大好きだった元彼と結婚させられました

鳴宮鶉子

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恋人なんていりません！！

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「辻井さん、今日のコンパ、来てくださいよ！！1人来れなくなってピンチなんです！！」

1日4000本の記事と向き合う、Ya Appleニューストピックス編集部。

スタッフはエンジニアやデザイナー、企画といったさまざまな職種を含めれば約160人で、そのうちトピックス編集部には約25人が在籍してる。
編集部は、1日に200社、300を超えるメディア（複数のメディアを持つ配信社あり）から配信される約4000本もの記事の中からトピックスとして選択・掲出するのが主な業務で、業務を滞りなく進めるために、4交代制を敷き、常に世の中の動きに目を光らせてる。
リモートワークを推奨してるから、自宅から社内ネットワークとチャットシステムで編集作業にあたることも可能で、災害のような重大な事態が起きたときには、より速く・正確な情報を伝えるために、イレギュラーで夜勤や朝番のメンバーを増員して対応したりする事もあるけど、自宅で仕事をしても問題ないからかなり恵まれた職場だと思う。

トピックス更新業務と並行して新聞や雑誌、配信各社から寄せられるメール、テレビの速報、Twitterなどで話題になっているものを把握しないといけなくて、シフト間で引き継ぎが行われる時間帯にはメンバーが集まり、今日の動きやマークしておくべき話題など、顔を突き合わせながら確認し、もちろん、地方拠点や自宅勤務のメンバーもテレビ会議を通じて参加しないといけない。

東京赤坂にある36階建てのセントラルガーデンオフィスビルの5階～24階にYaAppleのオフィスフロアがあり、オフィスビルから徒歩10分のところにできた42階建てタワーマンション7階中部屋の2LDKを分譲し住んでいる私は、会社が近い事から何かあればすぐに駆けつけられる。

仕事に支障が無いから基本的にリモートワーク中心で勤務してるけど、月に8から10回は平日に出勤しないといけなくて、趣味で株のトレードをしてるから普段は株式市場の取引時間から外れた昼番の14時15分から23時00分の時に出勤してる。

今月は昼番のシフトが週なかに無く、金曜日に通常時間帯の10時00分～18時45分に勤務したら、同じシフトだった子からコンパに誘われてしまった。

「……ゴメン。ちょっと体調崩してて、家に帰ってゆっくりしたい」

「そんな事言わないで来て下さいよ！！グランドプリンセスホテル銀座の最上階にある鉄板焼きレストラン　鉄一のVIP roomで最上級のA5ランクのお肉と最上級の海鮮が食べられるんですよ！！それに、コンパのお相手は楽笑の三木丘社長の御子息にライブアメバの社長、ソミーグループの御曹司ですよ！！辻井さん、28歳なんだから、そろそろ結婚相手を真面目に探さないと“売れ残り女”扱いされるようになりますよ！！」

入社3年目の25歳、パステルカラーの女子アナファッションで栗色の淡いウェーブの髪をなびかせてる女子力がかなり高い　葉山莉子ちゃんがオフィスビルから立ち去ろうとする私の腕をガシッと組んできて、走りのタクシーを拾って私を中に押し込んだ。
莉子ちゃん以外にも22歳の新入社員の牧野麗奈ちゃんと24歳の真田朱理ちゃんがタクシーに乗り込んだ。
可愛い系のキャピキャピガール3人と違って、私はパンツスーツに眼鏡、そしてまとめ髪とお堅いお局オーラが漂う出で立ちでコンパの場に相応しくない。

無理矢理、グランドプリンセスホテル銀座まで連れて行かれ、莉子ちゃんと朱理ちゃんに腕を掴まれて最上階にある　鉄一へ向かう。
東京に出てきて、5年半。お見合いでフレンチレストランや料亭で食事をする事はあっても、鉄板焼レストランに行く事はなかった。

ーーどうせ私は相手にされない。食事を楽しみ、1次会が終わったらすぐにお暇しよう。

人間、諦めも肝心。シャンゼリアで明かりが灯された高級感あふれる鉄一のVIP roomの中に入る。

YaAppleの他の部署の女子力高めの若い子が他に3人いた。

相手側が御曹司やIT企業の社長と多忙で高貴な方々だからか、まだ誰も到着してなかった。

待ち合わせ時間が20時なのに30分前に到着し、作戦会議と称して誰が誰を狙うといった話をしてた。

「辻井さんにアプローチしてくる御曹司がいましたら、私達、全力でサポート致しますから！！」

ありがた迷惑な後輩達……。
絶対に私にアプローチしてくる男なんているわけがない。

気合の入ったボディーラインがもろにわかるファッションに、ピチピチのお肌の麗しき乙女達を口説くに決まってる。

「……私、恋人を作る気ないから。仕事に集中しないし、せっかくだから食事は楽しませて貰う」

私がそう言い終えたタイミングで、男性陣が入ってきた。
御曹司にベンチャーIT企業の社長と裕福なエリート達だから、全員、仕立てのいいスーツに身を包み清潔感が漂うハンサムな顔立ちをしているから、私以外の女性陣はうっとり見惚れてハンターモードに切り替わってた。

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