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秘密
お忍び
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――ここは、御所の中で唯一、騎馬の出入り口がある西門である。
観光スポットと化している南門とは違い、物資の搬入や使者や斥候の出入り口として用いられており、この門を守る二人の門番は、夜警からの継続任務中であっても、キリッとした表情で、門を通ろうとする人々に睨みを効かせている。
「刀聖さ――いえ、ソウタ殿……朝の内に発たれるとの旨、一軍より伝えられております」
その、西門騎馬口に、荷を積んだ馬を引いて現われたソウタに、門番二人は畏まって会釈をする。
8日も、御所に留まる事となったソウタは、御所に詰める公者たちにとって、勲金等の先の戦勝の立役者であり、刀聖という大事な国賓の一人でもある――なので、顔も名前も、末端である門番たちにまで知れ渡っているのだ。
そりゃあそうだろう――何せ、先日の祝宴の警備をしていたのは、言わずもがな門番たちだったし、業務上、知っていなければならない立場なのだから。
もちろん、ソウタの風貌や名前は、家族にさえ言ってはならない最高機密――誰かに言ったら、即、重罪は免れない。
「――あれぇ~?、アタシも居るんだけどなぁ~?」
――と、馬の背の上に荷と共に跨り、ヒョコっと猫耳を立てているのは、タマである。
「タマ嬢が、御見送りの任を仰せつかった事も、無論存じておりますよ」
門番の二人は、ニヤニヤと微笑んで、タマの皮肉にそう応じた。
タマとて既に、御所内では勲金等の有名人――それに『謎の美女軍団』の異名で知られる、コケツ衆という出自と、その異名に違わぬ可愛らしい容姿を持つタマは、特に"一部"の公者の間でも、ちょっとした人気を博していた。
「――じゃ、このまま通って良いんスね?」
「ええ、どうぞ御通り下さい。
いつか、戦の気配など無い時にもう一度、お会い出来たなら、祝着にござります」
門番二人は、深々と頭を垂れ、西門を出て行くソウタたちを見送った――
「――おはようございます、警備の皆様、ご苦労様です」
――と、そのソウタの後に続く様に、二人の門番に声を掛けて来たのは、長い髪をしっかり結った、淡い桃色の着物を着た妙齢の女である。
「――うむ、おはよう」
その女は、門の内側から現われたため――門番たちは、御所と関わりがある身分の者だと合点して、さほど警戒せずに挨拶に応じた。
「おはよう……ございます」
門番たちに、声を掛けて来たのは一人ではなかった。
もう一人、門番に声を掛けて来たのは――灰色の袴を穿いた、武官らしき長身の男。
桃色の着物を着た女の後ろに、ピッタリと追従する恰好で現われたので、どうやらこの"武官風"は、この女の連れらしい。
この二人の男女は、別に門番たちに警戒されたりはせず、実に当たり前な様子で、門外へと出た――
「――ありゃりゃ!、ホント、簡単に通れてるね……」
――と、既に市街地へと向かう道へと繋がる角を、曲がり終えたはずのソウタが引くテンは、何故か立ち止まっていて、その鞍上に居るタマは呆れた風にそう言う。
ソウタも、顔をしかめて、タマの言葉に頷き、大きな溜め息を吐いて――
「――やっぱり、御所の警備は、問題があるよなぁ……」
――そう、懸念を吐露する。
「――ふぅ~~~~っ!、ね?、上手く行ったでしょう?、カオリ♪」
――と、門番たちの視界から外れる、そのソウタたちが立ち止まっている街角で、先程の妙齢の女――いや、"変装したサトコ"は、大きく一息を吐いて安堵する。
「――何時、何処で、この様な謀事を思いついたのですかぁ……皇様」
武官風の"男"――いや、"男装したカオリ"は呆れた顔をして、変装サトコに苦言を呈する。
「ふふ♪、この時間の西門は、御所内で夜勤をした者が、この門を通って出て行く事が多く――公者風の者が門から出ようとしても、ある意味では日常の風景ですから、怪しまれずに出入り出来ると思ったのです♪」
変装サトコは、誇らしげに胸を張り、喜々として男装カオリに向けてそう語る。
「――ったく、皇様が悪知恵を働かせて、御所から脱走するだなんて、俺に"前代未聞の刀聖"なんて説教をしても、もう説得力ねぇぞ?」
ソウタは、変装した両名に近付き、苦笑いを見せながら皮肉を言う。
――そう、先程、サトコがニヤッと笑って『まだ、お別れではない』という節の言葉を言っていた理由とは、変装して、御所からの脱走する計画だったからなのだ!
