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教授争いは仁義なき戦い
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「真白、心臓血管外科での研修だが、わかってると思うが、教授争いで准教授達がギスギスしているから、俺の側から離れるな!!」
年明けから3ヶ月間。外科研修で心臓血管外科に入局する。
循環器内科で4ヶ月間の間研修を受けていた時に、オペ患者の引き継ぎや受け入れで心臓血管外科と関わりがあった。
『寺野准教授が執刀医か……胃が痛い』
私が受けた患者さんのオペは凛太郎が執刀医をしてくれたから、ゴタゴタする事はなかったけど、 一緒に研修を受けていた初期臨床研修医の沢原先生が、心臓血管外科の准教授にオペの引き継ぎをするたびに心的外傷がでるレベルのパワハラをされ、精神的にまいってた。
整形外科以外の外科の勤務先は限られてる。活躍できる勤務先は大学病院と総合病院しかなく、同じ分野のトップの執刀医は一人しかなれないから、同世代で同じ専門分野を志望する先輩、同期、後輩は、倒すべき敵で、バチバチとライバル心を燃やし、かなりギスギスしてる。
大学病院で勤務できる医師の数は限られていて、外科医としての能力を認められないと2番手以降として関連病院に行くか、民間病院に転職する、もしくは転科するしかなく、必死だ。
心臓血管外科の凛太郎以外の准教授7人は、凛太郎に難易度の高いオペの執刀を取られ、執刀件数も減り、かなり切迫詰まっていて、イライラを募らせてる。
「何かあれば、親父に言えばいい。科長で院長だから。真白が亡くなった大切な友人の娘だと話してたから、パワハラ紛いな事はしてこないと思うが、何されるかわからないから、俺の側から絶対に離れるな!!」
年末年始休暇明けの今年最初の心臓血管外科医局でのカンファレンス。
将生おじさんも新年の挨拶がてら参加し、私を紹介してくれた。
オペの準備で助教と医員はバタバタしていて、准教授は将生おじさんにゴマすりをしていい人ぶってる。
京都大学附属病院は世界一の天才心臓外科医といわれてる将生おじさんがいるのもあり、世界中から心臓血管手術を受けに患者が集まってくる。
それもあり、心臓血管手術の難関オペ件数と成功率が日本No.1で、年始早々から予定オペがびっしりと埋まってる。
心臓血管外科専用のオペ室は12部屋あるのに、患者が殺到してるため、予約は3ヶ月待ち。
心臓外科の医師は准教授が10名、助教が17名、医員が32名と大所帯。
毎日オペに追われてる。
「1月の予定オペのシフト」
凛太郎を指名して他の病院から紹介状を持ってオペを受けにくる患者もいる。
心臓血管手術は難易度が高い。小さなミスで救える命を失わせる危険性がある。
その懸念から実績があり成功率が高い医師が執刀医を任される。
その結果、難易度の高いオペは全て凛太郎が執刀医に選ばれ、オペの件数もかなり分刻みにみっちり入れられていて、他の外科医のスケジュールはスカスカだった。
「真白、予定オペをこなす事だけを考えろ!!医局の人間関係は考えるな!!」
心臓血管外科医局でのカンファレンスが終わり、手術へ移動する。
手術に加わるスタッフは心臓外科医が通常3人、麻酔科医が1~2名、臨床工学技士2~3名、看護師3~4名。
外科医以外は、裏方チームとして同じメンバーでオペに立ち合ってるため、阿吽の息でまとまってる。
将生おじさんが認めてる3チームとオペをこなしていく。
「真白が俺の第1助手ね。心臓外科のオペは基本的に手術支援ロボットを使用するから、助手は1人しかつけない。ここの助教以上の外科医は信用できないから。医員を助手につけて基本的に全て俺がやってる」
自分が上にいくためなら手段を選ばない、助手に入って、わざとミスをしでかし、患者の命を危険に晒して、執刀医を陥れようとする外科医も中にはいる。
オペの様子は記録のためカメラで撮影されていているから、悪事は暴かれる。だから、やらかした外科医は病院から追放されるだけでなく、医者として信用を失い働き口が無くなる。
それでも自分より上の外科医を陥れようと仕出かす外科医が後を絶たない。
