社畜、やり手CEOから溺愛されちゃいました

鳴宮鶉子

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割り切った大人の関係

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「理音、“バトル探偵”やっぱ最高だね!!」

久しぶりに大学時代からの親友、沢井美月ちゃんと土曜日の午後、池袋にあるコラボカフェにアフタヌーンティーを食べにきた。
“バトル探偵”の昔懐かしのポスターやパネルが貼られ、席からまじまじと見つめる。
キャラクターのグッズも売られていて、売り切れたら嫌だから注文後に席を立ち、買いに走り、全商品購入した。

「そういえば、2年前にBARで神坂一輝と偶然会って飲んで理音、お持ち帰りされた事あったじゃん」

「……うん」

「“バトル探偵”続編の制作で神坂一輝に再会とか、無いの?」

美月ちゃんは神坂一輝がサイバープロジェクト代表取締役CEOの神崎遥輝だとは知らない。
通りすがりの2度と会う事がない相手だからと親友のどこかの大企業の御曹司に、“バトル探偵”の著者だという事をバラされたけど、実名と経営している社名は語らなかった。
まさか親会社の代表取締役CEOとして、再会するとは思っていなかった。

「理音、スタイルいいし可愛い顔してるのにすっぴんに黒縁メガネにTシャツにチノパンって勿体無いよ」

BARに飲みに行った時は美月ちゃんにワンピースとアクセサリーを借りメイクを施して貰ったから、普段の私とは全くの別人。

1年半前に一夜限りの関係を持った相手だと神崎遥輝代表取締役CEOに気づかれる事なく、仕事で顔を合わせるたびに複雑な心中になる。
容姿端麗で起業家社長として成功したハイスペックな男性だから、かなりモテると思う。
BARで知り合った女性としょっちゅう一夜限りの関係を持っていて、相手の事はすぐに忘れ去ってるのかもしれない。

美月ちゃんも私みたいにお持ち帰りされ、一夜限りのその場限りの割り切った大人の関係を持ってしまい、目覚めてすぐに彼を置き去りにして逃げ帰った。

名前も社名も名のらない、だけどお金は持ってる男に対し、体の関係を持ってしまった自分自身が情けなくなり、半年ほど塞ぎ込んだ。

あれからBARには行ってない。
お酒に呑まれ記憶が曖昧な中、その場限りの人との情事で処女喪失してしまった。

BARで出会った時に神坂一輝だと友人の御曹司がバラしたけど、証拠を見せられたわけではなく、それをただ信じて、彼との一夜を美化した。

実際に彼は“バトル探偵”の著者で出版社取次業最大手起業の取締役社長CEOで、でも、あの一夜はなかった事のようにスルーされてる。

「そうそう、BARで会った落ちぶれ御曹司、あの人ね、任報社のデジタル広報部長だった」

最近、彼と仕事で再会し、腹が立つ事があった美月ちゃん。
32歳でデジタル広告開発部長の地位につけているのは凄いと思う。
大企業は家柄関係なしの実力主義。
仕事ができないと役職につけない。

過去の事はなかった事にして誠意ある対応をしていた美月ちゃんに対して、彼がかなり冷淡な対応をしてきたからその態度はないと咎めたら、玉の輿狙ってる痛い婚活女子だと思われたらしく、言い寄られたら面倒臭いから遇らうためにわざと冷たい対応をしたと言われ、美月はぶち切れたらしい。

美月ちゃんの話を聞き、神崎遥輝代表取締役CEOがあの一夜を忘れ、私に対してノベルスターの一社員として扱ってくれてよかったと思ってしまった。







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