「あら?、皇の脱走は、まったく"前代未聞"などではありませんのよ?
ほぼ、全ての世で、皇は稀に忍んで、民の暮らしや世俗の様子を探り、政治へと反映するモノなのです♪」
サトコは楽しげに、そう言って笑顔を見せる。
「――ちぇっ!、はいはい、解りましたよぉ~!」
皮肉を見事に賺された体のソウタは、悔しげに両手を挙げる。
「はあ……私は、なんという事の片棒を、担いでしまったのでしょう……」
男装カオリは、絶望した表情で、大きな溜め息を吐いてうな垂れる。
「カオリ、大丈夫ですよ~♪
誰も、あなたを咎めなどしません――何せ、こうして私と共に忍ぶ近衛は、あなたが初めてではありませんから」
そのサトコの言葉に、カオリは目を見開く。
「えっ!?、でっ!、では、忍ぶのは初めて……ではない、と?」
カオリは驚愕し、声を震わせて尋ねる。
「ええ、即位してから――三度目かしら?」
「――って、おいおい!、即位して、まだ四ヵ月目だぞ?
月イチで忍んでいるのかよ!、どこが"稀に"なんだ?!」
ソウタは呆れて、鋭いツッコミを入れる。
「それは失敬ですぅ!、戦時下の先月は、ちゃんと自重しましたぁ!」
サトコは頬を膨らませて、ソウタのツッコミに抗議する。
「――もちろん、まだ"準戦時下"と言える今、軽率な行動である事は、重々解っています。
でも、今日は"愛しき者"が旅立ってしまう日――そんな日の、女子の気持ちを汲み取って欲しいと、カツトシやエリカ、キヨネに見送りを頼み込んだのです」
続けて、サトコは目を潤ませソウタを見詰める。
「うっ、いっ、愛しいって……」
サトコのストレート過ぎる愛の言葉に、ソウタは頬を紅潮させ、照れ臭そうに俯く…
「――まあ、イイんじゃない?、アタシやカオリが、ちゃんと警護に付いているんだし」
すっかり、サトコと同盟関係なタマは、楽しげにサトコの手を握って微笑む。
「しゃーないかぁ……街道と市街の境までなら、そんなに危なくはねぇだろうしな」
ソウタも、観念した様で、サトコたちの同行を許し、馬首を引いて市街地へと歩き出した。
「~~~♪♪」
――市街地へと入り、様々な品物の市場が設けられた、界隈に差し掛かったトコロで、サトコは楽しげに、鼻歌を歌い始めた。
「――楽しいか?」
ソウタは、そんなサトコの姿を見て、微笑ましい表情で彼女に尋ねる。
「ええ!、凄く、興奮しています!」
サトコはそう言って、ソウタの手をギュッと握る。
二人の様子は――傍から見れば完全に、恋人同士に見える姿である。
「――はぁ、ちょっと、羨ましいなぁ……」
――と、二人の親密な様子を、カオリが手綱引く馬上から観て、そんな愚痴を漏らしているのは、タマである。
「タマさん、反対側が開いていますから、貴女も手を繋いでは?」
羨望の眼差しを感じたサトコは、タマにそう告げて、絡めている方の反対側のソウタの腕を指差す。
「えっ、イイのぉ~?」
「どうぞ♪、ソウタの腕は、繋いだぐらいでは、別に減りませんから♪」
サトコは笑みを浮べて、ソウタの手の甲をスリスリと撫でる。
「――じゃっ♪、遠慮無く♪」
タマは、そう言って馬上から降りると、すぐさまニヤニヤと笑って、ソウタと手を絡める。
「――ったく、俺は、お前たちの玩具かよ?」
ソウタは、恥ずかしそうに頬を赤らめ、左右の美少女に愚痴を溢す。
「玩具がイヤなら、早く別の恋人を作るなり、妻を娶るなりをしては?
