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ライブツアー
全国ライブツアーが始まってから1ヶ月が経った。
鬼の居ぬ間の休息。
金曜日の午後から土日、自由を思いっきり楽しんでいた。
「水沢さん、金曜日の夜、予定なかったらコンパ参加してくれないかな。1人来れなくなって困ってるの!!」
瀬川社長のせいで仕事が忙し過ぎてあまり話す機会がなかったアニメーション制作課のメンバーと話すようになり、ランチや飲み会、コンパに声かけて貰えるようになった。
最高の週末を明けた月曜日。
「水沢、コンパどうだった?」
アニメーション制作課のお兄さんに声をかけられ、金曜日のコンパでの事を報告する。
「楽しかったよ。笑天の人とLINE交換したの。土曜日にネズミーランドに行くんだ」
日本大学の大学卒芸術学部卒のお姉様に誘われて参加した初コンパ。
男性陣の職業が凄かった。
笑天に電道にGooglo。
社畜生活のせいで世間知らずで話の話題についていけずにずっと静かに座っていたけど、笑天の人が『LINE交換しよう』って言ってくれて、交換したらネズミーデートに誘われて嬉しくて小躍り踊ってる。
「上手くいったらいいな」
私立中高一貫女子校に通っていた私は、中2の時のいじめがきっかけで登校拒否してた。
高校卒業後は大学に進学せず、アニメーション制作に必要なスキルが学べる専門学校にダブルスクールしてたから遊ぶ暇がなかった。
彼氏いない歴=年齢
“すかいばーど”に就職し、鬼の居ぬ間に課のメンバーと打ち解け、青春を謳歌できるようになった。
「水沢、スタッフ足りないからライブの手伝いしろっ!!」
ルンルン気分でいたら、ダースベーダーの登場ソングが似合う瀬川社長がいつの間にか私の背後にいて、ライブスタッフの仕事を押し付けようとしてきた。
「それ、私の仕事ではないですよね!!他の人に頼んで下さい!!」
全国ライブツアーのバイトならやりたい人は社内にたくさんいる。
「1番歳が若いお前がやれ!!」
ドスが効いた声で脅され、恐怖から首を縦にふる。
私の開放的な週末のある日々は終わりを遂げる。
***
不本意過ぎる全国ライブツアー同行。
「君が水沢伽音さん、初めまして!!」
瀬川社長と会場入りし控え室に入ると、衣装に着替えた“くりすた”のメンバーが集まってきて、かずきさんに声をかけられた。
「初めまして、かずきさん、ふたばさん、みつおさん、しろうさん、ごろうさん、むつきさん、ななおさん!!」
本当の名前か疑問だけど、数字に因んだ名前のメンバー達と挨拶をかわす。
「えいと、さっさと着替えてこいよ。もうすぐ開演だ」
かなりギリギリの時間に到着してしまった。
「あのう、私は何を手伝えばいいんですか?」
1番若いという理由で連れて来られた。
スタッフTシャツを着て大学生バイトと会場内の案内もしくはグッズの販売をするのかなと何も聞かされてなかったから焦る。
「あっ、……舞台がよく見えるところで見てて。で、ファンが沸く瞬間を調査しといて」
「はっ!?」
スタッフが足りないと連れてこられたのに、ファンの反応観察を言い渡される。
鬼の居ぬ間の休息を堪能しているのに腹を立て瀬川社長は私を巻き添いにしたのだろう。
「私服だと自由に身動きできないからスタッフTシャツない?」
「予備あるかな……」
スタッフTシャツの下は自前の長ズボンみたいで、スーツを着てきた私は浮いてしまう。
「そのままでいい。水沢は運営側だから。右腕にスタッフの腕章つけていたら問題ない」
「………」
18時スタートで3時間の予定で公演が行われる。
“くりすた”のワンマンライブではないけど、ファンが手にしているのは“くりすた”のグッズばかり。
えいとのうちわを持ってるファンが多く、気の毒に思う。
「えいとくーん、こっちみて!!」
信者の呼びかけに、ぞっとする。
所属Vチューバーのファンよりも圧倒的に“くりすた”の追っかけが多かった。
