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聖狭間退却戦
衝突
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「――おっ!、来るみたいだねぇ♪」
総突撃の布れを聴いたソウタは、足踏みをしている八番隊の姿を見やり、楽しげにほくそ笑んだ。
「まあ、俺も手合わせの感じで解っちゃいたが――ヒロシさんたちも言う様に、あのヤヒコって隊長は、ホントに直情しちゃうクチなんだな。
俺みてぇな、素人の浅はかな策に、まんまとハマっちまうなんてよ♪」
ソウタはポリポリと首筋を掻き、呆れ気味にそう呟くと、既に抜かれている光刃を、素振りの要領で振るい、その眼光を鋭いモノへと変える。
「――んじゃ、そろそろ動きますか。
いくらかは討ち溢しが出ると思いますから、カオリさんとハヤトさんは、それをお願いしますね?」
後ろに居るカオリとハヤトに、ソウタは振り向かないまま、突撃の号令を待つ八番隊を見据えながら、確認の尋ねをする。
「――心得ました」
「おう、任しとけ――当世刀聖サマの戦いぶり、特等席で見物させて貰うぜ♪」
カオリは、長槍を構え直しながら、緊張した面持ちでそう答え、ハヤトは相変らずの不敵な笑みのまま、背渡しの二刀をサッと抜き放つ。
「ソウタ、どうか無事に……」
「ソウタ殿――ご武運を」
籠馬車の中に居る、サトコとシオリも幌から顔を出し、心配そうにソウタの顔を見詰める。
「そんなに心配しなさんな――大丈夫っスよ。
寧ろ心配なのは、俺のえげつない戦いっぷりで、二人に怖がられそうなコトの方かな?」
二人の、不安に包まれた表情を和らげ様と、ソウタは軽口を叩く。
「こっ!、怖がったりする事など――無用な懸念にございます!」
「ええ――例え、貴方がそれを望み、それが破壊者たる理だとしても、この場に参じた者にとっては、貴方を恐れるなど、無用というよりは無理な言い分です」
シオリは拳を握り、怒る体でソウタの言い分に反論し、サトコは目を瞑って、シオリの言葉を噛み締める様に諭して聞かせた。
「へへ――あんがとよ♪」
二人の優しい言葉に、照れ臭そうに率直な礼を込めて、ソウタはそう呟くと……二人の側に居るヒカリに、そっと目配せを送る
「……」
それを、ヒカリが無言の頷きで返すと、それに何となく気付いたシオリとサトコは――
(これが――幼馴染ゆえに出来る、阿吽の疎通なのかしら?)
(ヒカリやアオイを――羨ましく思ってしまう所よね、こういうのって)
――と、二人は心中で、悔しげにそう呟いた。
「――全隊っ!、突撃ぃぃぃぃぃっ!」
――ワアァァァァァァァァァッ!!!!!!
その時!、ヤヒコの号令が聖狭間に轟き、八番隊の皆が唸る様な怒号と共に、突撃を始めた!
「よし――じゃっ!、行って来まぁ~すっ!!!」
ソウタも――光刃をダラリと下段に垂らしながら、たった一人の突貫を開始した。
湿地帯が拡がり、視線を遮る物もロクに見当たらない、この聖狭間で始まった――三千を超える、八番隊の旗印を背に差した一団に対し、たった一人で……ましてや笑顔のまま、突貫するソウタの姿は、まるで荒れ狂う大波に抗う、波乗りの如くであった。
(これが――戦か?、我は……一体、何を見せられ様としているのか?)
その、呆れるしかない眼前の光景に、タカヨシは大いに困惑していた。
「――将軍!、友軍への弓矢や界気の援護は如何に?」
「――無用であろう。
たった一人に、無数の矢を射掛けたり、広範囲に界気を浴びせるは、無駄撃ちにしかならんと思うのが正論」
部下が、指示の催促をすると、タカヨシは一蹴する体でそう命じた。
――ワアァァァァァァァァァッ!!!!!!
「――さぁて、まずは、ちいっと減って貰おうかねぇっ!」
ソウタは、楽しげにそう叫ぶと、『突き』の恰好で光の刀を前へ突き出す――すると、光刃は一気に太く、長い形態へと変形!
突撃して来る、十五~二十名で編成されたと見受けられる八番隊の一小隊に向け、グングンとその刀身を伸ばして行くっ!
