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答え
奇特な結末
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「ひっ――退いただと?」
ショウは冷や汗をこめかみに滲ませ、自分の耳を疑う体で問い返した。
「ええ――"この様な有様"ではございますが」
ショウの目の前に畏まった、タカヨシは痛切な面持ちで、傷だらけの自分の甲冑と、連れ立った少ない手勢を示して苦笑いをする。
ここは――天警本陣の大広間。
時としては、あの聖狭間での激戦から10日を経た夕刻である。
ソウタたちとの戦いに因り、全軍に大打撃を被ったタカヨシ率いる北コクエ第三軍は、事実上の敗走という形で翼域を南下しココ、テンラクへと至ったのが、今日の午後であった。
「刀聖と三番隊、六番隊は――戦には大勝しながらも、樹海の向こうに退いた。
そう……申されるのですか?」
ショウの側に同席するルイが、ショウの呟きを補完する体の尋ねを、再度タカヨシに投げる。
「奇妙な報告、奇特な結末と思われるのは当然にござる。
しかしながら、"そのとおり"だと述べる事しか出来ん……」
当惑している両人の態度には理解を示しながら、タカヨシは更に表情の渋さを増し、相応しい語彙が見つからない事に苛立ちながらそう答えた。
聖狭間での大敗と三軍敗走の報せ――そして、天警八番隊全滅の一報は、既に早馬に因ってテンラク、及び北コクエの各地へともたらされてはいたが、その仔細を、タカヨシの様な立場ある者の口から、公的に告げられたのはコレが初めて。
とはいえ――勝った方が砦を放逐して僻地へと逃れ、敗れた方が凱旋を果たす恰好で出陣地に帰還する。
そんな奇特な結末だったと聞いて、初耳のショウたちも当惑しか出来なかった。
「ショウ殿――ルイ殿へ、率直に伺いたい。
この戦……"勝ち"と思うか、"負け"と思うか――両人の見解は如何に?」
ため息交じりにタカヨシは、二人にそんな禅問答めいた意見を請う。
「抵抗勢力から各地の砦を奪還し、それらを勢力圏から追い出した点は――満了の戦果と言えます」
「――しかしながら、最大で一万にも迫った兵力を擁していながら、それを数百にまで追い込まれての戦果では……"勝ち戦"と胸を張れませんでしょうな」
ルイは、得た益に着目し、"勝った"と言える部分を抽出して挙げ、ショウは、結果として失ってしまった、貴重な戦力の消失を挙げて、両者の相対的な結論としては――"敗戦"と決して頷き合う。
「ご尤も――明察にござる。
当事者ではあるが、我も同様の見解……負け戦も負け戦、徹底的に負けてしもうた」
タカヨシは悔し涙をも見せ、フルフルと両手を震わせる。
「こっ!、これを武者震いと言えたなら良いが……これは、まるっきりに違う震えだ!
これは、刀聖とそれに組する者たちとの圧倒的な力量差への恐怖の念――脅えておるのよ!、このいい歳をした武人がな!」
タカヨシは、歯も噛み合わなくなる程に震え、それを恥じて彼は両手で顔を覆う。
(オウレン風紀方出のタカヨシ――と言えば、先の解放戦争でも猛将として鳴らした武人。
それを、ここまで追い詰めるとは……)
ショウは、ゴクリと息を呑み、武勇で鳴らすタカヨシの想像だにしない脅えっぷりに目を見張る。
「三番隊長は、我にこういう意味合いを申した――"何時でも、刀聖と自分たちは樹海の奥から、我らを殺しに戻って来る"と。
我らは……我らは!、この世界の触れてはならない部分に触れてしまったのだっ!
もう……もう!、止めるべきなのだよぉっ!、自国の改革を成しただけでっ!、十分なはずだぁっ!」
タカヨシは錯乱し、狂った様にそんな事を喚き散らし――
「――そうだ!、民守様にご進言せねばならん――この戦の末に、利など生まれないっ!
生まれるのは、刀聖に蹂躙された後に積まれる、屍の山だけっ!
