Destiny Lover〜檸檬の薫りのような恋〜

愛しい人に瓜二つな研修医 side大翔

国立がん研究センター中央病院で、循環器外科医として勤務を始め、5年が経った。

生まれつきの手先の器用さで、外科医として癌治療の医員をしている俺。

愛する人、新谷咲良（しんたに さくら）の命は、救う事ができなかった。

でも、今、癌専門外科医となり多くの命を救えてる。


6年目の春

勤務先の病院の桜の樹の下に、女性が立っているのに気づき、思わず、目を奪われた。


桜吹雪で長い髪に桜の花びらが絡む姿が妖麗で、女性に目を奪われた。

見つめてるとその女性の顔貌が、咲良と瓜二つだという事に気づく。

卵型の小顔、白い透き通った肌、大きな二重の瞳、ふっくらした小さな唇に、小さな形のいい鼻、の美しい女性。
俺の記憶の中にある咲良、そのものだった。

俺がじろじろ見すぎたのか、その女性に気味が悪く思わられ、その女性は院内に消えていった。

俺はその女性が、咲良の幽霊なのかと、思ってしまった。

それほど彼女は、咲良に似ていた。


偶然という必然なのか、俺は、その女性の指導医になった。

天沢一花

咲良とは全く別人な彼女……。

なのに、見た目も声も咲良にそっくり過ぎて、咲良じゃないとわかっていても、咲良に思えて、彼女に指導医としての役割を担う事ができてなかった。

「結城先生、あの、レントゲンの見方を詳しく教えて下さいませんか？」

俺が教えようとしないから、時間を見て、聞いてくる天沢一花。
天沢一花の、甘えた声で俺を見つめてくる瞳に、俺は、必要以上に、この時だけは、あれこれ教えた。

「勉強になります！！ありがとうございます」

天沢一花は俺の話を真剣に聞きメモし話を聞き終わると、円満の笑みを浮かべ俺に御礼を言う。

咲良と瓜二つな顔貌で言われ、複雑な心中だけど、嬉しく思う俺がいた。