「――ひっ!、光のぉ……っ!?」
小隊員たちは、個人の判断で散開を始めるが、伸び進んで来る光刃の先を行く、三名ほどの者は――そんな素振りも無く、いや、"間に合わず"に突進を続ける。
その三名ほどは、もちろん解っていたはずだ――このまま進めば、間違いなく自分たちは、この光刃の威力で五体は蒸発し、命も失うと。
だが、その三名は光刃の威容に気圧され、迫る死の瞬間を脅える事すら忘れ、ただ只管に前へと進んだ。
不気味な音を発て、その三名を飲み込んだ光刃は――それに構う事無く伸び続け、次々と後ろの隊員たちの身も、"美しくて禍々しい"――そんな光柱に包まれて行った。
「よっ――とっ!」
ソウタが、そう呟いて光の刀を打刀サイズへと戻した時には――その一閃の軌跡に居たはずの、数十名の八番隊員の姿は忽然と消え失せており、これまた数十名の上下左右の半身だけが失せた遺体が転がっていた。
その中でも、首から先があり、まだ息もある者は――失った肢体から伝わる幻肢痛に因り、苦悶の表情を浮かべていた。
「!?、なっ――!!!」
後方で、その光景を見やったタカヨシは、搾り出す様な驚愕の声を挙げ、その驚きと共に、持っていた騎馬の手綱をダラリと放した。
「!!!!!、なんだよ――何が起きたってんだよぉっ!?」
接敵した先鋒を見据えたまま、突撃に加わっていたヤヒコとその直衛たちも思わず足を止め、目の前で展開された、考えられない光景に、ヤヒコは只々苛立ち激昂する。
「!!!、凄まじい――そんな在り来たりな言葉だけでは、片付けられないわね。
これこそが、刀聖様の"人の了見を超えた"御力……」
ソウタが見せた光景に驚いていたのは、敵方ばかりではない。
左翼に展開した六番隊の面々も、一様に愕然とし、その中心に居るミスズは、牙を湛えた口を覆って、その手を震わせていた。
右翼の三番隊の面々も、同様に啞然とした眼差しを、遠目に居る鬼面を被ったソウタの威容――いや、彼が造った、"異様"と言って良い光景を見据えて、他と同じ様に驚く事しか出来ずに居た。
(そう――これが、刀聖様の逆鱗に触れた者たちの末路なんだよ。
せいぜい……自分たちの浅はかな選択を悔いる事だ、ヤヒコくん)
――が、ヒロシだけは驚きはせずにほくそ笑み、ゆったりと抜刀して見せた。
総突撃の布れを聴いたソウタは、足踏みをしている八番隊の姿を見やり、楽しげにほくそ笑んだ。
「まあ、俺も手合わせの感じで解っちゃいたが――ヒロシさんたちも言う様に、あのヤヒコって隊長は、ホントに直情しちゃうクチなんだな。
俺みてぇな、素人の浅はかな策に、まんまとハマっちまうなんてよ♪」
ソウタはポリポリと首筋を掻き、呆れ気味にそう呟くと、既に抜かれている光刃を、素振りの要領で振るい、その眼光を鋭いモノへと変える。
「――んじゃ、そろそろ動きますか。
いくらかは討ち溢しが出ると思いますから、カオリさんとハヤトさんは、それをお願いしますね?」
後ろに居るカオリとハヤトに、ソウタは振り向かないまま、突撃の号令を待つ八番隊を見据えながら、確認の尋ねをする。
「――心得ました」
「おう、任しとけ――当世刀聖サマの戦いぶり、特等席で見物させて貰うぜ♪」
カオリは、長槍を構え直しながら、緊張した面持ちでそう答え、ハヤトは相変らずの不敵な笑みのまま、背渡しの二刀をサッと抜き放つ。
「ソウタ、どうか無事に……」
「ソウタ殿――ご武運を」
籠馬車の中に居る、サトコとシオリも幌から顔を出し、心配そうにソウタの顔を見詰める。
「そんなに心配しなさんな――大丈夫っスよ。
寧ろ心配なのは、俺のえげつない戦いっぷりで、二人に怖がられそうなコトの方かな?」
二人の、不安に包まれた表情を和らげ様と、ソウタは軽口を叩く。
「こっ!、怖がったりする事など――無用な懸念にございます!」
「ええ――例え、貴方がそれを望み、それが破壊者たる理だとしても、この場に参じた者にとっては、貴方を恐れるなど、無用というよりは無理な言い分です」
シオリは拳を握り、怒る体でソウタの言い分に反論し、サトコは目を瞑って、シオリの言葉を噛み締める様に諭して聞かせた。
「へへ――あんがとよ♪」
二人の優しい言葉に、照れ臭そうに率直な礼を込めて、ソウタはそう呟くと……二人の側に居るヒカリに、そっと目配せを送る
「……」
それを、ヒカリが無言の頷きで返すと、それに何となく気付いたシオリとサトコは――
(これが――幼馴染ゆえに出来る、阿吽の疎通なのかしら?)
