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なぜか現れる
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「杉宮さん、CRA(製薬会社の臨床開発モニター)の市瀬さんが至急東京大学病院に来てくれだって!!」
実験室でリード化合物の選定を行なっていたら内線が鳴り、市瀬さんからのヘルプ呼び出しだとわかり、溜息をつく。
普段は研究センターで実験アシストの業務につくも、治験の場での症例データの収集やモニタリング、進捗状況の管理しているCRAからの呼び出されたら下っ端の私が応じないといけなくて、毎日のように呼び出され、慌ただしい日々を送ってる。
「杉宮さん、ハーツシコリシン錠なんですけど、これを投与し始めて心臓が小さくなって硬くなってるみたいなんですよ」
ハーツシコリシンは心筋の収縮力を強くし、速くなりすぎた脈を整え、心不全などの治療に使用される薬。
被験者30人の心臓のCT画像などの細かいデータを見る。
腫れた心臓が元のサイズになっただけに思えるけれど、なんとも言えず、投与量の調整で治験継続をお願いした。
「ーー凛音!!」
治験責任者の藤谷先生との話を終え、市瀬さんと循環器内科の医局から出ようとしたら、モスグリーンの手術着に白衣を纏ってる蓮翔くんが入ってきて、いきなり私にバックハグしてきた。
「凛音、会いたかった!!」
心臓血管外科の医局に属するもオペの腕を磨くため救命救急科で勤務している蓮翔くん。
他の病院からもオフの時間を把握され、ヘルプで呼び出され、5日間ほどマンションに戻ってきてなかった。
「ーー瀬崎、彼女が恋しいのはわかるが、医局で抱きついたりするなよ」
医師や看護師からの視線が恥ずかし過ぎる。元サークル仲間で同期の藤谷先生が注意するも、私の後頭部に鼻をつけて匂いを嗅いでくる蓮翔くん。
「……今日もここの勤務が終わった後、櫻木記念病院でバイト頼まれてて、凛音が足りない」
「ーー蓮翔くん、私、仕事中なんだけど……」
「……もう少しだけ、凛音を感じさせて」
蓮翔くんのここのシフトとバイト先のシフトはカレンダーに書かれてあるから把握してる。
なるべくバイトは入れないようにしていても、優秀な外科医だからか頼られ、断れず、働き詰めになってる。
「凛音、毎日、お弁当届けてくれてありがとう」
食事をとる時間も限られてるから、さっさと食べれて栄養があるお弁当を朝と夜に届けてる。
「ーー仕事に戻るか。凛音、明日の夜は帰るから」
私の身体に巻きつけられた腕が離れたと思うと、身体の向きをくるっと回転させられ、ぎゅっと抱きしめられ、おでこにキスを落とされた。
「さっさと仕事に戻れ。予定オペあるだろっ。てか、医局でいちゃつくな!!」
藤谷先生が完全に呆れかえっていて、市瀬さんも顔を赤めて見ないようにしてる。
病院の正面玄関まで蓮翔くんは送ってくれて、市瀬さんと社に戻るも、『あんなイケメンドクターな恋人欲しい!!』と冷やかされ、困った。
東京勤務になり、治験の立ち合いで行く先々の病院で蓮翔くんはスーパーマンみたいなイケメン天才外科医と言われてた。
外科医不足な医療現場で専門の心臓血管以外の脳神経、整形などのオペもお手の物で、癌のオペも得意で内科的な知識も豊富だと知る。
「すみません。瀬崎蓮翔にお弁当を持ってきたのですが……」
定時で仕事を終えマンションに戻り、蓮翔くんの夜用のお弁当を作り、夜勤勤務している病院へ持っていき、守衛さんに託ける。
「イケメンドクターの彼女さんか。彼氏がこうも忙しいと、2人きりの時間が作れないから寂しいな」
日本に帰国してからの4年間は、仕事以外で人と関わる事がなく、孤独を感じる時もあった。
だから、無理やりが始まりで、滅多に帰ってこないけど、昔みたいに私の側に蓮翔くんがいてくれる事が嬉しかったりはする。
「人の命を救うのが彼の仕事なので……」
「ーー凛音、来てくれたんだ!!」
守衛さんと話してたら、蓮翔くんが駆け寄ってきて、振り向いた私に抱きつく。
「……蓮翔くん、いつも不思議に思ってる事あるんだけど訊いていい?」
「何?」
「なんで私が病院にいるのわかるの?」
患者の診療とオペをしてない時、蓮翔は必ず私の前に現れる。
「……小型GPS発信器を凛音のスマホに取り付けてる。どこで何をしているか気になるから。凛音、明日は9時には戻る。どこか行こうな。じゃっ」
GPS発信器を取り付けられているとは思わなかった。
守衛さんからお弁当を受け取ると蓮翔くんは院内に入っていく。
蓮翔くんの私への執着は異常だ!!
