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あえて、身勝手な一人に
あえて、身勝手な一人に
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「ユッ、ユリ様が――亡くなられた?、それも、民たちの手に因って?」
心底驚いたアヤコは、両手で口を覆い、崩れ落ちる様に膝を折る。
「あ~……それは、ちょっと違いますね。
根底に、欲を尊ぶ勢力に呼応した士団の一派が起こした、謀反があったとはいえ――ユリは、自死に因る継承を望んだのです」
チヨは顔をしかめ、首を横に振ってアヤコの早合点を正す。
「謀反?、テンラク様に残ってた連中が?」
チヨ以上に、ソウタは顔をしかめ、憤怒の形相で彼女に詳細を訊き返す。
「ええ、秋分の夜に。
謀反自体は、比較的早期に決着しましたが――彼女はその後、相当の責を感じていた様で」
ユリの死を、惜しむ体でチヨは顔を伏せ、二人から目を逸らす。
「なあ、アンタ――どーして、そんな風に、見て来た様な事が言えんだ?」
ソウタは、チヨを睨み付け、苛立ち全開で彼女に更に尋ねる。
「ソッ!、ソウタ!
くっ!、傀儡の類を通していても、今、私たちが話しているのは――アマノツバサノオオカミ様なのですよっ!?」
「うふ♪、良いのですよぉ~♪
こんな楽しむ様な態度で、あんなコトを平然と並べて語る私に、苛立ちや嫌悪を抱いて当然――逆に、そう思わない者だったら、光刃を握るに相応しくありませんから♪」
ソウタの不遜な物越しを叱るアヤコを、チヨは手を翳して制し、また妖艶で不適な笑みを彼に向けた。
「ソウタ――何時でも私を、その光刃で滅しても構いませんよ?
私が、最強の矛と盾を同時に手にしているとはいえ――所詮、それらはレプリカ。
貴方に継がれた、オリジナルからの一撃は防げませんし、何よりも、戦闘のために造られてはいない私に、貴方を如何こうする事は出来ませんから」
チヨは笑顔のまま、ソウタを試す様な物言いをする。
「――いえ、そんな事はしませんよ。
訊きてぇ事は、たんまりと残ってますからね」
ソウタもまた、チヨを試す様な物言いで手を拡げ、攻撃の意思が無い事を示す。
「うふ♪、ありがとう――まずは、何故、見て来た様な事を言えるのか?、でしたね。
あれは、このツクモの大気に忍ばせた"観察用ナノマシン"――って、あなたたちに解り易く言うと、目に見えない程に小さな傀儡が、空気の中に居てですね……
それらが、観たモノ全てが私に伝わっている――まあ、観たモノだけで、音声は無理なんですけれど、一応は神様らしく、全てを観させて頂いております」
チヨは、空気を掴む素振りをして、その手を翳しながらソウタの問いに答えた。
「――解りました。
じゃあ、次――"皇の身にも"云々と言った後、皇軍が如何こうとも言った……それは、コウオウと南コクの戦で、コウオウが負けた――って、事っスか?」
ソウタは、更に顔をしかめながら、チヨの発言の後半部分を突く。
「ええ、ヨクネ峠にて両軍は相対し、皇軍にとってはほぼ全滅の大敗。
元々、事前の御前会議で、これに敗れれば降伏する事を決めていたようだけれど……数日中には、サトコは占報を用いて、世界中に敗戦を伝えるつもりでしょう。
これからは、あの秩序を尊ぶ勢力が――皇の処遇をどうする気なのか、それが問題でしょうね」
チヨがそう言って、目を瞑って考えを巡らす素振りを見せた時、ソウタは、レプリカ紫珠輪が敷いた結界に守られた、部屋の壁を強く殴ったっ!