そうだ――そのための"民主主義"ではないかっ!、我とて民の一人――きっと、この恐ろしさを解ってくださるっ!」
タカヨシは、ふらつきながら立ち上がると、呪詛でも唱える様にそんな事を呟き、彷徨う亡者の如き表情で、大広間を後にしようとする。
「――ショウさん、もし、北コクが手を退くとなったら……」
ルイは顔色を変え、去ろうとするタカヨシの背を見やり、そう問い掛けながら、ショウに目配せをする。
「ええ――既に、侵攻を始めているスヨウ、武力介入が議論に挙がっているハクキ連邦。
この二国と、我らが単独で戦を構える事になってしまう!」
小声でそう返答したショウは、腰に提げた長刀の柄を握り、居合の体でそれを抜き放ち、タカヨシの背に斬りつけたっ!
「――っ?!!!!、ぐぅぅぅぅっ?!!!!」
タカヨシは、事態を把握しないまま倒れ込み、長刀を振り切ったショウの顔を睨んだまま絶命する。
「!!!!、ショウ殿ぉっ!?、何のつもり――」
タカヨシの手勢が、振り向いて激昂し、一斉に抜刀するが――
「?!!!!、ぐわぁっ!!!」
先手を打つ形で、ルイは風の界気で手勢を攻撃――完全に不意を突かれた形で、次々と致命傷を負って倒れ込む。
「勝手に――止められては困るのだよ!
我らに謀反をけしかけ、それを利用してクリ社の実権を握り、経済規制を取り除かせようとしたのは貴国の民守!
"邪の烙印"を押されて、刀聖に駆逐される事とて、もはや一蓮托生であろうよ!」
ショウは、倒れた手勢たちに次々とトドメを刺し、続いてタカヨシの御首を切り離し、それを長刀の先に刺し――
「――三軍将殿はっ!、敗将の憂き目を悔いて腹を召されたっ!
不肖――この士団二番隊長ショウがっ!、介錯仕り候っ!」
――と、声高に叫びながら、その御首を掲げ、北コクエ三軍の敗残兵が待つ本陣の広場へ向かう。
「手勢の列士各々も、見事に殉じたぁ!
ツクモ武士に相応しき、立派な御最後にござったぁっ!」
ルイも、ショウに追従し、その偽りの切腹劇を、共に言い触らすのであった。
ショウは冷や汗をこめかみに滲ませ、自分の耳を疑う体で問い返した。
「ええ――"この様な有様"ではございますが」
ショウの目の前に畏まった、タカヨシは痛切な面持ちで、傷だらけの自分の甲冑と、連れ立った少ない手勢を示して苦笑いをする。
ここは――天警本陣の大広間。
時としては、あの聖狭間での激戦から10日を経た夕刻である。
ソウタたちとの戦いに因り、全軍に大打撃を被ったタカヨシ率いる北コクエ第三軍は、事実上の敗走という形で翼域を南下しココ、テンラクへと至ったのが、今日の午後であった。
「刀聖と三番隊、六番隊は――戦には大勝しながらも、樹海の向こうに退いた。
そう……申されるのですか?」
ショウの側に同席するルイが、ショウの呟きを補完する体の尋ねを、再度タカヨシに投げる。
「奇妙な報告、奇特な結末と思われるのは当然にござる。
しかしながら、"そのとおり"だと述べる事しか出来ん……」
当惑している両人の態度には理解を示しながら、タカヨシは更に表情の渋さを増し、相応しい語彙が見つからない事に苛立ちながらそう答えた。
聖狭間での大敗と三軍敗走の報せ――そして、天警八番隊全滅の一報は、既に早馬に因ってテンラク、及び北コクエの各地へともたらされてはいたが、その仔細を、タカヨシの様な立場ある者の口から、公的に告げられたのはコレが初めて。
とはいえ――勝った方が砦を放逐して僻地へと逃れ、敗れた方が凱旋を果たす恰好で出陣地に帰還する。
そんな奇特な結末だったと聞いて、初耳のショウたちも当惑しか出来なかった。
「ショウ殿――ルイ殿へ、率直に伺いたい。
この戦……"勝ち"と思うか、"負け"と思うか――両人の見解は如何に?」
ため息交じりにタカヨシは、二人にそんな禅問答めいた意見を請う。
「抵抗勢力から各地の砦を奪還し、それらを勢力圏から追い出した点は――満了の戦果と言えます」
「――しかしながら、最大で一万にも迫った兵力を擁していながら、それを数百にまで追い込まれての戦果では……"勝ち戦"と胸を張れませんでしょうな」
ルイは、得た益に着目し、"勝った"と言える部分を抽出して挙げ、ショウは、結果として失ってしまった、貴重な戦力の消失を挙げて、両者の相対的な結論としては――"敗戦"と決して頷き合う。
「ご尤も――明察にござる。
当事者ではあるが、我も同様の見解……負け戦も負け戦、徹底的に負けてしもうた」
タカヨシは悔し涙をも見せ、フルフルと両手を震わせる。
「こっ!、これを武者震いと言えたなら良いが……これは、まるっきりに違う震えだ!
