Dive in !〜貴方に食べて貰いたい〜

鳴宮鶉子

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fasting

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水曜日と金曜日はた仕事が定時で終われる日があり、そういう日は大学時代の友人か会社の人と飲みに行く大河。

わたしが晩御飯の買い物に行く前に連絡をくれるからそういう日は1人飯だから適当飯で終わらすかわたしも大学時代の友達か会社の同期か同僚に声をかけてご飯を食べに行く。

金曜日の夕方に大河から、“飲み会に行くから夕ご飯いらない”とLINEがきた。
だから、同じ製品開発部の同期 葉山茉莉花《はやままりか》ちゃんとイタリアンカフェで夕ご飯を食べに行く約束をした。
終業後に茉莉花ちゃんと一緒にオフィスビルを出てようとしていたら、総務課にいる婚活に勤しむ同期の山川奈緒子《やまかわなおこ》ちゃんに捕まり、
「葉山さん、鈴原さん、予定なかったら飲み会にきてくれない!!ドタキャンが2人出て、人数が足りなくて困ってたの!!」
飲み会というコンパに誘われた。

「……飲み会ってコンパでしょ。行かない」
茉莉花ちゃんが嫌そうな表情を浮かべて山川さんをあしらう。

「今日のお相手はソミーの優秀なエンジニアの皆さんですよーー!!
2人とも彼氏いないんでしょ!!」
山川さんが手を合わせ、神頼みするみたいゆ茉莉花ちゃんにお願いする。
ソミーは大河が勤めてる会社で大河もエンジニアをしてる。

「……茉莉花ちゃんが行くならわたし、行ってみたいな」

コンパ、イコール、カップルにならないといけないわけじゃないから参加してみたいと思った。

「……美優が行くって言うなら行くわ」

まさかわたしが行くと言うと思ってなかったのか茉莉花ちゃんは驚いた表情を浮かべてた。
いつもはコンパは誘われてもわたしは即お断りしてる。

新橋のお洒落な創作和食居酒屋 蒼月でコンパが行われるらしく、勤務先の昭和がある京橋から参加メンバーの同期の女の子達とタクシーで向かう。

6月の中頃で初夏だけど、ミニスカートに胸元や肩が出るトップスの、気合が入った服装してる山川さんを含む6人。
制服がある一般職勤務だから通勤着が弾けてる。

わたしと茉莉花ちゃんはレッセパッセとアプワイザーリッシェの落ち着いたパステルカラーの服を着ていて、参加メンバーの女の子達から浮いてる気がした。

新橋駅側の店の前でタクシーを降りて、男性陣はもう到着してるとの事で店の中に入った。

男性陣は6人しかきてなく、後の2人はラインロボットの不具合で横浜にある工場に行ってるとかで遅れてくるらしい。

気合の入った山川さん達が6人のメンズの横に座りアピールを始めたから、わたしは茉莉花と端の席に座り2人で茉莉花ちゃんと仕事の話でもら上がった。
でも、食べ放題飲み放題のコースだったから、アルコールや料理の追加注文や食べ終わった皿を端に寄せてお店の人に持って行って貰う役目はした。

コンパが始まって30分経った頃に茉莉花ちゃんとお手洗いに立ち、戻ると遅れてきた2人を見て固まる。

奥の席に座って、奈緒子ちゃん達に囲まれてる。
参加しているメンズの中でダントツでカッコいい2人で、出世もしてる。

「……あの2人カッコいい。あの2人なら付き合ってみたいかも!!」
わたしの耳元で茉莉花ちゃんが囁く。

婚活レディーズが2人に群がってるから、さっきまでちやほやされてたメンズ6人がわたしと茉莉花ちゃんに近づいてきた。

わたしも茉莉花ちゃんも男性と話すのが苦手で、適当に相槌を打って乗り切る。
そして、王様のようにちやほやされてるカッコいい2人に気づかれないように端で小さくなってた。

アルコールの追加と料理の追加注文は端の席に置いてあるタブレットでするから、山川さんに「鈴原さん、追加注文お願い」と言われ、カッコいい2人と目が合い固まる。

わたしが動かないから茉莉花ちゃんがタブレットを持って山川さん達の所に行ってくれ、ほっとしてた。
そしたら6人のメンズがわたしに話しかけてきて1人で相手をしないといけなくなり焦った。

「……美優、お前門限あるだろっ、帰るぞ」

カッコいい2人のうちの1人、大河がわたしの前にきて、かなりダークなオーラを放った。

「……この子は俺の幼馴染で隣に住んでる子。父親が心配してるかもしれないから連れてくわ」

大河はそう言うと1万円をメンズの幹事に渡してわたしの手を引いて個室から出て、店の前でタクシーをひらって有楽町にあるマンションへ向かった。

タクシー内でも黙ってる大河。
かなり怒ってるようで、タクシーから降りてマンション内に入り、エレベーターに乗って部屋の前に着くと、自分の部屋に戻ろうとするわたしの腕を掴んで大河の部屋に入れた。

そして、入ってすぐに壁に追い込まれ、いわゆる壁ドンをされ、至近距離で大河に凝視められて恐怖を感じる。

「……美優、俺が飲みで夜飯がいらない時、コンパに参加してたんだ?」

「してない。今日、初めて参加した」

嘘はついてない。
なのに信じてくれず、大河はかなり怒った表情を浮かべた。

わたしは知ってる。
大河が夜ご飯がいらない時、2回に1回はコンパで、飲むだけでなく女の子とワンナイトラブをしてるのを……。

次の日の朝に起こしにいくと、髪の毛からいつもと違うシャンプーの匂いがして、それに首筋や胸元にわたしがつけてないキスマークがついてた。

大河はコンパで知り合った女の子と遊んでるのに、わたしはコンパに1度だけ参加しただけなのに責められる。

「……わたしと大河は幼馴染で恋人じゃない。
わたし、大河が飲み会と言いつつコンパに行って、女の子とホテルでエッチしてるの知ってるよ。
……大河、もう、この関係、終わりにしよう。
わたしもそろそろ結婚相手を探したし、大河もその方がいい……」

10年間、わたしは生活面のお世話と性欲の捌け口として大河に尽くしてきた。
でも、そこから恋人には発展しなかった。

大河の靴をパンプスの尖ったヒールで踏み、腕が離れた隙に玄関のドアを開けて出て、隣の自分の部屋に入って鍵を締めてチェーンをかけた。

いつも月に3~4回の遊びだからと考えないようにしてたけど、大河が山川さん達婚活女子に囲まれてるのを見て、許せなかった。

自分から大河の関係を終わらすとは思ってなかった。

シャワーを浴びてベッドの中に入り、枕を涙で濡らしながら、気づいたら眠ってた。


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