そうなったら――私たちだって、退かざるを得なくなりますしね」
サトコは、そう得意気に、ソウタをからかう。
「そういえば――ソウタ殿は、本当に恋人は、居られないので?
俗に、旅の流者には、立ち寄った町や村ごとに妾が居るモノだと……」
カオリは、訝しげにソウタの色恋沙汰を勘繰る。
「あ~……それは、大丈夫ですよ。
最初に訪ねて来た時に、それと無く、確認しましたからね」
その勘繰りに答えたのは、ソウタ本人ではなく、サトコの方だった。
「――ですから"本当に"と、付け加えたのですよ。
刀聖である事すら、隠していたソウタ殿なら――妾の類の存在を秘匿しておく事ぐらい、造作も無いのでは?」
その、カオリからの意外なツッコミに、前を行く3人の表情をガラリと変える。
サトコとタマは険しい表情に、ソウタは困惑した表情へと……
「ほっ!、本当だあっ!、俺は、旅を始めてから、女っ気なんて……」
「……"旅を始めてから"?、という事は――ツツキに居た頃は、女っ気があったと?」
サトコは、目尻を鋭く寄せて、ソウタの言葉尻を責め――
「……だよね。
アタシと出会う前には、"あの"オウビに居たんだし――あそこって、"そーいうトコ"が沢山あるって聞くから、"一切無い"って言うのは、逆に怪しいかも!」
――と、タマは顎に手を置き、名探偵ばりに、ソウタの発言の矛盾を突く。
「そっ!、そーいう揚げ足拾いはするなよぉ……」
ソウタは、情けない声を上げて、溜め息を吐いてうな垂れる。
「――じゃあさ?、そこんトコの話は、あそこで朝御飯を食べながら――にしない?
ソウタだって、出発前に腹ごしらえをした方がイイし、アタシも朝を抜いて付いて来ちゃったから、ペコペコだよぉ~!」
――そう、タマは腹を押さえながら、道すがらに見つけた飯屋を指差し――
「――それに、丁度、すぐ街道との境だから……ココで別れようよ」
――その先に見える、関所も見据えて提案した。
「――どっ、どれを、食べたら良いかしら?」
サトコは、飯屋の壁の上段に居並ぶ品書を見上げ、楽しそうに目を輝かせて、何を注文するか悩んでいる。
「あれ?、前に出て来た時って、何も食べなかったの?」
タマも、注文を吟味しながら、サトコに、"以前のお忍び"について尋ねる。
「ええ――露店の菓子などは、食べてみたのですが、本格的に食事をするのは、初めてですね……」
「ねえねえ♪、やっぱり、注文して食べちゃった後に『えっ?!、お金が必要なの!?』的な、お約束展開ってあったの?」
続いて、サトコの買い食いの逸話を欲して、タマが喰いつく。
「ふふ♪、タマさん、それは創作物の読み過ぎです。
それぐらいは、たとえ世間知らずの君主でも、心得てはいるモノですし、私はツツキに降っていた際に、経験もしておりましたから」
タマの尋ねに、サトコは笑みを見せながら答え、顎に手を添えて品書を見るが――
「――ですが、ツツキで、ソウタが連れて来てくれた店と、品書の内容が全然違いますね……どうしてかしら?」
――以前の飯屋とは違う様相に、少し戸惑っている様だ。
「ツツキは海沿いで、漁港もあるから、魚介を使った料理が主だが――コウオウは内陸で、魚とかは獲れないだろ?
