2 / 10
指導医に妖精扱いされるわたし
しおりを挟む
桜の花が咲き乱れる、4月1日
癌治療の専門医になりたいと思ってたわたしは、京都大学医学部を卒業後、日本一の癌治療の最先端技術を持つ、東京にある国立がん研究センターで研修医として勤務する事になった。
わたしが癌治療の専門医を目指したきっかけは、高校卒業する直前に父が胃癌で亡くなった事。
男手一つでわたしを育ててくれた父
わたしは癌でたった1人の肉親を失い、孤独になった。
癌は恐ろしい病気。
大切な人が癌で亡くなる事なく、残された家族が哀しみ嘆かずにすむよう、癌治療のスペシャリストとして、癌患者の命を救いたいとわたしは思った。
初出勤の日
わたしは気を引き締め、勤務先の病院へ向かった。
国立がん研究センターの敷地内に植えてあるソメイヨシノがあまりに美しくて、まだ時間的に余裕があるからと、わたしは樹の前で、咲き乱れる花びらを見てた。
わたしの父が亡くなって、1人で生きて行こうと福岡から京都に移り住んだ時も、桜の花が満開だった。
わたしにとって、桜の花が舞う季節は、再出発の日なのかもしれない。
そんな事を考えていたら、誰かがわたしに近づいてくる気配がした。
「さくら……」
桜吹雪の中にいるわたしを見て、男性が声をあげた。
男性の声に驚き、声がした方に振り向く。
スーツをスマートに着た、シルバーフレームの眼鏡をかけた、知的な雰囲気を漂わせている端正な顔立ちをした男性がいた。
その男性はわたしを見て、目を見開いて固まってしまった。
桜の妖精か幽霊でも見たかのようなリアクションに困り、わたしはその場を後にした。
初出勤だから、どこの科でお世話になるかの任命式が行われる。
医院長室で行われると連絡があったから、病院の最上階の12階に向かった。
医院長室の前に、わたしと同い年ぐらいの人が3人立っていた。
任命式の前に、小声で、自己紹介をしあった。
「俺、北海道大学の医学部卒の相良 圭(さがら けい)、よろしく」
「東京大学医学部卒、藤堂 誠司(ふじとう せいじ)、こちらこそ、よろしく」
「名古屋大学医学部卒、佐伯 美咲(佐伯、みさき)。こちらこそ、よろしく」
初期研修医は今年は4人、採用されたらしい。
医院長室の中に招かれ、医院長から、
相良さんと佐伯さんは循環器内科で、わたしと藤堂さんは循環器外科に、研修医として入る事を任命された。
まさかの外科からの研修スタートに、戸惑いつつも、全力で取り組もうと思った。
藤堂くんと、循環器外科に向かう。
2年間の研修医期間に、全ての科を回る予定で、4ヶ月間ずつローテンションする予定になってる。
循環器外科の医局へ入る。
朝のミーティングをしていた。
「京都大学医学部卒の天宮一花です。よろしくお願いします」
ドクターとナースが30人程集まる中で 、自己紹介をした。
「藤堂くんは、葛城先生について、天沢さんは結城先生について。葛城先生、結城先生、ちょっと出てきて」
循環器外科長が、指導医を指名した。
40代前半ぐらいの葛城先生と、……今朝、桜の樹の下で出会った、20代後半ぐらいの容姿端麗な男性が、前に出てきた。
容姿端麗な男性が結城先生で、わたしの方に近づいてきた。
「仕事に慣れないうちは何かとご迷惑をおかけするかと思いますがどうかご指導のほどよろしくお願いします」
結城先生と2人になり、これからお世話になるからきちんと挨拶をした。
結城先生は、わたしにどう接したらよいか戸惑ってる感じがした。
口数が少なく、聞かないと教えてくれなくて、でも、聞いたら優しく教えてくれる。
国立がん研究センター中央病院の循環器外科でオペのセンスはピカイチらしい結城先生。
結城先生のオペを見学室からモニターで見ていて、神の手だと思ったわたし。
ただ、わたしを妖の類のような目で見てくるから、結城先生の下に着くのが辛かった。
癌治療の専門医になりたいと思ってたわたしは、京都大学医学部を卒業後、日本一の癌治療の最先端技術を持つ、東京にある国立がん研究センターで研修医として勤務する事になった。
わたしが癌治療の専門医を目指したきっかけは、高校卒業する直前に父が胃癌で亡くなった事。
男手一つでわたしを育ててくれた父
わたしは癌でたった1人の肉親を失い、孤独になった。
癌は恐ろしい病気。
大切な人が癌で亡くなる事なく、残された家族が哀しみ嘆かずにすむよう、癌治療のスペシャリストとして、癌患者の命を救いたいとわたしは思った。
初出勤の日
わたしは気を引き締め、勤務先の病院へ向かった。
国立がん研究センターの敷地内に植えてあるソメイヨシノがあまりに美しくて、まだ時間的に余裕があるからと、わたしは樹の前で、咲き乱れる花びらを見てた。
わたしの父が亡くなって、1人で生きて行こうと福岡から京都に移り住んだ時も、桜の花が満開だった。
わたしにとって、桜の花が舞う季節は、再出発の日なのかもしれない。
そんな事を考えていたら、誰かがわたしに近づいてくる気配がした。
「さくら……」
桜吹雪の中にいるわたしを見て、男性が声をあげた。
男性の声に驚き、声がした方に振り向く。
スーツをスマートに着た、シルバーフレームの眼鏡をかけた、知的な雰囲気を漂わせている端正な顔立ちをした男性がいた。
その男性はわたしを見て、目を見開いて固まってしまった。
桜の妖精か幽霊でも見たかのようなリアクションに困り、わたしはその場を後にした。
初出勤だから、どこの科でお世話になるかの任命式が行われる。
医院長室で行われると連絡があったから、病院の最上階の12階に向かった。