患者の命と自分の立場を守るために、凛太郎は心臓外科医の助手は頼る事をしなかった。
だけど、将生おじさんが認めた、人となりも技術も最高レベルの裏方チームがオペに立ち合ってくれるから、オペをこなせてた。
心臓外科の外科医には恵まれていないけれど、オペを行う上では全く困らないとわかりほっとする。
だけど、医局内でのギスギスした空気が嫌でならなかった。
救命救急センターでは重症患者の命を救うのが最優先だから、手術する部位を直接目で見るために開腹手術を行う事が多い。
だけど、凛太郎は開腹手術でなくは腹腔鏡手術で執刀する。
腹腔鏡手術は皮膚切開創が開腹開胸手術よりも少なく、美容的にも優れてる。
手術後の疼痛も開腹手術に比べ軽く、術後の回復が早く、入院期間の短縮と早期に社会復帰できること。
だから、凛太郎は、救命救急センターでもなるべく腹腔鏡や胸腔鏡でオペをしてた。
「……凛太郎が1番、オペが上手。速くて丁寧で完璧。美しい、Bravo!!」
腹腔鏡胸腔鏡手術もしくはロボット支援手術を短時間でこなしていく。
オペ開始から手が止まる事なく流れるように執刀し、オペ終了後、裏方チームが拍手をする。
休む事なく手術着を着替え、オペ室を移動して次の手術に取り掛かるんだけど、オペの時間がめあす時間の3分の1以下な事に驚く。
「ーー父さん、容赦無い。この予定オペのスケジュールはないよな。救命救急センターからのヘルプに入った後なんか、調整で後日に無理矢理スケジュールを入れ込んでくるから、本当に辞めて欲しい」
午前のオペが終わった後、オペ患者の家族に術後の説明をして回り、医局に戻り、お弁当を食べながら電子カルテにオペの記録をしていく。
凛太郎は天才凄腕ドクター。
だから、左手薬指にペアリングをはめていても、女性は寄ってくる。
きれい系可愛い系の看護師や女医、入院患者が、気づいたら凛太郎の側に集まっていて、それがすごく嫌だった。
****
「凛太郎ファンクラブの活動は盛んだな!!」
病棟看護師達は、この時間は病棟患者の昼食の配給と食後薬の配薬があるから本来は忙しい時間。
医師も1時間しか昼休憩がないから、他の科の医局を覗く暇なんて、本来は無い。
なのに、凛太郎を拝みに、医局の周りには看護師と女医と結婚適齢期の患者がいつも集まる。
「凛太郎、おまえ、動物園のパンダみたいだな!!」
外来で受けもってる患者の治療に関して凛太郎に相談をしにきた堂本助教が面白がった。
「ーーパンダじゃねぇ。堂本、何か用?」
1秒たりと無駄な時間を使いたくない凛太郎は、宅配弁当を口にしながら電子カルテにオペの記録を入力する。
パンダ扱いされた事で機嫌を害し、堂本助教と話す時間ももったいないと不機嫌オーラを発する。
「外来で受けもってる患者なんだが、動脈硬化が進行してて大動脈瘤になってる箇所が2箇所あるんだ。定期的にカテーテル治療してるが、同じ箇所が詰まるから人工血管置換した方がいいかなと……」
堂本助教が凛太郎にその患者のCT写真を見せてきたから一緒に覗く。
私が受けもってた何度言っても生活習慣を見直さなかった患者で、早期にオペしないとまずいなというレベルまできていて、心配になる。
「この患者、循環器内科にいた時に真白が担当してた患者だろ?……確か、焼肉とビールが大好きな原田さん。これ……外科的治療が必要だな。一気に進行したみたいだから、早期にオペしないとまずい。解離性大動脈瘤の可能性もないとはいえない。19時以降にオペできるよう手術部にかけあってみる。原田さんにオペ日の相談しといて」
「執刀医は?」
「真白が受けもってた患者だろ。俺が指導医としてついて、真白にさせる。真白ならできる。手先は俺より器用だから」
心臓血管外科の研修に入って最初のオペが、難易度Cの腹部大動脈瘤手術なんて、無茶苦茶だ。
「わかった。原田さんに連絡入れとく。原田さん、真白ちゃんの事を気に入ってたから、モルモットになってくれるよ」
初期臨床研修医が行っていいオペでないはず。
原田さんは凛太郎が指導医として聞き、私が執刀医をする事を了承してくれた。
だけど、明日から2週間アメリカ出張らしく、大切な商談で取りやめや代役を立てれないとかで、3週間後にオペの予約を入れた。
