5 / 57
第一章:尾張のうつけ、爆誕
第 4話 目覚めたら戦国だった件
しおりを挟むガンッ、と鈍い衝撃。
一瞬、息が止まるような感覚と、妙な浮遊感。
それが俺、緑野大地が最後に感じたものだったはずだ。
暴走してきた車と、それを追うパトカーのけたたましいサイレン。
アスファルトに叩きつけられる……いや、撥ね飛ばされたのか?
空と海の声が聞こえたような気もするが、記憶はそこで途切れている。
次に意識が戻った時、まず感じたのは割れるような頭の痛みだった。
「いっ……てぇ……」
思わず呻き声が漏れる。ズキズキと脈打つような痛みに顔をしかめながら、重い瞼をなんとかこじ開けた。
最初に目に飛び込んできたのは、見慣れた自室の白い天井……ではなかった。
そこにあったのは、太い梁がむき出しになった、木目がはっきりとした天井。
鼻をつくのは、木の匂いと、なんだか少し埃っぽいような、カビ臭いような、嗅いだことのない匂い。
「……どこだ、ここ……?」
混乱した頭で、痛みに耐えながらゆっくりと体を起こそうとした。
その時、妙な違和感に気づく。
なんだか自分の体が、いつもよりガッシリしているような気がする。
筋肉……? いや、俺は文化部系のヒョロっとした体型のはずだ。
それに、着ている服の感触もおかしい。ゴワゴワしていて、肌触りが悪い。
状況を把握しようと、寝かされていたらしい布団(これもやけに硬くて重い)から這い出し、部屋の中を見回した。
広さは八畳ほどだろうか。
床には畳が敷かれ、壁際には低い文机と硯箱のようなものが見える。窓には障子がはまり、隅には行灯らしき照明器具。まるで時代劇のセットみたいだ。
そして、自分の服装を改めて見て、俺は言葉を失った。
着物……?
いや、時代劇で見るような、小袖とか袴とかいうやつか?
なんで俺がこんなものを着ているんだ?
ドッキリか?
それにしては手が込みすぎているし、頭の痛みも妙にリアルすぎる。
パニックになりかける頭を必死で押さえつけ、何か手がかりはないかと部屋を見渡す。
すると、部屋の隅に置かれた銅鏡が目に入った。
今の自分の姿を確認できるかもしれない。
震える足で鏡に近づき、恐る恐るその表面を覗き込んだ。
そこに映っていたのは……まったく知らない、若い男の顔だった。
年は俺と同じくらいか、少し下か。
鋭い目つきをしているが、どこか幼さも残っている。
髪は……なんだこれ、変な結い方してるぞ!?
俺の、どこにでもある平凡な顔じゃない。
精悍で、意志が強そうで、だけどどこか危うげな雰囲気を漂わせる、見知らぬ顔。
「だ、誰だこれ!? 俺じゃない……俺はどこ行ったんだよ !?」
思わず叫びそうになった瞬間、障子の向こうから声がかかった。
「若様、お目覚めでございますか?」
凛とした、若い女の声。若様? 誰のことだ?
返事をする間もなく、すっと障子が開き、着物姿の若い侍女が入ってきた。
年の頃は俺と同じくらいだろうか。
髪を結い上げ、質素だが清潔な着物を着ている。
「お加減は如何にございますか? 昨夜はお加減が優れぬご様子でしたが……」
侍女は畳に手をつき、深々と頭を下げながら言った。
その言葉遣いは、やっぱり時代劇で聞くような古風なもので、俺には半分くらいしか意味が分からない。
「あ、えっと……」
どう答えていいか分からず、俺は口ごもる。侍女は怪訝そうな顔を少し見せたが、すぐに表情を戻した。
「お食事の支度をいたしましょうか? それとも、お召し物を……」
食事? 召し物? いや、それより聞きたいことが山ほどある!
「あの、ここはどこなんですか ?
今って、西暦……いや、えっと、何年なんです?」
俺の問いかけに、侍女はきょとんとした顔をした。そして、困ったように眉を寄せる。
「若様……? またそのようなことを……。
ここは那古野のお城にございます。年は……天文でございますが……」
なごや城? てんぶん?
聞いたことのない地名と元号。やっぱり、ここは現代の日本じゃない。
事故の瞬間の記憶。
見知らぬ自分の顔。
時代劇のような部屋と服装、言葉遣い。
そして、「若様」という呼ばれ方。
バラバラだったピースが、頭の中で最悪の形に組み合わさろうとしていた。
まさか……これって、よくあるラノベとか漫画の……。
異世界転生ってやつか?
背筋に冷たい汗が流れるのを感じながら、俺はただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
45
あなたにおすすめの小説
戦国鍛冶屋のスローライフ!?
山田村
ファンタジー
延徳元年――織田信長が生まれる45年前。
神様の手違いで、俺は鹿島の佐田村、鍛冶屋の矢五郎の次男として転生した。
生まれた時から、鍛冶の神・天目一箇神の手を授かっていたらしい。
直道、6歳。
近くの道場で、剣友となる朝孝(後の塚原卜伝)と出会う。
その後、小田原へ。
北条家をはじめ、いろんな人と知り合い、
たくさんのものを作った。
仕事? したくない。
でも、趣味と食欲のためなら、
人生、悪くない。
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる