転校生

なかとし

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第2章

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 直が転校してきてニ日目の朝を迎えた。
 青葉駿太は自分のクラスである三年ニ組がある教室に向かっていた。
 三年生の教室はニ階にある。市立桜ヶ丘中学校は鉄筋コンクリートの五階建で一階に理科室や美術室といった特別教室、それから保健室がある。保健室の峰先生はベテランの女性養護教諭で、生徒達から厚い信頼を得ている。駿太も部活で怪我をした時は峰先生にお世話になったのだが、その時は優しく言葉をかけながら処置してもらった。そんな心遣いが生徒達に人気の理由だと駿太は思っている。そして、ニ年生の教室は三階に、一年生の教室は四階にあり、五階には結構大きいホールがある。五階のホールでは学年集会と呼ばれる、例えば遠足など、学年で取り決める行事などの説明会が
行われたりする。
 駿太は階段を上がっていた。そしてニ階の踊り場で足を止めた。駿太の親友の柳田公平が階段の踊り場から廊下を覗いていたからだ。
 「おまえ、何してるの?」
 公平は振り向き駿太だと知って安堵したような表情をして言った。
 「俺らの教室で海藤たちが転校生を囲んでいる」
 「え?マジで」
 駿太は公平の後に続き三ーニのプレートが掛かった教室を覗いてみた。真ん中に中野直が机に座っていて、その周りを海藤拓人と海藤率いる悪軍団が囲んでいた。
 「おまえさ~、転校してきて友達になってやろうって言ってんのに何その態度?」
 「かっこつけてんの?マジ、かっこ悪いんだけど」
 「つーか、何か喋れよ。気持ち悪い」
 直は前一点を睨みつけているだけだ。
 すると拓人が教室から出てきて駿太たちには目もくれずに、トイレへと入っていった。そして手にバケツを持って現れ、直の頭上でバケツをひっくり返した。中に入っていた水が勢いよく流れ出し、直はびしょ濡れになった。連中は笑っている。周りの部外者ヅラしてた奴も一瞬ビックリして直の方を向いたが、また何事もなかったかのように各々の会話に戻った。
 「おまえら、何しとるんだ!」
 駿太が呆気にとられていると、公平が怒鳴り海藤に詰め寄ったところだった。
 「海藤、そこまでするか?」
 「こいつが喋らないから悪いんだよ」
 「でも水はないだろう?」
 「うるせーな!」
 海藤が公平の胸倉を掴み、公平をど突いた。公平は一瞬よろけたが体勢を立て直し再び海藤に詰め寄ろうとしていた。海藤率いる悪軍団の一人、笹岡が公平を後ろから羽交い締めにした。海藤は笑っている。公平は「離せよ!」と、もがいている。その時、勢いよく直が立ち上がった。そして、海藤の頬を思いっきり殴った。「ドス!」という鈍い音がして海藤はその場に倒れた。
 「痛え……」
 海藤が立ち上がって直に掴みかかろうとしたところで、駿太は勢いよく教室に入っていき海藤を羽交い締めにした。海藤は駿太の腕の中で力強く暴れている。
 「離せよ!テメー離せよ!」
 直は海藤の前に唾を吐き、無言で教室を出ていった。
 「あの野郎……」
 海藤が駿太の腕の中で唸っている。
 駿太はアタマの中が何が何だか分からなくなっていた。
 しばらくして、担任の川本先生が教室に来た。一部始終を話し、教室を片付けたらそのままホームルームとなった。ホームルームでは体育祭と文化祭がもうすぐあるということが伝えられた。駿太は学級委員として、このクラスをまとめないといけない。とてもそんな気分にはなれなかった。
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