婚約破棄から始まる大恋愛

鳴宮鶉子

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念願だった婚約破棄

「えっ、おじいちゃんが亡くなった!!」

金曜日の9時過ぎ。
母から直電がかかってきた。
金曜日の夕方に心臓を抑えた姿で倒れ、心筋梗塞でそのまま亡くなった。

通夜が土曜日で葬式が日曜日に行われる。
母との電話を切った後、所長に電話をかけ、忌引きで仕事を休み、通夜が始まるギリギリの時間に着く新幹線で実家がある福岡に向かう事にした。

“凛子、俺、お前の婚約者だから通夜と葬式出るから。明日、何時の新幹線に乗る?”

拓海からのLINEメッセージ。
婚約者だから同行するしかない。

“昼ごはんを食べて出るから13時の便に乗る”

“わかった。じゃあ、明日、11時半に迎えに行くから東京駅で一緒に昼食べてから新幹線に乗ろう”

了解ですのスタンプを送る。

父方の祖父が亡くなってもなんとも思わない。
傲慢で一族全員を思い通りに動かそうとしていた人だから。
親戚一同、清々してると思う。

「遺産相続とか揉めに揉めそう。無理やり政略結婚させられた夫婦多いから、離婚ラッシュが起きそう」

遺産相続は孫の私には関係ない。
父は3人兄弟の1番下で、政略結婚の駒として役に立たず、TATAで働いてはいるもののパッとしないから祖父から見放されていた。
だから、大した遺産は貰えないだろう。


「凛子、大丈夫か?」

「大丈夫どころか清々してる。これでTATAのショールームアドバイザー辞めても文句言われない」

祖父が亡くなったら孫は悲しむものかもしれないけど、私は束縛から解放され自由になるから嬉しくて堪らなかった。

そんな私に対して迎えにきた拓海は戸惑っていた。

東京駅構内の和食の店で海鮮御膳を食べ、新幹線に乗って葬儀場に向かう。
お通夜が始まるギリギリの時間まで時間を潰したかったけれど、30分前に会場に入った。

「凛子、来たか。拓海くん、わざわざ来てくれてありがとう」

父と母は疲れ切っているが、笑みを浮かべてる。

「こんな時に言う話ではないが、凛子と拓海くんに伝える機会がないから今、話させてくれ」

父が真剣な表情をして話だした。

「凛子と拓海くんの婚約は破棄した。世代錯誤なしかもしても意味のない政略結婚は白紙に戻した。2人が結婚する気があるならそのまま結婚すればいいば、許嫁というしがらみからは解放する。拓海くんのお父さんからも了承を得た」

私と拓海の婚約は祖父同士が強く希望して決まった。
拓海の祖父も3年前に亡くなってる。

「私は凛子さんと結婚したいと思ってます」

冷たくあしらっているのに、拓海は私との結婚を望んでいる。
理由がわからない。

「上手くいってるならいい事だ。凛子に悪いが私と佳代は離婚する。本当に大切に思える人と一緒になる」

父と母は仮面夫婦でお互い外に家庭を作り、隠し子もいた。
祖父の葬儀に、父と母の愛する人と私の義理にあたる妹と弟が4人訪れ、顔合わせをした。

「凛子、俺は凛子の事を本気で愛してるから、信じて。俺と家族になろう」

父と母は他所に家庭を作っていて、中学から県外の学校に通って家に居なかった私の事はもはや子供と思ってないようだった。

私は帰る実家を無くした。
嫌、元々無かった。

「凛子、俺が幸せにするから」

葬儀を終え、拓海と東京に戻る。
手続きに関しては祖父が生前に弁護士に頼んでいたのか速やかに行われ、財産分与なども揉める事はなさそうだ。

「凛子の事が心配だから、一緒に暮らそう」

祖父の死よりも両親が2人共、他所に家庭を作って義理の妹と弟が4人もいた事の方がショックだった。

「凛子、仕事辞めよっか」

「……うん」

ショールームアドバイザーの人数は足りてる。
私が退職しても困る事はない。
シフトが組まれてる7月分は最後まで勤務する事にした。
私がTATA創業者一族の御令嬢だという事は3代目社長の祖父の死で明るみになり、突然の退職に対し、誰も何も言わなかった。


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