【完結】ギャラクティック・オケハザマ:新星ノブナガの黎明

月影 流詩亜

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第9話:雷鳴一下、アツタ出陣!

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 オダ・ノブナガの号令は、磁気嵐の轟音を切り裂き、決死隊の全艦へと伝播した。アツタ・フレームを先頭に、約500隻の漆黒の艦影が、荒れ狂うプラズマの帳の向こう側……混乱の極みにあるはずのスルガ大艦隊へと、文字通り雷鳴の如き勢いで突入を開始した。

「全艦、目標はただ一つ、イマガワ・ヨシモトの首 ! 我に続け !」

 ノブナガは自らアツタ・フレームの操縦桿を握り、加速レバーを一気に最大へと押し込む。
 背中をシートに叩きつけられるような強烈なGが、彼の闘争本能をさらに昂らせた。
 メインスクリーンには、磁気嵐の影響で明滅を繰り返す敵艦の反応が、まるで無防備な獲物の群れのように映し出されている。

 嵐の中から躍り出たノブナガ艦隊は、スルガ艦隊の右翼、最も手薄と思われる箇所へと牙を剥いた。
 指向性エネルギー兵器の閃光が暗黒の宙域を幾筋も走り、混乱の最中にあったスルガの護衛艦数隻が、回避する間もなくその装甲を貫かれ、火球となって宇宙に散る。

「よし、敵の反応は鈍い !
 各艦、臆することなく突き進め !」

 ノブナガは冷静に戦況を分析し、的確な指示を飛ばす。
 スルガ艦隊は、この奇襲が磁気嵐による事故なのか、あるいは小規模なゲリラの攻撃なのか、判断がつかずに右往左往しているようだった。
 有効な反撃はほとんどなく、彼らの巨艦はただノブナガ艦隊の蹂躙じゅうりんを許すばかりだ。

 その中でも、アツタ・フレームの動きは異次元だった。
 ノブナガは、まるで手足のようにこの最新鋭実験艦を操り、敵艦隊の隙間を縫うようにして突き進む。敵の大型艦が慌てて放つ砲火も、彼の神がかり的な回避運動の前には虚しく宇宙の藻屑と消える。

 アツタ・フレームの機首に搭載された高出力プラズマキャノンが火を噴き、進路上に立ち塞がるスルガの巡洋艦のブリッジを一撃で粉砕する。

 すかさず、艦体側面に格納されていた対艦ブレードが展開され、回避が遅れた別の駆逐艦のエンジンブロックを、バターを切るように両断した。

(面白い… ! この機体、我が意のままに応えてくれるわ !)

 ノブナガは、かつてないほどの人機一体感に、獰猛な笑みを浮かべていた。
 単艦での奇襲攻撃を得意とするこのアツタ・フレームは、まさにこの瞬間のために生まれてきたようなものだった。
ヒデヨシからの通信が、戦闘の喧騒を縫って入ってくる。

「殿 ! 敵艦隊、依然として指揮系統は麻痺状態 !
 我が方の奇襲を、磁気嵐による同士討ちか、あるいはごく小規模な宇宙海賊の襲撃と誤認している模様です!」

「だろうな。ヨシモトが、この俺の存在に気づくのは、もう少し先になるだろうよ」

ノブナガは、スクリーンに映し出された敵旗艦オケハザマ・フォートレスの予測位置へと、最短距離で突き進む。
 周囲の護衛艦は、アツタ・フレームと、それに続クラン・ノブナガの精鋭たちの猛攻によって、次々とその数を減らしていく。

 何隻かのスルガ艦が、ようやくノブナガ艦隊の意図、一点集中による旗艦強襲に気づき始めたかのように、アツタ・フレームの進路上に密集して弾幕を張ろうと試みる。 だが、それも遅すぎた。

「シバタ ! 左翼の敵を引き受けろ !
ヒデヨシ、電子戦で敵の照準システムを狂わせろ !」

「応 !」
「承知 !」

ノブナガの的確な指示に、カツイエの重装甲突撃艦が猛然と敵艦隊に突っ込み、ヒデヨシの支援艦からは強力なECMが放たれる。一瞬生まれた敵の混乱を突き、アツタ・フレームはさらに加速する。

 そして、ついに磁気嵐の影響が比較的薄い宙域へと躍り出たアツタ・フレームの眼前に、その威容がはっきりと姿を現した超弩級戦略母艦「オケハザマ・フォートレス」。

 銀河最強と謳われたイマガワ・ヨシモトの移動要塞。 その巨体は、他の艦船を子供のように見下ろすほどの圧力を放っていたが、今のノブナガにとっては、ただの巨大な的でしかなかった。

(見つけたぞ、ヨシモト…!)

 アツタ・フレームが、オケハザマ・フォートレスの艦首へと肉薄したその瞬間だった。
 ヒデヨシからの通信が、わずかに声色を変えて飛び込んできた。

「殿 !『オケハザマ・フォートレス』より、高レベルの警戒信号発信 !
 同時に、我が『アツタ・フレーム』に対し、集中的な識別スキャンが… !
 奴ら、気づきましたぞ !
我々が何者であるかということに!」

ノブナガの唇に、再び獰猛な笑みが浮かんだ。

「遅いわ」

 ノブナガは、操縦桿を強く握りしめ、オケハザマ・フォートレスの、防御スクリーンが最も薄いと予測される一点へと、最後の突撃を開始した。

 その漆黒の機体に描かれた、燃え盛る炎を象ったクラン・ノブナガの紋章が混乱の極みにある敵旗艦のブリッジのモニターに、鮮明に映し出されているであろうことは、想像に難くなかった。

 雷鳴は、今まさに巨星の頭上に降り注がんとしていた。

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