状態があまりよくない事から、凛太郎と堂本さんは、渋い顔をしていた。
「腹部大動脈人工血管置換術でなくステントグラフトでやる?」
ステントグラフトとは人工血管にステントといわれるバネ状の金属を取り付けた人工血管のことで、脚の付け根を4~5cm切開して動脈内にカテーテルを挿入し、動脈瘤のある部位まで運んだところで収納したステントグラフトを放出し、金属バネの力と血圧によって広がったステンドグラフトが血管内壁に張り付き固定される事で大動脈瘤は切除されず残るが、瘤がステントグラフトにより蓋をされることで血流が無くなるり、次第に小さくなるという最新の治療法で、将来的に循環器内科医も執刀できる治療法として注目されてると、凛太郎から説明を受けた。
原田さんにMR検査を受けて貰ったところに大動脈瘤が脳、腕への分枝(弓部分枝)に近いところにあり、人工血管でバイパスを行った後にステントグラフト治療を行うハイブリッドステントグラフト治療を行う必要があった。
それだけでなく、2ヶ所と思った大動脈瘤が7ヶ所もあり、かなり危険な状態だと判明した。
体質的に動脈瘤ができやすい体質で、今まで飲んでいた薬が効かなくなり、短期間に悪化してしまったようだった。
『よりによって、アメリカ出張かぁ……。ジャックフードは食べないように忠告はしたけど、あの人、聞かないからなぁ……」
原田さんはかなり危険な状態だった。身体の中に爆弾を7個も抱えてる。
案の定、帰国してから痛みからか、すぐに病院に駆けつけてきた原田さんは、3個大動脈瘤が爆発寸前だった。
救急車で17時過ぎに搬送された原田さんは救命救急センターに運ばれ、私と凛太郎と堂本助教が呼ばれた。
予定オペを終え、カルテ記録などの事務書類を作成していたら救命救急センターから内線がかかってきて、すぐに駆けつけた。
大動脈瘤は破裂すれば死亡率は80~90%になり、もし1箇所でも損傷したら大出血となり、脳や脊髄、肝臓、腎臓など重要な器官への血流が障害されてしまう。
大動脈瘤が脳、腕への分枝(弓部分枝)に近いところにある場合は人工血管でバイパスを行った後にステントグラフト治療を行う、いわゆるハイブリッドステントグラフト治療を行うのが最前で、大動脈瘤が脳、腕への動脈または胃、肝臓、腸、腎臓への動脈に近いところに十数個ある原野さんはこの方法を取らないといけなく、かなり複雑は術式になる。
それだけではない。胸部大動脈瘤の弓部大動脈瘤も破裂寸前の原野さんは、上行大動脈が拡大し動脈硬化性変化の強く、開胸し人工心肺装置を用いて上行大動脈を人工血管に置換してさらに頭部血管バイパス手術を行った上でステントグラフトを留置する必要があった。
胸部・腹部の横隔膜付近に発生する胸腹部大動脈瘤も2ヶ所も破裂寸前で、腹部も切開して肝臓、腎臓、大腸につながる血管をつなぎかえ、その後、瘤の部分にステントグラフトを留置する必要があった。
「真白は堂本とステントグラフトを頼む」
人工血管の置換は凛太郎が手早くこなしていく。堂本助教に指導して貰いながら、動脈瘤がある血管内にステンドグラフトを留置していく。
オペは3時間もかかった。病理検査には出してないけれど、細菌性が疑われた。
間一髪で原田さんの命は救えたけれど、かなり危険な状態だった。
「真白はもう帰っていい。真凛が待ってる。原田さんが急変するかもしれないから、俺は堂本と病院に泊まる」
真凛は芽衣おばさんにこども園に迎えに行って貰って預かって貰ってる。
私も原田さんの容態が気になるから病院に残りたい。
だけど、凛太郎は不必要な夜勤を私にさせてくれない。
大動脈瘤を持っている患者の約半分の方が冠動脈(心臓を栄養する血管)に何らかの治療を必要とする状態(狭心症)であるといわれていて、急性心筋梗塞も起こしかねない状態ということであります。大動脈瘤手術後の重大な合併症として急性心筋梗塞も起こしかけていて、緊急で冠動脈バイパス手術も行なった。
真凛を迎えに行き、家に連れ帰って寝かしつけた後、今日の緊急オペを思い出し、レポートにまとめる。
