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第1章・始まり
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「今日もアッツイな~」
「ホントだよな~」
今日も蒸し蒸しする暑さ。太陽が皮膚を焼きそうだ。ドロドロした汗が身体全体から流れる。まさに猛暑である。蝉の鳴き声もうるさく、あまりの暑さにアタマがおかしくなりそうだ。
「なんだよ、この暑さは!」そう毒づいても暑さはますます増す一方だ。
「龍平、もうすぐ学校に着くぞ」
龍平の友人である岳斗は、タオルで顔を拭きながら枯れた声を出した。この暑さのせいで、声も出ないのだろう。
「えーぃ、走れー」
岳斗は突然狂ったように学校の正門に向かって走り出した。
「おーぃ、岳斗待てよー」
龍平は持っていたタオルを振り回しながら、岳斗の後をヤケ糞に追いかけた。
学校の正門を抜けると岳斗が校舎の階段を上っていくところが見えた。
「あいつ、速いな」
そいえば岳斗っていつも学校祭の徒競走で一位を取ってたっけ。比べて龍平は一位を取れる訳でもなく、かといって最下位でもない、いわゆる、どうでもいい順位ばかり。岳斗はスポーツ万能だし、スタイルも女子ウケがいいんじゃないかな。クラスの女子が「岳斗君ってカッコいいよね~」みたいなことを言ってたのを聞いたこと何回もあるし。まあ、龍平だってスポーツは平凡だけど、勉強は得意だと自負している。龍平の親が医者だから、龍平は親の後を継ぐために小学校の時から勉強はしてきたつもりだ。その反面、運動は光るものがないけど。
そんなことを思い浮かべて歩いていたら自分の教室に着いた。教室に入ると龍平の幼馴染である愛が手を振って微笑みかけてきた。
「龍平君、おはよう」
「おはよう」龍平は明るい声で応じた。
龍平と愛は小学校からの幼馴染で、喧嘩はもちろんしたことはあるけど、仲は良い方だと龍平は思っている。愛は気配りが上手くて面倒見もよくて、いつも多くの友達に囲まれて過ごしている印象がある。今日も友達の輪の中に入って楽しそうにしていた。
「龍平、やっと教室に着いたか~」
岳斗が手を上げて応じてきた。岳斗は自分の机で教科書の整理をしているところみたいだった。岳斗ってそういう所が几帳面なんだよな。
龍平が顔から滴り落ちる汗を拭っていると、岳斗が寄ってきた。
「スゲー暑いな」
「そうだな。ところでさ、龍平が前に行ってたアレのことだけど……」
岳斗が何か言いかけたが、聞き取れなかった。校内放送が流れ出したからだ。
『全校生徒の皆さん、おはようございます。本日はとても暑いですね。今日は季節は早いですが、運動会を開催します。全校生徒の皆さんは、すぐに運動場へ集まってください』
龍平は眉を顰めた。
「なんだ、今の放送……」
「何か運動会を開催するとか、訳のわからないことを言ってたな。何かの悪戯か?」
岳斗が意味不明という感じに首を傾げる。
龍平のクラスメートもざわついてはいるが、皆んなよくわからないというふうだ。各々が、何かの冗談だと思っている感じだ。
「キャー!」
どこか遠くの方から突然、女生徒らしき人の叫び声が聞こえてきた。
ドン!
すると、物凄い音が鳴り響いた。何だか、爆発音みたいだった。
「体育館が燃えてるぞ!」
ドン!
また、爆発音が響いた。
「おい、廊下が爆発したぞ!」
「逃げろ!」
廊下が爆発?一体何が起こってるというんだ。
パリン!