医院長室の前に、わたしと同い年ぐらいの人が3人立っていた。
任命式の前に、小声で、自己紹介をしあった。
「俺、北海道大学の医学部卒の相良 圭(さがら けい)、よろしく」
「東京大学医学部卒、藤堂 誠司(ふじとう せいじ)、こちらこそ、よろしく」
「名古屋大学医学部卒、佐伯 美咲(佐伯、みさき)。こちらこそ、よろしく」
初期研修医は今年は4人、採用されたらしい。
医院長室の中に招かれ、医院長から、
相良さんと佐伯さんは循環器内科で、わたしと藤堂さんは循環器外科に、研修医として入る事を任命された。
まさかの外科からの研修スタートに、戸惑いつつも、全力で取り組もうと思った。
藤堂くんと、循環器外科に向かう。
2年間の研修医期間に、全ての科を回る予定で、4ヶ月間ずつローテンションする予定になってる。
循環器外科の医局へ入る。
朝のミーティングをしていた。
「京都大学医学部卒の天宮一花です。よろしくお願いします」
ドクターとナースが30人程集まる中で 、自己紹介をした。
「藤堂くんは、葛城先生について、天沢さんは結城先生について。葛城先生、結城先生、ちょっと出てきて」
循環器外科長が、指導医を指名した。
40代前半ぐらいの葛城先生と、……今朝、桜の樹の下で出会った、20代後半ぐらいの容姿端麗な男性が、前に出てきた。
容姿端麗な男性が結城先生で、わたしの方に近づいてきた。
「仕事に慣れないうちは何かとご迷惑をおかけするかと思いますがどうかご指導のほどよろしくお願いします」
結城先生と2人になり、これからお世話になるからきちんと挨拶をした。
結城先生は、わたしにどう接したらよいか戸惑ってる感じがした。
口数が少なく、聞かないと教えてくれなくて、でも、聞いたら優しく教えてくれる。
国立がん研究センター中央病院の循環器外科でオペのセンスはピカイチらしい結城先生。
結城先生のオペを見学室からモニターで見ていて、神の手だと思ったわたし。
ただ、わたしを妖の類のような目で見てくるから、結城先生の下に着くのが辛かった。
0
あなたにおすすめの小説
憧れの小説作家は取引先のマネージャーだった
七転び八起き
恋愛
ある夜、傷心の主人公・神谷美鈴がバーで出会った男は、どこか憧れの小説家"翠川雅人"に面影が似ている人だった。
その男と一夜の関係を結んだが、彼は取引先のマネージャーの橘で、憧れの小説家の翠川雅人だと知り、美鈴も本格的に小説家になろうとする。
恋と創作で揺れ動く二人が行き着いた先にあるものは──
皆に優しい幸崎さんは、今日も「じゃない方」の私に優しい
99
ライト文芸
奥手で引っ込み思案な新入社員 × 教育係のエリート社員
佐倉美和(23)は、新入社員研修時に元読者モデルの同期・橘さくらと比較され、「じゃない方の佐倉」という不名誉なあだ名をつけられてしまい、以来人付き合いが消極的になってしまっている。
そんな彼女の教育係で営業部のエリート・幸崎優吾(28)は「皆に平等に優しい人格者」としてもっぱらな評判。
美和にも当然優しく接してくれているのだが、「それが逆に申し訳なくて辛い」と思ってしまう。
ある日、美和は学生時代からの友人で同期の城山雪の誘いでデパートのコスメ売り場に出かけ、美容部員の手によって別人のように変身する。
少しだけ自分に自信を持てたことで、美和と幸崎との間で、新しい関係が始まろうとしていた・・・
素敵な表紙はミカスケ様のフリーイラストをお借りしています。
http://misoko.net/
他サイト様でも投稿しています。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
如月 そら
恋愛
「二度目は偶然だが、三度目は必然だ。三度目がないことを願っているよ」
(三度目はないからっ!)
──そう心で叫んだはずなのに目の前のエリート役員から逃げられない!
「俺と君が出会ったのはつまり必然だ」
倉木莉桜(くらきりお)は大手エアラインで日々奮闘する客室乗務員だ。
ある日、自社の機体を製造している五十里重工の重役がトラブルから莉桜を救ってくれる。
それで彼との関係は終わったと思っていたのに!?
エリート役員からの溺れそうな溺愛に戸惑うばかり。
客室乗務員(CA)倉木莉桜
×
五十里重工(取締役部長)五十里武尊
『空が好き』という共通点を持つ二人の恋の行方は……
私の婚活事情〜副社長の策に嵌まるまで〜
みかん桜
恋愛
身長172センチ。
高身長であること以外ごく普通のアラサーOL、佐伯花音。
婚活アプリに登録し、積極的に動いているのに中々上手く行かない。
「名前からしてもっと可愛らしい人かと……」ってどういうこと?
そんな男、こっちから願い下げ!
——でもだからって、イケメンで仕事もできる副社長……こんなハイスペ男子も求めてないっ!
って思ってたんだけどな。気が付いた時には既に副社長の手の内にいた。
同期に恋して
美希みなみ
恋愛
近藤 千夏 27歳 STI株式会社 国内営業部事務
高遠 涼真 27歳 STI株式会社 国内営業部
同期入社の2人。
千夏はもう何年も同期の涼真に片思いをしている。しかし今の仲の良い同期の関係を壊せずにいて。
平凡な千夏と、いつも女の子に囲まれている涼真。
千夏は同期の関係を壊せるの?
「甘い罠に溺れたら」の登場人物が少しだけでてきます。全くストーリには影響がないのでこちらのお話だけでも読んで頂けるとうれしいです。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる