の旗をぴらぴら振る。
園児共の質問に答えるのもお仕事の一つである。
偶に鋭すぎる質問する園児もいるがな。
まぁこいつら見かけは園児だが中には数年で成人の種族もいるから今のうちに教育中なのである。
つまりリアル見かけは子供頭脳は大人のマセたやつらもいるということだ。
おい飛ぶな、ここ飛行走行禁止だから
聞けっつーの、トラップで死にたくねーだろ?
尻触んなっつの
うっぜー、かったりぃ、あー火も禁止だっつーのに
「せんせーこれはー?」
「あ? これは――ぶっっふぁ! ウケる! ワニめっちゃイキってんじゃん!」
「せんせーしりあいー?」
「そうそう、今も存在が黒歴史の脳筋ねー。多分これ万人斬りーとか言ってた武勇伝のだろ。残されてるとかマジ黒歴史」
「おートカゲここかー」
噂をすればである。
さっきまで散らばってたガキ共も、流石に壁画やら巻物に残ってたのが目の前に現れたからか興奮気味にわらわら集まってきた。
「あ、ワニ、ガキ共は食うなよ」
すげー でけー きゃー 硬ってー
大人気である。
こいつ等さっきまで全然話聞かなかった癖にげんきんなガキ共め
ワニも調子に乗って高い高い高すぎるをやっている。
天井に足の裏を当てさせて自力で地面に向けて蹴らせる遊びである。
ワニがやると一般より高速かつ危険だし、博物館の天井めっちゃ高ぇけどまあどっちも楽しそうだからいいか
「おートカゲ分かってるってー」
「てかワニこれお前だろ、マジウケたんだけど」
「これなー、勝手に描かれたんだよなー」
「ワニも金とっとけばよかったんじゃね」
「別に困ってねーしなー」
ねーねーポーズやってー
興奮した園児達が画を指差しワニへと詰め寄る。
「だとよワニ」
「おー、じゃあトカゲいいかー?」
「別にポーズくれーいいんじゃね」
興味無かったので適当にひらひらと手を振ってそこらの絵でも見るかーと移動しようとすると、その手どころか腕ごとワニに捕まれた。
は?
「おー分かったわー」
「え、おいマジやめ」
ぶっしゃーと腕が取られる。
腕を取ったワニはいそいそと画の前まで行っている。
マジかよー、サービス精神旺盛過ぎだろ
リアリティマジワロス
画に比べると貧相な腕だが、大志を抱け的に片腕を掲げたワニが大口を開けてポーズを決めた。
仕方なしにやられたーという感じでその足元へと寝っ転がる。
はぁ、引率ってやっぱ割に合わねーなぁ
って、ちょ、戦斧だすのかよ! 一声掛けろっつの!! 下ろす切っ先で前髪切れたぞ!
すっげー!! ほんものだー!!
あの、写真撮ってもいいですか?
園児どころかなんか一般客まで集まり出した。
動くに動けねぇ…、マジかよ
「がっはっは、いいぞー」
「ワニお前が言うのかよ。えー、これが後世に残ったりしたら死んでも死にきれないんだが」
「トカゲいいじゃねーかー」
ノリノリになったワニの一声で撮影会が始まった。
フラッシュまぶしい
おーい、背中側の宰相の巻物が泣いてるぜ?
まあ血糊じゃなくてリアル血液だから、最近のイベントってすごいわねー、匂いも色も完璧よ、臨場感ヤバイわねーという言葉に全部「ガチっすから」しか言えないのだが
少しして飽きたワニがむっしゃむっしゃと腕を食べて撮影会が終わった。扱いがスナックだが私の腕なんだがな。
「トカゲやっぱうめーなー、好きだぜー。でも時間経つとすぐよりかは味落ちるんだなー。今から結婚しねー?」
「ワニ、セリフが只の食レポだぜ?」
埃を払って立ち上がっていたら何故か周りから拍手された。
は? ガキ共ひゅーひゅーとか冷やかすんじゃねぇ。マジ止めろ、羽毟るぞ
「トカゲ返事はー?」
「私が巻物の中だけに存在する時に返事してやるよ」
結論。一昨日きやがれである。
しっしと野次馬を追い払い茶化すガキ共を次の担当へ引き渡す。
茶化すマセガキ共とバカなワニのタッグはマジ最悪だと知った。
二度と引率なんざやりたくない
「あ、引率ありがとうございました。今日のイベントまたやってくれって問い合わせが凄かったんですよ」
「さいですか」
「で、これ今日のお礼で…」
じゃらりと明らかに重たい袋が渡される。
「また良ければお願いします」
「喜んで」
もう1回くらいならいいかもしんない
後書き
やっぱ現役のヒーローに会えたからか、引率以来園児達の間で憧れの人はー?という質問にワニも以前より更に名前が挙がるようになったようだ。
え?トカゲ?
園児「とかげー? だれですかー? あ、あのせんせーかー。せんせーたまのこしだから、いまのうちにつかまえとけばいいのになんでだったんだろー。へんなのー」
…トカゲがんばれ☆(鬼
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる