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吸血鬼、ヴァンピール ②

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【黒猫サファイア猫魈side】

泥田坊どろたぼう垢嘗あかなめ、ご苦労様。
 二人共、良い仕事をしてくれたね。
 天の邪鬼は、没収した奴らの資金は君にあげるからね 」

 ボクが天の邪鬼に言うと、

「いらない ! サファイアにやる。
 今日はつまらなかったから、二度と誘わないでくれ ! 」

 そう言って天の邪鬼は人間の子供に化けて立ち去ってしまった。

 あやかし世界の大使館からボクの処に連絡があり狂信者たちの妨害工作をしたけど、後は陰陽寮の陰陽師に任せても良いよね。
 さて、狂信者の資金は、どうしようかなぁ~。
 七之助や栞ちゃん家族に渡しても、アノ二人は喜ばないだろうから、逃げてきた吸血鬼に渡してあげれば良いかな。
 猫に小判じゃ無いけど、大金を持っていても面倒くさいことに巻き込めれそうだからね。
 
 まったく、せっかく七之助と栞ちゃんが結婚する御目出度い時に邪魔しないで欲しいな。
 こんなに働き者の猫なんて、ボクくらいな者だよね。
 大使館の妖怪も閻魔鏡えんまかがみで監視してばかりいないで働いて欲しいよ、まったく。

「それじゃぁ、一反木綿いったんもめん、大使館への連絡と報告よろしくね。
 ボクは家族七之助と栞の元に帰るからね。
 じゃあ、シー・ユー・アゲイン ! 」

 一反木綿はフワフワと空を飛びながら、

「あばよ !   いい夢見ろよ 」

 と言い残して飛び去ってしまった。

 アッ、ついでに奴らから没収した資金も頼めば良かったな。
 仕方ないから、この間知り合いに成った蝶子さんに頼めば良いか。
 彼女に渡した、またたび茶ホレ薬の成果も知りたいしね。

♟♞♝♜♛♚

【蝶子side】

 ポーン ♬

 わたしのスマホにメールが来たみたい。
 メールを開けてみたら、この間の猫ちゃんのサファイアちゃんからだった。

 後日、サファイアちゃんから指定されたお稲荷さまの前に来ると、

「ヤッホー  蝶子さん、時間を守る人は好感度があがるね。
 実は、また頼みがあるんだけど、その前に この間のマタタビ茶ホレ薬の成果はどうだった ?
 効果覿面こうかてきめんだったと思うんだけど…………その様子じゃ失敗したみたいだね 」

  わたしは、事のあらましをサファイアちゃんに説明した。
 何時もは小言を言ってくるオバサンアフロディーテも何故か黙っている。

 最後まで静かに聞いていたサファイアちゃんは、

「それは残念だったね、蝶子さん。
 アクシデントは付き物とは云え落ち込んでいない処を見ると、少しは進展したのかな ? 」

 親身に心配してくれるサファイアちゃんに答える わたしに、

〖ハァ~、私の分身ともあろう者が、妖怪に手玉にされているなんて屈辱を通り越して呆れてしまうわ 〗

 ムッ !
 愚痴ばかりのオバサンアフロディーテよりアドバイスをくれるサファイアちゃんを優先するのは当然でしょう。

〖…………忘れないでね。
 貴女は私の分身、私は貴女の味方なんだと云うことを 〗

 言いたいことだけ言って、また黙ってしまった。

「……そろそろ良いかな。  マタタビ茶ホレ薬は、まだ必要かな ?
 時間はかかるけど必要なら用意するよ 」

 心配そうに聞いてくるサファイアちゃん。
 猫の表情は読みにくい、少しはオバサンアフロディーテの忠告を聞いた方が良いかな。

マタタビ茶ホレ薬は、もういらないわ。
 明日菜ちゃんや英里香ちゃんには疑われているから、次は無いと思いの。
 今回はサファイアちゃんにと云うことで、サファイアちゃんの依頼を聞いてあげるわ 」

 サファイアから、あらためて依頼の内容を効いて驚いた。
 サファイアちゃん達は正義の妖怪だったんだね。
 テロリスト狂信者を丸裸にするなんて、すごいわ。
 わたしは、わたし達が吸血鬼を保護する仕事のお手伝いをしていることを話した。

「なるほど、ボク達の利害は一致しているんだね。
 それならボクの仲間が吸血鬼の元まで案内するように伝えておくよ。
 垢嘗あかなめ、例の物を蝶子さんに渡してくれるかい 」

 少し不気味な妖怪? がスーツケースを持って現れた。

「彼は妖怪、垢嘗あかなめだよ。
 無害な妖怪だから安心してね。
 このスーツケースを吸血鬼に渡して欲しいんだ。
 吸血鬼は誇り高い一族だから有用に使ってくれるハズだと思うんだ 」

 
 垢嘗からスーツケースを受け取った。

「蝶子さんの仲間には、ボクのことを話した方が良さそうだね。
 陰陽師がいるなら話しが通ると思うよ 」

「漫画やアニメだと陰陽師と妖怪は敵対しているのに違うのかしら ? 」

 わたしが質問すると、

「昔は確かに敵対していたらしいけど、共存共栄を選んだのさ、ボク達は。
 八百万の神々が仲介してくれたから陰陽師を含めて退魔師たちと相互不可侵の約束をしたから今は平和なもんだよ。
 もちろん、ハグレ妖怪は別だけどね。
 ただし、外国はいまだに敵対しあっているから注意してね 」


 そうして、わたしはスーツケースを持って嵐くんの元に向かった。
 わたしの方が嵐くんの役に立つんだから !
 お城で待っているお姫様より一緒に闘うわたし蝶子の方が、ずーーっと嵐くんのことを想っているんだからね❤️
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