上行大動脈瘤を人工血管で置換する時に10分血流を止めた。それにより、脳、全身に血流が行かなくなります。人工心肺循環を用いて、機械で循環を維持しながら体温を下げて細胞の代謝を抑える低体温法と、脳への血流を人工的にコントロールして血流を絶やさない脳灌流法でオペを行ない、腎動脈下の腹部大動脈瘤以外の大動脈瘤手術は、体外循環を用いて臓器血流を維持しながら手術を行った。
大動脈瘤ができるような病的な大動脈の壁は、動脈硬化の変化が著しく、硬く石灰化していて触ると崩れてくるような状態で、合計12ヶ所人工血管に置換した。
最善は尽くしたけど、人工血管に置換する部位の大動脈の血液を止めたから、脳に重大な障害を与えたかもしれない。
原田さんに、凛太郎と堂本助教緊急オペを進めた。電話をかけ、特別に夜間診療で来院して貰い、家族にも説明をした。
だけど、あの人は人のいう事を聞かない人だから、仕事を優先にしアメリカ出張へ行き、その結果、悪化し、手の施しようがないレベルで救急搬送された。
凛太郎の完璧なオペで、3日後、原田さんは目を覚ました。現時点では脳の障害は見られなかった。
救命救急センターで場数を踏んでるのもあり迅速に完璧な執刀を腹腔鏡と胸腔鏡で行なったから、回復は速いはず。
ーーオペは成功した。
だけど、原田さんに対して緊急オペを行わなかった事に対し、心臓血管外科の准教授が難癖をつけ、重症化させた事に対しての責任追及をしてきた。
『俺が先生の言う事を聞かなかったのが悪かったんだ!!』
『……自業自得です。堂本先生と有馬先生から緊急手術を受けるように言われたのに、あの人が聞かなかったから』
原田さん自身と、奥さん、息子達がそう言ってくれてるから、問題にはならなかった。
原田さんの細菌性多発動脈瘤を緊急オペで成功させた事は医学的な快挙で、それにより凛太郎は将生おじさんの後釜として心臓血管外科の教授に任命された。
将生おじさんは、凛太郎に心臓血管外科の教授の椅子を最初から、分け渡すつもりで、水面下で動いていた。
誰もが認める快挙を凛太郎が挙げた時に公表するつもりでいた。
『院長は70までは務めるつもりだが、65過ぎると教授を続けるのはキツい。凛太郎に任せる』
心臓血管外科学会に大学医学部教授会でも承認され、凛太郎は最年少の30歳で京都大学医学部の心臓血管外科教授と附属病院の科長に就任した。
4月から京都大学医学部の教授として、講義とゼミも受け持つ。
「GWに入るまでは多忙だ」
凛太郎は日勤で勤務し、通常通りにオペをこなした後に大学へ顔を出し、教授になる準備をしてた。
だから、真凛とは週末ぐらいしか会えてなかった。
「真白、初期臨床研修の2年目はどこの科を回る予定だっけ?」
「地域医療を1ヶ月行ってから、産婦人科を1ヶ月、小児科を1ヶ月、精神科を1ヶ月で必須を終わらせてから、呼吸器内科を1ヶ月、消化器内科を1ヶ月、血液内科を2ヶ月、循環器内科を4ヶ月で終了予定」
基礎研究医養成枠で初期臨床研究を受けている私は、1年目にキツめのカルキュアムを組んだ。
2年目は日勤の後の研修会はない。だから、研究に力を入れる。大学時代に研究していたiPa細胞について深めた論文を12月末までに仕上げないといけなくて、1年目以上に忙しくなる。
「真白、基礎研究医養成枠で初期臨床研修医をしてるんだよな。1年……研究進まなかったよな。真凛の世話もあるけど、救命救急にあてにされてたから」
なんとか大学院の研究会には出席してた。
「真白の大学時代に研究していた領域と卒論、見た。興味深い」
循環器内科医を目指す傍らで、私は大学1年の夏からiPa細胞から人工血管と血液を作る再生医療の研究をしてる。
「血液内の体細胞を取り出し、iPa細胞シートを短期間で作成する研究。これが実現し実用化されたら、術後の癒着や劣化による交換が必要なくなる。永倉教授が真白に医師でなく研究員になって欲しいと俺に言ってきた」
永倉教授は父と母の医大時代の同期で、父と母とiPa細胞の研究をしてきた。来年60歳になる永倉教授は引退を考えていて、私にこの研究を引き継ぎたいと思ってる。
「ーー俺も再生医療の進化を願ってる。無理のある縫合や人工皮膚や人工血管を使用するより断然身体にいい」
研修先のマッチングの時に悩んだ。だから、選択肢を残すために基礎研究医養成枠で初期臨床研修医をしてる。
私が循環器内科医を目指したのは、凛太郎の片腕になりたかったからだった。
