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結婚適齢期は仕事で過ぎていく

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「伽凛ちゃん、お帰りなさい!!」

「ただいま。白百合さん、家の事して下さり、ありがとうございます。助かりました」

走行実験立ち合いで、2週間、家を空けた。
早朝から深夜まで仕事で、家にはシャワーと寝るために帰っていたから、洗濯物とゴミと埃が溜まっていた。
冷蔵庫の中にも期限切れのヨーグルトや腐りかけのフルーツなどが埋まっていて、それらを小百合さんが全て片付けてくれた。

兄と葛城社長と大学が同じで同じ研究室にいた白百合さん。
デンタの創始者一族の家系で、大学院で半導体のセンサーとインバーターの研究をしていた。
トミタとデルタから半導体製造のための設備提供を受けられたのは白百合さんのおかげ。
2学年下の後輩だから、部品の設計図作成や発注先との交渉もさせられてたらしい。

「伽凛ちゃん、仕事が大変だから。家の事、私に頼ってくれていいから。葛城くん、人づかい荒いからね」

「白百合さんも子育てと兄の仕事を手伝ってるから多忙だから、そんな、甘えられないです!!」

子育てしながら兄の仕事を手伝うのも大変だと思う。
葛城社長からかなり酷使されたからか、白百合さんに同情される。

「伽凛、ウワッ、……やつれたな」

製作室から出てきた兄が私の姿を見て、ドン引きしている。
2週間も走行実験立ち合いしてたら、そうなる。
朝はコンビニのおにぎり、昼と夜はトミタ側から提供される仕出しのお弁当。
後はエナジードリンクとサプリメントを飲んでひたすらパソコン作業をしていた。

「……もうすぐ、28歳になるんだよな。まずいな、このままでは行き遅れるな」

トミタに出向していたから、地味なパンツスーツを身につけていた。
目を酷使するからブルーライトカットのメガネをかけ、長い髪は後にひとつ結び。

「ALICE本社に伽凛と結婚していいって奴、いないのか?」

「……いるわけないでしょ。仕事でそれどころじゃない」

葛城社長の圧で社畜化したALICE本社開発部に、LOVEなんて発生しない。
会社は恋愛するところではなく、仕事をするところ。

「トミタにいいやついなかったか?あっ、……無理か、こんな女捨てた姿だと、恋愛対象にならないか」

白百合さんは御令嬢なのもあり、美人でスタイルが良いだけでなく、身なりもきちんとしている。
メイクもばっちりしていて、いいにおいもする。

「白百合、伽凛にデンタとトミタの出世街道走ってるやつを誰か紹介してくれないか?で、フルコーディネートしてなんとか相手を見つけてやってくれ!!」

行き遅れの妹の事を心配してくれての発言だけど、かなり酷い。
白百合さんは困った顔をしていた。


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