サイコパス社長の執着溺愛は異常です

鳴宮鶉子

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部屋で飾られていた物 side 瀬川英翔

水沢を同行させての福岡ライブツアー。
カッコいいところを見せたつもりが、

『会場内のファンの8割がえいとのうちわを持ってました。皆さんはえいとに騙されています。可哀想です』

たった3行の報告書。

アニメーション課へ行き、水沢に文句を言う。

他の社員が水沢に哀れみの視線を送るから、彼女を社長室に連れていく。

「俺はブラック企業サイコパス鬼畜社長ではない。期待しているのもあり水沢には厳しくしてきた。それもあり、今は直さなくても出せるぐらいのクオリティになっているだろ」

水沢に対してのこれまでの教育的指導は必要な事だった。
Vチューブだけでなく、今後ゲームのムービーやアニメを制作する予定で、妥協するような仕事をされたら困る。


俺の小言を右から左に聞き流す水沢。
俺の話は響いてない。

「頭が痛い。寒気がするし」

こめかみに手を置いた水沢。

「お、おい、大丈夫か!!」

体調が悪かったのか急に体が倒れ、咄嗟に体を支えた。

「水沢、熱あるじゃないか。大丈夫か!!」

異常なほどに熱い体。
意識を飛ばした彼女を抱き上げ、タクシーで近くの病院に連れていく。

水沢を横抱きで抱き上げて院内に入り、看護師に隔離室を用意して貰いベッドに寝かせた。

「あれ、えいとだよね。あの女性、誰だったんだろう。恋人かな?」

「倒れた恋人をお姫様抱っこで病院に連れて行くってカッコ良すぎる!!」

待合室にいた他の患者達ががやがやと言っている。
期間限定で活動をしているが、2.5次元アイドルを俺は引退している。
誰と恋愛しようが結婚しようが俺の勝手だ。

「……コロアではないですね。心臓と肺の音も別状はないので風邪だと思います。頭が痛いと仰ってたそうなので痛み止めと後、抗生剤を1週間分出しときますね」

コロアでなくて安心する。
今週末もライブツアーがある。
疲労から免疫力が落ち、風邪を拗らせてしまったらしい。

「3日間ぐらい仕事を休ませて自宅で静養させよう。水沢の自宅へ連れていくか」

神保町にあるオートロックがついてない古びたアパートに水沢は住んでいた。
彼女のバックを漁り家の鍵を探す。

「……えいとのぬいぐるみキンホルダー!?」

家の鍵につけてあるキンホルダーが拳代の俺の2次元の姿のぬいぐるみだったから驚く。

「水沢、勝手に入るからな」

バストイレ別のワンルームマンション。
部屋に入ってたまげた。

「“くりすた”に興味を持ってなかったんじゃなかったのか!!」

壁中に“くりすた”のうちわと下敷きにタペストリーが貼られ、祭壇にフィギュアも置かれ、ベッドのヘッドボードにはぬいぐるみが並べられていた。

水沢をベッドに寝かし、部屋中をまじまじと見渡す。
収集された“くりすた”グッズの8割はえいとだった。

「水沢、俺の事をブラック企業サイコパス鬼畜社長と言ってるが俺のファンだったんだな」

嬉しくてならない。
眠ってる彼女が起きたら消化がいい物を何か食べさせ、ミネラル補給にスポーツドリンクを飲まさないといけない。
眠っている彼女を置いて、鍵を拝借し、買い出しへ行く。

両手いっぱいにアイスやゼリー、レトルトのおかゆにカットフルーツ、スポーツ飲料にミネラルウォーターを買って彼女の部屋に戻る。

「えっ、ーーしゃ、社長!!」

目覚めた水沢はなんで家にいるのか分からず上半身を起こして呆然としていて、俺が部屋に入った事に気づいた途端に絶叫した。

「……具合はどうだ。まだ、熱いな。病院で貰った薬を飲まないとな。おかゆ買ってきたからキッチン借りるな」

おでこに手を当てるとかなり熱く、熱が上がりきってないようだ。
薬を飲ますためにお粥を湯煎で温めてお皿に入れて持っていく。

「はい、あーんして」

ベッドの上で上半身を起こしている水沢の口に、レンゲですくったお粥を冷ましてから運ぶ。

「ビタミン補給にカットフルーツ食べよっか」

お粥を食べ切った後、カットフルーツを冷蔵庫の中から出してきて、フォークで差して水沢に食べさせた。

「薬」

ミネラルウォーターを注いだコップを渡し、錠剤の薬を取り出してから手に置いてやった。


「……何から何まですみません」

「気にするな。汗かいただろ。シャワー浴びて着替えてこい。俺に体拭かれて着替えさせられたくなければな」

着替えさせるわけにはいかず、上着は脱がせてスーツのまま寝かせていた。

「……着替えてきます。社長、仕事の方は大丈夫ですか?」

「問題ない。急ぎの仕事はないし社員達に自己判断に任せればいい。3日ぐらい休んでも支障はない。付きっきりで看病してやるから早く元気になれ」

甘い言葉をかけたら水沢の顔は赤面し、恥ずかしそうに洗面室に駆け込んだ。
バスルームで倒れたらいけないから、洗面室の前で待機する。

「体、つらいよな。ベッドまで連れていく」

水沢を横抱きで抱き抱えベッドに連れていき、髪が完全に乾いてなかったからドライヤーを持ってきてベッドの上で乾かしてやった。

「社長、帰らないでいいんですか?」

「水沢の熱が下がるまではここに泊まる」

「……泊まれるスペース無いですし、着替えないですよね」

水沢は俺に帰って欲しいようだが、俺は帰る気はない。

「問題ない。着替えは後で取りにいく。寝るスペースは水沢と添い寝すれば問題ない」

「えっ!!」

「水沢、好きだ。俺と結婚前提で付き合ってくれ」

これだけ部屋に俺のグッズを置いてるぐらいだから、断られるはずはない。

「……サイコパスで鬼畜な人とは付き合えません」

「これからは胸焼けするぐらい甘やかしてやる。だから、俺の彼女になれ」

断られたが問答無用で俺の恋人にした。






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