「真白にも、真白のお母さんみたいに、初期臨床研修が終わったら、iPa細胞臨床開発部で iPa細胞研究をして欲しい」
年明けから3ヶ月間。外科研修で心臓血管外科に入局する。
循環器内科で4ヶ月間の間研修を受けていた時に、オペ患者の引き継ぎや受け入れで心臓血管外科と関わりがあった。
『寺野准教授が執刀医か……胃が痛い』
私が受けた患者さんのオペは凛太郎が執刀医をしてくれたから、ゴタゴタする事はなかったけど、 一緒に研修を受けていた初期臨床研修医の沢原先生が、心臓血管外科の准教授にオペの引き継ぎをするたびに心的外傷がでるレベルのパワハラをされ、精神的にまいってた。
整形外科以外の外科の勤務先は限られてる。活躍できる勤務先は大学病院と総合病院しかなく、同じ分野のトップの執刀医は一人しかなれないから、同世代で同じ専門分野を志望する先輩、同期、後輩は、倒すべき敵で、バチバチとライバル心を燃やし、かなりギスギスしてる。
大学病院で勤務できる医師の数は限られていて、外科医としての能力を認められないと2番手以降として関連病院に行くか、民間病院に転職する、もしくは転科するしかなく、必死だ。
心臓血管外科の凛太郎以外の准教授7人は、凛太郎に難易度の高いオペの執刀を取られ、執刀件数も減り、かなり切迫詰まっていて、イライラを募らせてる。
「何かあれば、親父に言えばいい。科長で院長だから。真白が亡くなった大切な友人の娘だと話してたから、パワハラ紛いな事はしてこないと思うが、何されるかわからないから、俺の側から絶対に離れるな!!」
年末年始休暇明けの今年最初の心臓血管外科医局でのカンファレンス。
将生おじさんも新年の挨拶がてら参加し、私を紹介してくれた。
オペの準備で助教と医員はバタバタしていて、准教授は将生おじさんにゴマすりをしていい人ぶってる。
京都大学附属病院は世界一の天才心臓外科医といわれてる将生おじさんがいるのもあり、世界中から心臓血管手術を受けに患者が集まってくる。
それもあり、心臓血管手術の難関オペ件数と成功率が日本No.1で、年始早々から予定オペがびっしりと埋まってる。
心臓血管外科専用のオペ室は12部屋あるのに、患者が殺到してるため、予約は3ヶ月待ち。
心臓外科の医師は准教授が10名、助教が17名、医員が32名と大所帯。
毎日オペに追われてる。
「1月の予定オペのシフト」
凛太郎を指名して他の病院から紹介状を持ってオペを受けにくる患者もいる。
心臓血管手術は難易度が高い。小さなミスで救える命を失わせる危険性がある。
その懸念から実績があり成功率が高い医師が執刀医を任される。
その結果、難易度の高いオペは全て凛太郎が執刀医に選ばれ、オペの件数もかなり分刻みにみっちり入れられていて、他の外科医のスケジュールはスカスカだった。
「真白、予定オペをこなす事だけを考えろ!!医局の人間関係は考えるな!!」
心臓血管外科医局でのカンファレンスが終わり、手術へ移動する。
手術に加わるスタッフは心臓外科医が通常3人、麻酔科医が1~2名、臨床工学技士2~3名、看護師3~4名。
外科医以外は、裏方チームとして同じメンバーでオペに立ち合ってるため、阿吽の息でまとまってる。
将生おじさんが認めてる3チームとオペをこなしていく。
「真白が俺の第1助手ね。心臓外科のオペは基本的に手術支援ロボットを使用するから、助手は1人しかつけない。ここの助教以上の外科医は信用できないから。医員を助手につけて基本的に全て俺がやってる」
自分が上にいくためなら手段を選ばない、助手に入って、わざとミスをしでかし、患者の命を危険に晒して、執刀医を陥れようとする外科医も中にはいる。
オペの様子は記録のためカメラで撮影されていているから、悪事は暴かれる。だから、やらかした外科医は病院から追放されるだけでなく、医者として信用を失い働き口が無くなる。
それでも自分より上の外科医を陥れようと仕出かす外科医が後を絶たない。
患者の命と自分の立場を守るために、凛太郎は心臓外科医の助手は頼る事をしなかった。
だけど、将生おじさんが認めた、人となりも技術も最高レベルの裏方チームがオペに立ち合ってくれるから、オペをこなせてた。
