俺が信長で、幼馴染が吉乃と濃姫!? ~転生幼馴染トリオ、本能寺フラグ回避して戦国スローライフ目指します

月影 流詩亜

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第七章: 天下への道とスローライフの夢

閑話③ 太陽の直感、境界線の向こう側

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​【視点:空(吉乃)】


 天正元年、小谷城陥落。

 長政様の自害という悲しい結末を迎えたけれど、お市様と三人の姫君(茶々・初・江)が無事に救出されたことに、わたしは安堵していた。

 歴史の授業で習った通り、お市様たちが助かったのは本当によかった。
​ けれど、その安堵を一瞬で凍りつかせる出来事が起きた。
 羽柴秀吉さんが、一人の少年を捕らえて本陣へ連れてきたのだ。

 名は万福丸。 長政様の嫡男だという。

​(……あれ? 年表だと、浅井家は滅亡するって書いてあったけど……子供はどうなるんだっけ?)

​ わたしには詳しい知識はない。
 でも、その少年が引き立てられた瞬間、背筋に冷たいものが走った。

 周りの家臣たち、柴田勝家さんや他の武将たちの目が、一斉に「猛獣を見る目」に変わったからだ。
 そして、上座に座る大ちゃん(信長)の顔から、スッと表情が消えた。

 それは、ドラマで見た「冷酷な信長」そのものの顔。

​(……やだ。なんか、すごく嫌な予感がする)

​ 理屈じゃない。私の「勘」が、警鐘をガンガン鳴らしている。
 このままじゃ、取り返しのつかないことが起きる。

 大ちゃんが、「戦国の習い」という流れ作業の中で、あの子を殺そうとしている。
 そして、もしそれをやってしまったら……大ちゃんの中の「緑野大地」が、二度と戻ってこなくなる気がした。

​「待って!!」

​ わたしは考えるより先に飛び出していた。

 広間の空気が凍りつく。
 家臣たちが「吉乃殿、控えられよ!」と叫ぶけれど耳に入らない。
 わたしは、大ちゃんと万福丸の間に立ちはだかった。

​「大ちゃん、ダメ! その子をどうするつもり!?」

​「……空、どけ。これは戦の決まりだ。
 敵の嫡男を生かしておけば、いずれ必ず災いの種になる。
 俺は……信長として、断たねばならん」

​ 大ちゃんの声は低いけれど、どこか自分に言い聞かせているように聞こえた。
 やっぱり、無理してる。

​「嫌だ! どかない!
 そんな『決まり』なんか知らない!
 あの子、まだ小学生くらいだよ!? 
 お市様が、我が子のように可愛がってた子だって聞いたよ!
 そんな子を殺して、お市様にどんな顔して会うの!?」

​「くっ……」

 大ちゃんの眉がピクリと動く。

​「それにね、私の勘が言ってるの!
 今ここでこの子を殺したら、大ちゃんは、もう二度と心から笑えなくなる!
 『うつけ』の仮面だけじゃなくて、心まで本当の『鬼』になっちゃう!
 そんなの絶対に嫌! 大ちゃんを人殺しマシーンになんかさせない!」

​ 私の必死の叫びは、歴史の知識なんてない、ただのワガママかもしれない。
 でも、大ちゃんの瞳の奥にある迷いの色は確実に大きくなっていた。
 
(お願い、戻ってきて……! 信長じゃなくて、大地の心で考えて!)

​ 私の涙ながらの訴えと、射抜くような視線に大ちゃんは刀の柄にかけていた手を震わせながらゆっくりと離したのだった。

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