「大巫女様が死んだのも、サトコがヤバい目にあっているのも――元を正せば、あいつらの動きや気配を見抜けずに、のうのうと里帰りを決め込んだ……刀聖のせいってぇコトだね?」
ソウタは、叩いた拳を震わせながら、上目遣いにチヨの表情を覗く。
「うふ♪」
チヨは、明らかな含み笑いを溢し、嬉しそうにソウタの顔を見返した。
「だから――アンタは、俺に会いに来たんだろ?、その"落とし前"を着ける気があんのかって?」
「本当に、物わかりが良いわね。
ええ、そうよ――でも、別にそんな高圧的なモノではないわ。
管理者たる私のモットーは、全てをこの地に生きる人間たちの裁量に委ねる事――ですから、別にこのまま、人の目覚めを放置するなら、それはそれで別に構いませんけど?」
ソウタの乱暴な表現に、チヨはこれも楽しげに彼の推測を訂正する。
「へっ!、随分と寛容な神様だねぇ。
神様ってのは、人間たちが進むべき道、やるべき事柄を、ああしなさい、こうしなさいって、示してくれるモンじゃあないのかい?、意地悪く言やあ……随分といい加減な神様だぜ」
「うふ♪、耳が痛いわぁ~!、あっ、私は痛覚を持たないので、コレはもちろん言葉のアヤですけど♪
でも、神なんて、所詮はそんなモノですよぉ~?、神にとっては創造した世界なんて、創るだけ創って、棚に飾っている模型の様なモノなのですから」
チヨは、本当に楽しそうに、ソウタの皮肉を一蹴する。
「オオカミ様――私はどうしても、人の目覚め……"封権主義の中に芽吹いた民主主義"が、ダメな考えだとは思えません。
君主が言わば、民を『支配』する形ではなく――民が自らの知恵や工夫で、自分たちの社会を運営するという仕組みは、とても素晴らしい事だと、私は思っているのですが……」
チヨの神らしくない、かなり軽薄な発言の連発に――アヤコも流石に、ソウタの無礼極まりない物言いを諌める気も起きず、彼女は自分の最たる疑問をチヨにぶつけた。
「ええ、もちろん――ダメだと言っているのではありません。
ただ、"かつての世界"での悲劇を総括した結果、世界を始めからやり直す事にしたのが――このツクモの成り立ち。
民主主義が芽生えた『人の目覚め』もまた――あなたたちが『かつて』と、同じプロセスを通ろうとしている証拠です。
同じく進んでいるからこそ――このまま同じ道を辿るのか?、はたまた違う道へと踵を返すのか?、それが管理者たる、私の興味なのですよ」
チヨがそう言って、値踏みする様にソウタに微笑み掛ける。
「じゃあ――刀聖は、自分の思うがまま、光刃を振るって良いってワケかい?
神様の言うコトや、正義だ、愛だ、救済だとか、んな大層なモンが付いてなくても?」
ソウタは、仕返しと言った体で、チヨに似せた値踏みする様な眼差し彼女に向けた。
「ええ、それこそが、この世界の神である私が望むコトであり――これまでの刀聖の様に、どう光刃を使うかは、当人の好きにしてくれれば良い。
それが"世界の滅び"を、光刃が選んだ者に一任した意味――深く考える必要は無いのです♪」
チヨは、相変らずの笑顔であったが、この時だけは――これまでの不敵で妖艶なモノではなく、ソウタを励ます様な屈託の無いモノだった。
「へっ!、そうですかぁ~っ!、解りましたよ」
ソウタは、吐き捨てる様にそう言うと、チヨとアヤコに背を向けて襖に手を掛け――
「――オオカミ様、守を解いてください、査察団の仕事に戻りますんで」
――と、部屋から出る意思を示した。
「うふ♪、そうですね、では……」
チヨは、人差し指を動かし、結界の封を解く。
「さぁ~てぇっ!、クリ社の仕事も今日で終いだぁ~!」
ソウタは、大袈裟にそう嘯くと、半身でチヨたちの方へと振り向き――
「――明日からは、酔狂な滅びの執行者とやらへと、戻りますかね♪」
――と、憑き物が落ちた様な晴れやかな表情で、ニヤッと笑った。
「!?、ソウタ!、では――」
ソウタのわざとらしい物言いと、態度の意を悟ったアヤコは、口を両手で覆って驚く。
「――うふ♪、そうですかぁ~っ!
なら、その執行者殿に一つ、ご注~進っ♪、"猫と狼"が、近道をしようとして、樹海を迷っていますよぉ~?」
チヨも、満足げに微笑み、ソウタのわざとらしい物言いを真似ると――頓知の様な意味深な注進を告げた
「猫と狼が樹海に?、そうですか……」
ソウタは、チヨからの注進を聞くと、心当たりがある様に、顎へと手を当てて考えを巡らす。
「アヤコ様――俺、せっかく帰って来たから、"アレ"が喰いたいです。
樹海に行って、自分で獲って来ますよ」
ソウタも、頓知の様な意味深な言葉をアヤコへと投げた。
「"アレ"を樹海に?、では――アオイとヒカリも、共に連れて行ってくれるかしら?