心臓外科の外科医には恵まれていないけれど、オペを行う上では全く困らないとわかりほっとする。
だけど、医局内でのギスギスした空気が嫌でならなかった。
救命救急センターでは重症患者の命を救うのが最優先だから、手術する部位を直接目で見るために開腹手術を行う事が多い。
だけど、凛太郎は開腹手術でなくは腹腔鏡手術で執刀する。
腹腔鏡手術は皮膚切開創が開腹開胸手術よりも少なく、美容的にも優れてる。
手術後の疼痛も開腹手術に比べ軽く、術後の回復が早く、入院期間の短縮と早期に社会復帰できること。
だから、凛太郎は、救命救急センターでもなるべく腹腔鏡や胸腔鏡でオペをしてた。
「……凛太郎が1番、オペが上手。速くて丁寧で完璧。美しい、Bravo!!」
腹腔鏡胸腔鏡手術もしくはロボット支援手術を短時間でこなしていく。
オペ開始から手が止まる事なく流れるように執刀し、オペ終了後、裏方チームが拍手をする。
休む事なく手術着を着替え、オペ室を移動して次の手術に取り掛かるんだけど、オペの時間がめあす時間の3分の1以下な事に驚く。
「ーー父さん、容赦無い。この予定オペのスケジュールはないよな。救命救急センターからのヘルプに入った後なんか、調整で後日に無理矢理スケジュールを入れ込んでくるから、本当に辞めて欲しい」
午前のオペが終わった後、オペ患者の家族に術後の説明をして回り、医局に戻り、お弁当を食べながら電子カルテにオペの記録をしていく。
凛太郎は天才凄腕ドクター。
だから、左手薬指にペアリングをはめていても、女性は寄ってくる。
きれい系可愛い系の看護師や女医、入院患者が、気づいたら凛太郎の側に集まっていて、それがすごく嫌だった。
****
「凛太郎ファンクラブの活動は盛んだな!!」
病棟看護師達は、この時間は病棟患者の昼食の配給と食後薬の配薬があるから本来は忙しい時間。
医師も1時間しか昼休憩がないから、他の科の医局を覗く暇なんて、本来は無い。
なのに、凛太郎を拝みに、医局の周りには看護師と女医と結婚適齢期の患者がいつも集まる。
「凛太郎、おまえ、動物園のパンダみたいだな!!」
外来で受けもってる患者の治療に関して凛太郎に相談をしにきた堂本助教が面白がった。
「ーーパンダじゃねぇ。堂本、何か用?」
1秒たりと無駄な時間を使いたくない凛太郎は、宅配弁当を口にしながら電子カルテにオペの記録を入力する。
パンダ扱いされた事で機嫌を害し、堂本助教と話す時間ももったいないと不機嫌オーラを発する。
「外来で受けもってる患者なんだが、動脈硬化が進行してて大動脈瘤になってる箇所が2箇所あるんだ。定期的にカテーテル治療してるが、同じ箇所が詰まるから人工血管置換した方がいいかなと……」
堂本助教が凛太郎にその患者のCT写真を見せてきたから一緒に覗く。
私が受けもってた何度言っても生活習慣を見直さなかった患者で、早期にオペしないとまずいなというレベルまできていて、心配になる。
「この患者、循環器内科にいた時に真白が担当してた患者だろ?……確か、焼肉とビールが大好きな原田さん。これ……外科的治療が必要だな。一気に進行したみたいだから、早期にオペしないとまずい。解離性大動脈瘤の可能性もないとはいえない。19時以降にオペできるよう手術部にかけあってみる。原田さんにオペ日の相談しといて」
「執刀医は?」
「真白が受けもってた患者だろ。俺が指導医としてついて、真白にさせる。真白ならできる。手先は俺より器用だから」
心臓血管外科の研修に入って最初のオペが、難易度Cの腹部大動脈瘤手術なんて、無茶苦茶だ。
「わかった。原田さんに連絡入れとく。原田さん、真白ちゃんの事を気に入ってたから、モルモットになってくれるよ」
初期臨床研修医が行っていいオペでないはず。
原田さんは凛太郎が指導医として聞き、私が執刀医をする事を了承してくれた。
だけど、明日から2週間アメリカ出張らしく、大切な商談で取りやめや代役を立てれないとかで、3週間後にオペの予約を入れた。
状態があまりよくない事から、凛太郎と堂本さんは、渋い顔をしていた。
「腹部大動脈人工血管置換術でなくステントグラフトでやる?」
