寒空の下、君を買う ~君が死ぬことは俺が許さない~

白浜 海

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ふれあいコーナー

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「すごいね.......」

 そう言ってみゆはそこから一歩も動けずにいた。みゆの視線はしっかりとその一点にのみ集中しており、まるで自分一人の世界に没頭しているようにも見える。かく言う俺もみゆと同じような心境であり目の前にものに圧倒されていた。

「だなぁ.......」

「水族館って初めて来たけど、なんだか海の中にいるような気持ちになれるんだね」

「俺も久しぶりに来たけど、これはすごいわ.......」

 俺とみゆは水族館のチケット売り場でチケットを購入するとすぐに館内へと入って行き、すぐの所にあったこの大きな水槽に魅了され尽くしてしまっていた。普通こういったメインの水槽というのは奥の方にあるものだと思っていたが、マップで確認したところによると、この大きな水槽を囲うように他の水槽が置いてあったりするようで基本的には館内のどこにいてもこの水槽が見えるようになっているらしい。

「そろそろ他にも見て回るか?」

「うん.......」

 そう言いつつもみゆは大きな水槽から目を離さないので俺は仕方なくみゆの手を取ってやると、びっくりしたのか身体をびくつかせながら俺の方を見てくる。

「.......いきなりそういうのは禁止」

「ただ手を握っただけだぞ? 普段もこれくらいしているだろ?」

「それとこれとは違うの! .......和哉くんのばか」

 なんで俺は罵られているのだろうか? 普段は近所に食品などを買いに行く時とかでも手を繋いでいるのになんで今はダメなんだろうか? .......分からん。
 そのまま何故か俺が手を取ったはずなのにみゆに手を引かれながら歩き始める。

 歩き始めてすぐの所にあったのは海の生き物とのふれあいコーナーであった。そこにはナマコやエイの赤ちゃん、ヒトデ、貝類などの海の浅瀬にいる小さな生き物がいた。

「.......エイって毒があるんじゃなかったっけ」

「うん。アカエイなんかがここら辺だと毒のあるエイで有名だよ」

「.......触っても大丈夫なのか?」

「触れ合いコーナーにいるんだし、毒針はちゃんと取ってくれてるだろうから大丈夫だよ」

 そう言ってみゆは水の中に手を入れてエイを撫で始めた。.......別にエイに嫉妬なんかしてないんだからな!

「和哉くん! エイってなんだかすごい触り心地だよ!」

「いや、すごい触り心地ってどんなだよ.......」

 俺も恐る恐る水に手を入れてエイに触ってみる.......うん。なんだか良くんからないけどすごい触り心地だ。けど、なんかこの触り心地には覚えがあるんだよな.......なんだっけ.......あっ、

「これ、あれだ。濡れたキノコの傘の部分だ」

「キノコって.......でも、確かにこれ濡れたキノコと同じ触り心地だね」

「だろ?」

「うん。あっ、これってナマコだよね?」

 そう言っでみゆはエイの次はナマコに手を出す。正直に言おう。俺はなんの躊躇もなくみゆがやばいと思ってしまった。だってあのナマコだぞ? あの、見るからにぶにぶにとしたナマコだぞ? うん。普通に気持ち悪い。

「うわっ、見た目通りぶにぶにしてるよ!」

「そ、そうか.......」

「ナマコって気持ち悪いんだけど、可愛くもあるよね」

「.......え?」

「ほら、なんかこの手のひらサイズだとこうして手のひらに乗せてみると可愛くない?」

「そ、そうですね.......」

 やばい.......何が可愛いのか俺には全く理解できない.......。というか、ナマコを手のひらに乗せながらぷにぷにとつついているみゆが可愛い。あっ、みゆが可愛すぎてナマコが可愛く見えないのか! なるほど、それなら納得だ。.......まさかナマコとみゆの可愛さを比較する日が来るとは.......何だかすごい罪悪感にかられてしまう。

「なんか、ごめんな」

「?」

「やっぱりみゆは可愛いなと思ってな」

「.......なんてそんなことを思ったのかは知らないけどありがとう?」


 それから、貝類やヒトデなどのふれあいコーナーにいた全ての生物を一通りみゆが全て触り終えてから俺達は触れ合いコーナーをあとにした。
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