遊び人と忠犬ハチ公〜あんなやつとは別れた方がいい〜

鳴宮鶉子

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忠犬ハチ公辞めます

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女子会ランチから帰り、冷蔵庫の中にある材料で夜ご飯を作り、19時に寝ている慎司を起こし、慎司がゆっくり入浴して出てきてから夜ご飯を出す。

慎司と同棲しているマンションから出ていく事を決め、冷蔵庫と冷凍庫にある食材をすぐに食べれるおかずにした。
最後の晩餐だから、コロッケとハンバーグを作るとポテトサラダを出した。
余ったコロッケと肉じゃがとマカロニサラダと金平ごぼう、鳥の唐揚げと鯖の竜田揚げ、ブリの照り焼きと鮭の塩焼きを作り、冷ましてから冷蔵庫に入れた。

いつものように無言でご飯を食べてから、わたしから水筒とおにぎりが入った袋を受け取り、慎司は国立心臓血管センターへ行った。

慎司が仕事へ行ってから、衣類を用意した段ボールへ詰めていく。
衣類と化粧品類だけを詰め、親友達に車を出して貰って、即日で契約した勤務先から徒歩5分の所にあるオートロック付きの1LDKの狭い賃貸マンションへ向かった。

“さようなら”と置き手紙だけを置き、慎司のLINEアドレスなどの連絡先を消し金輪際連絡を取れないようにした。

多忙な慎司だからわたしを探したりはしないはず。
食事に関してはしばらくは冷蔵庫に作り置きおかずがあるし、コンビニやスーパーで買うか食べにいけばなんとかなる。
洗濯もマンションの1階にクリーニング屋がある。

レオパレスだから収納付きベッドとエアコンがついていて、布団はあらかじめ買って敷いてた。

親友達が帰ってから、ベッドに寝転び泣きながら眠る……。
15年間付き合ってた恋人との離別は、例え最後は一緒に居られる時間があまりなかったとしても辛かった。

慎司とは物心がついた頃からの腐れ縁で、名古屋の偏差値67の共学の私立の中高一貫校 滝川中高一貫校に合格した日になんとなく付き合い始めた。

高校を卒業し、大学も一緒に東京大学へ進学した。
わたしは医学部に合格できるほど賢くなく薬学部に進んだけど、大学で上京した時から同棲して、大人の関係を持ち、彼女として、料理も家事も頑張った。

慎司の自慢の彼女でいたかった。
だからミス東大や読モにもなった。
慎司に相応しい女性になりたかった。

慎司と別れてから、わたしは会社と自宅の往復だけで塞ぎこんでた。
買い物もネットスーパーを利用し、わたしを心配して女子会を企画してくれる親友達の誘いも断った。

*****

『咲花、年始年末、帰ってくるよね?理人が遂に結婚する相手を連れて帰省するのよ。31日と1日は帰って来なさい』

母からの電話。
気づいたら季節は12月の半ばで、慎司のマンションから出て行ってから1ヶ月が経っていた。

『後……咲花、慎司くんのマンションから出て行ったって、他に好きな人でもできたの?慎司くん、研修医で多忙だからって浮気して出ていくなんてお母さん、恥ずかしいわ。
慎司くんのご両親に謝りに行かないと……』

浮気をしてるのはわたしではなく慎司なのに、マンションから出て行ったわたしが悪い事になってた。


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