このツクモが地でも、屈指の珍味である"アレ"を、査察団の方々にも振舞いたいので」
――と、アヤコも二人に付き合う体で、暗号の様な会話に加わる。
「へっ?、ヒカリたちも?、う~んっ……解りました。
じゃあ、明朝には出発しますんで、侍従頭のタマキさんや、御傍衆に渡りを……」
「ええ、解ったわ」
ソウタは渋々とアヤコの要望に応じると、お膳立てを頼んで、おもむろに部屋から出て行った。
「うふ♪、吹っ切れたみたいね。
刀聖が、歴史の中で着飾ってしまった――救世の偶像としての重圧から」
チヨは、ソウタの背を見送ると、ニタりと微笑んでそう言った。
「やはり――それが、オオカミ様がこの時にいらっしゃった本当の理由でしたか」
チヨの言葉の意味に、心当たりがあったアヤコは、納得した体で共にソウタの背を見送る。
「三年前――ソウタが旅立って直ぐに、私を訪ねて来た旅の学者。
その旅の学者を名乗っていた貴女が、私に告げたのは――驚くしかないその素性と、悩める新しき刀聖に対する懸念」
「ええ、刀聖には、いざという時、"身勝手な破壊者"となって貰わなければならない――ですが、先世は随分と投げやりな継承をした様子でしたし、観ていた限りでは、当世はかなり真面目な性格。
それこそ、下賤にはなりますが、幼馴染への"一夜の過ち"でさえ、今だに悔やんでいる程に」
アヤコがチヨとの初見について語ると――チヨも、相変らずの不敵な笑みで話を繋ぐ。
「そんな、光刃を振るう事を躊躇している様な彼に――『邪』のガイドラインとは、自分の規準で良いのだと、教えたかったのですよ。
そうでなければ――そんな身勝手な破壊者を、あえて、この世界に置いた意味がありませんから」
チヨは、光刃と紫珠輪のレプリカを手の平に置き――
「『世界を裁く権利を、あえて、身勝手な一人に託す』――それが、全ての人々にあらゆる"権利"を託そうとした結果、欲と秩序のバランスが保てなくなり自壊した……"かつての世界"の人々の思いなのですから」
――そう呟いて、それらを強く握った。
心底驚いたアヤコは、両手で口を覆い、崩れ落ちる様に膝を折る。
「あ~……それは、ちょっと違いますね。
根底に、欲を尊ぶ勢力に呼応した士団の一派が起こした、謀反があったとはいえ――ユリは、自死に因る継承を望んだのです」
チヨは顔をしかめ、首を横に振ってアヤコの早合点を正す。
「謀反?、テンラク様に残ってた連中が?」
チヨ以上に、ソウタは顔をしかめ、憤怒の形相で彼女に詳細を訊き返す。
「ええ、秋分の夜に。
謀反自体は、比較的早期に決着しましたが――彼女はその後、相当の責を感じていた様で」
ユリの死を、惜しむ体でチヨは顔を伏せ、二人から目を逸らす。
「なあ、アンタ――どーして、そんな風に、見て来た様な事が言えんだ?」
ソウタは、チヨを睨み付け、苛立ち全開で彼女に更に尋ねる。
「ソッ!、ソウタ!
くっ!、傀儡の類を通していても、今、私たちが話しているのは――アマノツバサノオオカミ様なのですよっ!?」
「うふ♪、良いのですよぉ~♪
こんな楽しむ様な態度で、あんなコトを平然と並べて語る私に、苛立ちや嫌悪を抱いて当然――逆に、そう思わない者だったら、光刃を握るに相応しくありませんから♪」
ソウタの不遜な物越しを叱るアヤコを、チヨは手を翳して制し、また妖艶で不適な笑みを彼に向けた。
「ソウタ――何時でも私を、その光刃で滅しても構いませんよ?