実験室でリード化合物の選定を行なっていたら内線が鳴り、市瀬さんからのヘルプ呼び出しだとわかり、溜息をつく。
普段は研究センターで実験アシストの業務につくも、治験の場での症例データの収集やモニタリング、進捗状況の管理しているCRAからの呼び出されたら下っ端の私が応じないといけなくて、毎日のように呼び出され、慌ただしい日々を送ってる。
「杉宮さん、ハーツシコリシン錠なんですけど、これを投与し始めて心臓が小さくなって硬くなってるみたいなんですよ」
ハーツシコリシンは心筋の収縮力を強くし、速くなりすぎた脈を整え、心不全などの治療に使用される薬。
被験者30人の心臓のCT画像などの細かいデータを見る。
腫れた心臓が元のサイズになっただけに思えるけれど、なんとも言えず、投与量の調整で治験継続をお願いした。
「ーー凛音!!」
治験責任者の藤谷先生との話を終え、市瀬さんと循環器内科の医局から出ようとしたら、モスグリーンの手術着に白衣を纏ってる蓮翔くんが入ってきて、いきなり私にバックハグしてきた。
「凛音、会いたかった!!」
心臓血管外科の医局に属するもオペの腕を磨くため救命救急科で勤務している蓮翔くん。
他の病院からもオフの時間を把握され、ヘルプで呼び出され、5日間ほどマンションに戻ってきてなかった。
「ーー瀬崎、彼女が恋しいのはわかるが、医局で抱きついたりするなよ」
医師や看護師からの視線が恥ずかし過ぎる。元サークル仲間で同期の藤谷先生が注意するも、私の後頭部に鼻をつけて匂いを嗅いでくる蓮翔くん。
「……今日もここの勤務が終わった後、櫻木記念病院でバイト頼まれてて、凛音が足りない」
「ーー蓮翔くん、私、仕事中なんだけど……」
「……もう少しだけ、凛音を感じさせて」
蓮翔くんのここのシフトとバイト先のシフトはカレンダーに書かれてあるから把握してる。
なるべくバイトは入れないようにしていても、優秀な外科医だからか頼られ、断れず、働き詰めになってる。
「凛音、毎日、お弁当届けてくれてありがとう」
食事をとる時間も限られてるから、さっさと食べれて栄養があるお弁当を朝と夜に届けてる。
「ーー仕事に戻るか。凛音、明日の夜は帰るから」
私の身体に巻きつけられた腕が離れたと思うと、身体の向きをくるっと回転させられ、ぎゅっと抱きしめられ、おでこにキスを落とされた。
「さっさと仕事に戻れ。予定オペあるだろっ。てか、医局でいちゃつくな!!」
藤谷先生が完全に呆れかえっていて、市瀬さんも顔を赤めて見ないようにしてる。
病院の正面玄関まで蓮翔くんは送ってくれて、市瀬さんと社に戻るも、『あんなイケメンドクターな恋人欲しい!!』と冷やかされ、困った。
東京勤務になり、治験の立ち合いで行く先々の病院で蓮翔くんはスーパーマンみたいなイケメン天才外科医と言われてた。
外科医不足な医療現場で専門の心臓血管以外の脳神経、整形などのオペもお手の物で、癌のオペも得意で内科的な知識も豊富だと知る。
「すみません。瀬崎蓮翔にお弁当を持ってきたのですが……」
定時で仕事を終えマンションに戻り、蓮翔くんの夜用のお弁当を作り、夜勤勤務している病院へ持っていき、守衛さんに託ける。
「イケメンドクターの彼女さんか。彼氏がこうも忙しいと、2人きりの時間が作れないから寂しいな」
日本に帰国してからの4年間は、仕事以外で人と関わる事がなく、孤独を感じる時もあった。
だから、無理やりが始まりで、滅多に帰ってこないけど、昔みたいに私の側に蓮翔くんがいてくれる事が嬉しかったりはする。
「人の命を救うのが彼の仕事なので……」
「ーー凛音、来てくれたんだ!!」
守衛さんと話してたら、蓮翔くんが駆け寄ってきて、振り向いた私に抱きつく。
「……蓮翔くん、いつも不思議に思ってる事あるんだけど訊いていい?」
「何?」
「なんで私が病院にいるのわかるの?」
患者の診療とオペをしてない時、蓮翔は必ず私の前に現れる。
「……小型GPS発信器を凛音のスマホに取り付けてる。どこで何をしているか気になるから。凛音、明日は9時には戻る。どこか行こうな。じゃっ」
GPS発信器を取り付けられているとは思わなかった。
守衛さんからお弁当を受け取ると蓮翔くんは院内に入っていく。
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