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その頃、日本でも問題が起き始めていた。対馬にある和多都美神社周辺で、外国人グループ間の深刻な衝突が発生していたのだ。
どうやらC国人の集団とK国人の集団との間で大きなトラブルになったらしく、現地の警察官の数では対応しきれず、最終的には長崎県警から応援部隊が派遣され、取り調べと現場対応にあたっているという状況だった。
対馬という離島での外国人同士の衝突は、単なる観光客のトラブルとは思えない不穏さがあった。特に、和多都美神社という特別な場所で起きたということが、関係者を不安にさせていた。
そんな中、安藤は防衛省の吉澤の執務室を訪れていた。
「いい部屋じゃないか。俺の部屋とは大違いだ」
安藤は室内を見回しながら、少し羨ましそうに言った。確かに、特別調査室の責任者としての吉澤の執務室は、安藤の地下の部屋とは格段に違う設備と環境を誇っている。
「三週間ぶりか? なかなか姿を見せないんで、お前さんは別組織かと疑ったじゃないか」
吉澤が苦笑いしながら答えた。友人との久しぶりの再会に、少し安堵の表情も見える。
「そんなわけあるか」
安藤は椅子に座りながら答えた。
「あの大先生と一緒に大分に行ったり、アガルタからのお客さんに会ったりで、あっちこっち振り回されているんだよ」
そんな会話をする二人の間には、少し学生時代の仲良かった頃のような雰囲気が感じられた。任務の重圧や責任から離れて、久しぶりに同級生同士として話している時間だった。
「そういえば、アガルタ行きの一行を見送ったのか?」
安藤が本題に入るような口調で聞いた。
「ああ……まあ、そうだな」
吉澤は少し曖昧に答えた。
「実は、自分は表に出ずに、この部屋からモニター越しに見送ったんだ」
「なんで?」
「責任者として最後まで見届けたかったが、同時に万が一の事態に備える必要もあったからな、ここに残らざるを得なかったってところさ」
吉澤の表情に不安が浮かんだ。
「正直なところ、あれだけの少ない装備で送り出したことに不安を感じているよ」
確かに、使節団の装備は最小限に抑えられていた。あまり現代的な装備を持ち込むと、現地で怪しまれる可能性があるからだ。
「まあ、まだ会ったことがないからわからないかもしれないけど」
安藤が前置きをつけて話し始めた。
「花巻先生はあっちじゃあ大魔法使いらしいぞ。その妹も相当すごいらしい」
「魔法使い……まだ実感が湧かないな」
「俺もそうだったが、実際に見ると驚くぞ。それに、その妹の話によると、一緒に来た傭兵も相当強いらしい」
安藤は少し興奮気味に続けた。
「それに何より、防衛省は『無敵の六班』を送ったんだろう?」
「無敵の六班……」
吉澤は苦笑いした。
「確かに、精鋭中の精鋭だが、異世界での戦闘がどうなるかは未知数だ」
「まあ、心配しすぎるな。きっと大丈夫だ」
話題が本題の対馬問題に移った。
「それで、対馬の件だが」
安藤は真剣な表情になった。
「俺の指示で、すでに山縣を現地に向かわせた」
「山縣光彦か? あの釣り好きの?」
吉澤が思い出すように言った。
「そうだ。釣り人の格好で現地の支援組織に会いに行ってもらった。山縣は本当に釣りが大好きだから、大喜びで向かったよ」
山縣光彦は安藤の部下の一人で、趣味の釣りが高じて、全国の釣りスポットに詳しい男だった。今回の任務は、まさに彼にうってつけだった。
「すぐに報告が上がるだろう。だが、こちらももう一度本格的に再調査をしなければならないだろう」
安藤は資料を取り出しながら説明を始めた。
「対馬の和多都美神社には三柱鳥居が二つある」
「二つも?」
「神社に入ってすぐ左手にあるのは、潮の干満で見え隠れするご神体で、鱗状の亀裂が見られるという岩だ。そして、もう一つは、ご神殿の左脇にあり、ごつごつしたむき出しの岩がご神体になっている」
吉澤は興味深そうに聞いている。
「この門はすでに、どちらも五百年近く前に閉じてしまい、開くことはないと思われている。しかし、かつてはナリア皇国に接する、額にツノのある種族の国に繋がっていたという記録があるので、気になるな」
「額にツノのある種族……鬼か?」
「そうだ。思い当たる話があるだろう?桃太郎の鬼ヶ島は、これを元にできた話ではないかと思われる」
安藤の説明に、吉澤は古代の日本と異世界の関係の深さを改めて実感した。
「対馬の警備強化は、吉澤の方で他の部署と掛け合ってくれ」
安藤が頼む口調で言った。
「わかった。海上保安庁や警察庁とも連携を取る必要があるな」
その時、デスクの電話が鳴った。鮎川からの緊急連絡だった。
「はい、吉澤です」
「吉澤さん、緊急事態です。すぐにモニターを見てください」
鮎川の声には明らかに動揺が含まれていた。
吉澤は机のスイッチを押した。すると、壁一面の本棚がゆっくりと移動し、その後ろから九枚の大きなモニターが現れた。
「何だこれは……」
安藤が驚きの声を上げた。
モニターに映し出されたのは、A国の第七艦隊が尖閣諸島を目指して航行している姿だった。
「これは……」
吉澤も絶句した。
「A国の艦隊が尖閣に向かっています」
鮎川の声がスピーカーから聞こえてきた。
「C国の調査船の活動に対する牽制と思われますが、現場海域が非常に緊迫した状況になる可能性があります」
「まずいな……」
安藤がつぶやいた。
