天才小児外科医から溺愛されちゃいました

鳴宮鶉子

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「受精卵になっただけで野原さんにとっては喜ばしい事だと思います。顕微受精に切り替えるも精子の奇形率が高いから、ここまでくるのに25回、3年もかかってるんですよ!!」

「ご主人、毎月顕微受精する日に泌尿科にかかって精巣内精子採取手術を受けて精巣の内部からごくごくわずかに精巣組織の中で産生されている精子を採取してるんですよ」

生殖医療専門医を含む胚培養士・看護師らから成る生殖医療チームメンバーは8人。
患者さんにいつも寄り添っている看護師達は、グレードは悪いが受精卵がやっとできた事に感動しているようだった。

1年間で出生する児の17人に1人は体外受精児で、もはや特別な治療ではなくなりつつある。

「非閉塞性無精子症だと女性以上に痛い思いをしないといけないんだよな。精索ブロック麻酔、鎮静薬注射だけで、陰嚢部分に小切開して精子のいそうな精細管探して採取するんだろう……。俺、無理。ご主人、よくされたよな」

「女性も毎月、卵子を取り出す手術を受けてるから同じ。早く子供を授かって不妊治療を卒業させてあげたい」

「……だよな。今日の9時に移植の予約入ってるよな。産婦人科に回して」

培養室の中でスタッフ全員いて、話に花を咲かしているから中に入れず、生殖医療センターの受付で立って待つ。

「あっ、ごめんね。今日から臨床実習に来るんだったよね!!」

8時半過ぎても誰も迎えに出てくれず、受診開始5分前に産婦人科に胚を運ぶために出てきた看護師さんにやっと存在に気づいて貰った。

「京都大学医学部6年倉沢心愛です。4週間、お世話になります」

培養室から出てきたスタッフ全員に挨拶をする。

「初めまして、助教の矢部湊です。泌尿器科医で生殖医療専門医です」

「同じく助教の和田果穂です。産婦人科医で生殖医療専門医です」

「培養士の宮木聡太です」

「培養士の三宅哲です」

「同じく培養士の坂本詩織です」

「看護師の伊東奈緒です」

「同じく看護師の佐藤渚です」

「受付の中川彩子です」

小さな医局スペースにあるオフィス机の席に座ったメンバー達が自己紹介してくれた。

「生殖医療センター長で准教授の久保将生。倉沢さん、もしかしてお母さん、小児科医の倉沢咲愛?」

「……はい、そうですけど」

私の顔をじっと見つめくる瀬戸准教授。

「倉沢咲愛、シングルマザーでひとり娘を育ててるって本当?男の影なかったのにいつのまにか妊娠して子供産んでたって聞いた」

「はい。私の出生に関しては母が話してくれないので知りませんが、シングルマザーで私を育ててくれました。父らしき人に会った事はないです」

私の返しに対し、久保准教授は目を見開き表情が固まる。

「久保准教授が大学院生の時に当時付き合っていた彼女とハイグレードの受精卵を作ったと武勇伝語ってましたが、彼女がその受精卵から産まれた子ってオチないですよね?凍結してたら子供を作る時期は調整できますし」

「……その可能性は無いとは言えない。凍結胚は破棄したと言ってたが、子供欲しさに残していたかもしれない。咲愛に確認したいが、俺、妻子いるからな。これ、隠し子になるのか?」

久保准教授に対し、生殖医療センターのチームメンバーは冷たい眼差しを向ける。
自分の投げかけた質問のせいで知らない方が良かった事実を知ってしまったと矢部助教授は慌てふためき、私に申し訳なさそうだった。

「……聞かなかった事にします。なので、気にしないで下さい。遺伝子的に私の父親かもしれませんがそんな事気にせず、赤の他人の医大実習生として私にご教授下さい」

卵子と精子を1つのシャーレの中に入れて培養してできた凍結胚で私は産まれた。

人工授精や体外受精に愛がないとは思ってないけど、母と久保准教授によって実験的に作り上げられたと思うと悲しくなる。

生殖医療センターでの臨床実習の間、メンバーから優しくされ丁寧に色々教えて貰ったけど、やりにくさを感じた。

産婦人科医になり生殖医療専門医を目指そうと思ったけど、ここの生殖医療センターで働く気にはなれず、初期研修先は京都大学附属病院ではなく他の総合病院に進む事に決めた。

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