今度はガラスの割れる音が響いてきた。
「おいおい、一体何が起こってるんだよ」
岳斗が不安顔で呟いた。
「分からない。だが、今から何かが始まるのは確かだな」
龍平はさっきから今、学校全体で何が起こっているのかを必死に考えていた。
「何かって何だよ」
岳斗が訳が分からないという感じに聞いてくる。
「例えば、何かのゲームが始まるとかだ」
龍平は今思っていることを口にした。何かのパニック映画とかに出てくる場面を、龍平は想像していた。爆発とか、正にそれである。
「ゲームってなんだよ……」
岳斗が怯えたように聞いてきた。
「さっき、校内放送が流れただろ。あれは、今から運動会を開催するという訳の分からない内容だった。しかも、運動場へ集まれという。最初は何かの悪戯で冗談だと思ったが、実際に爆発が起きているんだ。これは、冗談なんかじゃない。正気だ」
「龍平、それ本気で言ってんのか」
「さっき、正気だと言ったろ。それに、運動場を見てみろよ。もう、多数の生徒が運動場に逃げてきている」
岳斗が運動場へ目を向けると同時に、また爆発音が鳴り響いた。今度はかなりの大きさの音だった。龍平たちの教室の廊下が爆発したらしい。
「逃げるぞ!」
龍平の叫び声と同時に、クラスの連中が狂ったような声を出しながら、炎が立ち込める廊下へと逃げて消えていく。
龍平は徐々に人が減っていく教室を見渡した。愛が体を震わせていた。
「愛!」
龍平は愛の元へ駆け寄った。
「大丈夫か!」
愛は首を振ると、そのまま気を失ったように倒れてしまった。
「岳斗!お前は逃げろ!」
岳斗は怯えた目を向けてきた。
「大丈夫だ。この爆発はただ、全校生徒を運動場へと導くためにと起こっているはずだ。なぜなら、炎がちゃんと通り道を作っている。廊下を見てみろ、廊下の周りが燃えてて、廊下自体はしっかり残っているだろ」
龍平はさっき、クラスの連中が飛び出していった時に廊下を見ていた。炎が円を描くように燃えていたのだ。つまり、炎がドーナツ型に燃えているから真ん中の穴を通っていけば、多少の火傷はするかもしれないが、安全に避難できると龍平は考えていた。
龍平は廊下を見るよう、岳斗を促した。
「わかった。龍平……」
岳斗は弱々しい声で頷いた。龍平を心配の眼差しで見てくる。
龍平は岳斗の肩に手を置いた。
「俺は大丈夫だ。愛を連れて必ず運動場へ行く。岳斗、逃げろ!」
岳斗は龍平の言葉を聞いて安心したように炎が立ち込める廊下へと逃げていった。
龍平も愛を背負い、気を引き締めると、炎が立ち込める廊下へと飛び込んだのだった。
「ホントだよな~」
今日も蒸し蒸しする暑さ。太陽が皮膚を焼きそうだ。ドロドロした汗が身体全体から流れる。まさに猛暑である。蝉の鳴き声もうるさく、あまりの暑さにアタマがおかしくなりそうだ。
「なんだよ、この暑さは!」そう毒づいても暑さはますます増す一方だ。
「龍平、もうすぐ学校に着くぞ」
龍平の友人である岳斗は、タオルで顔を拭きながら枯れた声を出した。この暑さのせいで、声も出ないのだろう。
「えーぃ、走れー」
岳斗は突然狂ったように学校の正門に向かって走り出した。
「おーぃ、岳斗待てよー」
龍平は持っていたタオルを振り回しながら、岳斗の後をヤケ糞に追いかけた。
学校の正門を抜けると岳斗が校舎の階段を上っていくところが見えた。
「あいつ、速いな」
そいえば岳斗っていつも学校祭の徒競走で一位を取ってたっけ。比べて龍平は一位を取れる訳でもなく、かといって最下位でもない、いわゆる、どうでもいい順位ばかり。岳斗はスポーツ万能だし、スタイルも女子ウケがいいんじゃないかな。クラスの女子が「岳斗君ってカッコいいよね~」みたいなことを言ってたのを聞いたこと何回もあるし。まあ、龍平だってスポーツは平凡だけど、勉強は得意だと自負している。龍平の親が医者だから、龍平は親の後を継ぐために小学校の時から勉強はしてきたつもりだ。その反面、運動は光るものがないけど。
そんなことを思い浮かべて歩いていたら自分の教室に着いた。教室に入ると龍平の幼馴染である愛が手を振って微笑みかけてきた。
「龍平君、おはよう」
「おはよう」龍平は明るい声で応じた。
龍平と愛は小学校からの幼馴染で、喧嘩はもちろんしたことはあるけど、仲は良い方だと龍平は思っている。愛は気配りが上手くて面倒見もよくて、いつも多くの友達に囲まれて過ごしている印象がある。今日も友達の輪の中に入って楽しそうにしていた。
「龍平、やっと教室に着いたか~」
岳斗が手を上げて応じてきた。岳斗は自分の机で教科書の整理をしているところみたいだった。岳斗ってそういう所が几帳面なんだよな。
龍平が顔から滴り落ちる汗を拭っていると、岳斗が寄ってきた。
「スゲー暑いな」
「そうだな。ところでさ、龍平が前に行ってたアレのことだけど……」
岳斗が何か言いかけたが、聞き取れなかった。校内放送が流れ出したからだ。
『全校生徒の皆さん、おはようございます。本日はとても暑いですね。今日は季節は早いですが、運動会を開催します。全校生徒の皆さんは、すぐに運動場へ集まってください』
龍平は眉を顰めた。
「なんだ、今の放送……」
「何か運動会を開催するとか、訳のわからないことを言ってたな。何かの悪戯か?」
岳斗が意味不明という感じに首を傾げる。
龍平のクラスメートもざわついてはいるが、皆んなよくわからないというふうだ。各々が、何かの冗談だと思っている感じだ。
「キャー!」
どこか遠くの方から突然、女生徒らしき人の叫び声が聞こえてきた。
ドン!