だから、野菜や家畜、野生の獣の肉を使った料理が主なんだよ――じゃっ、俺は、野鳥のモモ肉を焼いたヤツと粉餅で」
ソウタは、注文を決めながら、ツツキとの違いを解説する。
「――なるほど。
主産業の違いとは、そういう事の違いへと行き着くのですね……良い、勉強になりました」
サトコは、ソウタの解説に感心して、うんうんと大きく頷く。
「へへ、随分と小難しいコトを言うお嬢ちゃんだねぇ……で、嬢ちゃんはナニにするんだい?」
そう言って、会話に絡んで来たのは、先に注文をしていた茶を持って来た、飯屋の主人だ。
「――なっ?!」
店主の――サトコに対するフランクな声掛けに、カオリは一瞬、顔色を変えるが、サトコは目配せでカオリを制し――
「あっ、彼と同じ物を――」
――と、微笑みも見せて応じる。
「あいよ!、じゃあ、そっちの子と、アンちゃんは……」
店主が、テキパキとタマとカオリの注文も取り、厨房へと消えた所で――
「――っ!、皇様に対して、なんと無礼な物言い……
目線で留められなければ、斬って捨てるに足りる所業です!」
カオリは、険しい表情で厨房を睨む。
「――カオリ、今の私たちは、市井の民者として振る舞っているのですよ?
私への対応に、目くじらを立ててはいけません……生真面目な貴女なら、きっとこうなるでしょうから――これまでの"お忍び"へ、貴女を連れて来なかったんですよぉ……」
サトコは、得々と論じて、怒るカオリを嗜める。
「ホント、お偉いさんには見えないよねぇ……その着物も、似合っているし」
タマは、頬杖を突き、サトコの姿を見据えてそう言った。
「――そういや、その着物って、もしかして……」
タマに釣られて、まじまじとサトコの恰好を見たソウタは、ある事に気付く――
「――やっと、気付いてくれましたか。
貴方が、ツツキの市場で見立ててくれた、あの時の着物です♪」
サトコは、嬉しそうに振り袖を掲げて、桃色の生地に染め抜かれた白い花の柄を見せる。
「えっ!?、ナニナニぃ~?、何だか、お熱い逸話の予感~!」
タマは、ニヤニヤと笑って、二人を指差す。
「――ツツキに着いた日に、私は転んでドブ沼に落ちてしまって――着て行った着物を、台無しにしてしまったんです」
「――で、迎えに出ていた俺が、そのままじゃ城まで行くのは可哀想だからって、ツツキの小せぇ市場に連れて行って……この着物を、仕立てて貰ったんだったな」
二人は、懐かしそうに思い出を振り返る。
「田舎の安物なのに、持ち帰っていたのか」
「私の――ツツキでの、最初の思い出の品ですからね、当たり前です」
――そんな、雑談をしながら、4人は食事に興じ、あっという間に時は過ぎた。
皆が、注文した料理を食べ終え、箸を置くと――
「――はぁ、皆でこのまま、ソウタと一緒に、関所を抜けて旅に出れたなら、きっと、楽しい旅となるでしょうねぇ……」
――と、サトコは、時が経った事を名残惜しそうに、小さな溜め息を吐いた。
「あっ!、それすっごくイイっ!!!、荷物はこの辺でババッと買って、四人で繰り出しちゃえ――っ……」
タマが、楽しげに四人旅のプランを語るが、それに聴き入るサトコの顔が、実に寂しげで……タマは思わず、言葉に詰まる。
その様子を見渡すソウタは、ふっと微笑んで――
「――さて、そろそろ……」
――と言って、残っていた茶を、喉元に呷りながら立ち上がる。
その様を――黙ったまま、サトコたち三人は凝視した。
「じゃあな、タマ、元気でやれよ?」
ソウタは手を伸ばし、タマの猫耳をクシャクシャと撫で――
「――カオリさん、世話になりました」
――そのまま、カオリの方を向き、深く頭を下げる。
頭を上げたソウタは、サトコの顔を見詰め――
「――じゃあ、『またな』、サトコ」
――そう、ヒョイと手を挙げて言った。
「ええ、『また』ですから、『さようなら』は、言いませんよ?」
サトコは、涙で顔を濡らしながら、精一杯気丈に振る舞って言う。
「ああ、きっと『また』会う事になる――"やらなきゃならないコト"が、ほとんど同じだからな……刀聖と、皇は」
ソウタは優しい笑顔を浮かべ、そのサトコの顔を濡らす涙を、そっと拭ってやる。
「じゃあ――行くわ」
振り向いたソウタは、そのまま飯屋の暖簾を潜り、軒先に繋いでいた長手綱を握って、関所へと歩いて行った。