私が、最強の矛と盾を同時に手にしているとはいえ――所詮、それらはレプリカ。
貴方に継がれた、オリジナルからの一撃は防げませんし、何よりも、戦闘のために造られてはいない私に、貴方を如何こうする事は出来ませんから」
チヨは笑顔のまま、ソウタを試す様な物言いをする。
「――いえ、そんな事はしませんよ。
訊きてぇ事は、たんまりと残ってますからね」
ソウタもまた、チヨを試す様な物言いで手を拡げ、攻撃の意思が無い事を示す。
「うふ♪、ありがとう――まずは、何故、見て来た様な事を言えるのか?、でしたね。
あれは、このツクモの大気に忍ばせた"観察用ナノマシン"――って、あなたたちに解り易く言うと、目に見えない程に小さな傀儡が、空気の中に居てですね……
それらが、観たモノ全てが私に伝わっている――まあ、観たモノだけで、音声は無理なんですけれど、一応は神様らしく、全てを観させて頂いております」
チヨは、空気を掴む素振りをして、その手を翳しながらソウタの問いに答えた。
「――解りました。
じゃあ、次――"皇の身にも"云々と言った後、皇軍が如何こうとも言った……それは、コウオウと南コクの戦で、コウオウが負けた――って、事っスか?」
ソウタは、更に顔をしかめながら、チヨの発言の後半部分を突く。
「ええ、ヨクネ峠にて両軍は相対し、皇軍にとってはほぼ全滅の大敗。
元々、事前の御前会議で、これに敗れれば降伏する事を決めていたようだけれど……数日中には、サトコは占報を用いて、世界中に敗戦を伝えるつもりでしょう。
これからは、あの秩序を尊ぶ勢力が――皇の処遇をどうする気なのか、それが問題でしょうね」
チヨがそう言って、目を瞑って考えを巡らす素振りを見せた時、ソウタは、レプリカ紫珠輪が敷いた結界に守られた、部屋の壁を強く殴ったっ!
「大巫女様が死んだのも、サトコがヤバい目にあっているのも――元を正せば、あいつらの動きや気配を見抜けずに、のうのうと里帰りを決め込んだ……刀聖のせいってぇコトだね?」
ソウタは、叩いた拳を震わせながら、上目遣いにチヨの表情を覗く。
「うふ♪」
チヨは、明らかな含み笑いを溢し、嬉しそうにソウタの顔を見返した。
「だから――アンタは、俺に会いに来たんだろ?、その"落とし前"を着ける気があんのかって?」
「本当に、物わかりが良いわね。
ええ、そうよ――でも、別にそんな高圧的なモノではないわ。
管理者たる私のモットーは、全てをこの地に生きる人間たちの裁量に委ねる事――ですから、別にこのまま、人の目覚めを放置するなら、それはそれで別に構いませんけど?」
ソウタの乱暴な表現に、チヨはこれも楽しげに彼の推測を訂正する。
「へっ!、随分と寛容な神様だねぇ。
神様ってのは、人間たちが進むべき道、やるべき事柄を、ああしなさい、こうしなさいって、示してくれるモンじゃあないのかい?、意地悪く言やあ……随分といい加減な神様だぜ」
「うふ♪、耳が痛いわぁ~!、あっ、私は痛覚を持たないので、コレはもちろん言葉のアヤですけど♪
でも、神なんて、所詮はそんなモノですよぉ~?、神にとっては創造した世界なんて、創るだけ創って、棚に飾っている模型の様なモノなのですから」
チヨは、本当に楽しそうに、ソウタの皮肉を一蹴する。
「オオカミ様――私はどうしても、人の目覚め……"封権主義の中に芽吹いた民主主義"が、ダメな考えだとは思えません。
君主が言わば、民を『支配』する形ではなく――民が自らの知恵や工夫で、自分たちの社会を運営するという仕組みは、とても素晴らしい事だと、私は思っているのですが……」
チヨの神らしくない、かなり軽薄な発言の連発に――アヤコも流石に、ソウタの無礼極まりない物言いを諌める気も起きず、彼女は自分の最たる疑問をチヨにぶつけた。
「ええ、もちろん――ダメだと言っているのではありません。
ただ、"かつての世界"での悲劇を総括した結果、世界を始めからやり直す事にしたのが――このツクモの成り立ち。
民主主義が芽生えた『人の目覚め』もまた――あなたたちが『かつて』と、同じプロセスを通ろうとしている証拠です。
同じく進んでいるからこそ――このまま同じ道を辿るのか?、はたまた違う道へと踵を返すのか?、それが管理者たる、私の興味なのですよ」
チヨがそう言って、値踏みする様にソウタに微笑み掛ける。
「じゃあ――刀聖は、自分の思うがまま、光刃を振るって良いってワケかい?