「門のある海域で、三カ国の艦船が対峙することになるかもしれない」
状況は急速に悪化していた。アガルタでの調査が進む一方で、地球上でも複数の火種が同時に燃え上がろうとしている。
どうやらC国人の集団とK国人の集団との間で大きなトラブルになったらしく、現地の警察官の数では対応しきれず、最終的には長崎県警から応援部隊が派遣され、取り調べと現場対応にあたっているという状況だった。
対馬という離島での外国人同士の衝突は、単なる観光客のトラブルとは思えない不穏さがあった。特に、和多都美神社という特別な場所で起きたということが、関係者を不安にさせていた。
そんな中、安藤は防衛省の吉澤の執務室を訪れていた。
「いい部屋じゃないか。俺の部屋とは大違いだ」
安藤は室内を見回しながら、少し羨ましそうに言った。確かに、特別調査室の責任者としての吉澤の執務室は、安藤の地下の部屋とは格段に違う設備と環境を誇っている。
「三週間ぶりか? なかなか姿を見せないんで、お前さんは別組織かと疑ったじゃないか」
吉澤が苦笑いしながら答えた。友人との久しぶりの再会に、少し安堵の表情も見える。
「そんなわけあるか」
安藤は椅子に座りながら答えた。
「あの大先生と一緒に大分に行ったり、アガルタからのお客さんに会ったりで、あっちこっち振り回されているんだよ」
そんな会話をする二人の間には、少し学生時代の仲良かった頃のような雰囲気が感じられた。任務の重圧や責任から離れて、久しぶりに同級生同士として話している時間だった。
「そういえば、アガルタ行きの一行を見送ったのか?」
安藤が本題に入るような口調で聞いた。
「ああ……まあ、そうだな」
吉澤は少し曖昧に答えた。
「実は、自分は表に出ずに、この部屋からモニター越しに見送ったんだ」
「なんで?」
「責任者として最後まで見届けたかったが、同時に万が一の事態に備える必要もあったからな、ここに残らざるを得なかったってところさ」
吉澤の表情に不安が浮かんだ。
「正直なところ、あれだけの少ない装備で送り出したことに不安を感じているよ」
確かに、使節団の装備は最小限に抑えられていた。あまり現代的な装備を持ち込むと、現地で怪しまれる可能性があるからだ。
「まあ、まだ会ったことがないからわからないかもしれないけど」
安藤が前置きをつけて話し始めた。
「花巻先生はあっちじゃあ大魔法使いらしいぞ。その妹も相当すごいらしい」
「魔法使い……まだ実感が湧かないな」
「俺もそうだったが、実際に見ると驚くぞ。それに、その妹の話によると、一緒に来た傭兵も相当強いらしい」
安藤は少し興奮気味に続けた。
「それに何より、防衛省は『無敵の六班』を送ったんだろう?」
「無敵の六班……」
吉澤は苦笑いした。
「確かに、精鋭中の精鋭だが、異世界での戦闘がどうなるかは未知数だ」
「まあ、心配しすぎるな。きっと大丈夫だ」
話題が本題の対馬問題に移った。
「それで、対馬の件だが」
安藤は真剣な表情になった。
「俺の指示で、すでに山縣を現地に向かわせた」
「山縣光彦か? あの釣り好きの?」
吉澤が思い出すように言った。
「そうだ。釣り人の格好で現地の支援組織に会いに行ってもらった。山縣は本当に釣りが大好きだから、大喜びで向かったよ」
山縣光彦は安藤の部下の一人で、趣味の釣りが高じて、全国の釣りスポットに詳しい男だった。今回の任務は、まさに彼にうってつけだった。
「すぐに報告が上がるだろう。だが、こちらももう一度本格的に再調査をしなければならないだろう」
安藤は資料を取り出しながら説明を始めた。
「対馬の和多都美神社には三柱鳥居が二つある」
「二つも?」
「神社に入ってすぐ左手にあるのは、潮の干満で見え隠れするご神体で、鱗状の亀裂が見られるという岩だ。そして、もう一つは、ご神殿の左脇にあり、ごつごつしたむき出しの岩がご神体になっている」
吉澤は興味深そうに聞いている。
「この門はすでに、どちらも五百年近く前に閉じてしまい、開くことはないと思われている。しかし、かつてはナリア皇国に接する、額にツノのある種族の国に繋がっていたという記録があるので、気になるな」
「額にツノのある種族……鬼か?」
「そうだ。思い当たる話があるだろう?桃太郎の鬼ヶ島は、これを元にできた話ではないかと思われる」
安藤の説明に、吉澤は古代の日本と異世界の関係の深さを改めて実感した。
「対馬の警備強化は、吉澤の方で他の部署と掛け合ってくれ」
安藤が頼む口調で言った。
「わかった。海上保安庁や警察庁とも連携を取る必要があるな」
その時、デスクの電話が鳴った。鮎川からの緊急連絡だった。
「はい、吉澤です」
「吉澤さん、緊急事態です。すぐにモニターを見てください」
鮎川の声には明らかに動揺が含まれていた。
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「何だこれは……」
安藤が驚きの声を上げた。
モニターに映し出されたのは、A国の第七艦隊が尖閣諸島を目指して航行している姿だった。
「これは……」
吉澤も絶句した。
「A国の艦隊が尖閣に向かっています」
鮎川の声がスピーカーから聞こえてきた。
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「まずいな……」
安藤がつぶやいた。
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