観光スポットと化している南門とは違い、物資の搬入や使者や斥候の出入り口として用いられており、この門を守る二人の門番は、夜警からの継続任務中であっても、キリッとした表情で、門を通ろうとする人々に睨みを効かせている。
「刀聖さ――いえ、ソウタ殿……朝の内に発たれるとの旨、一軍より伝えられております」
その、西門騎馬口に、荷を積んだ馬を引いて現われたソウタに、門番二人は畏まって会釈をする。
8日も、御所に留まる事となったソウタは、御所に詰める公者たちにとって、勲金等の先の戦勝の立役者であり、刀聖という大事な国賓の一人でもある――なので、顔も名前も、末端である門番たちにまで知れ渡っているのだ。
そりゃあそうだろう――何せ、先日の祝宴の警備をしていたのは、言わずもがな門番たちだったし、業務上、知っていなければならない立場なのだから。
もちろん、ソウタの風貌や名前は、家族にさえ言ってはならない最高機密――誰かに言ったら、即、重罪は免れない。
「――あれぇ~?、アタシも居るんだけどなぁ~?」
――と、馬の背の上に荷と共に跨り、ヒョコっと猫耳を立てているのは、タマである。
「タマ嬢が、御見送りの任を仰せつかった事も、無論存じておりますよ」
門番の二人は、ニヤニヤと微笑んで、タマの皮肉にそう応じた。
タマとて既に、御所内では勲金等の有名人――それに『謎の美女軍団』の異名で知られる、コケツ衆という出自と、その異名に違わぬ可愛らしい容姿を持つタマは、特に"一部"の公者の間でも、ちょっとした人気を博していた。
「――じゃ、このまま通って良いんスね?」
「ええ、どうぞ御通り下さい。
いつか、戦の気配など無い時にもう一度、お会い出来たなら、祝着にござります」
門番二人は、深々と頭を垂れ、西門を出て行くソウタたちを見送った――
「――おはようございます、警備の皆様、ご苦労様です」
――と、そのソウタの後に続く様に、二人の門番に声を掛けて来たのは、長い髪をしっかり結った、淡い桃色の着物を着た妙齢の女である。
「――うむ、おはよう」
その女は、門の内側から現われたため――門番たちは、御所と関わりがある身分の者だと合点して、さほど警戒せずに挨拶に応じた。
「おはよう……ございます」
門番たちに、声を掛けて来たのは一人ではなかった。
もう一人、門番に声を掛けて来たのは――灰色の袴を穿いた、武官らしき長身の男。
桃色の着物を着た女の後ろに、ピッタリと追従する恰好で現われたので、どうやらこの"武官風"は、この女の連れらしい。
この二人の男女は、別に門番たちに警戒されたりはせず、実に当たり前な様子で、門外へと出た――
「――ありゃりゃ!、ホント、簡単に通れてるね……」
――と、既に市街地へと向かう道へと繋がる角を、曲がり終えたはずのソウタが引くテンは、何故か立ち止まっていて、その鞍上に居るタマは呆れた風にそう言う。
ソウタも、顔をしかめて、タマの言葉に頷き、大きな溜め息を吐いて――
「――やっぱり、御所の警備は、問題があるよなぁ……」
――そう、懸念を吐露する。
「――ふぅ~~~~っ!、ね?、上手く行ったでしょう?、カオリ♪」
――と、門番たちの視界から外れる、そのソウタたちが立ち止まっている街角で、先程の妙齢の女――いや、"変装したサトコ"は、大きく一息を吐いて安堵する。
「――何時、何処で、この様な謀事を思いついたのですかぁ……皇様」
武官風の"男"――いや、"男装したカオリ"は呆れた顔をして、変装サトコに苦言を呈する。
「ふふ♪、この時間の西門は、御所内で夜勤をした者が、この門を通って出て行く事が多く――公者風の者が門から出ようとしても、ある意味では日常の風景ですから、怪しまれずに出入り出来ると思ったのです♪」
変装サトコは、誇らしげに胸を張り、喜々として男装カオリに向けてそう語る。
「――ったく、皇様が悪知恵を働かせて、御所から脱走するだなんて、俺に"前代未聞の刀聖"なんて説教をしても、もう説得力ねぇぞ?」
ソウタは、変装した両名に近付き、苦笑いを見せながら皮肉を言う。
――そう、先程、サトコがニヤッと笑って『まだ、お別れではない』という節の言葉を言っていた理由とは、変装して、御所からの脱走する計画だったからなのだ!