ついでで他チームのパフォーマンスも乗ってくれてたけど、小物パフォーマンスはあまりなかった気がする。
アンコールで30分延長するも、22時に解散になった。
反省会を兼ねて宿泊するホテルの宴会室に集まり、ブュッフェスタイルの軽めの食事を取る。
時間も時間だから野菜中心の軽めな料理が並んでいた。
「やっぱ、“くりすた”の人気は不動みたいですね」
動画制作課の社員達と食事を取りながら話す。
ライブやサイン会などはイベント課の管轄で、話せる人があまりいなく、心細い。
2.5次元アイドル達は2.5次元アイドル同士で集まっていて、場違いなところに連れて来られ、食事はいいから部屋に帰りたくなる。
「水沢さんも“くりすた”のファンだったんだよね」
「あ、……はい」
ライブに行きたいがためにCDシングルを買い漁り、えいとのうちわとペルライトを持参してライブに行った。
運よく抽選が当たった武道館でのラストライブ。
『えいと、こっち見て!!』
と叫んだら、瀬川社長が振り向いてウィンクしてくれて、キュン死しそうだった。
本性を知らなかったから。
今思うと、ゾっとする。
「推しは誰だった?」
「……推しですか?」
言いたくない。
2次元の瀬川社長が推しだとは。
3次元の瀬川社長にいじめられ過ぎて、ファンだったのが黒歴史に思える。
入社してから多忙すぎて自宅の模様替えができてなく、2次元バージョンの瀬川社長のタペストリーやうちわがいまだに飾ってる。
帰宅したら、速攻外して燃えるゴミに出す。
嫌、メリカリ見たら高額になってたから、面倒臭いけど売るのもありかもしれない。
「……私は“くりすた”が推しです。誰が推しとかなかったです」
誤魔化す。
“くりすた”メンバー勢揃いしているこの場で言えば告白的に受けとられるから避けるのが正解だと思う。
土日は朝、昼、夜の3公演。
あまりにも抽選販売の倍率が高かった公演を増やした。
そのためスケジュールがみっちりになり私は公演中は会場内にいるだけだけど、それでもかなり疲れた。
鬼の居ぬ間の休息。
金曜日の午後から土日、自由を思いっきり楽しんでいた。
「水沢さん、金曜日の夜、予定なかったらコンパ参加してくれないかな。1人来れなくなって困ってるの!!」
瀬川社長のせいで仕事が忙し過ぎてあまり話す機会がなかったアニメーション制作課のメンバーと話すようになり、ランチや飲み会、コンパに声かけて貰えるようになった。
最高の週末を明けた月曜日。
「水沢、コンパどうだった?」
アニメーション制作課のお兄さんに声をかけられ、金曜日のコンパでの事を報告する。
「楽しかったよ。笑天の人とLINE交換したの。土曜日にネズミーランドに行くんだ」
日本大学の大学卒芸術学部卒のお姉様に誘われて参加した初コンパ。
男性陣の職業が凄かった。
笑天に電道にGooglo。
社畜生活のせいで世間知らずで話の話題についていけずにずっと静かに座っていたけど、笑天の人が『LINE交換しよう』って言ってくれて、交換したらネズミーデートに誘われて嬉しくて小躍り踊ってる。
「上手くいったらいいな」
私立中高一貫女子校に通っていた私は、中2の時のいじめがきっかけで登校拒否してた。
高校卒業後は大学に進学せず、アニメーション制作に必要なスキルが学べる専門学校にダブルスクールしてたから遊ぶ暇がなかった。
彼氏いない歴=年齢
“すかいばーど”に就職し、鬼の居ぬ間に課のメンバーと打ち解け、青春を謳歌できるようになった。
「水沢、スタッフ足りないからライブの手伝いしろっ!!」
ルンルン気分でいたら、ダースベーダーの登場ソングが似合う瀬川社長がいつの間にか私の背後にいて、ライブスタッフの仕事を押し付けようとしてきた。
「それ、私の仕事ではないですよね!!他の人に頼んで下さい!!」
全国ライブツアーのバイトならやりたい人は社内にたくさんいる。
「1番歳が若いお前がやれ!!」
ドスが効いた声で脅され、恐怖から首を縦にふる。
私の開放的な週末のある日々は終わりを遂げる。
