陛下、貸しひとつですわ

あくび。

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09.探りの進捗

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 ルシェと一緒に帰宅すると、叔父が既に来ていた。

 早速、叔父から、今回の父とやらの別邸住まわせ案件について説明してもらったのだが、話を聞いたルシェは、王命だから断れないことはわかっているものの、わたしが危険な目に合う可能性があると不満気だった。

 警備体制の追加説明を受けてしぶしぶと納得してくれたが、叔父に何度も、わたしの安全の確保をするように頼んでくれた。
 わたしは、そんなルシェの気遣いが嬉しいやらこそばゆいやらで、一瞬変な顔になってしまったが、すぐに鉄壁の令嬢顔に戻したからバレなかったと思う。

「それで、叔父様。あの男は尻尾を出し始めましたの?」
「黒い噂のある人間と接触し始めたが、それだけだ。今は仕事をもらえるようにごまをすっているところだろう。公爵家の名前を出しているのがむかつくが」
「本当に図々しい人ですこと。そういえば、今日あの男の娘に絡まれましたわ」
「なんだと?」

 叔父の低い声に若干引き攣りながらも、あの男の娘――アリス嬢――が学院に通っていて、わたしを使用人だと思って声をかけてきたことを話したら、叔父に謝られた。

「すまん。あの男の動向確認を優先していて娘の方を後回しにしていた。今日は娘の学院通学についても話そうと思って来たのだが、遅かったな」
「殿下が助けてくださいましたし、わたしは無事ですから大丈夫ですわ。それよりも、娘は公爵令嬢だと名乗っているそうなのですが、あの男は公爵家当主として再婚したということですの?」
「いや、それが、正式な婚姻はしていないようだ」
「は?」
「届けは出したようだがな、不備があって受領されていないのだ」
「それなのに娘を公爵令嬢として学院に通わせているんですか?」

 ルシェが聞いてくれたが、わたしも疑問だ。
 聞けば、学院長も黒い噂の人間と繋がっていて、その伝手で通学許可を取ったようだ。学院の後ろ暗い話まで出てきて慄く。

「今回の件で学院長のことがわかってな。学院についても調査が始まった。生徒に被害は及ばないと思うが、念のため、対策も取り始めたと聞いている」
「ああ、それで新任の先生が来たんですね」
「そうなの?」
「うん。一年のCクラスの担任が怪我をしたとかで新任の先生に変わったんだ」
「恐らくあの男の娘のクラスだろう。娘をマークしているのかもしれない」

 学院は成績順のクラス分けで、ルシェは一年Aクラス。
 アリス嬢は、最下位のCクラスのようだ。

 そのクラスの担任になってアリス嬢の交友関係をチェックしていくのだろうか。
 親からの指示で仲良くするように言われている可能性もあるから、確認しておくほうがいいかもしれない。

「教師以外にも間者がいるはずだから、学院の裏のこともこちらに任せてくれ。絶対に深入りするなよ?」
「はい。……にしても、本当に大事になってきましたけれど、こんな話までわたしたちが聞いてよかったんですの?」
「既に関わらせてしまってるからな。だが、もちろん口外厳禁だ」

 それについては、わたしもルシェもわかっている。
 ふたりで神妙に頷いた。

 そして、その後は、基本的には叔父たちにすべて任せるものの、アリス嬢がこれからもわたしに絡んでくる可能性を考慮して、その対策を練って本日の報告会?は終了したのだが。

 今回は本当に面倒なことに関わることになってしまった。
 陛下、今回の件が片付いたら、貸しはきっちりお返しいただきますわ。
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