神様の言うコトや、正義だ、愛だ、救済だとか、んな大層なモンが付いてなくても?」
ソウタは、仕返しと言った体で、チヨに似せた値踏みする様な眼差し彼女に向けた。
「ええ、それこそが、この世界の神である私が望むコトであり――これまでの刀聖の様に、どう光刃を使うかは、当人の好きにしてくれれば良い。
それが"世界の滅び"を、光刃が選んだ者に一任した意味――深く考える必要は無いのです♪」
チヨは、相変らずの笑顔であったが、この時だけは――これまでの不敵で妖艶なモノではなく、ソウタを励ます様な屈託の無いモノだった。
「へっ!、そうですかぁ~っ!、解りましたよ」
ソウタは、吐き捨てる様にそう言うと、チヨとアヤコに背を向けて襖に手を掛け――
「――オオカミ様、守を解いてください、査察団の仕事に戻りますんで」
――と、部屋から出る意思を示した。
「うふ♪、そうですね、では……」
チヨは、人差し指を動かし、結界の封を解く。
「さぁ~てぇっ!、クリ社の仕事も今日で終いだぁ~!」
ソウタは、大袈裟にそう嘯くと、半身でチヨたちの方へと振り向き――
「――明日からは、酔狂な滅びの執行者とやらへと、戻りますかね♪」
――と、憑き物が落ちた様な晴れやかな表情で、ニヤッと笑った。
「!?、ソウタ!、では――」
ソウタのわざとらしい物言いと、態度の意を悟ったアヤコは、口を両手で覆って驚く。
「――うふ♪、そうですかぁ~っ!
なら、その執行者殿に一つ、ご注~進っ♪、"猫と狼"が、近道をしようとして、樹海を迷っていますよぉ~?」
チヨも、満足げに微笑み、ソウタのわざとらしい物言いを真似ると――頓知の様な意味深な注進を告げた
「猫と狼が樹海に?、そうですか……」
ソウタは、チヨからの注進を聞くと、心当たりがある様に、顎へと手を当てて考えを巡らす。
「アヤコ様――俺、せっかく帰って来たから、"アレ"が喰いたいです。
樹海に行って、自分で獲って来ますよ」
ソウタも、頓知の様な意味深な言葉をアヤコへと投げた。
「"アレ"を樹海に?、では――アオイとヒカリも、共に連れて行ってくれるかしら?
このツクモが地でも、屈指の珍味である"アレ"を、査察団の方々にも振舞いたいので」
――と、アヤコも二人に付き合う体で、暗号の様な会話に加わる。
「へっ?、ヒカリたちも?、う~んっ……解りました。
じゃあ、明朝には出発しますんで、侍従頭のタマキさんや、御傍衆に渡りを……」
「ええ、解ったわ」
ソウタは渋々とアヤコの要望に応じると、お膳立てを頼んで、おもむろに部屋から出て行った。
「うふ♪、吹っ切れたみたいね。
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チヨは、ソウタの背を見送ると、ニタりと微笑んでそう言った。
「やはり――それが、オオカミ様がこの時にいらっしゃった本当の理由でしたか」
チヨの言葉の意味に、心当たりがあったアヤコは、納得した体で共にソウタの背を見送る。
「三年前――ソウタが旅立って直ぐに、私を訪ねて来た旅の学者。
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「ええ、刀聖には、いざという時、"身勝手な破壊者"となって貰わなければならない――ですが、先世は随分と投げやりな継承をした様子でしたし、観ていた限りでは、当世はかなり真面目な性格。
それこそ、下賤にはなりますが、幼馴染への"一夜の過ち"でさえ、今だに悔やんでいる程に」
アヤコがチヨとの初見について語ると――チヨも、相変らずの不敵な笑みで話を繋ぐ。
「そんな、光刃を振るう事を躊躇している様な彼に――『邪』のガイドラインとは、自分の規準で良いのだと、教えたかったのですよ。
そうでなければ――そんな身勝手な破壊者を、あえて、この世界に置いた意味がありませんから」
チヨは、光刃と紫珠輪のレプリカを手の平に置き――
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王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
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