***
不本意過ぎる全国ライブツアー同行。
「君が水沢伽音さん、初めまして!!」
瀬川社長と会場入りし控え室に入ると、衣装に着替えた“くりすた”のメンバーが集まってきて、かずきさんに声をかけられた。
「初めまして、かずきさん、ふたばさん、みつおさん、しろうさん、ごろうさん、むつきさん、ななおさん!!」
本当の名前か疑問だけど、数字に因んだ名前のメンバー達と挨拶をかわす。
「えいと、さっさと着替えてこいよ。もうすぐ開演だ」
かなりギリギリの時間に到着してしまった。
「あのう、私は何を手伝えばいいんですか?」
1番若いという理由で連れて来られた。
スタッフTシャツを着て大学生バイトと会場内の案内もしくはグッズの販売をするのかなと何も聞かされてなかったから焦る。
「あっ、……舞台がよく見えるところで見てて。で、ファンが沸く瞬間を調査しといて」
「はっ!?」
スタッフが足りないと連れてこられたのに、ファンの反応観察を言い渡される。
鬼の居ぬ間の休息を堪能しているのに腹を立て瀬川社長は私を巻き添いにしたのだろう。
「私服だと自由に身動きできないからスタッフTシャツない?」
「予備あるかな……」
スタッフTシャツの下は自前の長ズボンみたいで、スーツを着てきた私は浮いてしまう。
「そのままでいい。水沢は運営側だから。右腕にスタッフの腕章つけていたら問題ない」
「………」
18時スタートで3時間の予定で公演が行われる。
“くりすた”のワンマンライブではないけど、ファンが手にしているのは“くりすた”のグッズばかり。
えいとのうちわを持ってるファンが多く、気の毒に思う。
「えいとくーん、こっちみて!!」
信者の呼びかけに、ぞっとする。
所属Vチューバーのファンよりも圧倒的に“くりすた”の追っかけが多かった。
ついでで他チームのパフォーマンスも乗ってくれてたけど、小物パフォーマンスはあまりなかった気がする。
アンコールで30分延長するも、22時に解散になった。
反省会を兼ねて宿泊するホテルの宴会室に集まり、ブュッフェスタイルの軽めの食事を取る。
時間も時間だから野菜中心の軽めな料理が並んでいた。
「やっぱ、“くりすた”の人気は不動みたいですね」
動画制作課の社員達と食事を取りながら話す。
ライブやサイン会などはイベント課の管轄で、話せる人があまりいなく、心細い。
2.5次元アイドル達は2.5次元アイドル同士で集まっていて、場違いなところに連れて来られ、食事はいいから部屋に帰りたくなる。
「水沢さんも“くりすた”のファンだったんだよね」
「あ、……はい」
ライブに行きたいがためにCDシングルを買い漁り、えいとのうちわとペルライトを持参してライブに行った。
運よく抽選が当たった武道館でのラストライブ。
『えいと、こっち見て!!』
と叫んだら、瀬川社長が振り向いてウィンクしてくれて、キュン死しそうだった。
本性を知らなかったから。
今思うと、ゾっとする。
「推しは誰だった?」
「……推しですか?」
言いたくない。
2次元の瀬川社長が推しだとは。
3次元の瀬川社長にいじめられ過ぎて、ファンだったのが黒歴史に思える。
入社してから多忙すぎて自宅の模様替えができてなく、2次元バージョンの瀬川社長のタペストリーやうちわがいまだに飾ってる。
帰宅したら、速攻外して燃えるゴミに出す。
嫌、メリカリ見たら高額になってたから、面倒臭いけど売るのもありかもしれない。
「……私は“くりすた”が推しです。誰が推しとかなかったです」
誤魔化す。
“くりすた”メンバー勢揃いしているこの場で言えば告白的に受けとられるから避けるのが正解だと思う。
土日は朝、昼、夜の3公演。
あまりにも抽選販売の倍率が高かった公演を増やした。
そのためスケジュールがみっちりになり私は公演中は会場内にいるだけだけど、それでもかなり疲れた。
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