「あら?、皇の脱走は、まったく"前代未聞"などではありませんのよ?
ほぼ、全ての世で、皇は稀に忍んで、民の暮らしや世俗の様子を探り、政治へと反映するモノなのです♪」
サトコは楽しげに、そう言って笑顔を見せる。
「――ちぇっ!、はいはい、解りましたよぉ~!」
皮肉を見事に賺された体のソウタは、悔しげに両手を挙げる。
「はあ……私は、なんという事の片棒を、担いでしまったのでしょう……」
男装カオリは、絶望した表情で、大きな溜め息を吐いてうな垂れる。
「カオリ、大丈夫ですよ~♪
誰も、あなたを咎めなどしません――何せ、こうして私と共に忍ぶ近衛は、あなたが初めてではありませんから」
そのサトコの言葉に、カオリは目を見開く。
「えっ!?、でっ!、では、忍ぶのは初めて……ではない、と?」
カオリは驚愕し、声を震わせて尋ねる。
「ええ、即位してから――三度目かしら?」
「――って、おいおい!、即位して、まだ四ヵ月目だぞ?
月イチで忍んでいるのかよ!、どこが"稀に"なんだ?!」
ソウタは呆れて、鋭いツッコミを入れる。
「それは失敬ですぅ!、戦時下の先月は、ちゃんと自重しましたぁ!」
サトコは頬を膨らませて、ソウタのツッコミに抗議する。
「――もちろん、まだ"準戦時下"と言える今、軽率な行動である事は、重々解っています。
でも、今日は"愛しき者"が旅立ってしまう日――そんな日の、女子の気持ちを汲み取って欲しいと、カツトシやエリカ、キヨネに見送りを頼み込んだのです」
続けて、サトコは目を潤ませソウタを見詰める。
「うっ、いっ、愛しいって……」
サトコのストレート過ぎる愛の言葉に、ソウタは頬を紅潮させ、照れ臭そうに俯く…
「――まあ、イイんじゃない?、アタシやカオリが、ちゃんと警護に付いているんだし」
すっかり、サトコと同盟関係なタマは、楽しげにサトコの手を握って微笑む。
「しゃーないかぁ……街道と市街の境までなら、そんなに危なくはねぇだろうしな」
ソウタも、観念した様で、サトコたちの同行を許し、馬首を引いて市街地へと歩き出した。
「~~~♪♪」
――市街地へと入り、様々な品物の市場が設けられた、界隈に差し掛かったトコロで、サトコは楽しげに、鼻歌を歌い始めた。
「――楽しいか?」
ソウタは、そんなサトコの姿を見て、微笑ましい表情で彼女に尋ねる。
「ええ!、凄く、興奮しています!」
サトコはそう言って、ソウタの手をギュッと握る。
二人の様子は――傍から見れば完全に、恋人同士に見える姿である。
「――はぁ、ちょっと、羨ましいなぁ……」
――と、二人の親密な様子を、カオリが手綱引く馬上から観て、そんな愚痴を漏らしているのは、タマである。
「タマさん、反対側が開いていますから、貴女も手を繋いでは?」
羨望の眼差しを感じたサトコは、タマにそう告げて、絡めている方の反対側のソウタの腕を指差す。
「えっ、イイのぉ~?」
「どうぞ♪、ソウタの腕は、繋いだぐらいでは、別に減りませんから♪」
サトコは笑みを浮べて、ソウタの手の甲をスリスリと撫でる。
「――じゃっ♪、遠慮無く♪」
タマは、そう言って馬上から降りると、すぐさまニヤニヤと笑って、ソウタと手を絡める。
「――ったく、俺は、お前たちの玩具かよ?」
ソウタは、恥ずかしそうに頬を赤らめ、左右の美少女に愚痴を溢す。
「玩具がイヤなら、早く別の恋人を作るなり、妻を娶るなりをしては?