ステントグラフトとは人工血管にステントといわれるバネ状の金属を取り付けた人工血管のことで、脚の付け根を4~5cm切開して動脈内にカテーテルを挿入し、動脈瘤のある部位まで運んだところで収納したステントグラフトを放出し、金属バネの力と血圧によって広がったステンドグラフトが血管内壁に張り付き固定される事で大動脈瘤は切除されず残るが、瘤がステントグラフトにより蓋をされることで血流が無くなるり、次第に小さくなるという最新の治療法で、将来的に循環器内科医も執刀できる治療法として注目されてると、凛太郎から説明を受けた。
原田さんにMR検査を受けて貰ったところに大動脈瘤が脳、腕への分枝(弓部分枝)に近いところにあり、人工血管でバイパスを行った後にステントグラフト治療を行うハイブリッドステントグラフト治療を行う必要があった。
それだけでなく、2ヶ所と思った大動脈瘤が7ヶ所もあり、かなり危険な状態だと判明した。
体質的に動脈瘤ができやすい体質で、今まで飲んでいた薬が効かなくなり、短期間に悪化してしまったようだった。
『よりによって、アメリカ出張かぁ……。ジャックフードは食べないように忠告はしたけど、あの人、聞かないからなぁ……」
原田さんはかなり危険な状態だった。身体の中に爆弾を7個も抱えてる。
案の定、帰国してから痛みからか、すぐに病院に駆けつけてきた原田さんは、3個大動脈瘤が爆発寸前だった。
救急車で17時過ぎに搬送された原田さんは救命救急センターに運ばれ、私と凛太郎と堂本助教が呼ばれた。
予定オペを終え、カルテ記録などの事務書類を作成していたら救命救急センターから内線がかかってきて、すぐに駆けつけた。
大動脈瘤は破裂すれば死亡率は80~90%になり、もし1箇所でも損傷したら大出血となり、脳や脊髄、肝臓、腎臓など重要な器官への血流が障害されてしまう。
大動脈瘤が脳、腕への分枝(弓部分枝)に近いところにある場合は人工血管でバイパスを行った後にステントグラフト治療を行う、いわゆるハイブリッドステントグラフト治療を行うのが最前で、大動脈瘤が脳、腕への動脈または胃、肝臓、腸、腎臓への動脈に近いところに十数個ある原野さんはこの方法を取らないといけなく、かなり複雑は術式になる。
それだけではない。胸部大動脈瘤の弓部大動脈瘤も破裂寸前の原野さんは、上行大動脈が拡大し動脈硬化性変化の強く、開胸し人工心肺装置を用いて上行大動脈を人工血管に置換してさらに頭部血管バイパス手術を行った上でステントグラフトを留置する必要があった。
胸部・腹部の横隔膜付近に発生する胸腹部大動脈瘤も2ヶ所も破裂寸前で、腹部も切開して肝臓、腎臓、大腸につながる血管をつなぎかえ、その後、瘤の部分にステントグラフトを留置する必要があった。
「真白は堂本とステントグラフトを頼む」
人工血管の置換は凛太郎が手早くこなしていく。堂本助教に指導して貰いながら、動脈瘤がある血管内にステンドグラフトを留置していく。
オペは3時間もかかった。病理検査には出してないけれど、細菌性が疑われた。
間一髪で原田さんの命は救えたけれど、かなり危険な状態だった。
「真白はもう帰っていい。真凛が待ってる。原田さんが急変するかもしれないから、俺は堂本と病院に泊まる」
真凛は芽衣おばさんにこども園に迎えに行って貰って預かって貰ってる。
私も原田さんの容態が気になるから病院に残りたい。
だけど、凛太郎は不必要な夜勤を私にさせてくれない。
大動脈瘤を持っている患者の約半分の方が冠動脈(心臓を栄養する血管)に何らかの治療を必要とする状態(狭心症)であるといわれていて、急性心筋梗塞も起こしかねない状態ということであります。大動脈瘤手術後の重大な合併症として急性心筋梗塞も起こしかけていて、緊急で冠動脈バイパス手術も行なった。
真凛を迎えに行き、家に連れ帰って寝かしつけた後、今日の緊急オペを思い出し、レポートにまとめる。
上行大動脈瘤を人工血管で置換する時に10分血流を止めた。それにより、脳、全身に血流が行かなくなります。人工心肺循環を用いて、機械で循環を維持しながら体温を下げて細胞の代謝を抑える低体温法と、脳への血流を人工的にコントロールして血流を絶やさない脳灌流法でオペを行ない、腎動脈下の腹部大動脈瘤以外の大動脈瘤手術は、体外循環を用いて臓器血流を維持しながら手術を行った。