(ヒカリやアオイを――羨ましく思ってしまう所よね、こういうのって)
――と、二人は心中で、悔しげにそう呟いた。
「――全隊っ!、突撃ぃぃぃぃぃっ!」
――ワアァァァァァァァァァッ!!!!!!
その時!、ヤヒコの号令が聖狭間に轟き、八番隊の皆が唸る様な怒号と共に、突撃を始めた!
「よし――じゃっ!、行って来まぁ~すっ!!!」
ソウタも――光刃をダラリと下段に垂らしながら、たった一人の突貫を開始した。
湿地帯が拡がり、視線を遮る物もロクに見当たらない、この聖狭間で始まった――三千を超える、八番隊の旗印を背に差した一団に対し、たった一人で……ましてや笑顔のまま、突貫するソウタの姿は、まるで荒れ狂う大波に抗う、波乗りの如くであった。
(これが――戦か?、我は……一体、何を見せられ様としているのか?)
その、呆れるしかない眼前の光景に、タカヨシは大いに困惑していた。
「――将軍!、友軍への弓矢や界気の援護は如何に?」
「――無用であろう。
たった一人に、無数の矢を射掛けたり、広範囲に界気を浴びせるは、無駄撃ちにしかならんと思うのが正論」
部下が、指示の催促をすると、タカヨシは一蹴する体でそう命じた。
――ワアァァァァァァァァァッ!!!!!!
「――さぁて、まずは、ちいっと減って貰おうかねぇっ!」
ソウタは、楽しげにそう叫ぶと、『突き』の恰好で光の刀を前へ突き出す――すると、光刃は一気に太く、長い形態へと変形!
突撃して来る、十五~二十名で編成されたと見受けられる八番隊の一小隊に向け、グングンとその刀身を伸ばして行くっ!
「――ひっ!、光のぉ……っ!?」
小隊員たちは、個人の判断で散開を始めるが、伸び進んで来る光刃の先を行く、三名ほどの者は――そんな素振りも無く、いや、"間に合わず"に突進を続ける。
その三名ほどは、もちろん解っていたはずだ――このまま進めば、間違いなく自分たちは、この光刃の威力で五体は蒸発し、命も失うと。
だが、その三名は光刃の威容に気圧され、迫る死の瞬間を脅える事すら忘れ、ただ只管に前へと進んだ。
不気味な音を発て、その三名を飲み込んだ光刃は――それに構う事無く伸び続け、次々と後ろの隊員たちの身も、"美しくて禍々しい"――そんな光柱に包まれて行った。
「よっ――とっ!」
ソウタが、そう呟いて光の刀を打刀サイズへと戻した時には――その一閃の軌跡に居たはずの、数十名の八番隊員の姿は忽然と消え失せており、これまた数十名の上下左右の半身だけが失せた遺体が転がっていた。
その中でも、首から先があり、まだ息もある者は――失った肢体から伝わる幻肢痛に因り、苦悶の表情を浮かべていた。
「!?、なっ――!!!」
後方で、その光景を見やったタカヨシは、搾り出す様な驚愕の声を挙げ、その驚きと共に、持っていた騎馬の手綱をダラリと放した。
「!!!!!、なんだよ――何が起きたってんだよぉっ!?」
接敵した先鋒を見据えたまま、突撃に加わっていたヤヒコとその直衛たちも思わず足を止め、目の前で展開された、考えられない光景に、ヤヒコは只々苛立ち激昂する。
「!!!、凄まじい――そんな在り来たりな言葉だけでは、片付けられないわね。
これこそが、刀聖様の"人の了見を超えた"御力……」
ソウタが見せた光景に驚いていたのは、敵方ばかりではない。
左翼に展開した六番隊の面々も、一様に愕然とし、その中心に居るミスズは、牙を湛えた口を覆って、その手を震わせていた。
右翼の三番隊の面々も、同様に啞然とした眼差しを、遠目に居る鬼面を被ったソウタの威容――いや、彼が造った、"異様"と言って良い光景を見据えて、他と同じ様に驚く事しか出来ずに居た。
(そう――これが、刀聖様の逆鱗に触れた者たちの末路なんだよ。
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