そうなったら――私たちだって、退かざるを得なくなりますしね」
サトコは、そう得意気に、ソウタをからかう。
「そういえば――ソウタ殿は、本当に恋人は、居られないので?
俗に、旅の流者には、立ち寄った町や村ごとに妾が居るモノだと……」
カオリは、訝しげにソウタの色恋沙汰を勘繰る。
「あ~……それは、大丈夫ですよ。
最初に訪ねて来た時に、それと無く、確認しましたからね」
その勘繰りに答えたのは、ソウタ本人ではなく、サトコの方だった。
「――ですから"本当に"と、付け加えたのですよ。
刀聖である事すら、隠していたソウタ殿なら――妾の類の存在を秘匿しておく事ぐらい、造作も無いのでは?」
その、カオリからの意外なツッコミに、前を行く3人の表情をガラリと変える。
サトコとタマは険しい表情に、ソウタは困惑した表情へと……
「ほっ!、本当だあっ!、俺は、旅を始めてから、女っ気なんて……」
「……"旅を始めてから"?、という事は――ツツキに居た頃は、女っ気があったと?」
サトコは、目尻を鋭く寄せて、ソウタの言葉尻を責め――
「……だよね。
アタシと出会う前には、"あの"オウビに居たんだし――あそこって、"そーいうトコ"が沢山あるって聞くから、"一切無い"って言うのは、逆に怪しいかも!」
――と、タマは顎に手を置き、名探偵ばりに、ソウタの発言の矛盾を突く。
「そっ!、そーいう揚げ足拾いはするなよぉ……」
ソウタは、情けない声を上げて、溜め息を吐いてうな垂れる。
「――じゃあさ?、そこんトコの話は、あそこで朝御飯を食べながら――にしない?
ソウタだって、出発前に腹ごしらえをした方がイイし、アタシも朝を抜いて付いて来ちゃったから、ペコペコだよぉ~!」
――そう、タマは腹を押さえながら、道すがらに見つけた飯屋を指差し――
「――それに、丁度、すぐ街道との境だから……ココで別れようよ」
――その先に見える、関所も見据えて提案した。
「――どっ、どれを、食べたら良いかしら?」
サトコは、飯屋の壁の上段に居並ぶ品書を見上げ、楽しそうに目を輝かせて、何を注文するか悩んでいる。
「あれ?、前に出て来た時って、何も食べなかったの?」
タマも、注文を吟味しながら、サトコに、"以前のお忍び"について尋ねる。
「ええ――露店の菓子などは、食べてみたのですが、本格的に食事をするのは、初めてですね……」
「ねえねえ♪、やっぱり、注文して食べちゃった後に『えっ?!、お金が必要なの!?』的な、お約束展開ってあったの?」
続いて、サトコの買い食いの逸話を欲して、タマが喰いつく。
「ふふ♪、タマさん、それは創作物の読み過ぎです。
それぐらいは、たとえ世間知らずの君主でも、心得てはいるモノですし、私はツツキに降っていた際に、経験もしておりましたから」
タマの尋ねに、サトコは笑みを見せながら答え、顎に手を添えて品書を見るが――
「――ですが、ツツキで、ソウタが連れて来てくれた店と、品書の内容が全然違いますね……どうしてかしら?」
――以前の飯屋とは違う様相に、少し戸惑っている様だ。
「ツツキは海沿いで、漁港もあるから、魚介を使った料理が主だが――コウオウは内陸で、魚とかは獲れないだろ?