大動脈瘤ができるような病的な大動脈の壁は、動脈硬化の変化が著しく、硬く石灰化していて触ると崩れてくるような状態で、合計12ヶ所人工血管に置換した。
最善は尽くしたけど、人工血管に置換する部位の大動脈の血液を止めたから、脳に重大な障害を与えたかもしれない。
原田さんに、凛太郎と堂本助教緊急オペを進めた。電話をかけ、特別に夜間診療で来院して貰い、家族にも説明をした。
だけど、あの人は人のいう事を聞かない人だから、仕事を優先にしアメリカ出張へ行き、その結果、悪化し、手の施しようがないレベルで救急搬送された。
凛太郎の完璧なオペで、3日後、原田さんは目を覚ました。現時点では脳の障害は見られなかった。
救命救急センターで場数を踏んでるのもあり迅速に完璧な執刀を腹腔鏡と胸腔鏡で行なったから、回復は速いはず。
ーーオペは成功した。
だけど、原田さんに対して緊急オペを行わなかった事に対し、心臓血管外科の准教授が難癖をつけ、重症化させた事に対しての責任追及をしてきた。
『俺が先生の言う事を聞かなかったのが悪かったんだ!!』
『……自業自得です。堂本先生と有馬先生から緊急手術を受けるように言われたのに、あの人が聞かなかったから』
原田さん自身と、奥さん、息子達がそう言ってくれてるから、問題にはならなかった。
原田さんの細菌性多発動脈瘤を緊急オペで成功させた事は医学的な快挙で、それにより凛太郎は将生おじさんの後釜として心臓血管外科の教授に任命された。
将生おじさんは、凛太郎に心臓血管外科の教授の椅子を最初から、分け渡すつもりで、水面下で動いていた。
誰もが認める快挙を凛太郎が挙げた時に公表するつもりでいた。
『院長は70までは務めるつもりだが、65過ぎると教授を続けるのはキツい。凛太郎に任せる』
心臓血管外科学会に大学医学部教授会でも承認され、凛太郎は最年少の30歳で京都大学医学部の心臓血管外科教授と附属病院の科長に就任した。
4月から京都大学医学部の教授として、講義とゼミも受け持つ。
「GWに入るまでは多忙だ」
凛太郎は日勤で勤務し、通常通りにオペをこなした後に大学へ顔を出し、教授になる準備をしてた。
だから、真凛とは週末ぐらいしか会えてなかった。
「真白、初期臨床研修の2年目はどこの科を回る予定だっけ?」
「地域医療を1ヶ月行ってから、産婦人科を1ヶ月、小児科を1ヶ月、精神科を1ヶ月で必須を終わらせてから、呼吸器内科を1ヶ月、消化器内科を1ヶ月、血液内科を2ヶ月、循環器内科を4ヶ月で終了予定」
基礎研究医養成枠で初期臨床研究を受けている私は、1年目にキツめのカルキュアムを組んだ。
2年目は日勤の後の研修会はない。だから、研究に力を入れる。大学時代に研究していたiPa細胞について深めた論文を12月末までに仕上げないといけなくて、1年目以上に忙しくなる。
「真白、基礎研究医養成枠で初期臨床研修医をしてるんだよな。1年……研究進まなかったよな。真凛の世話もあるけど、救命救急にあてにされてたから」
なんとか大学院の研究会には出席してた。
「真白の大学時代に研究していた領域と卒論、見た。興味深い」
循環器内科医を目指す傍らで、私は大学1年の夏からiPa細胞から人工血管と血液を作る再生医療の研究をしてる。
「血液内の体細胞を取り出し、iPa細胞シートを短期間で作成する研究。これが実現し実用化されたら、術後の癒着や劣化による交換が必要なくなる。永倉教授が真白に医師でなく研究員になって欲しいと俺に言ってきた」
永倉教授は父と母の医大時代の同期で、父と母とiPa細胞の研究をしてきた。来年60歳になる永倉教授は引退を考えていて、私にこの研究を引き継ぎたいと思ってる。
「ーー俺も再生医療の進化を願ってる。無理のある縫合や人工皮膚や人工血管を使用するより断然身体にいい」
研修先のマッチングの時に悩んだ。だから、選択肢を残すために基礎研究医養成枠で初期臨床研修医をしてる。
私が循環器内科医を目指したのは、凛太郎の片腕になりたかったからだった。
「真白にも、真白のお母さんみたいに、初期臨床研修が終わったら、iPa細胞臨床開発部で iPa細胞研究をして欲しい」
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