これは、刀聖とそれに組する者たちとの圧倒的な力量差への恐怖の念――脅えておるのよ!、このいい歳をした武人がな!」
タカヨシは、歯も噛み合わなくなる程に震え、それを恥じて彼は両手で顔を覆う。
(オウレン風紀方出のタカヨシ――と言えば、先の解放戦争でも猛将として鳴らした武人。
それを、ここまで追い詰めるとは……)
ショウは、ゴクリと息を呑み、武勇で鳴らすタカヨシの想像だにしない脅えっぷりに目を見張る。
「三番隊長は、我にこういう意味合いを申した――"何時でも、刀聖と自分たちは樹海の奥から、我らを殺しに戻って来る"と。
我らは……我らは!、この世界の触れてはならない部分に触れてしまったのだっ!
もう……もう!、止めるべきなのだよぉっ!、自国の改革を成しただけでっ!、十分なはずだぁっ!」
タカヨシは錯乱し、狂った様にそんな事を喚き散らし――
「――そうだ!、民守様にご進言せねばならん――この戦の末に、利など生まれないっ!
生まれるのは、刀聖に蹂躙された後に積まれる、屍の山だけっ!
そうだ――そのための"民主主義"ではないかっ!、我とて民の一人――きっと、この恐ろしさを解ってくださるっ!」
タカヨシは、ふらつきながら立ち上がると、呪詛でも唱える様にそんな事を呟き、彷徨う亡者の如き表情で、大広間を後にしようとする。
「――ショウさん、もし、北コクが手を退くとなったら……」
ルイは顔色を変え、去ろうとするタカヨシの背を見やり、そう問い掛けながら、ショウに目配せをする。
「ええ――既に、侵攻を始めているスヨウ、武力介入が議論に挙がっているハクキ連邦。
この二国と、我らが単独で戦を構える事になってしまう!」
小声でそう返答したショウは、腰に提げた長刀の柄を握り、居合の体でそれを抜き放ち、タカヨシの背に斬りつけたっ!
「――っ?!!!!、ぐぅぅぅぅっ?!!!!」
タカヨシは、事態を把握しないまま倒れ込み、長刀を振り切ったショウの顔を睨んだまま絶命する。
「!!!!、ショウ殿ぉっ!?、何のつもり――」
タカヨシの手勢が、振り向いて激昂し、一斉に抜刀するが――
「?!!!!、ぐわぁっ!!!」
先手を打つ形で、ルイは風の界気で手勢を攻撃――完全に不意を突かれた形で、次々と致命傷を負って倒れ込む。
「勝手に――止められては困るのだよ!
我らに謀反をけしかけ、それを利用してクリ社の実権を握り、経済規制を取り除かせようとしたのは貴国の民守!
"邪の烙印"を押されて、刀聖に駆逐される事とて、もはや一蓮托生であろうよ!」
ショウは、倒れた手勢たちに次々とトドメを刺し、続いてタカヨシの御首を切り離し、それを長刀の先に刺し――
「――三軍将殿はっ!、敗将の憂き目を悔いて腹を召されたっ!
不肖――この士団二番隊長ショウがっ!、介錯仕り候っ!」
――と、声高に叫びながら、その御首を掲げ、北コクエ三軍の敗残兵が待つ本陣の広場へ向かう。
「手勢の列士各々も、見事に殉じたぁ!
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