だから、野菜や家畜、野生の獣の肉を使った料理が主なんだよ――じゃっ、俺は、野鳥のモモ肉を焼いたヤツと粉餅で」
ソウタは、注文を決めながら、ツツキとの違いを解説する。
「――なるほど。
主産業の違いとは、そういう事の違いへと行き着くのですね……良い、勉強になりました」
サトコは、ソウタの解説に感心して、うんうんと大きく頷く。
「へへ、随分と小難しいコトを言うお嬢ちゃんだねぇ……で、嬢ちゃんはナニにするんだい?」
そう言って、会話に絡んで来たのは、先に注文をしていた茶を持って来た、飯屋の主人だ。
「――なっ?!」
店主の――サトコに対するフランクな声掛けに、カオリは一瞬、顔色を変えるが、サトコは目配せでカオリを制し――
「あっ、彼と同じ物を――」
――と、微笑みも見せて応じる。
「あいよ!、じゃあ、そっちの子と、アンちゃんは……」
店主が、テキパキとタマとカオリの注文も取り、厨房へと消えた所で――
「――っ!、皇様に対して、なんと無礼な物言い……
目線で留められなければ、斬って捨てるに足りる所業です!」
カオリは、険しい表情で厨房を睨む。
「――カオリ、今の私たちは、市井の民者として振る舞っているのですよ?
私への対応に、目くじらを立ててはいけません……生真面目な貴女なら、きっとこうなるでしょうから――これまでの"お忍び"へ、貴女を連れて来なかったんですよぉ……」
サトコは、得々と論じて、怒るカオリを嗜める。
「ホント、お偉いさんには見えないよねぇ……その着物も、似合っているし」
タマは、頬杖を突き、サトコの姿を見据えてそう言った。
「――そういや、その着物って、もしかして……」
タマに釣られて、まじまじとサトコの恰好を見たソウタは、ある事に気付く――
「――やっと、気付いてくれましたか。
貴方が、ツツキの市場で見立ててくれた、あの時の着物です♪」
サトコは、嬉しそうに振り袖を掲げて、桃色の生地に染め抜かれた白い花の柄を見せる。
「えっ!?、ナニナニぃ~?、何だか、お熱い逸話の予感~!」
タマは、ニヤニヤと笑って、二人を指差す。
「――ツツキに着いた日に、私は転んでドブ沼に落ちてしまって――着て行った着物を、台無しにしてしまったんです」
「――で、迎えに出ていた俺が、そのままじゃ城まで行くのは可哀想だからって、ツツキの小せぇ市場に連れて行って……この着物を、仕立てて貰ったんだったな」
二人は、懐かしそうに思い出を振り返る。
「田舎の安物なのに、持ち帰っていたのか」
「私の――ツツキでの、最初の思い出の品ですからね、当たり前です」
――そんな、雑談をしながら、4人は食事に興じ、あっという間に時は過ぎた。
皆が、注文した料理を食べ終え、箸を置くと――
「――はぁ、皆でこのまま、ソウタと一緒に、関所を抜けて旅に出れたなら、きっと、楽しい旅となるでしょうねぇ……」
――と、サトコは、時が経った事を名残惜しそうに、小さな溜め息を吐いた。
「あっ!、それすっごくイイっ!!!、荷物はこの辺でババッと買って、四人で繰り出しちゃえ――っ……」
タマが、楽しげに四人旅のプランを語るが、それに聴き入るサトコの顔が、実に寂しげで……タマは思わず、言葉に詰まる。
その様子を見渡すソウタは、ふっと微笑んで――
「――さて、そろそろ……」
――と言って、残っていた茶を、喉元に呷りながら立ち上がる。
その様を――黙ったまま、サトコたち三人は凝視した。
「じゃあな、タマ、元気でやれよ?」
ソウタは手を伸ばし、タマの猫耳をクシャクシャと撫で――
「――カオリさん、世話になりました」
――そのまま、カオリの方を向き、深く頭を下げる。
頭を上げたソウタは、サトコの顔を見詰め――
「――じゃあ、『またな』、サトコ」
――そう、ヒョイと手を挙げて言った。
「ええ、『また』ですから、『さようなら』は、言いませんよ?」
サトコは、涙で顔を濡らしながら、精一杯気丈に振る舞って言う。
「ああ、きっと『また』会う事になる――"やらなきゃならないコト"が、ほとんど同じだからな……刀聖と、皇は」
ソウタは優しい笑顔を浮かべ、そのサトコの顔を濡らす涙を、そっと拭ってやる。
「じゃあ――行くわ」
振り向いたソウタは、そのまま飯屋の暖簾を潜り、軒先に繋いでいた長手綱を握って、関所へと歩いて行った。
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