天才小児外科医から溺愛されちゃいました

鳴宮鶉子

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「精子無気力症だとなかなか受精しないんだよなぁ……」

生殖医療専門医の指示で体外受精と顕微受精のシャーレでの作業を培養士が行う。
お預かりした精液の中から質の良い精子を集めるために精子調整液を数種類の精子調整液を使うも全く動こうとせず、精子の運動性の賦活化のために精子賦活化液(ペントキシフィリン)も用いる。

「この中から選別するしかないか。心愛さん、やってみる?」

「……は、はい」

奇形ではない動きのあるオタマジャクシみたいな精子を特殊なスポイトで吸い上げ、受精用培養液に入った卵子(シャーレ)に精子を加えて(媒精)、受精させる。
採卵した卵子は8個で、未成熟な状態のGV期が2個にMI期が4個で、成熟してるMII期が2個しかなく成熟度は悪い。

「5BAと4 BBを移植で、5BCと4CB、3BCを凍結ですね」

患者さんから5~6日目の胚盤胞期の胚を移植する胚移植を希望され、5日の午後にできあがった胚の状態説明と動画を見せた後に、産婦人科で移植をする。
移植用の柔らかいチューブに胚を入れ、超音波で観察しながら、チューブを子宮腔内に挿入して注入。

培養液の選択と管理が良かったのか胚のグレードが思ったより良く、48歳夫と42歳妻という妊娠する事が難しい年齢でも妊娠する事ができた。

「妊娠はできたけど、健康な子が産まれるかはわからないな。卵子と精子の質が問題あったからな。外科的手術や投薬で治療できる世の中だから、産まれてこれたらなんとかなる」

安達病院での半年間の研修期間、自分の血を引く子供が欲しく不妊治療をする夫婦に寄り添い、妊娠するための大変さを目の当たりにした。

採取する前にホルモン剤の投薬と生活改善の指示をして卵子と精子の質を上げるも、体外受精と顕微受精で採取した卵子と精子のパフォーマンスをあげて受精させても、遺伝子はどうしようもできない。

25歳~29歳の妊娠確率は約40%、30歳~34歳の妊娠確率は約35%~40%、35歳~39歳の妊娠確率は約25%~30%、40歳~44歳の妊娠確率は、約10%~20%、45歳~49歳の妊娠確率は、5%未満。
35歳を過ぎたあたりから急激に卵子や精子の質が下がる。

結婚年齢が上がり高齢出産になり不妊治療でないと子供が授かれず、授かれても先天性疾患を持って産まれる子供が多くなった。
自分の血を引く子供が欲しく、高額な治療費をかけ、身体にも負担がかかる時間調整しないといけない不妊治療をする。
安達病院は妊娠率は高い方で、それでも体外受精の成果は平均 +25%。

若い時に採取した卵子と精子の凍結解凍の方が妊娠確率は高く、20代で採取して凍結する事を推奨する活動を涼真先生が起こしていて、私もそれに賛同した。


「来月からは大阪母子医療センターで研修だっけ?俺の親友、瀬戸一輝が小児科にいる。あいつ天才新生児専門医で小児外科医。先天性疾患持って産まれた小さな子供を外科的に治療して生かしてる」

涼真先生と瀬戸先生が親友と聞き、驚く。
ハーバードメディカルスクール繋がりなのかもしれない。

「あいつに指導医について貰うよう俺からも口添えしといた。あいつの父親と俺の両親と心愛さんの母親、大学時代の大親友だから、俺らも医者として助け合える関係になれたらいいよな」

まさかの親の繋がりで、さらに驚く。
母は口数が少ない人で必要最低限の事しか私に話さない。
小児科医としての姿はそばにいるから知ってるけれど、医大時代や研修医時代の事は母の口からは聞いた事がない。
だけど、医学的な事で相談しあえる医者仲間はたくさんいる。

安達病院の院長と副院長もそう。
母の娘だから、歓迎された。
外来診療もさせて頂き、安達病院で不妊治療だけでなく婦人科と泌尿器科の内視鏡手術に立ち合わせて貰い、深い学びを得る事ができた。

母の人脈に感謝してる。
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