Make a happy home

鳴宮鶉子

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産みの親との決別

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シンガーソングライターとしてメジャーデビューをした事がきっかけに、小説家として脚本家としても仕事を頂き、私も慌ただしい日々を送るようになった。

「“バーチャルスキャンダル”の舞台挨拶、今週末だっけ?」

復縁をして半年が経った。お互い仕事が忙しくて、付き合った日以外は同じ家で寝起きを共にするだけでなかなか一緒に時間を楽しむ余裕がもてず、すれ違いの日々を送る。

私が高校生時代にノベルスタで投稿した青春ミステリー小説がアニメ化され放映される事になり、脚本作成と主題歌だけでなく、ヒロイン役の声優も務めさせて頂いた。

「うん。土日と2日間いないから」

金曜日に東京からスタートさせ、土曜日が名古屋と京都、大阪、そして日曜日が広島、福岡と回る事になってる。

「東京の試写会舞台挨拶に俺、行くから。親父とお袋もくるって」

エブサイトの大規模リニューアルでまだ落ちつかないのに、3時間半都合をつけて来てくれると知り、嬉しく感じた。

子供の頃、運動会などの発表会や参観日に両親が観にくるのがすごく嫌だった。
帰ってから母に小声を言われると思うと緊張し、ミスを犯してしまい、結果、家に帰ってから2時間立たされ説教をされ、そして、罰で夜ご飯を食べさせて貰えなかった。

あの苦痛がいまだに根づいてる。
だから、両親には試写会舞台挨拶のチケットを渡してない。

ソミープロダクションを辞めない私に母は腹を立ててる。
不思議な事に母は私に対して何も言ってこない。
だから年始末休暇に実家に戻らず、あれから一切連絡をとってない。

東京での試写会の日。
上映前と上映後で2ヶ所映画館を回る事になってる。
初めが新宿、終わりが有楽町。

「櫻井さん、映画館の裏口に櫻井さんのご両親が来られてますがどうします?チケットは持ってないようだから待たせてます。上映まで時間も推してるから会う時間はないですが、立ち見になりますが入って貰いますか?」

京映のスタッフの方が控え室にいる私の所へきた。
弁護士の父は情報番組等でテレビ出演をしてる。
父娘の関係だという事はすぐにネタにされ、それ故に私と親しい業界人は私の父の顔を知ってる。

「……チケットない事を理由に追い返して下さい」

母が映画館の裏口にあると聞くだけで私は動揺してしまった。
気持ちを切り替えないといけないと思うも体が震えてしまう。

壇上での挨拶はなんとか間違わずに言えたけど、引きつった笑みになってたと思う。

放映前挨拶を終え裏口から移動用のバスに乗ろうとしたら、外に父と母がいた。
母が鬼の形相を浮かべて私を睨んできて、体が強張る。

移動のバスの中で私は恐怖で体を震わせてしまい、初舞台挨拶で緊張してると誤魔化すも、スタッフや他の共演者に心配をかけてしまった。


有楽町の映画館に着き、スタッフルームで缶コーヒーを口にし、気持ちを落ち着ける。
この会場では最後に主題歌を歌う事になっていて、声が震えて上手く話す事もままならない状態で歌う事ができるか不安にかられた。

このままでは失敗してしまう。
舞台袖から試写会に来場して下さった方々の様子を覗く。
アニメの後半で映画に魅入ってくれていて、ほっと胸を撫で下ろす。

エンディングが終わり、会場に明かりが灯され、司会者に呼ばれて監督を先頭に1列に並んで壇上にあがる。
監督の挨拶の後に、司会者の進行で役を演じた感想や撮影時のエピソードや共演した相手と監督の印象、出来上がった映画を観ての感想をなんとか言葉にして発する。
司会者に私に話を振らないようお願いをしていても、脚本と主題歌にヒロイン役を務めたのもあり、どうしてもマイクが渡される。
事前に聞かれそうな事に関しての受け答えを考えてきてたから、それを噛まずに言い間違えないように話す。

ふと、客席の真ん中の1番いい席が目に入った。
そこで理人と奏音さんが満面の笑みを浮かべてた。
その笑顔をみて、母による恐怖の呪縛が解かれ、いつもの調子が戻ってきた。

ラストの主題歌の生ライブも大成功に終わり、ほっとした。


****

「俺、関係者になるから」

エブサイトのシステム開発部の課長から常務に出世した理人が、ノベルスタの責任者として監督に挨拶へきた。

舞台挨拶初日で明日は8時の新幹線で名古屋に向かわないといけない事から、客が会場からでた後に裏口から1人ずつこっそり出て、タクシーに乗り込み帰路につく。

今日は会社に戻らずマンションに戻ると、理人が挨拶にきてくれた時に私の耳元で囁いてた。

理人が早く帰ってきてくれて側にいてくれる事が、とても嬉しかった。


「おかえり、音羽」

マンションに戻ると理人は先に家に着いてて、シャワーを浴びてでた所だった。

ボクサーパンツだけ履いて、髪をタオルでワシワシと拭いてドライヤーで乾かしてる間に私もシャワーを浴びた。

恥じらいというものがあり、ずっと洗面室にいられたら出るにも出られなくて困ってたら、いきなりドアを開けられバスタオルで長い髪をマッサージするよう拭かれた。
そして体全体も隅々まで優しく丁寧に水滴を拭われ、乾いたバスタオルで体を包み込まれた。

「ドライヤーで乾かすから、でて」

至れり尽くせりで、私が歯磨きをする間に髪を乾かしてくれた。

「……音羽、寝室へ行こうっか?」

背後から抱きしめられ耳元で囁かれたら頷いてしまう。

いつもはところかかわらず、私を抱こうとするのに、今日は私をエスコートするように左手を握りしめ、寝室まで連れていく。

ベッドに組み敷かれ、舌を絡めるキスをしながらバスタオルを剥がれ、おでこから爪先まで優しく全身を愛撫され唇を這わせられる。

胸と秘所には触れず焦らされながら高みに到達し、体がつらい。

「……触ってないのに乳首が立ってて、ここはひくついててべちゃべゃ」

やっと胸の膨らみを触られ口に含まれ、そして蜜口に長い指を差し入れられたら激しく掻きだすよう弄られ潮をふいてしまった。

「今日はゆっくりじっくり楽しみたかったけど、これみたらもう限界だ。中に入れたい」

敏感な芽も吸われ、イキ続け、身体を弓なりに反らせ体を震わせながら、私は喘いでた。

ベッドポートの引き出しから避妊具を取りだすとすぐに装着させて、私に覆いかぶさり胸を弄りながら腰を抽送する。

そして、私の右脚を左肩に持ち上げ最奥を貫いてきた。
あまりの気持ちさに意識を失いそうになる。

いつもならそんな私を起こして情事を続けるのに、理人は私を抱きしめ後頭部を撫でて寝かせてくれた。

だから、ぐっすり眠りにつく事ができた。






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