すると、物凄い音が鳴り響いた。何だか、爆発音みたいだった。
「体育館が燃えてるぞ!」
ドン!
また、爆発音が響いた。
「おい、廊下が爆発したぞ!」
「逃げろ!」
廊下が爆発?一体何が起こってるというんだ。
パリン!
今度はガラスの割れる音が響いてきた。
「おいおい、一体何が起こってるんだよ」
岳斗が不安顔で呟いた。
「分からない。だが、今から何かが始まるのは確かだな」
龍平はさっきから今、学校全体で何が起こっているのかを必死に考えていた。
「何かって何だよ」
岳斗が訳が分からないという感じに聞いてくる。
「例えば、何かのゲームが始まるとかだ」
龍平は今思っていることを口にした。何かのパニック映画とかに出てくる場面を、龍平は想像していた。爆発とか、正にそれである。
「ゲームってなんだよ……」
岳斗が怯えたように聞いてきた。
「さっき、校内放送が流れただろ。あれは、今から運動会を開催するという訳の分からない内容だった。しかも、運動場へ集まれという。最初は何かの悪戯で冗談だと思ったが、実際に爆発が起きているんだ。これは、冗談なんかじゃない。正気だ」
「龍平、それ本気で言ってんのか」
「さっき、正気だと言ったろ。それに、運動場を見てみろよ。もう、多数の生徒が運動場に逃げてきている」
岳斗が運動場へ目を向けると同時に、また爆発音が鳴り響いた。今度はかなりの大きさの音だった。龍平たちの教室の廊下が爆発したらしい。
「逃げるぞ!」
龍平の叫び声と同時に、クラスの連中が狂ったような声を出しながら、炎が立ち込める廊下へと逃げて消えていく。
龍平は徐々に人が減っていく教室を見渡した。愛が体を震わせていた。
「愛!」
龍平は愛の元へ駆け寄った。
「大丈夫か!」
愛は首を振ると、そのまま気を失ったように倒れてしまった。
「岳斗!お前は逃げろ!」
岳斗は怯えた目を向けてきた。
「大丈夫だ。この爆発はただ、全校生徒を運動場へと導くためにと起こっているはずだ。なぜなら、炎がちゃんと通り道を作っている。廊下を見てみろ、廊下の周りが燃えてて、廊下自体はしっかり残っているだろ」
龍平はさっき、クラスの連中が飛び出していった時に廊下を見ていた。炎が円を描くように燃えていたのだ。つまり、炎がドーナツ型に燃えているから真ん中の穴を通っていけば、多少の火傷はするかもしれないが、安全に避難できると龍平は考えていた。
龍平は廊下を見るよう、岳斗を促した。
「わかった。龍平……」
岳斗は弱々しい声で頷いた。龍平を心配の眼差しで見てくる。
龍平は岳斗の肩に手を置いた。
「俺は大丈夫だ。愛を連れて必ず運動場へ行く。岳斗、逃げろ!」
岳斗は龍平の言葉を聞いて安心したように炎が立ち込める廊下へと逃げていった。
龍平も愛を背負い、気を引き締めると、炎が立ち込める廊下へと飛び込んだのだった。
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